謎は全て解けた！！かも。コミュの３分で読めるミステリー

『構成と概念の普遍性』

　ふと、夏の暑さに邪魔されて夜中に起きてしまった。

　マイケルは眼鏡をかけて一階のキッチンへ水を求めに行った。冷蔵庫には冷えたミネラルウォーターが入っている。マイケルは、普段はしないラッパ飲みで、水を喉に流し込んだ。冷たい刺激が食道を走っていくのが分かる。あらかたを飲み干してしまうと一気に全身から汗が吹き出してくる。それを服で拭おうとしたとき、どこからか冷たい風が入って来るのに気付いた。汗をかいていた事もあって余計に冷たく感じられた。その風はどうやら窓を開けっ放しにしておいたリビングからのようだ。

　いい風が吹いてるじゃないか。と、マイケルは玄関から外に出た。
　マイケルの住むこの村は森に囲まれていて、電気も役所と駐在にしか通っていないような田舎だ。今、通電工事真っ只中で来月にはマイケルの家にも通るが、マイケルはあまり喜々として喜ぶ事は無かった。
　なぜなら、マイケルは今のこの現状の村に満足していたからだ。都会の喧騒から掛け離れた完全自給自足のこの生活が、マイケルにとっては最高の幸せだったのだ。なにより、マイケルはこの村から見える夜空が好きだった。満天の星空、今にも落ちてきそうな星達はどんなシャンデリアより美しいと思っていたし、月明かりでする読書は都会では決して経験できないマイケルの自慢だった。

　今日は残念ながら曇りだが

　明日は雨らしい。珍しく湿気が多く、寝苦しいのはそのせいだろう。だが、家の中よりかはいくらか涼しいので、マイケルはしばらく外に置いたベンチで涼むことにした。深く雲に覆われたせいか、直ぐ向かいのジョンの家すら見えない。暗闇に目が慣れても輪郭がぼんやりと分かる程度だった。

　ジョンの家を憮然と眺めていると、二階の明かりが不意に点いた。おや？明かりの点いた部屋はジョンの子供部屋だろう。子供がこんな時間に起き出して何をしようというのだろうか。マイケルは少し興味が沸いて、悪いと思いつつ見守ることにした。子供がロウソクの前を行き来しているのか窓のカーテンにちらちらと影が映る。かなりせわしなく部屋を徘徊しているようだ。何をしているのか、ベンチからは解らなかった。

　そうやって、しばらくジョンの子供部屋の窓を眺めていると風の音に混じり何か機械の音がした。それは、すぐに車だとわかった。この村の真ん中を通る道は離れた都市を行き来するときには通る道なのだ。今は高速が別に出来て車は減ったが、下道を通る輩は今もいる。エンジン音が近づくにつれ車のライトも見えはじめた。

　カランカラン

　車に気を取られていると、ジョンの家のドアが開いた。去年のクリスマスにマイケルが作ってあげたベルが鳴ったのだ。出て来たのは誰かは分からないが、いつの間にか消えていた子供部屋の明かりから、マイケルはジョンの子供が出てきたのだと思った。と、同時くらいにマイケルはベンチの裏に隠れた。なぜそんなことをしたのか自分にもわからなかったが、咄嗟に見つからないように努めてしまった。

　車はついに地面を駆ける音まで聞かすほどに近くなり、この暗く静かな村にはまるで戦争でもやってきたかのようだ。車は村に入った。眩しいライトがマイケルを照らす。一層隠れるようベンチにピッタリとくっついた。車はマイケルより若い男が運転していた。その車のライトはジョンの家も照らした。玄関にはパジャマを着たままの子供がいた。まるで寝ているような穏やかな顔をしている。

　車は、悪びれもせずこの静かな村に騒音をもたらし、去っていった。マイケルは立ち上がった。今の明かりでジョンの子供に見つかったかもしれないし、第一隠れているのは、やはり、変だ。ジョンや、ワイフも今ので起きたかもしれない。

「やぁ、こんな時間にどうしたんだい？」

　返事がない。マイケルは道を横断しジョンの家に近づいた。暗く周りも見えないが、人のいる気配がしない。玄関は閉まっているから、家に入ったのならばベルが鳴るはずだし、車のライトに当たって見えていたときから１分も経っていないから遠くにも行けないはずだ。車の音にベルが掻き消されたかもしれない。マイケルは玄関を叩いた

「ジョン！君の子供は今どこにいる！？」

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意図して、２ヵ所『ありえない』事が書かれています。

難易度は初級と中級。こういうのは気付けるかどうかが重要だと思います。

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