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九ラブ・スケッチコミュの政治に奪われた言葉

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5月31日付け朝日新聞夕刊を読んで、すごく共感したので、
ここでご紹介したいのですが、やっていいことかどうかわかりません。
とりあえず書き込みますので、ダメだったら教えてください。


「政治に奪われた言葉」 大川正彦:東京外国語大助教授

朝のゴミ出しのあと、テレビをつけると、ワイドショーでは現役の国会議員が威勢よく時事放談をしている。つい先日も、深夜の討論番組で長広舌をふるっていたひとたちだ。

「テロ」がはびこる世界で、「国際平和のための国際協力」を果たすのは日本の責務である。犯罪急増で「身近な生活に隣り合う脅威」が増大した今こそ、共謀罪の創設を急がねばならない、云々。政府・与党からは不安を掻き立てるモンダイが騙り煽られ、一挙にその不安の最終解決が果たされるかのような言葉が千切っては投げつけられる。
“わからないとは言わせない”とでも言いたげな、わかりやすい(非)論理の、まさに「放談」=「砲弾」だ。

反対すれば、あたかも国際平和や国際協力など大事でないと思っているかのように、組織犯罪を肯定しているかのように、仕向けられる。異論封殺の危ういトリックが、ここにはある。

野党の側はどうか。旧い話になるが、「国際平和」は日米同盟だけに比重を置く外交を批判する者たちの、「構造改革」にしても資本制社会の内部的改良を目指す者たちの言葉であった。にもかかわらず政府・与党の「横領」を許し、失語症に甘んじている。その鈍さ、立ち遅れの責任は重い。

ともあれ、ワイドショーに出演する与野党の議員たちはカメラ・アングルにあわせ、ほんの一瞬のうちに、手慣れたカメラ目線で、割り切ったワンフレーズをスッキリと、あっけらかんと言い放つ。政治の言葉はかくも騒々しく空疎、そして軽佻浮薄。なのに、どうして、力をもつのか、もちうるのか。

もはやここには、国家権力という怪物に手を汚していることへの厳粛な責任を担う姿など見る影もない。今日、政治の非専門家、それぞれのふつうを生きて暮らす人たちにとって、さまざまな媒体を通じて伝達される政治の言葉とは、治者による専権事項、「既に設定されてしまった選択肢」にほかならない。

それは生活のほとんどすべての領域に喰い込み、個々人の情動にすら浸り入り、さまざまな情念の蠢き、揺らぎを、一挙に一定の方向へと水路づける。とくにテレビでは、いったん発せられた言葉を吟味する余地など与えられない。ニュースは「はい、いったん、コマーシャル」で別の場面に切り替わる。

小泉首相を筆頭とする、テレビを意識した「政治の言葉」の再生産のこうしたありようは、国内のワイドショーに限らない。米国の大統領が先日漏らしてしまったように、いまや世界は第三次大戦のさなか、だとか。戦時動員体制となれば、敵か味方かを一方的に迫るスローガンが重要になるのも、統治者の論理からすれば当然か。

言葉はひととひとの間を切り裂きもするし、その間を結び直しもする。いま、人びとが一方通行で見聞きさせられる数々の「政治の言葉」は、これまで編み継がれて来た関係の網の目を、将来編まれるだろう網の目を、繋ぎ直し不可能なような仕方で切り裂く。

ここには、国家暴力の圧倒的な迫り出しが如実にある。そんななか、それぞれの人生の専門家である生活者が、どのようにして言葉に本来そなわる繋ぎ直しの働きを奪還するか。小さきものが生き延び生き抜けてゆく際の呪文として抱える言葉を、手間暇かけて取り戻すか。ーーこれが問われている。

あるいは、じぶんのなかでどうしても生じてしまう不安・不信の解消への傾きを突っ放して眺めること。不安に限られない、己がさまざまな情念ーー怒り、歓び、哀しみ、恐怖、怨み、などーーのひとつひとつを、どのように語らい、どのように味わうか。さまざまな情念の襞を表出する言葉を、朴訥に、どう紡ぎ直してゆくのか。

つまり、いわゆる「政治/統治の言葉」をゲロとして吐き出し拒食すること、「こんなもん、不味くて喰えねえよ」と突っ返すことが、今、試されているようにおもう。

いや、それは、いつも、どこかでおこなわれている。生活のなかで握りしめられた一片(ひとかけら)の重い礫(つぶて)として。

ただ、「はい、いったん、コマーシャル」のミニ世界からは見えないだけだ。政治家やニュースキャスターからは口にされないだけだ。

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