-INTRODUCTION from ILL BOSTINO- THA BLUE HERBのトラックメーカーとして、全作品のビートを手掛け、世に放ち、その唯一無二なセンスで多くのフォロアーを置き去りにしながら突っ走ってきた男、O.N.O。昨年春のTHA BLUE HERBの5年ぶりのアルバム「LIFE STORY」においてはこれまでの無骨な荒々しさに加え、洗練の領域にまで自身が足を踏み入れている事を作品において証明しました。「LIFE STORY」発表後始動したTHA BLUE HERB本体のライブの活発化と共に、自らもO.N.O名義でソロライブを再起動。ソロ活動においては、それまでの本業であったMCのバックトラックという制限から解放された、よりシンプルなダンス・ミュージックの追求に重点を置き、テクノ・フィールドのDJ、アーティストとの交流、共感、共鳴を経て、その進化を夜毎繰り返してきました。「MACHINE LIVE」と名付けられた活躍の場は、METAMORPHOSEや渚音楽祭などの大型野外フェスを始め、JUAN ATKINS as MODEL500のJAPAN TOUR、そして列島各地のクラブ、ライブハウスと場所を選ばず、積み上げた複数のハードマシンを体で縦横無尽に操り、走らせ、叩き、その場の空気を取り込み、抜き、差し、真夜中のダンスフロア―に絶叫と熱狂を巻き起こしてきました。
ライブ活動の充実と共に、今回のソロアルバムの構想は早々に立ち上げられ、練られていきました。ライブで鳴らされていた楽曲達は、全てTHA BLUE HERBの曲ではなく、ライブのために創られた曲、新曲でした。それらはライブの度に壊され、検証され、再構築され、強度を増していきました。これを50ヵ所、つまり50回繰り返し、生き残った楽曲達だけが最終的な完成の場、つまりレコーディングへと辿り着いたのです。ライブ用に創られ、ライブの場で試され、ダンサー達の歓声に磨かれ、そしてレコーディングされるというユニークな制作方法で築かれたこれらのビートは、バックグラウンドを反映して、非常に肉体的です。MCの乗せる言葉を後ろから支えるというTHA BLUE HERBにおけるポジションとは異なり、言葉を用いず、かつ言葉では表せない感情を聴き手に想起させる力、そして聴き手それぞれの自由な解釈に耐えられる力に満ちたインスト作品集が完成しました。