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芝田進午の人類生存思想と現実コミュの芝田進午氏と東京唯物論研究会その3

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3【実践的唯物論論争について】
中村:では最後の、実践的唯物論をめぐる論争の話題に移ります。つまり、八一年八月に出した『唯物論』五五号の特集で、「実践的唯物論論争」を組むわけですが、これは全国唯研で始まった、向井俊彦さんが芝田進午さんに対して書いた論文から始まりました(「『実践的唯物論』が唯物論のマルクス主義的形態か―芝田進午氏の『実践的唯物論』体系の批判的検討」、『唯物論研究』第二号、一九八〇年九月)。しかし、全国唯研では、芝田さんの批判の仕方の問題もあって、論争にならずに終わっちゃうんですよ。それを東京唯研が引き受けるかたちで、北村さんの「実践的唯物論と弁証法的唯物論」、清さんの「フォイエルバッハ論とテーゼの間」、佐藤春吉さんの「哲学の根本問題と実践的唯物論」、島崎さんの「実践的唯物論と哲学の根本問題に関する一試論」、瀬戸明さんの「実践的唯物論とは何か」、岩崎允胤さんの「核兵器廃絶、恒久平和を目指して」という六本の論文を特集として掲載するわけです。
この論争は、マルクス主義哲学を実践的唯物論と呼ぶのが正しいか、弁証法的唯物論と呼ぶべきか、という名称をめぐる論争ではないのですよね。つまり、弁証法的唯物論と呼ばれてきたマルクス・レーニン主義哲学の性格と評価をめぐる論争なんです。芝田さんの言葉を紹介します。
ソ連型の「唯物論」では、エンゲルスの『フォイエルバッハ論』における、唯物論か観念論かという物質の先行性を認めるかどうかということがいつも出発点にされてきました。しかし、それは唯物論と観念論の一般的な対立点であって、マルクス以前の唯物論とマルクス以後の唯物論との重大な対立点を中心にすえていないわけです。マルクス的唯物論の決定的な重要性は、観念論的唯物論に対して、「実践的唯物論」を提起したことにあるのです。その点はもっとも簡潔明快に提起しているのが「フォイエルバッハ・テーゼ」です。エンゲルスの言う対立点ではなく、「フォイエルバッハ・テーゼ」から出発すべきです。エンゲルスを曲解してきたスターリン主義的なソ連型の唯物論は、マルクスの実践的唯物論を観照的唯物論、客観主義的唯物に後退させたところに大きな反動性がある。(前掲『実践的唯物論への道』)と、こういうふうに言ってるわけですね。
これに対して、北村さんはむしろフォイエルバッハ論の第二章の始めの部分をマルクス主義哲学では重視すべきだという考え方だと主張されています。そして、いまいったような芝田さん的な考え方に対する北村さんの批判が、佐藤さんに対する批判として書かれているので紹介します。北村さんはこういうことを言われているわけです。
「弁証法的唯物論」に対抗して「実践的唯物論」を提唱している人々は、なによりも唯物論を認識論の視点から把握することを拒否し、あるいは拒否しないまでもそれに対して消極的な態度をとり、唯物論を主として社会・歴史の領域で問題にしていこうとしている。この見地に立つなら、物質と意識の関係をめぐる対立はかならずしも先決問題ではないということになり、エンゲルスの提起した哲学の根本問題の認識論的性格があいまいにされ、レーニンによって明確化された「物質」概念の認識論的意義が拒否されることになる。要するに、マルクス主義のとなえる唯物論は現実の具体的な変革をめざすものであるから、それが唯物論たるゆえんは「純認識論的領野」にあるのではないというのである。
こういうふうに、いわゆる実践的唯物論者のことを批判されているわけですね。つまり、実践的唯物論者は唯物論を認識論の視点から把握しない、あるいは、物質と意識の問題を先決問題としない。その結果、エンゲルスの哲学の根本問題の認識論的性格が曖昧にされ、レーニンによって明確化された物質概念の認識論的意義を拒否すると。同様に、鰺坂真さんも、実践的唯物論は哲学の根本問題を歴史的に相対化する傾向だというふうに批判しています(「『実践的唯物論』への疑問」、唯物論研究協会・第五回研究大会・発表要旨)。私には、こうした立場が、マルクス・レーニン主義ではないかというふうに思えるのです。
つまり、北村さんの立場は、マルクス・レーニン主義は、エンゲルスの哲学の根本問題をマルクス主義哲学の根本問題とする立場であり、レーニンの『唯物論と経験批判論』をマルクス主義の哲学のバイブルとする立場と一体なんではないかというのが、マルクス・レーニン主義哲学の克服を課題とする人たちの主張です。北村さんは、実践的唯物論そのものには反対しないと言っていますけれども、実践的唯物論が最も排除する、物質との意識の問題が先決問題であるという、その考え方に対して、それはやはり唯物論の根本問題だという立場に立っていらっしゃると思うんですね。その辺をお話しいただいて、他のお二人にも意見を出してもらえればと思います。
北村:私のスタンスですが、私は七〇年代の前半ごろから、マルクス・レーニン主義に対する疑問をだんだん募らせてきて、七〇年代の後半になると、割合早い段階から、マルクス・レーニン主義の克服を自由論を主題とした論文で主張し始めたんです。そういう意味では比較的早かったと思うんですね。それ以前にソ連に対する疑問を非常に強く持つようになりました。それは、メドヴェージェフの著作などを読んで、ソ連というのが真の社会主義ではないということに気づいて、同時にその哲学にも欠陥があるということにも気づいていったんです。
そういう中で、実践的唯物論論争に接するわけですが、さっき中村さんが私の論文も引用されましたけれど、その後のところがもちろん私の言いたいことなんです。ちょっと読みますと、「唯物論はそもそも認識論的領野に限定されるものでないことは、改めて言うまでもなかろう。社会歴史への唯物論的理解を欠いたものは唯物論としては不完全と言うほかない。だからこそ、マルクスとエンゲルスは唯物論的歴史観を確立することによって、唯物論の完成を目指したのである」と。私は、この唯物論的歴史観こそマルクスの唯物論の最も重要な成果だと思ってるんです。それまでの唯物論は、歴史観にまで徹底されてなかったんですから。それで、「マルクスと、エンゲルスの唯物論的歴史観が唯物論者の中で、どんなに画期的な意義を持った新達成だったかはマルクス主義者にとっては常識に属する事柄である。いやしくもマルクス主義を標榜するなら、唯物論的歴史観が単なる理論にとどまらず、社会の実践的変革を目指すものであることは自明である。だが、にもかかわらず、マルクスたちの唯物論的歴史観は、哲学的唯物論を世界観的基礎としてのみ成立しうる議論なのである」ということで、先ず哲学的唯物論が唯物論的歴史観の世界観的な基礎になっていることを確認したかったんです。それは、哲学の根本問題の理解にそのまま繋がると考えているわけです。
エンゲルスの哲学の根本問題は、もちろん単純に認識論の根本問題ではなく、「哲学の」と言っている以上、これは世界観の根本問題であり、存在論の根本問題でもあり、認識論の根本問題でもあるわけです。
しかし、唯物論と観念論とが直接立場を競い合う場面が、認識論的な問題設定においてであって、そういう意味で、哲学の根本問題は、マルクス主義にとっては、先決問題であって、ここでまず唯物論であることをはっきり確立しなければ、唯物論的な歴史観も成立しえないと、そのことを強調した次第です。
私は、実践的唯物論には全面的に賛成であるどころか、それ以降八〇年にかけては、実践問題をかなり中心軸に据えて、論文を書いてきました。日本哲学会で「実践哲学の復権」という特別報告もしています。
マルクス主義哲学は単に事実学であるだけでなく、規範学でもあるとして、規範的・批判的権能ということを私は非常に強調しているんです。しかし、芝田さんだとか、佐藤さんなどの主張する実践的唯物論というのは、弁証法的唯物論に対抗する形で持ちだされているので、結局のところ、唯物史観主義に帰着するのではないかと、私は反対をしたんです。唯物論は認識論的領域に限定されるものではないけれども、しかし認識論にかかわらない唯物論というのはあり得ないのだ、だから認識論はすべてではないけれども、認識論というものが哲学の鍵をなしているんだ、認識論はなにより唯物論と観念論の理論的対決の主戦場なんだ、認識論を回避しては唯物論も観念論もその意味を失うほかない、だからこそ、エンゲルスは哲学の根本問題として思考と存在、精神と自然とのどちらを根源的と見るかという問題を提出したんだ、このエンゲルスの哲学の根本問題というのが究極的には認識論的性格の問題だということは疑う余地がない、もちろんこれは認識論的な性格だけに尽きるものではなく、世界観的な性格なものであるけれども、突き詰めていくと、認識論的性格に帰着すると、私は考えているんです。
芝田さんや、佐藤さんのように、結局、弁証法的唯物論を事実上実践的唯物論によって代置するということになると、弁証法的唯物論の唯物論性が損なわれて、結局は唯物史観だけでいいんだという、唯物史観主義にまで辿りつくように思うんです。そういうことで、私は、この論文を書いたんです。
2011年09月18日 08:54

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