レン・デイトン:Len Deighton/Leonard Cyril Deighton (1929- )
ジョン・ル・カレと並び称されるイギリス・スパイ小説の重鎮。33歳の時に発表した処女作「イプクレスファイル」(1962)が一躍ベストセラーになる。
小説家になる前は職を転々としていたようだが、その時の経験が小説に反映されているという。初期シリーズは「わたし」というサラリーマン・スパイの一人称で語られ、独特の軽妙でシニカルな文体が特徴。80年代中盤からはノンキャリア・スパイ「バーナード・サムソン」を主人公とした一大サーガを執筆している。
主人公達はいずれも独自の道徳規準を持ち、矛盾を感じつつも与えられた任務を遂行するが、自分の絶対的な価値観を超えたところの命令には服従しないタフさを持ち合わせる。背後の人間を信用しないクールな世界観が魅力である。
スパイシリーズの他は、第二次世界大戦を舞台とした小説や、ノンフィクションを得意とする。
料理好き、ドイツ好き?(特にベルリン)で、官僚嫌いの一面を持つ。作中に描かれる階級闘争はイギリスならではのものだろう。