毎日知れずに訪れる、蒼の幻想。
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昼と夜の境目、その移り変わりのほんの一瞬、
気象条件に恵まれた日の、わずか10分ほどの間、
よわよわしい天空光が透明な青い絵の具になる。
短波長の光のカーテンが空を覆うのである。
鮮やか、いや時としてケバケバしい街の表情は一変して
荘厳な静寂に包まれる。。
この、夕焼けの後に訪れるこの瞬間を北欧の人たちは
『ブルーモーメント』と呼び、これを愛しむ。
忙しない現代に営む僕らはこれに出会える事が少ない。ブルーモーメントは魔法のように、現代の時間の汚れを浄化し、聖なる空間へと変えてしまう。
たとえそれがひと時のマッチ売りの明かりだとしても。。
「東京という都市が二つの空間を交錯させるのも薄暮のわずかな時間に限られる。錆ついた金物や、ぼろきれや紙屑などでつくられた壮大なごみ捨て場のごとき都市は、みるみるうちに消失し、淡い明るさのなかからもう一つの都市が出現する。光の都市、現象の都市である。この魅惑的な変容の時間を、我々は『黄昏』と呼んできたが、『ブルーモーメント』という美しい呼称があることを、私は面出薫率いる照明探偵団から教えられた」。(伊東豊雄「浮かび上がるアジア的光の空間」)