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意味不明小説(ショートショート)コミュの赤色

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あいつらの笑い声が、部屋をぐるぐる回っている。

このせまい空間の中に漂う波。
そのケタタマシイ笑い声は、赤色。人から生気を奪い、攻撃する波長を含んでいて、血液に溶け込んでくる。
私はそれを感じとる。

これがあいつらの口から出た汚い音波、汚い脳波、汚い生活の結晶なんだ。
波なんて、やがては何の意味もなさずに収束して、消えていくことを感じたい。
「あいつらの考えていることも、この波とおんなじなんだ。
何の意味もなさずに、消えてしまえばいい。」

でもその音は、わたしに向かって発せられた。
だからその音は、私の脊髄に間違いなく波打った。
純粋な思考を大きく揺さぶる。そして刻みこむ。
一本の線だった波が、激しくうねりだす。
それを感じて立ち上がって、白い玄関を開けて、外の世界に飛び出す。

制止を振り切って、私は誰もいない外の世界に独りになった。
冷たい温度が私の体に充満してくる。
私は白い息を吐きながら、私の意識は、何の意味もなさずに消えていった。

やがて、日常に引き戻される。
母の冷たい手のぬくもりで、意識が醒める。
父に強く叩かれて、日常に戻る。
叔母に意地悪く罵られて、再び私の人生は、真っ赤な渦に飲み込まれる。
私は泣き出す。涙は渦に吸い込まれていく。

人を切り刻みたいけど、それはできない。
ならば、自分の体を刻むまでだ、それが私の答えだった。
私がいなければいいのか、彼らが全員いなければいいのかの、どっちかだ。

真っ赤に染まった私の精神に、私の腕も真っ赤に染まった。
こうして私の血液が美しいのは、私が若いからだ。
そう思って、私は左手に、手の甲にナイフを差し込む。

でも、ババアになったら?
そう考えると、答えはひとつだ。
誰かのためにやってるんじゃない。
私が死ぬためなんだ。
若い私がこうやって綺麗に死んでいくことを、私自身が望んでいるんだ。
そう思って私は、手に刺したナイフを回転させ、血管を押し広げる。
血が掻き出される。私の小さな体から。

掻き出された真っ赤な血は、真っ黒な血となっていくような感じがした。
血管の奥から、汚いものをたくさん吸収した、どす黒い塊のようなものが湧き出てきた。

私って、ババアだったんだ。

こんなに汚い血が体に流れていたんだ。あの人たちと同じように。
もう少しは、綺麗なんだと思ってた。

そうして起きる。
私はベッドに横になっていて、普通に起きることができた。
ベッドが血しぶきで染まっている。
誰もいない。ただ私の部屋に赤みが増しただけ。
私という生き物が、ここに住んでいますって言う証拠が増えただけ。
朝日が、意味ありげに薬の錠剤を照らしているだけ。
私の苦痛が、増しただけ。
左手が、痛いだけ。

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