「お七の火」
お七が火をつけた
お小姓吉三に逢ひたさに
われとわが家に火をつけた
あれは大事な気持です
忘れてならない気持です
『堀口大學詩集』より
大罪を犯してまでも思い人に逢いたかったお七。
幼さも手伝ったのでしょう、なぜか憎めないその短絡的な理由。
あまりに一途で短い生涯でした。
犯罪賛美はしません。昔の人物だからといって罪人でもヒロイン、ヒーロー視するのはどうか、と言われるひともおりますが、ただ、私は今だに語り継がれているこのムスメの人物像に惹かれてしまうのでした。
『お七(しち)の超あらすじ物語』-----------------
※※※以下は、語りぐさや歌舞伎などでよく聞かれる話を簡単にまとめたものです。語り継がれているお七の行動や描写は事実とは限りません。※※※
お七(しち)という八百屋の少女がおりました。歳の頃、多感な15〜6才。
ある頃、彼女の住んでいる界隈で大火事が起こりました。
当時の火事といえば大惨事です。お七らは少し離れたお寺に避難をし、火が消えた以降も町の状況が落ちつくまでそこでお世話になることとなりました。
そのとき、お寺に奉公する一人の小姓と出会い、彼に恋をしてしまいます。
避難生活が終わり、自宅に帰ることになったお七でしたが、暫くはお寺で知り合った例の彼の事が忘れられません。忘れられないどころか、日を追うごとに想いが大きくなっていくのでした。
「彼と再会したい・・・ (T_ T )」
しばらくしたある日の事、お七は大変な罪を犯してしまうことになります。
〈 放火 〉という大罪を・・・。 な、なぜに?
「ただ、とにかくあの人に逢いたかったの ヾ(T○T )ヾ」
これが動機の全てでした。
step.1「町に火をつける」
↓
step.2「火事が起こる」
↓
step.3「再びあのお寺に避難することになる」
↓
step.4「あのお方と再会 d (^ー^ ) 」
オトナの器用な恋愛術をまだ知らぬ、年ごろ娘のナイスアイディア!
・・・・っておい ⊂( ̄Д ̄)
火を放った後、燃え盛る炎をしばらく見つめておりましたが、そのうちに自分のしでかしたことの重大さに我に返った彼女は、火の見やぐらのはしごを這い上がり、自ら半鐘を打鳴らして火災報知に協力するといった、少々憎めない行動に走ります。
このような行動から推察するに、放火はやはり積もりに積もった一途な恋心に支配された瞬間のでき心だったのでしょう。
結局、この日の火災は大きな被害を出さずに済んだようですが、この当時、火付けといえば殺人と並ぶほどの重罪でした。
お七は「彼」と再会することなく、生きたまま炎に焼かれる火炙りという極刑を受け、この世を去りました。
※※※繰り返しますが、以上は、語りぐさや歌舞伎などでよく聞かれる話を簡単にまとめたものです。語り継がれているお七の行動や描写は事実とは限りません。※※※
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高畠華宵「情炎」(右)