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神山博のショートストーリーコミュの#102 罪

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 「泥棒」と叫ぶ声がしたのでそちらに目をやると、男が白いウササギを追いかけていた。
 ウササギはそのくちばしに何やらくわえていた。その重みのせいか、翼をバタつかせるもののなかなか高く飛び上がることができず、地面すれすれを走るようにしてこちらへ向かってくる。
 「そいつを捕まえてくれ」と男が叫ぶが、周囲の人々はそれに応えようとはしない。
 じきにウササギが近づいてきて、私の横を通り抜けようとしたのでとっさに手を伸ばすと、その頭から伸びる一対の長い飾り羽を掴む事ができた。
 しかしそれでもウササギの勢いは止まらない。そのまま私の後方へと走り去り、気づくと私の手にはウササギの頭から抜け落ちた飾り羽だけが握られていた。
 それを見た男が、今までウササギを追いかけていたのから一転、私を指差して叫んだ。
「アンタ何やってんだ。ウササギの飾り羽は抜いちゃダメだろう」
 男の為を思って手助けをしたつもりなのに、何故か私が責められてしまった。
「確かにウササギは俺の大事なものを奪って行ったが、だからってウササギの飾り羽を抜くのは法が許しちゃくれないぞ」
 そんな大げさなものだろうかと悠長に構えていると、ほどなくして私の許に警官がやってきて
「ああ、しっかり握ってるなあ。これじゃ言い逃れもできんぞ」
 と、飾り羽を取り上げた。
「でも、もとはと言えばウササギが物を盗んでいったんで、私はそれを捕まえようとしただけなんです」
「ああ。それでもウササギの飾り羽を抜くのは犯罪だから、それは償ってもらわねば」
 どんな弁解を重ねても私の行為は犯罪であることに変わりはないらしく、それでようやく周囲の人々がウササギを捕まえようとしなかった理由がわかった。
 ウササギの飾り羽というのは簡単に抜けてしまうような物だったのだな。

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