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MAYDAY メーデー!ナショジオコミュのTITANIC IN THE SKY Qantas航空32便エンジン爆発事故

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2010年11月4日、英国ロンドン・ヒースロー空港から豪州シドニー空港へ向かっていたカンタス航空32便(Airbus A380型機)は、Singaporeチャンギ空港で給油の後、22時間にわたる長時間飛行の最終レグへ9:57amに滑走路5Cから離陸した。Richard de Crespigny機長、Matt Hicks副操縦士、Mark Johnsonセカンドオフィサー、それに査察機長のDave Evansが操縦室入りし、Evans機長がde Crespigny機長の運航チェックを行うこととなっていた。
順調に離陸後、10:01amに突然バーンという音が鳴り響き、#2エンジンにオーバーヒートおよび火災の表示が点灯した。de Crespigny機長は同機を7,400ftで水平飛行とし、Singapore管制にengine failureをPan Panコールした。Hicks副操縦士が#2エンジンの消火ボタンを作動させ表示は消灯したが、ECAM actionは色んな警告を雪崩のように次から次へと表示されていった。Qantas航空の運航センターにいたAlan Milne整備長は当初ECAM actionの誤作動かと思ったが、Singapore南東部のIndonesia領の島々に同便の部品が落下したことが報道されて、深刻な事態であると悟った。豪州航空機事故調査委員会(ATSB)のKevin Chapman調査官は同便が墜落したと思った。
同便は出発地から70km南東のIndonesia領で引き返すことを決断し、左旋回して方位020°でChangi空港を目指した。機長はセカンドオフィサーに翼の状況を客室から目視するよう指示し、左翼が破損して上面から燃料が噴出しているとの報告を受けた。また副操縦士には燃料投棄を命じたが、燃料ポンプが爆発で作動せず、投棄は出来ないと分かった。そこで査察機長に、この状態でChangi空港の4,000m滑走路へ着陸出来るか専用パソコンで計算して貰うと、145ktで接地すれば滑走路端の130m手前で停止出来ると分かった。機長は空港の20NM手前で最長滑走路へのlong approachと消防車の手配をリクエストした。4,500ftまで降下して左へrollさせて滑走路へalignさせ、Flap-3まで展開した。油圧の故障で脚出しが出来ないため、2分かけて重力でgear downさせた。166ktまで減速したところ失速警報が出たため、170ktまで増速させて警報を解除し、着陸時の風向風速が170°から5ktと穏やかなことを確認して、接地直前にthrottleを引いた。接地後はフットブレーキを目一杯踏んで、滑走路端150m手前で停止させることが出来た。降着装置のブレーキディスクは真っ赤に過熱しており、左翼から燃料が滴り落ちているため、着火する危険があった。
滑走路脇に待機していた消防車が直ちに消火剤を放出する一方、消防隊から#1エンジンが作動しているとの報告が操縦室へ入った。機長は機外が有毒(toxic)であると考えて、乗客を脱出させず機内に待機させる決断をした。後日この状況を機長は”Simulator exercise from hell”だったと回想している。結局、消防隊が消火剤を#1エンジンへ噴射して停止を試み、着陸4時間後に乗客をタラップで機外へ下ろすことが出来た。Qantas航空のAlan Joyce CEOは、直後に同社のA380型機を事故原因が解明されるまで運航停止とする発表を行った。
ATSBのSimon Grummett調査官は事故機のengine turbine diskを回収し、製造元のロールスロイス社へ送付した。同社の検査室で調べたところ、160kgあるdiskは本来より僅かに大きくなって伸びており、超音速で回転していたことが考えられた。そして遂には爆発して、その破片が左翼の燃料、油圧、飛行系統を破壊したと分かった。エンジン内部には滑油が漏れており、滑油を供給するstub pipeが破断してエンジンオイルが1,000℃に過熱したdiskにかかって発火したものと分かった。破断したpipeの断面を観察すると肉厚が均一でなく、不良品であることが判明した。ATSBは事故から29日後にロールスロイス社製エンジンを搭載した同型機を保有する航空会社に対して、stub pipeの緊急点検を推奨した。世界中に該当機が20あり、80基のエンジンのうち34基に同様な不良pipeが見つかった。

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一本のパイブが不良品であったばかりに、墜落事故の一歩手前までいった重大事故。後に沢山の不良品が別の機体からも見つかって、同様な事故は何時、どの機体に起こっても不思議でなかったことが判明した。事故機に幸運であったのは、短時間で緊急着陸出来る地点で発生したことと、着陸後に漏れ出した燃料に引火しなかったことだった。
de Crespigny機長(Greg Ellwand)、Hicks副操縦士(Alec McCluve)、Johnsonセカンドオフィサー(Stephen Chambers)、Evans査察機長(Michael Millar)はエンジン爆発後の深刻な事態に、冷静に対処していたクルーを好演していた。de Crespigny機長が後日談で航空史に残るクルー・コーディネッションだと自画自賛していた。

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