Nujabesはヒップホップ・レーベルHydeOut Productionsの主宰者にしてトラックメイカー。4月に出たHydeOutのコンピレーション『First Collection』はその筋のヒップホップ・ファンを狂喜させる見事な内容で、レコード店のバイヤーも熱いポップを書きまくり、飛ぶように売れた(いまでも売れている)。
そのコンピレーションでも溜息が出そうな美しいトラックを提供していたNujabesだが、8月21日に待望のファーストアルバムがリリースされた。
全15曲、ワールドクラスのトラックメイカーと完全に肩を並べる、驚くべき水準のトラックが並ぶ。日本人だと知らなければ、まったく気づかないほどだ。SubstantialやCise Starr、Shingo02など、参加しているMCも全員英語を使う。
しかし同時に、この繊細な音は日本人にしか出せないかもしれない、とも思う。ジャケットの内側には、「この音楽は僕の心象風景の比喩であり、その風景は僕が見て聴いて感じるこの世界の比喩でもある」に始まる、Nujabes自身による日本語のテキストがある。
この一見矛盾したような態度には、どこか不思議な説得力がある。露骨な日本っぽさを消しつつ、だからこそ日本の感性そのものが伝わってくるような、そんな感じだ。
個人的には、その「感じ」はちょうど10年ほど前、ケン・イシイが出てきたときの感じに似ている。ケン・イシイは、あからさまなかたちでは日本っぽいものを一切背負わずに、いきなりワールドクラスの音を出した。しかしその繊細な音には、どこか日本を感じさせるものもあった。Nujabesも、表向きは日本的意匠を持っていないがゆえに、むしろ音の本質的な部分で日本的なものを感じさせる。
さまざまなスタイルの曲があるが、やはりNujabesの本領である、美しいピアノのフレーズが織り込まれたトラックが印象に残る(「Kumomi」「Think Different」「A day by atmosphere supreme」「Latitude-remix」など)。
ヒップホップと言っても実に幅広く、この作品はむしろある種のテクノやハウスに近いところもある。普段ヒップホップを聴かない人、ヒップホップに偏見がある人にもぜひ聴いてほしい。だそうだ(笑)
Nujabesについて語りましょう☆