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緒方貞子 [コミュニティ]コミュの国際協力50周年 未来に続くきずな 2004年10月号

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2004年10月号 特集◎国際協力50周年 未来に続くきずな

緒方貞子JICA理事長のメッセージ

2004年10月、日本の国際協力が始まって50年目を迎える。
同時に、独立行政法人として生まれ変わったJICAの1周年でもある。
緒方貞子理事長が、この1年間を振り返っての感想と2年目に向けての抱負、そして国際協力50周年にあたってのメッセージを、読者の皆さんに届ける。

Sadako Ogata

【略歴】1927年東京生まれ。聖心女子大学卒。ジョージタウン大学で修士号、カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得。76年より3年間、国連日本政府代表部公使、特命全権公使を務める。上智大学教授を経て、91〜2000年国連難民高等弁務官として難民支援活動に取り組む。01年より「人間の安全保障委員会」共同議長。同年11月アフガニスタン支援日本政府特別代表に就任。02年1月アフガニスタン復興支援国際会議の共同議長を務める。03年10月独立行政法人国際協力機構(JICA)理事長就任。


「日本と世界の平和と安定のために、国際協力の役割を真剣に考えてほしい」

新生JICAの1年を振り返って
もう1年が経つとは早いものですね。JICAは私が理事長になる前から、独立行政法人になるにあたって積極的に組織を改革していこうという機運が高かったのですが、私が来たことで、それに弾みをつけ、形にすることができたように思います。その改革の柱が「現場主義」「人間の安全保障」「効果・効率性と迅速性」の3本です。

独立行政法人であるということは、それまでの日本の開発援助の実施機関として政府の政策に沿って決まったことを実施していくという姿勢ではなく、開発途上国の人々が求めているものをより的確に把握し、それに沿って事業を展開していくことが課題になります。そのため、現場との接点をもっと密にしていかなければなりません。

新生JICAの1年目の課題は、その「現場主義」の方針を組織的にどう具体化していくかでした。そしてそれは今、形になりつつあります。現場の知見を生かした政策立案能力を高めるために、人員、権限、業務などのシフトを行う基盤が、各国のJICA事務所でつくられています。さらにそれをサポートするために、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、大洋州の各地域の拠点となる地域支援事務所がケニア、セネガル、タイ、メキシコ、フィジーに設置されました。そこにはそれぞれの地域に強い専門家が派遣され、地域的なニーズに沿ってプログラムの形成などのアドバイスを行います。また、南アフリカ事務所はアフリカ全事務所に対して経理・調達の支援をすることとしました。このような制度が出来上がりましたので、具体的に実行していくことが2年目の大きなチャレンジです。

現場にはたくさんの専門家や青年海外協力隊がいますが、彼らの持つ知識が、「現場主義」のベースになっていくでしょう。その知識をJICAの事業にどう生かしていくかということも含めて、それぞれの役割を改めて考える必要があります。

日本の協力は、日本の経験を重視したものですが、相手あっての“協力”です。それぞれの国の長所や短所、そして何を求めているかを把握できてこそ、日本の経験も生かされるはずです。

一方、「人間の安全保障」は、その概念を具体的な事業にどう反映させていくかが課題になっています。大切なのは、人々やコミュニティーに焦点をあてること。さまざまな分野で行われているJICAの事業をそのような視点で評価する作業を進めています。同時に、政府の能力、ガバナンスの強化も重要ですから、それらをどのように一体化していくか、実際の事業とあわせて考えていく取り組みも始まっています。

「日本の繁栄と安全は、国際社会の相互依存によって成り立っています。
開発援助は豊かで平和な社会を共につくっていく重要な手段であることを再認識すべきです」

2年目のチャレンジ

青年海外協力隊員が活動しているキリギティ女子更正施設を視察する緒方理事長(ケニア)。理事長は今年4月下旬〜5月にかけて、ケニア、エチオピア、セネガル、南アフリカを訪問し、JICA事業の現場を視察。「人間の安全保障」の視点を反映させつつ、アフリカに対する協力を強化していく必要性を確認した
今、2年目に向けて進められているのが国内で行われている事業の見直しです。JICAは国内に19の機関を持ち、さまざまな事業を行っています。その中心が途上国から研修員を受け入れる事業です。現場重視、在外事務所の強化、人間の安全保障、アフリカへの協力を重視する流れの中で、国内とどう連携を図っていくか、それらの視点を研修にどう反映するかという課題があります。

また、各地の研修センターで、日本が培ってきた技術や地域独自の技術をどのように生かしていくかを整理する必要があるでしょう。

そして、もう一つの重要な役割が、国民参加の推進です。どのような形で国民を動員していくべきなのか、その調査が進められていますので、その結果を考慮しながら、具体的な方針をつくっていきたいと思います。

国際協力50年を迎えて
日本の開発援助の原点は、コロンボ・プラン※にあります。1954年に日本はドナー国、つまり援助をする国として加盟しました。しかし、当時の日本はまだ国際社会から援助を受けていました。受けながらもやはりドナーとなって共存共栄の社会をつくっていくことが大切だという認識があったからです。この原点に立ち戻ってもう一度、なぜ日本が国際協力をするのかを考える必要があると思います。

日本は、経済の面でも平和と安全の面でも、国際社会の恩恵にどっぷりつかってきたということを忘れてはなりません。「経済大国」と呼ばれるほど成長した今、今後の繁栄や安全を何に頼るかというと、やはり国際的な相互依存でしかありません。世界にはさまざまな危険があり、それらに対応する一つの方法が、希望のある豊かで安全な社会を共につくっていくということ。それはこれからも日本にとって必要なことです。その重要な手段が開発援助だということを再認識すべきです。

私は長く、難民や紛争で苦しんでいる人々の保護と支援に携わってきました。ようやく紛争を終えて、平和に向かい始めた国々が少しずつ増えています。そういう国に日本が迅速に復興の手助けをすることができれば、平和への歩みを加速することができる。このような考え方が、「平和構築」の方針として開発援助の中に現れてきたのだと思います。もちろん、援助すれば平和になるかというとそれほど単純ではありません。社会は複雑で、貧困、不公正、人権侵害などさまざまな紛争の“種”があります。そういうこともよく理解した上で行えば、開発援助は「平和」に大きく貢献できると思います。

また、日本は第2次世界大戦後、民政国家として生きていくという姿勢を示してきましたが、その手段としても開発援助は重要な役割を果たしてきたと思います。そのような日本に対する開発途上国の評価と援助を望む声は高いのです。

※コロンボ・プラン
技術協力を通じてアジア太平洋地域諸国の経済・社会開発を促進し、生活水準を向上させることを目的として、1950年1月に発足した協力機構。事務局はスリランカのコロンボ。コロンボ・プラン自体が援助実施機関として活動するのではなく、加盟各国がそれぞれ相互に協議協力を行う。日本は54年に加盟したことを機に技術協力を開始した。

これからのJICAの役割

セネガルでは、日本の協力によって設立された日本・セネガル職業訓練センターを訪問した
JICAが取り組む国際協力が評価され、認められるには、まずきちんとした実績をつくっていくことが大切です。もちろん、間違いが起こることもあるでしょう。その場合はすぐにそれを是正し、改善していく。そうすることで今度は、JICAが行っていることを国民に伝え、国民の支持を受けていかなければなりません。そしてできればそのプロセスにたくさんの国民が参加してほしいと思います。その手段として、青年海外協力隊はとても重要です。これからの日本に大きな影響を与える若い方々が、世界各地で活動しています。現地を視察したときに彼らと話す機会がありますが、本当に大変なものです。日本人が一人もいないようなところに行って、現地の人々とともに問題解決に取り組む。その中で彼ら自身もさまざまなことを学んでいます。

年配の方々を対象に、人生において培ってきた技術や経験を途上国の人々のために役立てる、シニア海外ボランティアもあります。そのようなボランティア事業から得られる知恵を、開発教育をとおして日本の社会に広めていくことも大切です。特に、現職の先生方の参加をもっと促進したいと考えています。先生方がボランティアに参加することで得られる経験は、先生自身にとってだけではなく、日本の子どもたちにとっても教育的な効果がとても高いと思います。

そのような国内での開発教育の取り組みや国際協力を広報しようとする動きは、以前よりも活発になっていますが、この50周年を機にもっと広げていきたいと思います。

日本の社会には、人の役に立ちたい、一緒によいコミュニティーをつくりたい、という考え方が伝統的にあると思います。いわば国際協力は日本の文化です。そのような意識が広く根付いていくよう働きかけていきたいと思います。

実際、若い方々の間では関心が高まっており、国際協力の分野で働きたいと思う方も増えているようです。人生のどの時点で、どのような形で国際協力にかかわることができるのか、キャリアとも絡めて考える必要がありますが、JICAとしてもさまざまな形で応援できればと思います。

日本では経済が低迷し、どうしても内向きになってしまいがちです。ほかの先進国でもそのような傾向にありましたが、さまざまな理由で見直す動きが起こっています。特にテロのような問題は内向きでは対応できないということで、欧米ではODAを増額し、積極的に貧困対策に取り組んでいます。もちろん、貧困がテロを生むという短絡的な考え方はできませんが、貧困対策がその国に平和と安定をもたらし、中長期的には自国の安定につながっていくという認識が生まれています。

日本ではまだそういった認識が低いように感じます。経済が悪化するにつれてODA予算も削減され続けていますが、50周年を機に、本当にそれでいいのかどうかを真剣に皆さんに考えていただきたいと思います。

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