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501stCGUプロジェクトコミュのアズールレーン:第501沿岸警備隊 臨時紫波出張所日誌 #84 第48話 外伝 『若き巡査長と、雪に刻まれた境界線―1972・NAGANO』

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外伝:若き巡査長と、雪に刻まれた境界線―1972・NAGANO



​これは、ひとつの記録写真から始まった外伝である。
昭和四十七年、長野県軽井沢。
雪の中で、静かに歴史を支えた者たちがいた。


「……指揮官。……この写真、……古い、デス。……でも、……重い、デス」
​紫波出張所の司令室。
綾波が、軍曹の机の引き出しから出てきた一枚の白黒写真をそっと持ち上げた。
印画紙は四隅が黄ばみ、当時の現像液の匂いが残っているかのような錯覚を覚える。
​軍曹は、魚漢字がびっしり書かれた湯呑みの茶を啜り、静かに息を吐いた。
「……ワシの親父が、巡査長になったばかりの頃だ。1972年。……浅間山荘事件の、後方支援に駆り出された時の写真だ」
​【回想:1972年(昭和47年) ―― 長野県・軽井沢】
​吹雪は、あらゆる音を飲み込む。
だが、鉄の匂いまでは消せなかった。
​1972年2月28日、午前11時58分。
静寂を切り裂いたのは、乾いた破裂音。訓練用の空包とは明らかに違う、鼓膜を直接叩くような**「命を削る音」**だ。
​若き巡査長・入江浩史は、交通規制の最前線でその音を聴いた。
胸の奥が、雪よりも冷たく震える。
​無線機が、割れた音で悲鳴を上げた。
『特車隊隊長、被弾!』
『二機隊長もやられた! 搬送路をこじ開けろ! 急げ!』
​山道の奥から、雪煙を巻き上げながら救急車が滑り出てくる。
スタッドレスなどない時代、チェーンが雪を噛む鈍い金属音が、焦燥感を煽る。
通り過ぎる一瞬、浩史は見てしまった。
​担架の上の隊員の腕。
雪の白さを汚す、ドス黒いまでの**「赤」**。
そして、寒さではなく失血で微かに震える指先。
​「浩史! ボーッとするな! 報道を抑えろッ!」
​先輩巡査部長の怒声で我に返る。
浩史は警笛を喉が張り裂けんばかりに吹き鳴らし、規制線を越えようとするカメラの群れを、その厚い胸板で押し返した。
フラッシュの光が、網膜を白く焼き切る。
​「下がれ! ここから先は、命のやり取りをしてる現場だッ!」
​声は震えていた。だが、それは恐怖ではない。
**「守らなければ、一瞬で瓦解する境界線」**の、あまりにも脆く、そして重い手応えに対する戦慄だった。

『機動隊突入! 容疑者確保! 人質救出、人質は無事!人質は無事!!』

吹雪の向こうで、無線が歓喜とも悲鳴ともつかない声を上げた。
浩史は胸の奥が熱くなるのを感じた。
誰かが命を張って繋いだ線の、その先に“救われた命”がある。
その事実だけが、凍える現場にわずかな灯をともした。

その後も現場は続いた。
人質救出の報が無線に流れたのは、夕刻十八時を回った頃だった。
吹雪の境界線に立ち続けた若い巡査長は、
その一言にようやく、凍りついた胸の奥がわずかに解けるのを感じた。

吹雪の中、救急車のサイレンが遠ざかる。浩史はその渦中で悟った。
――越えてはならない一線を、誰かが命懸けで維持しなければ、日常は簡単に壊れるのだと。

​その夜、吹雪の中で立ち尽くした若い巡査長の背中には、**「現場主義」**という名の、警察官としての一生が刻み込まれた。
​【現在:紫波出張所】
​「……親父は、あの日から変わったんだ」
軍曹は、モノクロ写真の端を指でなぞった。
​「『現場には神様も仏様もいねえ。あるのは、引いた線と、それを守る意地だけだ』……。耳にタコができるほど聞かされたよ」
​綾波は、軍曹から預かっているパイソンのシリンダーを、カチリと音を立てて戻した。
「……血の匂いを知る者の言葉、デスね。……だから軍曹の『線引き』は、あんなに理屈っぽくて、……温かいのデスね」
​三笠大先輩が、えんじ色のジャージの袖を捲りながら鼻で笑う。
「ふん、親子二代で不器用な正義を貫くとは、難儀な血筋よ。軍曹、その『親父の遺産』……せいぜい泥にまみれて磨き続けな」
​軍曹は答えず、腰のホルスターに触れ、夜の紫波へと視線を向けた。
外には、月明かりを反射する白のパッソが、静かに次の出撃を待っている。
​――1972年の雪は、今も軍曹の中で降り続けている。
​(外伝・了)

NHKドキュメント風ナレーション
(低音のストリングスが静かに立ち上がる。
 遠くで金属のような硬い打音が響く──
 “あの事件”を思わせる重い空気が画面を満たす:BGM:The Choice of Hercules IIが流れる)

昭和四十七年、冬。
長野県・軽井沢。

記録的な寒波が、
山あいの町を深い雪の底へと沈めていた。

白い静寂の向こう側で、
ひとつの事件が、
ゆっくりと、しかし確実に緊迫の度合いを増していく。

---

極寒の現場に立ち続ける、警備部隊の隊員たち。
気温は氷点下十度を下回り、
吹きつける風は、肌を刺すように冷たい。

任務の合間に取られた、わずかな休息。
湯気の立つカップを手に、
隊員たちは黙って雪景色を見つめていた。

その背中には、
長い緊張の時間を支える、
静かな覚悟が宿っていた。

---

背後には、いつでも動けるように待機する車両。
エンジンの低い唸りが、
凍てつく山あいに重く響く。

彼らは、
ただ“備える”という任務を、
黙々と続けていた。

---

歴史の表舞台には映らなかった人々がいる。
極寒の軽井沢で、
黙して任務を支え続けた者たちがいた。

昭和四十七年の冬。
雪の中で切り取られた一枚の写真。

(1972年、雪中警備 後方支援部隊
https://drive.google.com/file/d/1IEl5e6gkoFqHS4ja6lhkLkdr2kRZekF3/view?usp=drivesdk

そこには、
静かに歴史を支えた者たちの、
確かな息づかいが刻まれている。








人差し指(下)第501沿岸警備隊業務日誌
2026年4月25日はコチラ人差し指(下)
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