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意味不明小説(ショートショート)コミュの前髪の記憶

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衝動的に髪の毛を切ってしまう癖がある








汗ばんだ背中のことなんて気にもせずあなたはわたしを抱き寄せるから
わたしは少し後ろめたい気持ちであなたのむねに顔をうずめる



これまで数え切れないほど繰り返してきた行為のなかで静かに息をする




湿った世界



やわらかな わたしだけの空間





…髪の毛、また切ったの?



わたしの頭をなでながらあなたは小さく言う



何だか責められているような気がしてわたしは口ごもりながらこたえる



…ええ、切ったわ。仕方がないの、空しさは突然押し寄せるんですもの。
けれど、つらくなって自傷してしまうことよりずっと健全でしょう?




…別に責めるつもりはないよ。そうだね、君が言うようにきっと健全なのだろう。
たしかに出会ったころの、髪の長かった頃のきみは、喜びも悲しみも諦めたような眼をしていた。




…今は、ちがう?



…そうだね、必死にしがみついている、生きているって思うよ。




…そう。




…いつかその空しさからきみを救えたらと思っているよ
僕なんかにできるのかわからないけれど。







わたしは黙り込む



どうせ いま撫でられている髪の毛だってすぐにゴミ箱のなかへ消えてしまうのだ




そんなことを思っているうちにぐぐと瞼が重くなってきた






想像の彩度は増していく 






気がつくとわたしはひたすら切った髪の毛を土へと埋めていた


髪の毛を埋めたところから苔むした木がどんどん生えて いつしか深い森を形成していた
木々は不気味に絡み合い闇はより深くなっていく
森は広がるというより膨らむといった方が正しく思えるほど密度をましていった




森の成長がとまるとわたしは裸足のままで足を踏み入れる




奥へおくへと歩みを進める度に 郷愁のような恐怖のような感情があふれ出す






(…ああ、そうだ、これはあの頃の)





虚無



アスファルト



夕暮れ



バス停




ざらついた景色の後ろの方からあなたの声がきこえた気がした


コメント(4)

根を張った記憶の木の枝に腰掛けて幹に耳を寄せながら眠っているあなたがみえます

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