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台湾独立と日台両国安全保障問題コミュの日本とよく似た台湾の教科書問題

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                      台湾研究フォーラム会長 永山英樹

メルマガ「台湾の声」より転載。

■歴史のフィクション打ち破る教育正常化の動き

台湾では今年から使用される高校の歴史教科書が従来とは大きく変わることとなり、野党、メディアなどの在台中国人勢力が「文化大革命だ」とまで非難するほど大騒ぎしている。

何がどう変わるのか。外国人にとっては信じられないことだが、台湾では中国人支配体制時代の名残で、民主化以降も学校歴史教育で台湾史は、一貫して抑圧されてきたのである。だからこれまで高校の自国史の教科書と言えば「本国史」(中国史)しかなかった。ところが今回、ようやくそこから「台湾史」が切り離されるわけである。そして中国史については「本国史」の名称から「中国史」に変えられ、しかも内容も国民党独裁時代以来の大中華史観が捨て去られることになるのだ。

ところがこれを中国人勢力は「去中国化」(中国離れ)だとして激怒しているのだ。例えば日刊紙聯合報などは「文化台独が進んでいる」として警戒感を隠さない。国民党のある国会議員は「歴史教科書の書き換えは、教育部(文科省)による『その国を滅さんと欲すれば、先ずその史を滅す』の言う陰謀だ」として、中華民国体制打倒の動きだと非難している。いかにも中国人らしい発想だが、物事の本質をよく弁えている。

そもそも中国史を台湾の本国史とすること自体がフィクションなのである。根本がフィクションなのだから、歴史記述もフィクションに満ちていた。だいたいかつての中国人政権にとって、歴史教育は台湾人の中国人化政策の道具に過ぎず、よって事実よりも政治的都合が優先され、歴史歪曲だらけだった。だから教科書の「去中国化」は、先進的な民主主義国家としての教育の正常化と言う大きな改革のなかでの自然の流れなのである。そしてそれが政治的歴史観を払拭し、歴史の真実を追究するものとなるのも当然のことだ。

そして中国人政権時代の旧支配者層が反撥することも、やはりまた当然なのである。フィクションの上に成り立っている中華民国体制は、これでは存立が危うくなりかねない。

このような台湾社会のダイナミックな動きについて日本での反応は鈍い。あるメディアは「民進党政権の選挙対策だ」と言った報じ方をしていたが、これはメディアとしては少しセンスが悪いのではないか。また別のメディアは、「国民党は歴史を歪曲し、思想統制を行っていると、政府に強く反撥している」との報道を行ったが、これも誤解を招きやすい。かつて歴史を歪曲し、思想統制を行って支配体制を固めてきたのが国民党であり、それができなくなった彼ら危機感に駆られた結果、起こっているのが今の騒動なのだ。

■現代教育には意味のない中国人のご都合主義史観

それにしても「文化大革命」とはよく言ったものだ。この台湾人政権と中国人勢力との論争は、まさに異文化間の戦いであり、台湾の理知的な近代文明と、中国の反理性的な前近代文明との摩擦、衝突でもあるからだ。

そこで彼らの反理性ぶりを見てみよう。今回教育部の指導の下で出版された各社の教科書の記述のなかで多くの歴史用語が変更されたが、それに対する彼らの反撥の仕方には実に馬鹿馬鹿しいものがある。

まず「中国史」の方だが、そのなかで特に反撥が大きいのは、「国父孫中山」(中華民国の父・孫文)が「孫中山」などに変わったことだ。つまり「国父」の尊称が消えたといきり立っているのである。例えば中国時報(台湾の日刊紙)の社説は「国父は革命で清国を打倒した政治指導者として台湾の民衆に受け入れられている」として、「国父」防衛に必死である。それはそうであろう、そもそも孫文が「国父」に祭り上げられたのは、一九四〇年になってからのことだ。汪兆銘の南京政権が誕生したとき、蒋介石の重慶政権が自らの中国政権としての正統性を証明するため、孫文を担ぎ上げたのだ。今日でも中華民国の正統性を主張したい勢力としては、「国父」だけは絶対に死守しなければならないのである。だがそのような中国人のご都合主義史観など、台湾人の現代教育にどれほどの意味があると言うのだろうか。

ちなみに台湾ではまだあまり知らされていないが、孫文が清国打倒の辛亥革命を指導したと言うのは事実に反していることは、ちょっと調べてみればすぐにわかることだ。革命勃発当時、孫文はアメリカにいて、計画にも実行にも関与していなかったのである。このような作り話が生んだ「国父神話」などに、なぜ台湾人は一々付き合わなければならないのだろうか。

辛亥革命の発端となった一九一一年の武昌の反乱事件に関しても、従来の「武昌起義」から「武昌起事」に変わり、これを中国人勢力は「起義とは正義の戦いを意味するもの。変えてはならない」と叫んでいるが、教育部(文科省)はあくまで中立的な用語である「起事」(挙兵)を採用して、「清国打倒は正義」と断定するのを避けたわけだ。だが「武昌起義」の十月十日を誉ある中華民国の国慶節と位置づけ、台湾人の思想統制を行ってきた中国人にとり、やはりこの用語変更は深刻なものがあるのである。

以上は捏造だらけの中国国民党史観が払拭されたと言う話だが、その他には「秦の始皇帝が六国を併合して滅亡させ、天下を統一した」との従来の記述から「天下統一」が省かれ、あるいは漢の匈奴に対する「征伐」や「征討」が「攻撃」に代わるなど、大中華の天下中心史観、民族優越史観の否定も行われている。もちろんこれらにも中国人勢力は噛み付いているが、台湾の現代社会においては、そのような前近代的な中華帝国史観など、否定されない方がどうかしているのだ。

■歴史捏造を見破りつつある台湾人学者たち

なお、支那事変に関する記述で、かつて一ページにもわたって大きく取扱われてきた「南京大虐殺」について、教科書によっては数行しか記述されていない、あるいは全く言及さられていないことも大きな問題になっている。これについて教育部は「中学校ですでに教えているので重複を避けるため」と説明するだけで、争議を恐れて多くを語ろうとしない。そこで聯合報などは「南京大虐殺は中国人にとってだけでなく、全人類にとっての歴史なのだ。中学で教えたから高校で教えなくていいと言うなら、台湾史も中学で教えるのだから、高校では教える必要はないのでは」と食らいついた。

ではなぜ南京大虐殺の扱いが小さくなったのか。台湾の歴史研究者の間で虐殺否定論が浸透しているとは思えないが、ただ少なくとも教育部が、南京大虐殺への非難を中心としてきた反日洗脳教育のようなものを否定しようとしていることだけはたしかである。 そうしたなかで教科書審査委員の黄徳宗氏が、「国民政府が日本軍の進攻を阻止するため、自ら黄河を決壊させてもたらした死傷者の人数は、南京大虐殺よりひどかった。こうした戦争の話を全て盛り込んで公平と言える」と述べ、南京大虐殺を重視していないと騒ぐ人々を批判したことは注目してよい。

この蒋介石の命令による黄河決壊作戦で死んだ住民は百万を超え、その後もその後遺症で飢饉が続き、夥しい数の餓死者を出している。国民党は当時から戦後に至るまで、これを日本軍の仕業と宣伝し続けてきたが、台湾人の研究者たちはすでに中国の歴史捏造を充分に見破っているのであり、いまだメディアや教育界が中国人勢力に牛耳られているなか、こうした人々の良識ある歴史認識が今後さらに広まることが期待される。

■歴史真実の前で為す術を持たない中国人

 「台湾史」の方では、日本統治時代の呼称を「日拠」(日本の占拠、占領)から「日治」(日本の統治)に変わったことが大きな問題となっている。従来の「日拠」とは、日本統治の不法性を強調し、当時の時代を全面否定して、「台湾は古来一貫した中国の領土」であると宣伝するための政治的造語であるから、これは否定されて当然だ。なぜなら日本の台湾統治は、下関条約に基づいた合法的なものだからだ。だから中国人学者たちは「日本の植民地美化するもの」「日本の右翼の願望と合致している」「最も台独の論述と一致している」などと意味不明の反論は行っているものの、事実関係を争うだけの力は持っていない。つまり彼らは歴史の真実の前では、何ら為す術もないと言うわけだ。

日本統治時代に関する記述内容が、日本人の功績も公正に紹介するなど、非常に客観的なものになっていることは、すでに日本でも報じられているが、十年前に中学歴史教科書「認識台湾」が登場したときのように「親日教科書だ」などと言ったヒステリックな非難があまり聞かれないのは、そうした感情的な反日一点張りの歴史観など、もはや当時の時代の研究が進んでいるこの国では通用しにくくなっていると言うことだろう。

中国人にとって「歴史」は人民支配の道具ではあるが、高度な文化レベルを持つ台湾人には無効だと言うことを、この一事は教えてくれる。中国人が大騒ぎをするのは、実際にはそうした焦燥感からなのである。 従来の「我国」「本国」「大陸」と言った用語が「中国」に変わったことも攻撃対象になっている。だがここまで来れば中国人勢力と言うものが、「中国離れ」を望む台湾の圧倒的な民意に反する存在であることがわかるはずだ。そのような勢力に無批判に票を入れようとする有権者は、まずこうした点に着目しなければならないはずである。

またこれまでカイロ宣言が中華民国の台湾接収の法的根拠とされて来たことに対し、台湾接収は連合軍の第一号命令に基づくものであり、サンフランシスコ条約や日華平和条約によって台湾の法的地位は未定であるとの歴史事実が教科書に明記されるようになったことは注目に値する。なぜならこれこそが国民党、共産党と言った中国人たちの台湾領有権の主張宣伝を根底から突き崩すものであり、これが台湾社会で常識として定着すれば、「去中国化」は達成できると言っても過言ではないからだ。

「白色テロ」と言う言葉が初めて記載されるようになったことも画期的だ。これなくしては戦後史は絶対に語れないからだ。今回これが実現したことは、ようやく「歴史」が中国人の権力者層から台湾国民のものへと移行したことを示している。白色テロの歴史を何としてでも隠蔽したい中国人勢力としては、これは大変な脅威となっているはずだ。

■中国の歴史歪曲に立ち向かう杜正勝教育部長に学べ

在台中国人勢力の教科書非難の動きには、もちろん中国政府も呼応し、反対キャンペーン、恫喝キャンペーンに乗り出している。たとえばメディアは台湾の議員、メディアの反対発言を盛んに取り上げている。国務院台湾事務弁公室のスポークスマンも、「台湾当局は台独思想教育を行おうとしている」と強く批判している。文匯報は「陳水扁は頑固な台独分子を教育部などに起用し、文化台独、教育台独を全面的に推進し、大陸と台湾の紐帯を断ち切り、島内の中国アイデンティティを弱体化しようとしている」とし、「島内の歴史学者たちが強烈な抗議を行っている」と、中国人勢力の援護射撃を行った。

つまり歴史問題を巡る国内の反日勢力と中国政府との連携と言う構造と全く同じものが、台湾内部の反台勢力と中国との間でもできあがっているのである。聯合報が「歴史改竄の悪行は異族の軍国主義者(「侵略」を「進出」に書き換えたとされる日本の文科省を指す)だけのものではない。台湾の教育部もやっているのだ」との論評を掲げたのは、何とも象徴的である。

このように、台湾の良識的な歴史教科書の出現は、国家の将来をかけた中国人の歴史歪曲への挑戦と位置づけることができる。よって同じように歴史問題で中国に振り回され続ける日本人もまた、もっとこの問題に関心を寄せるべきではないだろうか。そしてその意味からも、中国人勢力からの集中砲火を浴びながら、着実に教科書改革を進行させる杜正勝教育部長(文科相)には敬意を表さなければならないと思う。(19.2.13)

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