マイコンキットを日本の企業も販売し始めたきっかけは、TK-80のヒットだった。その頃すでに海外の企業が日本でも、マイコンキットを個人向けに販売していた。TK-80を1976年8月に販売したのは、実はNECの半導体部門だった。日本経済新聞1999年6月3日夕刊によれば、TK-80が数多く売れたのは、マニアの利害とNECの半導体部門の利害が一致したからだった。マニアの利害とは、まだまだ憧れの存在だったコンピュータを体験できることである。また、NECの半導体部門の利害とは、大量生産の結果余ってしまうCPUを売りさばけることである。そこで問題になったことは、製品部門でもないのに、完成品を売ることは、NEC社への配慮から売ることはできない。また、完成品として販売した場合、製品保証やアフターサービスが必要になる。これら二つの理由から、NECは、部品と説明書をただビニール袋に入れただけのキットを販売したそうだ。名目上は教育用で販売され、Training Kitの頭文字を取って、TKとした。80が付いている理由は、CPUが、インテル社製CPU8080互換CPUであるμCOM8080Aであったからである。その後、NECは、1978年12月にマイクロソフト社のBASICを初めて搭載したマイコンキットである、μCOM Basic Station TK-80BSを発売した。これは、TK-80などとそれ用のキーボードとRAMとROMの周辺機器をセットにして、128,000円で発売した。