夢が暗示するものは何なのか
世紀を超えて、今なおシュルレアリスム魂を頑なに守るシュヴァンクマイエル5年ぶりの長編作品が、昨年ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映された本作「サヴァイヴィング ライフ」。憂うつな日常を脱出して夢の中をさまよう男のラブ・サスペンスである。夢の中で出会った美しい女は何者なのか?夢に登場する若い頃の自分にそっくりな男の正体は?夢と現実の二重生活を送る主人公が、フロイト、ユングばりの夢分析で解き明かす物語は、サスペンスにあふれ、衝撃のラストへと見るものを引きずり込む。
CGや3Dを凌駕する驚異の映像世界
フィルムのひとコマひとコマに執着するパラノイア的な創作姿勢や実写と写真をたくみに組み合わせたカットアウトアニメで、デジタル技術によるCGや3D映画をはるかに凌駕する映像作品を作り出すマエストロ、ヤン・シュヴァンクマイエルは、映画の王道をいく作家。アルフレッド・ヒッチコックさながらに本人が登場し、自虐的なコメントを述べ、人を喰ったオープニングで始まる本作は、メタモルフォーゼ、夢の具象化、エロスとタナトス、胎内回帰願望等、シュヴァンクマイエルが繰り返し表現してきたモチーフを隋所に散りばめ、老境にさしかかった作家が"人の一生"をシニカルに見つめた作品でもある。「サヴァイヴィング ライフ」と名づけられたこの映画は、夢をみることが生きていく支えになるという彼からのメッセージ。