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意味不明小説(ショートショート)コミュのおしいれ動物王国

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夜に窓の外で何かがきらんと光ったので、見たら友達の猫だった。
「やぁ、こんばんは。ちょっとおじゃましてもいいかな」と、猫は言った。どういうわけかその猫と仲がよくて、たまにやってきては話をする。けど、僕は猫が部屋のなかにいるとくしゃみがとまらなくなるので、そろそろ眠ろうと敷いていた布団は部屋の隅に一時的に片付けて、そして窓は開けたままにしておく。
「来ていいよ。」僕は猫を招き入れた。
それから15分くらい雑談をしていると、僕を呼ぶ声がして、お母さんが僕の部屋にやってきた。
「たいへん、隠れて!」僕は猫にだけ聞こえるように小声で言った。
「うん」と猫はとっさに押入れの中に隠れた。僕はその押入れを閉めた。ばたんと、結構大きな音を立ててしまった。

「誰かいるの?」とやってきたお母さんは言った。
「いいや。」と僕は首を横にふる。
「ちょっと探し物をしてたんだ。おしいれの中かな」
行動がわかりやすすぎるけど、お母さんは特に怪しむこともなく、「そう」とだけ言っていなくなった。
こんな時に携帯電話を持っていれば、不自然なことはひとつもない。電話で誰かとしゃべっているふりをすればいいからだ。

でも、携帯電話は持ちたくない。持っていたとしても、僕には友達がいないんだ。誰も話す人はいない。

お母さんがいなくなったのをもう一度確認をして、僕は押入れをあけた。「ねえねえ、奥に何かあるよ」と猫は言った。覗き込んでみたけど、暗くてよく見えなかった。
「中に入ってみるね」と言って、猫は消えた。もちろん、消えるはずがないから、中に小さな隙間か穴があって、その奥に入っていったらしい。

1時間くらいたって、猫が戻ってきた。手のひらに乗るくらいの小さなリスのぬいぐるみをくわえている。ぬいぐるみは新品のようにきれいだ。
「どうしたんだい、それは?」僕は聞いた。
「このおしいれの中から奥にずうっと進むと、町があってね。そこで動物たちが暮らしているんだ。これはもう大発見だよ!」猫は目を見開いて言った。

「そのリスのぬいぐるみは?」僕はリスのぬいぐるみを指差した。

「このリスもその町の住民なんだ。」と猫は言った。

「だってぬいぐるみじゃないか?」本当にふつうのぬいぐるみだ。よくできていてとてもかわいらしい。

「それが、押入れの奥にあるその町へ行くと、このリスが動いてしゃべるんだよ。けどね、ここまで連れてくる途中で普通のぬいぐるみに変わってしまったんだ。」

「どうも信じられないなあ。君が空想好きなのはよく知っている。お話としてはとても面白いよ。」と僕は言った。空想だとしか思えなかった。

「信じてくれないのかい?それじゃあ一緒に行ってみようよ。」と猫は提案した。

僕たちは手分けして押入れの中にしまってあった布団や、今の季節は着ない冬物の衣類、それからダンボール箱を押入れの中から出した。手分けしてといっても、もちろん僕がほとんどの物を出した。ダンボール箱の中には小学1年生の時の教科書が入っていて、表紙にはリスの絵が描かれていた。

懐中電灯を持ってきて中をよく見ると、確かに奥に穴が開いていた。猫が一匹やっと通れるくらいの穴だ。残念ながら僕はその穴をくぐることはできない。
「残念だな。僕には通ることはできないよ。スモールライトがあればなあ。」


その日から、友達の猫は毎晩その穴から動物が暮らしているという町へ入ってゆく。いつも1時間くらいで戻ってきて、そのたびに動物のぬいぐるみをくわえてきて、翌日にはまた戻してゆく。
動物の町のことをいろいろ聞かせてくれるけど、作り話にしてはとても詳細がはっきりとしていて、矛盾しているところはまったくなかった。もし話が本当だったらとてもすごいことだし、作り話だとしたらその友達の猫の空想の才能はたいしたものだ。

どちらにしても僕には本当かどうかは確かめることができない。

コメント(2)

なんだか静かに楽しい気持ちになりました。
よかったです。
>ほにぃ さん
よかったよかった。
動物を見ると楽しい気持ちになりますよね。

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