絲山秋子　（糸山秋子）コミュのジュンク堂トークセッション「絲山秋子×永江朗『エスケイプ／アブセント』をめぐって」

1月11日、池袋ジュンク堂で開催された、表題のイベントに
行ってまいりましたので少々ご報告を。

４階のカフェのセッティングを変えた会場に、６０名を収容。コーヒーや紅茶を飲みながら、楽しめるイベントで、
18時半に開場。19時開始でした。
当日の絲山さんは、ベージュのジャケットとチェックの
ロングスカートで、めがねは赤い縁のものでした。
実物は、やはり背が高くて、お顔が小さく、大きく優しい目を
されていました。

絲山さん、この日は、時間に遅れてはいけないと、愛車ではなく電車、しかも湘南新宿ラインでいらっしゃったとのこと。

取材旅行の移動で使った、新幹線はグリーン車ではなく
普通席、しかも、3人がけの真ん中に座らされた、と。
さすが、元営業です。真ん中は下座ですし、そもそも2人がけの席にするべきですよね。
それにしても、芥川賞を受賞してもグリーン車を用意して
もらえないそうです、新潮社(笑)

また、いつものサイン会にはおやじ世代の方が多いのに、このイベントについては女性が多くて驚かれていたようでした。

仕事時間は朝5時～夕方5時。最近は朝8時からになっている
みたいです。
仕事が終わったら飲みに行かれるようです。
小説家のお仕事は1日中誰とも話さないことも少なくないので、飲みに行って誰かと話すのは、やはり必要なのでしょうね。

トークショウの内容は表題のとおり「エスケイプ／アブセント」についてのインタビューが中心でした。
新刊のエスケイプ／アブセントについては以下のように
おっしゃってました。少々ネタバレもございますので、ご注意ください。

・ゲイだからといって、男なら何でもいいわけではない、ということを書きたかった。
・ゲイのドロドロ恋愛をかくのは自分の仕事でないので、
他の関係性を書きたかった
・京都弁は生粋の京都人に添削してもらった。
歌子ばあさんの京都弁のために、添削者に、はじめっから京都の人なのか、途中から京都に住んでるのか、どのあたりにすんでいるのかなど、人物像について絲山さんの想定以上に深くつっこまれて困った。
・取材旅行で比叡山に行ったとき、エスケイプのラストシーン
を最初に思いついた。
・エスケイプを書き終わったあとに、アブセントを書かなくてはならないと気づき、
がっくりきた
・アブセントの和臣はわかりやすい普通目の人なので、
沢山書く必要がなかった。
・読者にオヤジが多いので、今回はそのくらいの年齢の方に
サービスした(笑)

また、いづれ、群馬弁で小説を書きたいとおっしゃってました。群馬弁は～じゃねえよぉ！！と怒ってないのに怒っている
ように聞こえるらしいです。

その後、会場からの質疑応答にこたえていただけ、
トークショウ自体は、20時半くらいに終了。
その後、ジュンク堂で絲山さんの書籍を買った人むけに
サイン会がありました。

一人ひとりのファンに気さくにお話しされてて、
元営業ウーマンの片鱗をうかがえました。
サインは、宛名よりも小さいくらいで、そんなところに
絲山さんの謙虚さがうかがえました。

初めて、絲山さんを拝見したのですが、やっぱり素敵で
格好良い方で、ますますファンになりました。

他に参加された方、こちらにいらっしゃいますか？
よかったら、ぜひ感想をお聞かせください。

コメント(1)

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[1] mixiユーザー 01月18日 01:23

絲山さんの話を聞きたかった。知らなかった。残念。
なので、新刊の感想を書かせてもらいます。

絲山秋子『エスケイプ／アブセント』2006
福岡の精神病院を抜け出して九州を南下する男女の逃亡劇を一直線に描いた、2005年2月の『逃亡くそたわけ』では、実のところその逃亡の行程が示されるだけで、一体彼らが何から逃げているのかが読み取れず、気持ちが急いていることは伝わるものの、何との格闘がなされているのか、その必死さが何になるのか、いや、その格闘自体の慚愧にさえ出会うことが出来なかった。
　だが、『ニート』（2005/10）の世間から撤退するという逃亡をし続ける者への絶望的な優しさを経て、『沖で待つ』（2006/2）の表社会である会社組織の中で無意味に過ごされる人生の中で芽生えるほんのささやかな絆へのアティチュードを見つめることで、絲山秋子は、ついに、2007年の日本で、逃亡すること、いや、その逃亡の不可能を存分に自覚しつつ、ささやかな彷徨の中で出会う一瞬と当てのない独白と行動を、芳醇な物語の充実へと立ち上げてしまったと思う。
20年間“職革”をしてきてしまった男が、これまでの自分のセクト活動を捨てて、妹の託児所で働くことを決意し、それまでの一週間を旅に出て過ごそうとする。
あてもなく京都のレコード屋で、20年来探していたレコード『エスケイプ／ジュディー・ハリス　ロバート・クイン』に出会う。だが、タッチの差で別な男に買われてしまう。見た目はどう見ても欧米人であるその男は、外国語が全くしゃべれない自称キリスト教の神父で、主人公は、彼の自宅兼教会である長屋に招かれ、一緒にレコードを聴くことになり、遂にはそこに居候することになる。

この長屋に主人公がやってきて、コーヒーを入れてもらう件は、秀逸である。まるでジュネの遺作である『恋する虜』のなかで、ジュネがアラブのゲリラの家に滞在させてもらった時の描写のような、そう、いわば、「無為な歓待の時間」が不意に訪れたような印象を受ける。絲山の、今までになく極度に削ぎ落とされていながら、脱力された文章を読みながら、僕は、思わず、号泣してしまった。

「でも必死って祈ることに少しは似てないか」

『逃亡くそたわけ』の必死さが、はたして祈りへと昇華した。
そのためには『ニート』を潜り、『沖で待つ』ことをしなくてはならなかったのだ。
文句無く、絲山秋子の現在の到達点だと思う。

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