原始仏典コミュの原始仏教の戒律　「小戒・中戒・大戒」

１　小戒（初梵行戒）

ⅰ　殺さない
「生き物の殺害を放棄し、生き物の殺害を離れ、棒を捨て、刀を捨て、羞恥心があり、憐憫の心があり、すべての生き物の利益をはかり、哀れみの心を寄せる」

ⅱ　盗まない
「盗みを放棄し、盗みを離れ、与えられた物を受け取り、与えられる物だけを期待し、盗み取ろうというこころがなく、みずから清らかになっている」

ⅲ　淫しない
「清らかならざる行為を放棄し、清らかな行為を行い、遠く離れ、淫欲と卑俗の行為とから離れている」

ⅳ　嘘をつかない
「嘘を放棄し、嘘を離れ、真実を語り、真実を貫き、変説せず、信頼すべきであり、世間の人々をだまさない」

ⅴ　中傷することばを語らない
「中傷することばを放棄し、中傷することばを離れ、こちらの人々を離反させるために、こちらで聞いてはあちらで語ることをせず、あちらの人々を離反させるために、あちらで聞いてこちらで語ることをしない。このように離反した人々を和合させ、和合した人々をいっそう親密にさせ、協調を好み、協調を喜び、協調を促すことばを語る」

ⅵ　粗暴なことばを語らない
「粗暴なことばを放棄し、粗暴なことばを離れ、温和で、耳に心地よく、愛情がこもり、心にうったえ、品位があり、多くの人に喜ばれ、多くの人に好まれるような、そのようなことばを語る人である」

ⅶ　つまらぬ冗舌を語らない
「つまらぬ冗舌を放棄し、つまらぬ冗舌を離れ、時期にかなって話し、真実を話し、利益のあることを話し、教法を話し、心に残る話を話し、時期を考慮して、話すべき理由があって話し、限度を知って話し、利益の多い話を話す」

ⅷ　清浄な生活
「種子類や草木類を損なうことから離れている」
「日に一食を食べ、夜の食事を取らず、時ならぬ時の食事から離れている」
「踊りと歌と器楽の観覧から離れている」
「花飾りと香料と塗油を装着し撒飾し塗飾することから離れている」
「大きな寝具と華美な寝具から離れている」
「金銀を受納することから離れている」
「調理していない生の穀物を受納することから離れている」
「調理していない生の肉を受納することから離れている」
「婦人と少女を受納することから離れている」
「男女の奴隷を受納することから離れている」
「山羊と羊を受納することから離れている」
「鶏と豚を受納することから離れている」
「象と牛と馬と騾馬とを受納することから離れている」
「田畑と宅地を受納することから離れている」
「使者や使い走りの仕事から離れている」
「売買から離れている」
「重さの量目を偽り、金を偽り、升目を偽ることから離れている」
「賄賂と詐欺と偽者でだますことという邪悪な行いから離れている」
「斬ることと、殺すことと、縛ることと、待ち伏せすることと、かすめ取ることと、強奪することから離れている」

２　中戒（清浄な生活）

ⅰ　草木を傷つけない
「根で殖えるもの、幹で殖えるもの、節で殖えるもの、枝で殖えるもの、そして第五として種子で殖えるものという、このような種子類や草木類を損なうことから離れている」

ⅱ　貯蔵しない
「食べ物の貯蔵、飲み物の貯蔵、衣服の貯蔵、乗り物の貯蔵、寝具の貯蔵、香りの貯蔵、美味な食べ物の貯蔵という、このような貯蔵物を享受することから離れている」

ⅳ　鑑賞しない
「舞踏、歌謡、器楽、見せ物、語り物、手鈴楽、シンバル楽、鼓楽、手品、鉄の玉の遊び、竹の遊び、遺骨洗い、象の闘い、馬の闘い、水牛の闘い、牡牛の闘い、山羊の闘い、羊の闘い、闘鶏、うずらの闘い、棒での戦い、拳闘、相撲、軍事演習、兵列、配兵、閲兵という見せ物から離れている」

ⅴ　遊ばない
「八目の碁、十目の碁、石蹴り、石積みくずし、さいころ版、棒打ち遊び、毛筆遊び、玉遊び、草笛、おもちゃの鍬の遊び、宙返り、風車遊び、葉っぱの升の遊び、おもちゃの車の遊び、おもちゃの弓の遊び、文字当て遊び、意思当て遊び、身障者のまねをする遊び、といこのような賭け事という放逸の原因にふけることから離れている」

ⅵ　贅沢しない
「長椅子、パッランカ椅子、長毛の毛氈、彩色あるもの、白い羊毛布、羊毛布、マットレス、刺繍のある毛の敷物、縁飾りのある毛の敷物、片方に飾りのある毛の敷物、宝石を縫いこんだ絹の覆い布、絹の上掛け、その上で十六人の踊り子が踊れるほど大きい毛の敷物、象の背の敷物、馬の背の敷物、車の敷物、かもしかの皮の覆い、カダリ鹿の最上の敷物、天蓋のあるもの、両端に赤い枕のあるものというこのような大きすぎる寝具と華美すぎる寝具から離れている」

ⅶ　お洒落しない
「全身に香水をぬること、按摩、沐浴、体を揉むこと、鏡、眼に塗ること、花飾りと塗油、顔に塗る粉、顔に塗る油、腕輪、髪を結ぶ輪、散歩用の杖、薬袋、剣、日傘、彩色のある履物、宝石の冠、マニ珠、払子、白い衣服、長い袖の着物というこのような装飾品で着飾ることの原因の実行から離れている」

ⅷ　無駄話しない
「王の話、盗賊の話、大臣の話、軍隊の話、恐怖の話、戦闘の話、食べ物の話、飲み物の話、衣服の話、寝具の話、花飾りの話、香料の話、親戚の話、乗り物の話、村の話、町の話、都城の話、国の話、女性の話、男性の話、英雄の話、道端での話し、井戸端での話、先祖の話、種々雑多な話、世界の話、海洋の話、＜このようである、このようでない＞という話というこのような無益な話から離れている」

ⅸ　論争しない
「論争にふける。たとえば、＜あなたはこの法と律とを知っていないが、わたしはこの法と律とを知っている＞＜あなたがどうしてこの法と律とを知るようになるであろうか＞＜あなたは邪に実践しているが、わたしは正しく実践している＞＜わたしのことばは理に合っている。あなたのことばは理に合っていない＞＜あなたは先にいうべきことを後にいい、後にいうべきことを先に言った＞＜あなたの熟考したことはくつがえされた＞＜あなたの説は論破された、あなたは破れた＞＜非難から逃れるためにあなたは遊行しなさい。もしできるならくつがえしてみなさい＞というように。このような論争から離れている」

ⅹ　使い走りしない
「＜ここへ行け、この場所へ行け、これをもっていき、この場所へこれをもって行け＞と、王や王の大臣や王族やバラモンや家の主や子供たちのために行なうような、使者や使い走りの仕事から離れている」

ⅹⅰ　詐欺をしない
「詐欺をいい、虚言をいい、当てこすりをいい、おどし、小利で大利を求めることから離れている」

３　大戒（避けるべき邪悪な生活手段）

ⅰ　呪術をしない
「四肢の相による占い、前兆による占い、自然現象の異変による占い、夢判断、人相の占い、ねずみの噛みあとによる占い、火の護摩、杓子を用いる護摩、籾殻の護摩、糠の護摩、米の護摩、酥の護摩、胡麻油の護摩、口の護摩、血の護摩、四肢を見て呪文を唱える運勢判断、土地を見て呪文を唱える地相判断、耕作地を見て呪文を唱える地相判断、墓地の呪文、悪霊払いの呪文、土地の呪文、毒蛇に噛まれたときの呪文、毒を消す呪文、蠍に刺されたときの呪文、ねずみに噛まれたときの呪文、鳥の鳴き声による運勢判断、寿命の予言、矢に当たらない呪文、鳥獣の鳴き声による運勢判断というこのような無益な呪術によってよこしまな生活を営んでいる人たちもいる。このような無益な呪術から離れている」

ⅱ　相占いをしない
「宝石の相、杖の相、衣服の相、剣の相、矢の相、弓の相、武器の相、女性の相、男性の相、少年の相、少女の相、男奴隷の相、女奴隷の相、象の相、馬の相、水牛の相、牡牛の相、雌牛の相、山羊の相、羊の相、鶏の相、鶉の相、オオトカゲの相、カンイカ鹿の相、亀の相、獣の相というこのような無益な呪術によってよこしまな生活を営んでいる人たちもいる。このような無益な呪術から離れている」

ⅲ　戦争の予言をしない
「＜王たちは進軍するであろう＞＜王たちは退却するであろう＞＜味方の王たちは進軍するであろう、敵の王たちは退却するであろう＞＜敵の王たちが来襲するであろう、味方の王たちは退却するであろう＞＜味方の王たちが勝利するであろう、敵の王たちは敗北するであろう＞＜敵の王たちが勝利するであろう、味方の王たちは敗北するであろう＞＜このようにこのものは勝つであろう、このものは負けるであろう＞という、このような無益な呪術によってよこしまな生活を営んでいる人たちもいる。このような無益な呪術から離れている」

ⅴ　占星術をしない
「＜月蝕があるであろう＞＜日食があるであろう＞＜星蝕があるであろう＞＜月と太陽は正常な軌道を運行するであろう＞＜月と太陽は異常な軌道を運行するであろう＞＜星々は正常な軌道を運行するであろう＞＜星々は異常な軌道を運行するであろう＞＜流星が落ちるであろう＞＜四方が燃えるであろう＞＜地震があるであろう＞＜天鼓が鳴るであろう＞＜月と太陽と星々の上昇と沈下と暗くなることと明るくなることとがあるであろう＞＜月蝕にはこのような結果があるであろう＞＜日食にはこのような結果があるであろう＞＜星蝕にはこのような結果があるであろう＞＜月と太陽との正常な運行にはこのような結果があるであろう＞＜月と太陽との異常な運行にはこのような結果があるであろう＞＜星々の正常な運行にはこのような結果があるであろう＞＜星々の異常な運行にはこのような結果があるであろう＞＜流星の落下にはこのような結果があるであろう＞＜四方の天が燃えるとこのような結果があるであろう＞＜月と太陽と星々の上昇と沈下と暗くなることと明るくなることとはこのような結果があるであろう＞というこのような無益な呪術によってよこしまな生活を営んでいる人たちもいる。このような無益な呪術から離れている」

ⅵ　豊作の予言と計算と詩作と哲学をしない
「＜大雨が降るであろう＞＜旱魃になるであろう＞＜豊作になるであろう＞＜飢饉になるであろう＞＜平和が続くであろう＞＜恐慌があるであろう＞＜病気になるであろう＞＜健康になるであろう＞、指を使う暗算、計算術、概算術、詩作術、世俗の哲学というこのような無益な呪術によってよこしまな生活を営んでいる人たちもいる。このような無益な呪術から離れている」

ⅶ　神事をしない
「嫁を取る、嫁にやる、和解する、離反する、借金の取立て、借金の貸付（のそれぞれの吉日）、幸運をもたらす呪文、不幸に陥れる呪文、堕胎させる呪文、口をきけなくする呪文、顎を動かなくする呪文、手をねじりあげる呪文、耳を聞こえなくする呪文、鏡に神託を問う術、少女に神託を問う術、神に問う術、太陽に奉仕すること、大梵天に奉仕すること、口より火を吐く術、吉祥天を招請する術というこのような無益な呪術によってよこしまな生活を営んでいる人たちもいる。このような無益な呪術から離れている」

ⅷ　医術をしない
「願掛け、願解き、土の家の呪術、鬼霊の呪術、生殖能力を得させること、生殖能力を失わせること、宅地を占うこと、宅地を清めること、口をすすぐこと、沐浴させること、犠牲をささげること、吐剤・下剤の調合、吐かせることと下痢させること、頭痛の治療、耳に油を塗ること、眼の治療、鼻の治療、洗眼すること、眼に油を塗ること、眼科の医術、外科の医術、小児科の医術、根から薬を調合すること、適時に薬を抜き去ることというこのような無益な呪術によって、よこしまな生活を営んでいる人たちもいる。このような無益な呪術から離れている」

－－『長部経典　第一巻　聖なる網の教え－－梵網経』

★『浄土真宗やっとかめ通信』
http://www2.big.or.jp/~yba/asia/kairitu.html
こちらに律の詳細があります。