意味不明小説(ショートショート)コミュの本の世界

本の世界はいい。

僕は、ちいさいときから本が大好きで、

本がともだちで、

本にたくさん救われた。

本には本当に本気で感謝している。

あるとき、いつものとおり本を読みあさってると、本に喰われた。

目覚めると、予想通り、本の世界にいた。

僕は、イタズラをいっぱいした。

最初はこわごわと・・・本の世界を少しずつ変えた。

うさぎから時計を奪ったり、

お姫様のドレスを捲ったり、

ドラゴンを生み出したり、

カレーをこっそりビーフシチューにしたり、

蟻を一匹殺したり、

ラーメンにこしょうを入れたり入れなかったり、

ＢＧＭを変えたり、

愛のキューピッドになったり、

手術してあげなかったり、

意地悪な継母に毒を飲ませたり、

馬車のかわりに自動車をプレゼントしたり、

スプーンを曲げてみたり、

姫の白肌をガングロにしたり、

パンクロッカーをお嬢様に変身させたり、

こっそり女を妊娠させたり、

サンドイッチの具を変えたり、

おにぎりの具を変えたり、

僕が王子様になったり、

侍に髪型のアドバイスをしたり、

チューリップ畑を荒地にしたり、

穴を掘って地球を貫通させたり、

映画監督の座を奪ったり、

強盗したり、

世界の主食を芋に統一したり、

蛙の子をヘビにしたり、

お城を燃やしたり、

ダイヤをただの石ころとしたり、

内向的な子をギャルに育てあげたり、

玉手箱をあけないよう耳打ちしたり、

電力会社に忍び込んで夜景を台無しにしたり、

核のボタンを簡単に押してみたり、

鎖国を長引かせたり、

寒いからおばあちゃんに川で洗濯させないように注意したり、

女子アナを全滅させたり、

変なはにわをつくってみたり、

コーヒーはブラックだと言い張ったり、

休憩中うさぎと一緒に語り合ったり、

頭の中の何かを使用不能にしたり、

人乗りロボットが宇宙で解体するように仕組んだり、

夕陽をきたなくしたり、

朝陽を見て涙したり、

一日を３０時間にしたり、

僕が勇者になったり、

僕が賢者になったり、

僕が仙人になったり、

僕が魔法使いになったり、

僕が超能力者になったり、

僕が宇宙人になったり、

僕が王様になったり、

・・・・

死ぬはずの人を、何人もたすけたり。

なんでもできるのだ。

とてもとても、楽しい。

何年も本の中にいたのに、あるとき、イタズラが過ぎるという理由で（今更）、

本から吐き出された。

しばらくぶりの現実は、あまりに現実的で、無味乾燥で、

イタズラしちゃいけないという規則を忘れた僕は、

たくさんたくさん苦労した。

散々楽しんだ分の罰なのだ。

現実には、現実的な、罰があるのだ。

僕は所詮、現実の人間でしかないのだ。

僕は、やっぱり、思った。

本の世界はいい。

だって、本当に、自由だもの。