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詩書きの会コミュの嘉瀬川アーカイブ

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コメント(35)

やさしい雨



春の雨は心地が良い


可憐な涙が降りてくるようで
静かなジャズが流れるようで

乾いたこころに沁みてくる


このままずっといつまでも

紡ぎ出る雨音を聴いていたい
やさしい雨に打たれていたい





               〈20060430〉
しあわせになる方法



泣き顔をみると悲しくなる
憂いを知ると、緊張が走る
そしてため息は
ときどき人を息苦しくする


水面に広がる波紋のように
手を差し出せば握り返すように

ひとのこころは、ひとに伝染る

だから


笑顔をみると、嬉しくなる
陽気さを知ると元気になる

そして
やさしい眼差しは

ひとを一瞬、しあわせにする






               〈20060503〉
家族の灯


 
夕暮れ刻の帰り道

オレンジ色をした
家の明かりに目を奪われる

家では父と子がくつろぎ
母は夕食の支度をする


あの頃の日常が
二十数年の月日を経て
しあわせだったと思い起こす


家族の灯のあたたかさも
オレンジ色の懐かしさも
子供の頃の、無邪気さも


振り返る今が
なぜか色褪せている







               〈20060602〉 
あじさい




初夏のあじさいから
聴こえてくる

あつまった、珠玉の花は
生命と鼓動が、脈を打ち
雨に打たれて頭を揺らす


雨の旋律に合わせるように
灰色の景色に溶け込むように

揺れる鎮魂の鈴の音が
今、静かに鳴り響く






               〈20060620〉
ほたる舞う



漆黒の、ゆらめく水面から
かなしみだけを吸い上げて
ほのかに危うい光を放つ

蒼白く光る、嗚咽が
闇に寄り添う静寂が

信号のように
呼吸のように

静かに瞬き
放射する


川のほとりで
ほたる、舞う





               〈20060630〉
あさがお



漆黒の静止した空間から
透明の、流れる呼吸へと

刻の移ろいはかたちとなり

青い蔓は、細い指先のように
明かりを求めてつたい伸びる


静から動へ
鼓動から誕生へ

眠りから目覚め
静かに放射する


あさがおが今、花ひらく





               〈20060720〉


炎ゆらめくとき



今年もまた
姿を見せる

手のひらのなかで
ゆらめく炎が

ひとを弔う
鎮魂の灯が


いつか来た道に戻らねように
あやまちを繰り返さぬように

ひとのこころの灯台になる


忌まわしい歴史を
静かに照らし出す





               〈20060805〉
ラジオ



そこには
楽しい音楽も
明るい笑い声もない

ただ
静かな夜に
静かな声が

言葉の切れ際の余韻と共に
淡々と、耳へと運ばれる

ただ
ひとの息遣いと
ぬくもりと
やわらかい空間を

味わうように聴いている





               〈200608012〉
M idnight run / ミッドナイトラン




夜の闇を、疾走する


漆黒と共に絡みつく

過去も
不安も
絶望も
未来も
ゆめも
希望も

四つの車輪で
轢き潰しながら

すべてを振り切り
また受け入れる


この世界の向こう側まで
闇夜の奥の果ての先まで

ただ、アクセルを踏みしめる
ただ、夜を、駆け抜けてゆく





               〈20060812〉
あかい月




うだるような暑い夜に
月を観た

妖しく絡みつくように
赤銅色に光る血潮が

漆黒の闇夜に
脈打ちながら、流れ出る


僕たちを
ひとの歴史を
ちきゅうがまわるさまを

天空から
じっくりと
あかい瞳がみつめている






               〈2006820〉
落陽




それは
すべてを包み込む蜜のように
溶けゆく感傷の化身のように

なつかしさと憂いを
満面にたたえながら

よろこびも
かなしみも

すべてを呑み込みながら
ゆらゆらと降りてゆく


今日を、ゆっくりと
引き降ろす





               〈20060827〉  
夜間飛行




眼下に臨む、ひかりの河は
地に咲く夜景に、流れゆく

ひとが創りし、不夜の灯は
闇の谷間に、繚乱し
沈潜の情事を照らし出す

滋味溢れる風に乗り
ただ、それを覗きみる

夜光虫のように
うごめくさまを

淫靡に交わる
光と影を
 

ただ、見下ろしている





               〈20060913〉
暗い星




ひとのいのちが燃え尽きたとき
天空の星になるという

僕が、死んでしまっても
一等星にはなりたくない

誰かの願いを、叶えるような
ひとの希望を託されるような

僕には、そんな価値はない


静かな闇につつまれて
黒い羊水に満たされて


よぞらに眠る、星になる
いちばん暗い、星になる





               〈20060924〉 
ゆめ




たとえ見果てずとも
それが、叶わずとも

絶望と苦痛にまみれても

終末へと行き着く長い道のりを

夢見ずには歩めない
夢見ずには辿り着けない


きょうも
あしたも
生涯果てるその日まで


僕は夢に、すがりつく
私は夢に、明かりをともす





               〈20061007〉 
甘美な果実




あまりにも、甘美な果実
身も心も、とろけるような

理性も、矜持も
すべてを脱ぎ捨て

本能と感情に、身を委ねる


限りなく、妖艶な果実

しなやかな蜜のなかに
絶望も苦痛も置き去りにする


動物のように
子供のように
遊戯のように
儀式のように

求め
歓び
戯れ
慈しみ

そして、満たされてゆく





               〈20061014〉
カフェにて




薄暗い照明の下
遠慮がちなざわめきのなか
コーヒーを飲む


滋味溢れる漆黒に
想いを馳せ

甘い香りに
安堵を覚え

妥協のない苦味に
現実を知る


着ていた上着を
背もたれに掛け
自分に戻れる吐息を合図に

今日の労を、ねぎらうように
生きる代償を受けとるように

けだるくくゆらす紫煙と共に
身体の奥へと、行き渡らせる


コーヒーの色に
染められながら





                〈20061103〉

銀の雨




闇の間隙を縫うように
夜の繭から紡ぎ出るそれは

燃え盛る虚栄の炎を
無慈悲に次々と沈黙させ

絶望に喘ぐ吐息には
幾千の蜘蛛の糸を
釈迦の如く地に垂らす


細く、冷たい銀の雨は
禍福のようにあざなわれ
光と翳から構築され
今宵もまた、降りてゆく


闇と、ともしびの街角に





               〈20061120〉
僕は…




他者をちからで押さえつける者が
『つよいひと』なら
僕は『弱虫』でかまわない

誰かを蹴落として『勝ち組』に
入るぐらいなら
僕は『負け犬』のほうがいい

他人に無批判にうなずく人が
『いいひと』になるなら
僕は『やな奴』なのかも知れない

カネと権力を手に入れることが
『人生の成功』だとすると
僕は、これからもしくじりを
続けるだろう

『弱虫』で『負け犬』で
『やな奴』で
『人生の落伍者』になったとしても


堂々と
胸を張って
前を向いて
生きていければ
それでいい





               〈20061203〉
Gambling / ギャンブリング




生涯最大の賭けをしよう

全財産を
最愛のひとを
みずからの生命を

心音は秒針と化し
思考は振り子のように揺れ
生きる意味は、それに支配される

時間だけが過ぎてゆく
タイムオーバーが迫りくる
風前のともしびとなる

魅入られたように、引きずられる
絶望と希望が背中を押す
後戻りはできない

幸運を友とするか
信念を貫き通すか

今、審判が下される


そして、賽は投げられた





                〈20061214〉 

聖なる夜に




聖なる夜に、ただ祈る

舞い降りる雪が
流れゆく銀河が

この身を清めてくれることを


静寂の刻に、ただ願う

後悔とあやまちが
黙(しじま)の衣に包まれることを


もし、望みが叶うなら
絶望と犯した罪が
純白に染められますように

それが赦されないのなら
今宵だけでも救いの灯を
こころに灯してくれますように





               〈20061224〉 
刮目の瞬間(とき)




蒼い瞼が、今ひらく

日出ずる処から産み出されし
あかい瞳が見つめる先は

紺碧の空か
暗黒の地か


刮目の瞬間(とき)が訪れる





               〈20070101〉
しあわせって…




元旦に初詣にいった

人でにぎわう境内の傍らに
願い事をが書かれた絵馬が
鈴なりになっている

その中に、ひとことだけ
"しあわせになれますように"
と書かれた絵馬があった

ずいぶんアバウトだな
その人にとって何がしあわせなんだろ?
思いどおりに人生を過ごすことだろうか
それとも皆から愛されながら生きること?
ってそんなの新年早々ヘビーに考えることでもない

死ぬ間際に"今まで生きていてよかったと思えればいい
死ぬ間際にしあわせだったと…
死ぬ間際…
死合わせ…


俺が生きている間に、それができるなら
扉が閉ざされる前に、それが成るのなら

それこそが本当の…
本当のところはどうだろうね…




                〈20070108〉
Dream on /ドリームオン




月へ行くなら帆掛け船
天翔るなら、銀の馬車

奥底に秘める琴線を
細い指先で爪弾いて
意識の旅路へと誘う

かなしみの深さを
よろこびの高さを

天使が奏でる音色も
悪魔の甘美な吐息も

極彩の色を付けて
あらわす術を知る


絶望から逃れたければ
苦痛を忌避したければ
この世界を愛するなら

そこで、夢を見続けよ
長い夢を見続けるんだ





                〈20070116〉 

Gift / ギフト



ひとが羨む贈り物よりも
注目を集める称賛よりも

そのぬくもりを
そのまなざしを

僕に贈ってくれればいい
誰かを想ってやればいい


たったそれだけのこと
ほんの、些細なこと

僕が、よろこぶ理由など
世界がまわる、理由など




               〈20070214〉
Fragile / フラジャイル




穏やかに見つめる
そのまなざしが

言葉の切れ際にみる
余韻が

積み重ねてきた
想い出が

揚羽蝶の羽根のように
空に消える煙のように

微弱な衝撃で壊れてしまう
些細なことで、崩れ去る


今が、永遠につづくなら
想いが未来に変わるなら

ただ、静かにみつめ返す
寄り添って、語り掛ける
積み重ねて、夢想する


壊れることのない世界まで
触れることのない世界まで




               〈20070218〉

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