ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

怖いくらい    当たる占い!コミュのタロット海賊の星に願いを

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
はじめまして。
タロット海賊です。
1997年から東京銀座、原宿青山表参道、赤坂、京都(祇園、先斗町)
大阪キタ新地、四国松山などでのべ2000人のリーディングをしてきました。
経済専門誌、週刊文春のインタビューや連載記事寄稿、一般著書は4冊。
(2004年から数冊ベストセラー)

恋愛問題 ビジネス 結婚 マネー 人間関係 などの鑑定を
占いの館やストリートでなくカフェで出張鑑定を行っています。

遠距離の方のご希望の場合はメールでも可能です。
どうぞよろしくお願いいたします。
下記は占いを始めた頃のお話です。

「星に願いを」
When I wish upon a star 

広い森のような場所で野宿をした経験があるだろうか。
一度試してみればいい。あなたはとてもピュアな気分になれるだろう。
澄んだ空気が鼻や口から肺に入り込んで
頭がすっきりするクリアな体験だ。
薄暗い月光に照らされた空間。
風で枝や葉が揺れるざわめき。
少々問題なのはそれが休日の登山やキャンプ場でなく
都心の夜の公園だったことだ。

広いその公園の一角にある骨組みだけのレストハウスで
フラットな硬い木製ベンチに横になり、薄い寝袋に潜り込んだまま
顔だけ外に出して星空を眺めていた。
ちょうど20世紀が終わろうとする最後の年の春だったと思う。

ここはトーキョーの真ん中なのに、ビルひとつ見えない。
静かに星空が眼の前に広がっている。
思わぬスターダストビューに驚きながら美しいパノラマに見とれていた。

しばらくすると少し空気が冷え込んできたようだ。
暖かい寝袋の空気がこれ以上漏れないように口紐を絞り込む。

ガサガサッ。
新聞紙の塊が動く音。お隣さんは寝袋でなく新聞紙に包まっている。
隣のベンチで寝ている男はさっき今夜が野宿デビューだと言っていたから、
この冷え込みでは寒さで眠れるはずがない。
案の定さっきからずっと寝返りを打っている。

そのレストハウスの灯が消える前。
青白い蛍光灯の下で買ったばかりのハードカバー本を読んでいると
隣のベンチから指差しながら
「すいません。もしかしたら、その本私も今日買いました。」
その男は笑顔で手にしていた本の題名を諳んじた。

本は書店で買うときにブックカバーがしてあったので
何故わかったのか驚いて尋ねると本の厚みだと男は言う。
厚みで本がわかるものなのだろうか。
それが名も知らぬ男と話をした最初だった。
夜の公園で読んでいた本を見知らぬ男に突然当てられるなんて経験は後にも先にもこれっきり。

仕事を訊かれタロット占いで暮らしを立てていると言うと
私を占ってくれませんかと彼は頼んできた。
こういう展開には慣れていたので引き受けると
彼は自分の話をはじめた。

新宿でやっていた飲食店の経営に失敗。
厳しい借金の取立てに悩んだ末に妻子を一時離縁する決断に至ったこと。
今日は妻子を彼女の実家に帰すため東京駅まで見送って
サウナの宿泊の代金を切り詰めようと考えて初めての野宿トライ。
昼は出版社の倉庫で1日6800円の仕分けのアルバイトをしている。
年齢は40代前だろう。自分よりすこし年上って感じだ。

「センセイ。俺はまた家族と、嫁や子供と暮らせる日が来るでしょうか。」
顔は笑っているが、悲痛な問いかけなのはすぐ理解できた。

男の愛想のよさは生まれつきなのだろう。
どんな辛いときでもきっと笑顔になってしまうタイプにちがいない。

センセイなんて呼ぶのはヤメテくれと言いながら、
さっさとタロットをベンチに並べていった。
興味深げに男は手元のカードを見ている。
展開した数枚のアルカナ(タロットカードの別称)の絵を見ながら
「大丈夫。また暮らせるよ。」
出来るだけ無愛想にリーディングした内容を手短に説明する。

「えっ!本当ですか!それじゃあ、これから俺頑張んないとだめですね。」
嬉しそうな男に別に努力しなくてもそういう状態に戻れるようだから安心したら良いとやっぱり無愛想に答えると
「ええっ、ホントですか。センセイ!」と身を乗りして喜んだ。

だからセンセイはやめてくれ。

夜の公園でヒトが読んでる本を言い当てるアンタの方がよっぽどセンセイだよ。
皮肉だけど、人間て生き物は自分のことになるとカラキシらしい。
自分もそうだけど。

少し経ってからそろそろ寝ることにしたのか、男はナイロン袋から新聞を引っ張り出して、不器用な慣れない手つきで自分に巻きつけベンチに横になった。

しばらく新聞紙が擦れる音が止まない。

横で寒さに震えガサガサ動く新聞の塊を見て、
さっきの無愛想さとは逆に
胸が熱くなっていく。

神さま。
あんたが本当にいるなら占い通りに
新聞紙で包装され震えるこの男に、
もう一遍家族と暮らさせてやってくれ。
もうすぐ20世紀も終わる。
猛威を振るった伝染病も根絶されるらしいから、ついでに世界から
貧困という伝染病も根絶してほしい。
どいつもこいつもシアワセにしてやってくれないだろうか。

神さま。
黙っていないで返事をしてくれ。

その時のオレたちは、まるで群れからハグレた「迷える子羊」だった。
本の値段はドヤ(簡易宿泊所)やサウナで一泊できる額だし
メシなら数日はもつ勘定になる。
つまり本を買わなければ野宿はしなくてよかった。
それなのに迷った子羊たちは本を買ってしまった。
そろって答えを必要としていたからだ。
そのうえオレたちは、
偶然
同じ日に
同じ本を買い、
同じ公園で、
同じ時間に、
隣あわせのベンチで眠ろうとしていた。
だから片方のオレが少しぐらいセンチになって「星に願いを」訴えていいじゃないか。



翌朝、寝袋の横にはジャムパンと赤い缶コーヒーが置かれていた。
どうやら昨晩の礼のようだ。
仕事に行ったのかもう彼の姿はなかった。

その夜。
またレストハウスに行くと
昨日と同じベンチに新聞男は座っている。
「あれっ。センセイ!どこに行ってたんです?」と嬉しそうに手招きした。

日払いの金で買ってきたと言いながら
昨日オレが寝たベンチを取っておいてくれたらしい。
焼酎のビンと炭酸ソーダのボトルと蒲鉾が置いてある。

「今晩は一杯やりましょうよ。遠慮はナシですよ。」
ひょんなことから知り合ったオレたちは、酒盛りを始めた。

彼は、ヒトに話を聞かせる術を心得ていた。
酒を飲みながら聞いた実家に帰したという妻との馴れ初めも面白かった。

ある日、歌舞伎町の自分の店が入っている雑居ビルでエレベーターに妹と二人で乗った彼は先に乗っていたひとりの若い女性が気になった。
傍にいる妹に小声で自分がこの娘と結婚するかもしれないと
ささやくと妹は睨みながら失礼でしょと肘で小突いた。

「そのときは何も無くて彼女も降りてどっかに行っちゃった。
でも結局その娘が今の嫁さんなんですよ。
なんかピンとくるものがあったんだなあ。あの時。」
男の勘の良さは、もう知っていたからオレはチューハイを飲みながら
すこし赤い顔で普通にうなずいていた。

だいぶ過ぎてから今晩公園近くの友人宅に泊まるからと
彼にご馳走になった礼を言ってそのレストハウスを離れて歩き出した。
外灯の外れた公園内の道は木立に囲まれて真っ暗だ。

少し歩くと後ろから
「センセイ。ちょっと待ってください。」と切羽詰った声が追ってきた。
振り返ると、すこし足早に近寄りながら
「またセンセイに会いたくなったら何処に行けばいいですか?」

今までにない不思議な感覚。
彼に「心配しなくても大丈夫だよ。家族ともまた暮らせる日がきっと来るから。」
そう言うオレの声が次第に震えだす。

同じようにオレも家族と離れ
ひとりになってもう何年も経っていたのだ。
心配しなくて大丈夫だと言って欲しかったのは自分のはずだった。
希望を失いかけ、オレは答えが欲しかった。
だから本を買った。
そして星に願った。
返事をして・・・。


どうしてもっと早く気がつかなかったのだろう。

夜の公園に現れた心優しいメッセンジャーが
迷子のような表情で目の前に立っていた。


「兄弟。オレはもう大丈夫だ。アリガトウ。」
彼を抱きしめた。

新しい世紀になってもうだいぶ時間が経ったけど。
彼にはあれから会っていない。

名前も知らないし、もう顔も忘れかけている。
でも兄弟。元気だろうか。
オレは元気だ。

それからすこし報告がある。
先週家族と食事に行ったんだ。

End

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

怖いくらい    当たる占い! 更新情報

怖いくらい    当たる占い!のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング