[我部氏の陳述]今回公開を求める3文書の中核は、アメリカ側は沖縄返還に伴う費用負担を全く行わないばかりでなく、沖縄の米軍基地の返還において、移転に伴う費用に加え日本本土にある米軍基地の施設改善費を日本側に支出させることにあったという点です。…交渉の結末は、アメリカ側の提示した基地返還に伴う移設や基地内の施設改善のための費用を軸にして他の項目も一括で支払う(lump sum payment)とする政治決着で日米が合意しました。それは、佐藤首相の訪米直前の1969年11月12日です。その合意に際して、沖縄返還の財政交渉に終始かかわっていた当時の福田赳夫・大蔵大臣が口頭で覚書を読み上げています。 …(これまで述べてきたように)日本側とアメリカ側が署名している合意文書が(アメリカ国立公文書館などに)存在しているのです。明らかに、日本の外務省や財務省にも同一の合意文書が存在しているはずです。政権を担当し、政策を実施すべき政府が、外国政府との間で自ら合意した取り決めを軽視することは、国民の利益を無視することです。政権の都合と国民の利益のいずれかを優先すべきなのかという基本姿勢を理解しえない政府だとすれば、国民の信頼は消滅します。たとえ当時の政権にとって好ましくない合意であったとしても、「知る権利」「政府の透明性」を高めて、国民信頼をかちとり、そして日本の外交の現実を知らせることこそが国民の正確な外交判断を促していくものだと確信しています。