サンズ・オブ・チャンプリン(The Sons of Champlin)は1966年から1977年まで活動を続けたサンフランシスコ出身のバンド。《サマー・オブ・ラヴ》、あの時あの時代、サンフランシスコが世界のポピュラー音楽の中心だった時代においてジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、クィックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス、モビー・グレイプ、ビック・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー、スティーヴ・ミラー・ブルース・バンドといったバンドと共に当時のベイ・エリアを盛り上げていたバンドだった。残念ながら私も含めて当時の西海岸の状況を体感していない世代の洋楽ファンは当時のサンフランシスコ出身のサイデリック・ロック・バンドというとジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、ビック・ブラザー(というよりジャニス・ジョプリン)といったバンドを真っ先に連想するのが普通で当時から洋楽を聴いていた世代の人以降の音楽ファンが通常サンズ・オブ・チャンプリンの名前を真っ先に出す事は少ないだろう。
サンズ・オブ・チャンプリンの母体はビル・チャンプリン(1947年カリフォルニア州出身)とテリー・ハガティ、ティム・ケインらで結成されたオポジット・シックスというハイ・スクール・バンド。このオポジット・シックスの3人を中心に1966年頃からサンズ・オブ・チャンプリンと名乗って音楽活動を開始している。彼等の最初の作品「Loosen Up Naturally」が発表されたのが1969年。シングル「Sing Me a Rainbow / Fat City」でもその前年の1968年。名乗り始めて結構時間が経過しているが、当時のコミューンの精神を土台としていたバンドだっただけに、なにもかもが自由な精神を元に運営されていたらしく、それがたたってメジャーからのアルバム・デビューが遅れてしまったようである。ホーンを盛り込んだロック・バンドというと即座にシカゴの名前を連想するが、彼等もまた早い時期からホーンを自身のサウンドに果敢に導入していたバンドだった。その後の2作「The Sons」「Follow Your Heart」はサンズと短く改名された新バンド名で発表されている。
ビル・チャンプリンを始めとするサンズ・オブ・チャンプリンにプロとしての自覚がなかったのかは定かではないが、彼等はデビュー当初から風の吹くまま気のむくままだったようで、ツアーやアルバムのプロモーションなどにも非積極的・非協力的だったらしい。活動当初から米英の同業他者の間では彼等の音楽は極めて評価が高かったようだが、彼等が実力の割りには一般受けしなかったのもこの辺の諸問題が影響してきたのかもしれない。この後自主制作盤「Minus Seeds and Stems」、フィルモアでのライヴを収録したコンピ「Fillmore:The Last Days」を経て1973年に新作「Welcome To The Dance」を発表するが、ここでは再びサンズ・オブ・チャンプリンと名乗っている。この後の「Sons Of Champlin」(1975年)は自主レーベルからの発表だった。となればレコード会社とこれまでギクシャクしてきたのも、アーティストにありがちな遠慮会釈ない主張と利益を上げる事を最大の目標とする会社側との確執の結果だったのかもしれない。
しかし、このサンズ・オブ・チャンプリンによる自主レーベル運営はうまくいかなかったようだ。彼等はこの後アリオラ(Ariola)と契約を結び「A Circle Filled with Love」という新作を同レーベルから1976年に発表している。レコード会社によるプロモーション活動も巧くいったのか、同アルバムから発表されたシングル「Hold On」は全米47位を記録、アルバムも最高117位を記録した。この記録、華々しい活躍を見せるスター・バンドに比較すると特段どうってこともない成績だが、これでも彼等の長い音楽活動歴の中では最高の成績だった。翌1977年にもサンズ・オブ・チャンプリンは同レーベルからの通算2作目となる「Loving Is Why」を発表するが、リーダー格のビル・チャンプリンは最早これ以上バンドを継続される事になんの未練もなかったようである。1960年代の半ばから続いていたサンズ・オブ・チャンプリンの歴史は幕を閉じ、ビル・チャンプリンはソロとして活動を開始する。そしてシカゴに参加だ。
上でも書いたようにシカゴ参加後はバンドの中心人物として1980年代以降の同バンドにとって欠かす事の出来ない重要人物の1人として活躍する。ソロとしては「Singles」「Runaway」といった作品をシカゴ参加以前に発表していたが、シカゴ参加以降は暫くはソロ活動を控えていた。が、1990年代に入るとソロ活動を再開、「No Wasted Moments」「Burn Down The Night」「Through It All」「He Started Sing」といったソロ作品を発表している。そして1997年、シカゴの一員として音楽の歴史の中に名前を残す事になったビル・チャンプリンはなんとあのサンズ・オブ・チャンプリンを再結成させた。「Live」(1998年)は再結成されて行われたライブの模様を収めたもの。これ以降も「Secret」「HipLi'l Dreams」といった復帰作をこれまで発表している模様である。ちなみに「Fat City」という作品もあるが、これはメジャー・デビューする以前に吹き込まれた未発表音源を中心にした編集盤。