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色いろコミュの物語りと色

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宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』を読みますとその中に出てくる色の多さに驚きます。「白い」巾をかぶって眠っている病気のお母さんが登場するシーンの前には「紫色」のケールがでてきますが、「紫色」といえば病気をイメージさせる色と何かの色彩心理の本に書いてありました。カンパネルラの服の色につきましては物語りが進んでもなにも書かれている箇所はないのですが、最後の場面で『ぬれたように「まっ黒」な上着をきていた..』と表現されています。宮沢賢治は物語の中でなにかの意味を伝える手段として、色による表現「カラーメッセージ」というのでしょうか、そういうテクニックをとっているように思われます。

物語の序盤には牛乳の「白」や生徒の影の「黒」のようにモノトーンで構成されているのに、死の世界のはずの銀河鉄道の場面では逆に色彩豊かに表現されているのも興味深いものがあります。

カンパネルラがお母さんがいると叫んだ野原は「白く」けむっているのですが、その次のシーンには電信柱が両方から腕を組んだように「赤い」腕木をつらねて現れてきます。賢治はこの赤い色をカンパネルラが消える予兆としてのカラーメッセージにしています。

一つ不思議なことは、銀河鉄道のはじめのシーンではシートの色は『「青い」ビロウドの座席』でしたのが、カンパネルラがいなくなった後では『「黒い」ビロウドばかりひかっていました』に変わっていることです。ここにも宮沢賢治のカラーメッセージが含まれているのかもしれません。

宮沢賢治の作品の中でも色がはっきりと表現されている作品があります。それは『台川』です。

『校長はふとってまっ黒にいで立ちたしかにゆっくりみちばたの草、林の前に足を開いて投げ出している。〔はあ、では一寸行って参ります。〕木の青、木の青、空の雲は今日も甘酸っぱく、足なみのゆれと光の波。足なみのゆれと光の波。粘土のみちだ。乾いている。黄色だ。みち。粘土。小松と林。林の明暗いろいろの緑。それに生徒はみんな新鮮だ。そしてさうだ、向ふの崖の黒いのはあれだ、明らかにあの黒曜石の dyke だ。こゝからこんなにはっきり見えるとは思はなかったぞ。』

宮沢賢治:台川 [青空文庫]
http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/4416_9669.html

宮沢賢治以外の小説では北原白秋の『日本ライン』も色彩豊かに表現されています。『高瀬舟の船尾には赤の枠に黒で彩雲閣と奔放に染め出した』や『それに泡だつコップのビール、枝豆の緑、はためく白いテントの反射光だ。五日の午後一時、昨日すさまじい濁流はいくらか青みを冴え立たして来た』初めの方からさまざまな色が登場しています。

北原白秋:日本ライン [青空文庫]
http://www.aozora.gr.jp/cards/000106/files/4639_15645.html

「ここで使われている色にはどのようなメッセージが込められているのだろう」や「この色が表現されていることからこんなイメージが想像できるなぁ」と色を意識しながら小説を読まれるのも面白いのではないでしょうか。

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