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治療共同体

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詳細 2017年7月19日 07:26更新

◆はじめに〜治療共同体とは
 治療共同体(Therapeutic Community)とは、第二次大戦期のイギリスにて社会精神医学の概念の中で生まれてきた治療実践であり、そこから現在は主に次の二つのタイプの治療実践を指して用いられる。

? 施設内治療としての治療共同体
 Maxwell Jonesがスコットランド、メルローズのDingleton病院で実践し、紹介した病院内治療共同体。

? 薬物依存者等のの自助グループにおける治療共同体
 1960年前後から始まった、カリフォルニアでのシナノン(Synanon)グループに代表される。

 治療共同体で重視されるのは、各メンバーが対等な発言権を保障されることである。人間はさまざまな集団でいろいろな役割を果たすことを要求されるが、自分の気持ちをそのまま言葉に表したり、行動に表現したりすることが困難な場合も多い。治療共同体は他の集団と違って、自分の中の気付きや思い表現することが保障されている。
 しかしそれは同時に、他のメンバーの意見や思いも尊重することを意味する。管理する側の意見には耳をふさぐメンバーも、同じ「管理される側」としなければならない立場のメンバーから指摘されると、それに耳を傾けないと、共同体のメンバーとしての地位も危うくなるだろう。
 しかしながら、メンバーの意見や思いが全て対等である、ということではない。同時に、多数決で全てを決めればよいということでもないだろう。メンバー各々の個性や経験も考慮されるだろうし、ミーティング等を運営していくリーダーシップの問題もあろう。ただし、問題の解決法はいつも集団に開かれていて、それを変える力を誰もが持っているという前提こそが必要であり、それこそが各メンバーの発言を促し、保障することにもなる。
 病院では集団精神療法の一つとして、病棟や疾患別グループのミーティングが行われる。そこでは専門職(臨床心理士や作業療法士、ソーシャルワーカー、医師)のスタッフが司会役やリーダーの役割を果たし、他に病棟の職員やコメディカルの参加が望まれる。結果として、他職種の(multi-disciplinary)治療環境が実現される。

◆治療共同体の社会的意義
 本来、治療共同体というものは、人間の共同生活の中に本来的に備わっていた特徴であった。現代でも、シャーマン等の宗教的職能者が治療的行為を行う地域では、その治療の場や治療者が生活共同体の中で一定の役割を果たすことが多い。こうした事例は民俗医療の名の下で、医療という近代以降のカテゴリーの一部として扱われ易いが、そうすることで、人間の共同生活それ自身が持つ職能分化(分業化)、風俗習慣の規律化・倫理化という側面が見失われてしまう。
 治療共同体という概念が生まれたのは、近代化の中で生活から医療が切り離された結果、医療の中で共同生活それ自体のもつ治療効果が再発見されなければならなかったということである。つまり医療の枠組みが、本来医療とはみなさなかったものの中にこそ、その本質が捉えられなければならないということだ。そのため文化人類学(ダグラス、ゴフマン)から哲学(カント、ジンメル)、社会学(ヴェーバー、パーソンズ)、および精神分析学(フロイト=ラカン、カーンバーク)といった学際的な研究により、治療共同体の本質と、その概念が持つ現代的意義を捉えなおす必要があるだろう。
 具体的には、社会の近代化が進み、職住分離・核家族化から地域社会が崩壊しつつある今日、また価値観が多様化し、伝統的なイベントが衰退して、大人になる道程が見失われ、精神的な拠り所ない困惑が広がりつつある今日、治療共同体という実践が再発見してきた「人間の共同生活それ自身」のもつ可能性、集団の力というものを、目に見える形として医療から社会や政治に還元していくことが大切ではないか。

◆ジンメルの社交論
 ジンメルは社交の中からルールやマナーが生まれ、ひいては騎士道や茶道のような倫理観や芸術が生まれてくる過程を詳述している。集団生活の中では、挨拶ひとつにしても、それはその集団の一員として、集団の中の慣わしやルールを守っていくことが期待されるひとつの合図である。そうした生活や遊びを共有していく中から、個々人の損得を超えた約束事や価値観、倫理までもが共有され、それを守らなければ、集団の一員としての地位が失われる。こうした集団の力を医療に適応すると、医療者と患者の間で、治療の目標や医療倫理というものは、原則的に絶えず開かれたものでなければならないだろう。少なくともそれは一方の損得だけで決まるものであってはならない。また精神分析における「治療者の中立性」の問題も、同様に相互に開かれた、双方の個人的な欲望を昇華するような共通の倫理が捜し求められることになるだろう。「不治の病」であっても、こうした創発的な(emergent)人間関係の中では、例えば「医療の進歩」といった目的の共有から、医療が続けられることもあるだろう。

◆治療共同体の実践
 現在、治療共同体の先進国はイタリアだろう。イタリアでは毎年何冊も治療共同体に関する著作が出版されている。日本やヨーロッパでは、いくつかの病院が実践中である。電子カルテの普及により、病院職員による情報共有が比較的速やかに行われるようになったとはいえ、実際に顔を合わせたミーティングは不可欠であり、病院全体を、治療から管理運営まで含めたミーティングを日々行っていくのは大きなマンパワーを必要とする。各病棟、各疾病別治療専門グループ等、各々のミーティングを進行させる専門職の育成も時間がかかる。
 しかしこうした努力は次のように報われる。ミーティングで確認される時間と場の共有が、それ以外の何かをメンバーに共有させるのである。医療従事者のメッセージが伝わらない場合でも、同じ患者同士の言葉には、開かれた人間関係を通して発揮する力がある。また同時に、医療従事者同士の関係も変質していく。

◆本コミュニティでは・・・
 治療共同体というものに興味関心をお持ちの方、身近な人間関係や集団に治療共同体の考えを導入したい方、治療共同体に従事している方や経験された方々の情報交換や理解・関心の深化をとりあえずの目的としていますが、そこは創発的な態度を持って行きたいと思っております。


◆References
 Aoki Takashi (2005) Rationality in Magic and Science: A Comparative Study between Spirit Writing Folk Therapy in Taiwan and Modern Western Psychiatry. Master Thesis, Institute of Anthropology, National Tsing Hua University.

 Jones, Maxwell (1968) Beyond the Therapeutic Community: Social Learning and Social Psychiatry. New Haven and London, Yale University Press.

 Kernberg, Otto F.(1973) Psychoanalytic Object-Relations Theory, Group Processes, and Administration: Toward an Integrative Theory of Hospital Treatment. Annual of Psychoanalysis 1: 363-388.

 Parsons, Talcott (1998) The "Fragment" on Simmel [From Draft Chapter XVIII (Structure of Social Action): Georg Simmel and Ferdinand Toennies: Social Relationships and the Elements of Action]. The American Sociologist 29-2: 21-30.

 Perfas, Fernando B.(2003) Therapeutic Community: A Practice Guide. Lincoln, iUniverse, Inc.

 Simmel, Georg (2004) 社会学の根本問題. 居安正訳. 京都, 世界思想社.

 高城和義 (2002) パーソンズ:医療社会学の構想. 東京, 岩波書店.

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2007年4月25日

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カテゴリ
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