9月9日は阿部薫の命日です。
フリージャズ界きっての鬼才アルト・サックス・プレイヤーであり、これまた鬼才小説家・鈴木いづみの夫としても知られる阿部薫。その奇行ぶりは枚挙にいとまがない。彼から搾り出される魂の結晶のような音のカタマリ、狂気と覚醒にみちたインプロヴィゼーションは、聴くものに、人間のドロっとした情念・憎悪を垣間見るような恐怖感をもたらす。その音像は、60年代後半、学生運動の敗北から派生したあの退廃的ムードそのものである。数々の名プレイを残し、78年、ドラッグの過剰摂取(自殺ともとれる)により、29歳という若さで死去。94年には、生前親交の深かった若松孝ニのメガホンによる、阿部と妻・鈴木いづみの破天荒な生きざまをリアルに描いた映画『エンドレス・ワルツ』が公開され、再評価の波が起こったのは記憶に新しい。ちなみに、主演は町田康。by amzon
自己に対して破壊的であること、
ものごとに対して根源的であること、
状況に対して危機的なまでの緊張感を維持すること、
これらを阿部薫はアルト・サックス一本でなしえてしまう
名越康文鼎談「スプリット」(新曜社)より
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