MAYDAY メーデー！ナショジオコミュのMIXED SIGNALS Independent Air 1851便　衝突事故

1989年2月8日、米国人観光客ら137人をItalyベルガモ空港からドミニカ共和国プンタカナ空港へ向けてチャーター輸送していたIndependent Air 1851便(Boeing 707型機)は、給油のためポルトガル領アゾレス諸島サンタマリア空港へ着陸しようとしていた。Lion James Daugherty機長41歳、Sammy Adcock副操縦士36歳、Horge Gonzales航空機関士34歳は、米国空軍を退役したパイロットで、社内での評価が高かった。
空港から60NM手前でSantamaria空港管制塔へ周波数が変更され、新人の男性管制官がベテランの女性管制官の監督を受けながら、同便へ航空管制を行っていた。Santamaria島は人口5,000の小島で、定期便は1日3便しかなく、新人管制官の訓練には適していた。しかし1851便が交信した時に、ベテラン管制官は電話応対で監督していなかった。新人管制官は”QNH1,027mb、Expect ILS Rwy 19、Report 3,000Ft”と送信したが、Adcock副操縦士は2,000Ftと聴き取って、降下高度を2,000Ftに設定した。彼は指示された高度をDaugherty機長に確かめたが、機長はその通りだと応じたため、管制官は再確認を受けなかった。
Daugherty機長は自動操縦装置を解除して降下を続けたが、前方に雲が広がって、Santamaria島に差し掛かるとIMCとなった。Adcock副操縦士はDaugherty機長に”Help you?”と問いかけたが機長は"No"と一言応じたところ、GPWSが”Terrain, pull up!”と警報を発した。同便はそのままSantamaria島のPico Altoと呼ばれる標高1,795Ftの尾根に激突して爆発炎上した。乗員7名を含む144名全員が死亡した。
ポルトガル航空機事故調査委員会(DGAC)のPedro Matos調査官らに米国NTSBのBary Strauch調査官らが参加して、実地検分が開始された。エンジンに異常はなく、高度計も著しく破損していたものの、4か月前に補正されたばかりであった。機体の破損状況からCFITが考えられ、Matos調査官らは新人管制官へ面談した。管制卓に残されたストリップ通りの交信が行われており、面接して得られた情報に特段不審な点はなかった。Jeepsenチャートは同便に2冊搭載されており、Santamaria空港のMinimum Sector Altitudeは3,000Ft明記されていた。他方、事故現場から改修された高度警告装置には2,000Ftがセットされており、調査官らは不審を抱いた。管制塔の録音記録と事故機のCVRを照合すると、管制官は”Report 3,000”と指示したものの、副操縦士は”Cleared 2,000”と復唱して、その後双方が全く同時に送信していたため、修正されないまま進入が続けられていたことが判明した。
当時の気象状況を検証すると、進入管制が行われていた13:44から12分間の間にQNHは1,027mbから1,019mbへ低下していたが、新人管制官は新たなQNHを伝えていなかったことが判明した。
他方、事故機のCVRを解析すると、descend check liskは等閑で、「2,000Ftを通過したら雲が切れるよ...」と話していたところ、「ウワォ！」と歓声を挙げた客室乗務員の声があり、「あれが島だよ！」とGonzales航空機関士が説明していた。Sterile cockpit ruleは遵守されていなかった。
更にGPWSが地表接近を警告していながら、7秒間無声のままで地上に衝突しており、なぜ乗員は警報を無視していたのかを検討した。Independent Air社では他社で借用していたsimulatorで訓練を行っていたが、ここではGPWSの警報は無視するものとされていて、その慣習から何の対応もしなかったことが推測された。
Independent Air社は乗客の遺族らに3,400万米ﾄﾞﾙの賠償金を支払い、翌1990年に運航を停止した。