Ligue1 Communauteコミュのハリルホヂッチ物語

彼の解任を記念？して、
以前に某掲示板にアップされていた彼の人柄がわかるエピソードです
ただスパルタなオヤジじゃなく、彼のサッカーに対する情熱だと思っとります
ちなみにこのエピソードはリール監督時代に優勝も狙える順位にいたときのこと

その夜、彼はいつものようにパスタを食べる為にレストランに奥さんと行ったのに心ここにあらず、という状態。目はうつろで、そのうち啜り泣きをはじめる始末。それは試合ではなく、その試合で選手生命を絶たれたピニョールへの涙だったんです。ピニョールは試合の始まる前に監督に「僕は全力を尽くす。」と語り、その何日か前にピニョールのお子さんに「パパは貴方と一緒に練習するのが本当に好きなんですよ。」と言われていたんだそうです。それもあって、「どうして彼がこんなことに…。」と涙が止まらなかったんだそうです。

　ヴァイドはボスニアのチームでプレーし、ユーゴ代表としてＷ杯、ユーロにも出場。ナントに来てからは８２−３(得点９と８５年（２８得点）に優秀アタッカンに輝き、ＰＳＧで選手としてのキャリアを終えます。その後、90年にボスニアのモスターの監督に就任。しかしボスニア戦争が始まり、91年に奥さんと子供をフランスに帰し、たった３０?のアパートで再出発させ、自分は一人ボスニアに残り、ボスニアの為に全力を尽くします。85年に既にモスターの病院を作る為に10万フラン寄付していた彼は私財を投げ打ったり、資金集めをし、ボスニアに薬を輸送したりすることに専念。93年までにフランスに戻ったのはたったの１回だけ。それは戦火の中、ボスニアサッカー協会を発足し、初めての試合、ボスニア対カイザースラウテルンの試合の詳細を詰める為の時で、この試合をする為にボスニアチームは１５００キロに道のりを車で移動したんだそうです。

93年にフランスに戻り、ボーヴェの監督に就任しますが、すぐ解任され、失業。友達からの援助でしのぐ毎日が続きます。遂に奥さんが働き始めたそうですが、その時の彼は一日ソファーに寝そべり無気力状態。本人曰く「失業していた時は戦争の時より最悪な状態だった。」そうです。見かねた奥さんが、「裏の森で走りでもして、サッカーを始めたら？」と勧めたほどだそうです。

97年、元フランス代表監督のミッシェル・アンリからモロッコのラジャというチームの監督にならないか、と言われ、カサブランカに行き、９７，８年とモロッコで優勝、アフリカリーグでも９７年優勝という結果を出したヴァイドゥは98年、フランスに戻りリルの監督になることを決心します。そしてその夜のある出来事で、彼は今までの戦争や不幸な出来事を忘れられ、
監督という仕事を愛するようになったんだそうです。

それはチームを離れることを決めた夜のこと。彼が一人でアパートにいると、10数人の選手が訪ねてきたので、ビールを飲み語り合ったんだそうです。その後眠ろうとしていた彼は廊下を行ったり来たりする物音に気づき、ドアを開けると、片隅で泣いている選手達の姿が目に入り、思わず彼も一緒になって泣いてしまったんだそうです。もうその時から既に選手に愛される監督だったんですね。

その後はご存知のようにリルでフランスのサッカーシーンを塗りかえる偉業を成し遂げます。鉄の体制、といわれる彼のメソッドですが奥さんは「彼を２７歳の時から愛しているけど、それは彼の心の奥底に世界の善意の全てがあるから。彼はそれを人々に伝えられのよ。」とのことだそうです。彼曰く「私の豊かさはサッカーの試合の中にあるんじゃなく、全く別のところにあるんだ。何人かの個人的な悩みを抱える選手が私に会いにきた時、私は助言するんじゃなく、ただ聞くんだ。昔の私のように彼らには聞いてもらうこと、理解してもらうことが必要なんだ。気に留めてもらうこと、支えてもらうこと、私達全てにとってその必要がどんなに大きいか私は知っているんだ。」

　そんな彼ですが、まだボスニア戦争の思いでを拭い去ることが出来ずにいて、もしファシスト達と戦うためなら死にに行くだろう、とのことです。彼のそんな戦争に対する憎しみは、
選手達の愛、奥さんの、子供達の愛でやがて消えていくことだろう、とその物語は締めくくられていました。