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和 -WA-コミュの江田島の思い出

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夏休みのお盆の季節にはいつも広島に帰っている。
今は江田島に向かうフェリーの中。白い柵にもたれかかって海を見ている。
僕は大阪で生まれて大阪で育ったけど、両親は広島出身で、江田島には母方のおじいちゃんとおばあ
ちゃんがいるんだ。
真っ白いTシャツの僕はコーラを飲みほしてその空き缶をゴミ箱に捨てる。
そしてしゃがみこんで犬とじゃれ合う。
そうしてる間にフェリーは島に着く。
まずは車を走らせて、いつも行っているお寺に行くんだ。
そのお寺は山の中腹にあって、セミの鳴き声の中、僕は犬と一緒に階段を駆け上がって行く。
僕らは暑くなって少し汗ばむ。
そこは浄土真宗西本願寺のお寺で親鸞上人の石像が立ってある。
僕はその前に立ち、笑顔で手を合わせる。
ハローって感じで。
その間、両親と姉は住職さんとその奥さんにおみやげを渡して立ち話している。
そして住職さんはお寺の中に座り、僕らにお経を唱えてくれる。
先祖のみんなに届くくらい力強い声で。
犬にとってそんな光景はめずらしいのでお寺の中をくんくんと歩き回っている。
お寺の中はたくさんの仏様の像や絵が描かれてあって、なぜだか心が落ち着く。お香の匂いもいいし。
そのあと、お寺の隣に建つ住職さんの家の2階に上がって窓辺で冷たく冷えた麦茶を飲む。
そこから見渡す瀬戸内海は絶景だ。
雲一つない空と青い海に漁船やテトラポット。楽しげに飛ぶ鳥たち。
僕の祖先の人たちはみんなこんな風景を見ていた。
なにかうれしいね。
お寺に行った後はおじいちゃんやおばあちゃんの所に向かう。
その年は僕より年齢が少し上のいとこのお兄ちゃんが結婚するって話で持ちきりだった。
年をとったおじいちゃんやおばあちゃんは笑っている。
お兄ちゃんの母親もうれしそう。
そして父親は、お墓参りに行こうか、と言う。
毎年のように灯篭とお酒を買う。父方のおばあちゃんがお酒が大好きだったから。
お墓に着くと母親は線香に火をつけ、姉は犬を抱いている。
父親は感慨深げにお墓を見つめてる。何を思うんだろう。
僕はお墓に乗りかかって上からやさしく水を流す。
真夏の太陽は焼けつくように暑いからね。
お酒を開け、それを供えて僕らは目を閉じ手を合わせる。
思い浮かぶ言葉は、ありがとうって一言しかないんだ。
夜はおじいちゃんとおばあちゃんの家に親戚が集まって談笑しながらお酒を飲みご飯を食べる。
楽しくてやさしい人たちばっか。
扇風機の作り出す風がその中を楽しそうに泳ぐ。

僕にはおばあちゃんの所にあずけられていた時期があった。
僕がまだまだ小さい子供の頃で、両親は忙しかったから。
おばあちゃんに育ててもらったんだ。
その頃はいつもみんなで盆踊りに行っていた。
最近は、子供たちが大人になったので行こうって話は出ないけど、今でもやっているのかな。
そんな気分になって僕は一人外へ出た。
美しい夜。
砂利道に生命力溢れる緑の木々や花々。その果実。
空は都会には比べようがないくらいのたくさんの星。
見知らぬ僕に田舎の人たちは挨拶をしてくれる。
僕は散歩したくなって山道を歩いて行く。
川が流れていて淡い光を放つ蛍が飛んでいる。
途中でお地蔵様を見かけた。誰かがお供え物をしている。
この山の守り主なんだよね。
僕はその前で腰を下ろした。
そして、森羅万象や宇宙の真理、そんな曖昧なものを心に浮かべ拝んだ。
目を閉じれば時間なんてすぐに飛び越えられる。
特にお盆の季節は僕をそんな心境にさせてくれる。
僕が後ろを振り返れば浴衣を着たあの頃のおばあちゃんがいる。
そして昔のように盆踊りに連れて行ってくれる…。
そう思い、僕はゆっくりと後ろを振り返った。
ほらね。
やさしくて大きな手は僕の小さな手を握った。
蛍の淡い光が僕らを包み込み、導いてくれる。
そして空を見上げると、あはは、まんまるお月様。
僕はうれしそうにはしゃいで盆踊り会場に向かう。
草木はとても大きく見えて、虫たちは友達。
盆踊り会場に着くと浴衣を着たたくさんの人たち。
みんな楽しそうにご先祖様と一緒に踊っている。
眩しいほどたくさんの色々な光に僕の心も踊る。
そしておばあちゃんの目を見つめる。
おばあちゃんはやさしい笑顔で僕に答えてくれる。
そして一緒に踊ってくれた。
僕らは見つめ合ってあまり喋らない。
それは心の中でたくさん話をしているから。
おばあちゃんは花火を買ってくれた。
その中の線香花火に火をつける。


パチパチとゆっくり火花を飛ばし始める。
僕はそれをじっと見つめている。
それは次第に強くなり、やがて弱くなっていき、大きな明るい光の塊になる。
そして最後に一瞬強く輝いてポトって地面に落ちる。
僕は何度も何度もそれを繰り返す。
おじいちゃん、その前のおじいちゃん、そしてそのもっともっと前のおじいちゃん。
大輪の花火も好きだけど、線香花火の方がもっと好き。
最後の一つは火をつけずに胸のポケットに入れた。
おばあちゃんは僕の頭をやさしくなでた。
「帰ろうか。」
「うん…。」
山は神様で川も神様。太陽や星や風や雷も神様。
そしてその神様はぜんぶ友達。
それは何千年も前から何も変わっていない。
神様は生きているよ。
だって見えるもん。地球に生きるものすべてを見ていてくれる。
それは祖先のみんなも同じ。
こんな僕達でもやさしい目で見ていてくれる。
一年に一度みんなに会えるから僕は毎年江田島に帰ってくる。
来年はアロハーって感じで。
僕は日本に生まれた。
八百万の神様が棲む国。
美しい自然が育んだ繊細で豊かな心。
もうマネーゲームなんてどうでもいい。
僕は日本人を信じているよ。








あっちゃんの小説より
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1273427

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