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小さな三題噺会コミュの「宇宙」「嘘」「ツーカー」

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 平成22年も4月になりました新年度。
 春がやってきますね。
 最近はRoboさんにトピック立ててもらうこと多かったので、たまには管理人らしいことをしてみました。
 さてさて、今回はどんなお話になりますか…

感想はコチラ

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コメント(7)

『ツーアウト満塁ツースリー』

喫茶店のテレビには野球中継。9回裏の攻撃。
野球の実況中継がうるさいハズなのに、私達の周りだけは静寂に支配されていた。
ぬるくなったコーヒー。
そして、
「別れよう」
「えっ、嘘、何で」


今から思えば、確かに兆しはあった。
例えばあなたが時間を持て余すようになった事。
今までなら、私が話す間もなくあなたはしゃべり続けていたのに。
いつだったか、
「祐介って、話すのが好きなんだね」
って言ったら、
「話すのは好きじゃないけど。でも、留美子にはオレの全部を知ってほしいから。だから話しをすることがいっぱいありすぎて、全然時間が足りないんだ」
だって。
それなのに、最近、あまり話しをしてまれなくなった。
あの頃は「止まってほしい」って思ってた時間なのに、少しでも長くあなたと一緒に居たいって思ってたのに、いつの間にかあなたは時間をもて余すようになってた。


何でも知っていると思ってた。あなたの事は全て分かってるって思ってた。何でも分かり合えるツーカーの仲だと。
だから、私が何気なく
「ツーと言えば」
って言ったとき、
あなたが答えた言葉は
「2」。
この時少し思った。兆しを感じた。


初めて行った甲子園。野球なんてよく知らなかったんだけど、楽しかった。
焼き鳥にビール、メガホンで応援、客席での一体感、あと一球コール、六甲おろし。
分からない野球用語はいっぱいあったけど、とにかく楽しかった。
何度めに行った時だったか、隣で応援していた人がラジオを聴いていた。
ちょうど桜井選手がホームランを打った時、アナウンサーが
「ウチュウカンスタンドへ一直線」
って絶叫した。
私、意味が分からなかったからあなたに訊いたら
「宇宙に届くくらいスゴイ打球のホームランって事だろ」
って。
その後も、隣のラジオから聞こえてくる言葉をあなたに尋ねたんだけど、ちゃんと答えてくれなかった。
その日阪神は逆転負けをした。
あなたはすごく機嫌悪かった。
その時以来、甲子園には行っていない。


「別れよう」
「えっ、嘘、何で」
「嫌いになったワケじゃないんだ。でも」
「でも、何よ」
「・・・疲れたんだ」
「えっ」
「一緒にいて疲れるようになったら、もぅお仕舞いだろ」


9回の裏、2アウト満塁。
東京ドームのマウンドには阪神タイガースのエース・高橋。
得点は2対0でタイガースがリード。
しかし、8回までは完全にジャイアンツ打線を抑えこみ、24者連続三振に取っていた高橋ですが、土壇場9回に突如乱れ、一打出れば同点、長打が出れば逆転サヨナラという場面。
ここで迎えるバッターはジャイアンツの頼れる4番。
カウントはフルカウント。
絶体絶命のピンチです。
ピッチャー投げました。
カーン。
打ちました。
大きな当たりが右中間の深くへと飛んでいきます。
入るか、入るか、どうだ。
バシっ。
アウトぉ〜〜〜。
ライトの熊谷が回りこんでボールをキャッチしました。試合終了です。


「阪神、勝ったよ」
「そうみたいだね」
「右中間ってライトとセンターの間って事なんだ」
「えっ」
「前に教えてくれたでしょ、ウチュウカンの意味を。宇宙に届くくらいスゴイ事だって」
「そんな事、言ったっけ」
「言ったよ。でも、球が宇宙に飛んでいくって、ステキだなって思った。100万光年の彼方まで飛んでいく球ってロマンティックじゃない。
今はあなたが100万光年の彼方まで行ってしまったみたいだけど、やっぱりウチュウカンは右中間なんだ。手が届くところにあるよ。決して100万光年の彼方なんかじゃない」
「9回裏、動転して向かえた祐介の攻撃。2アウト満塁でフルカウント。留美子、一打出ればサヨナラ負けの大ピンチ、ってトコかな」
「私、少しは野球、詳しくなったよ。
'振る'カウントならまだ終わっていない。右中間も手の届くところにある。私たち、延長戦に入ることは出来ないかな」
「9回裏の祐介の攻撃、あえなく終了しました。これから延長戦に突入です」
「・・・ありがとう。じゃあ今度久し振りに甲子園に行こうよ」
「そうだね」
「二人で右中間スタンドで応援するの」
「うん」
「でも、その前に、延長戦突入記念に」
「「うチュウ!」」
 今年も知らぬ間にすっかり開花宣言をしていたのだという。
 テレビも新聞もあまり見ないうえに、まだ風が冷たいので分からなかった。
 ちなみに、この場合の花は桜を指します。もしかしてもしも分からない人のために、一応。字面だけ見たら、世の中の花という花が開くみたいに読めないこともないからね。
 しかしまあ、だいたい桜の咲く頃というのはそれほど暖かでない。
 春の陽気に誘われて花見、というよりあれはむしろ、先にこっちで浮かれてしまって陽気のやつを呼び寄せよう、な感じに思える。
 桜の宴もたけなわを過ぎ花も散るらん今くらいで、ようやく春らしい温い気候だ。
 という頃合に近くの小高い山に行く。
 夜が好い。
 地面は桜で覆われて、敷かれたような花びらが白くぼんやりしている。
 ぼんやりしているのをぼんやり眺めていると、なぜだか宇宙を想像してしまう。
 と、宇宙人が現れた。
 嘘ではない。
 あれはどう考えても宇宙人で、前にも見たことがあるから間違いないのだが、いつどこで見たかの記憶は曖昧どころかまるで覚えていないものの、とりあえず断固としてグレイ型でもタコ状でもない。
 アンタいつまで遊んでんの。
 と宇宙人の思考が音もないのに理解できた。宇宙人とツーカーというワケはないはずだから、どうもテレパスしてきているようだ。
 たしかにいつまでものらくらと遊んでいるようなこのままの暮らしぶりではいかんかしらん。と一瞬は考えたがイヤ待て、アンタ何テレパスしてきてんの。というか、どなたか。人違いではありませんか。
 あら。あらまあ。のような宇宙人の電波的な何かが伝わってくる。
 なんか、こちらが嘘を吐いているとでも言いたそうな電波だ。嫌いじゃないけど。嘘吐くの。しかし宇宙人がテレパシーて、設定としては割とベタだと思ってたけど、実際もそうなのねそんな気がしてた。と感心しつつ、でもあれっておたがいに出来なければ成り立たないんじゃないかと考えてたんだが、出来ちゃうもんなのだなあ。
 みたいな感じのことを、もじゃもじゃと頭の中で巡らせていたら、脳味噌に、ぼわんが届いた。
 これは、ため息かな。
 妙にこの「ぼわん感」が懐かしいような錯覚も、ないではない。
 ちょっと考えたら分かるじゃない。というような意味な気がした。
 や。と返す。分かんないなあ。
 ああ、忘れはしても、変わりはしないのね。と宇宙人はいつの間にか納得しているふうだ。
 やはりツーカーなのか。それとも、一度UFOにさらわれたことあったっけか。
 昔の事って、あまり覚えてない。
 宇宙人は、再び「ぼわん」として、桜の散った夜の中にふわふら消えていった。
 今度はさっきとは少し違っていたような、なんか、また現れそうな去りぶりだった。
 何だったんだろうか。
 温い空気のせいか、まだ四月も半ばだというのに、すぐ夏だなあと思う。
 昔どこかでだれかと、何か機械の前で、いや、扇風機だっけかな、きっと、
「わわわわわレレレレレわわわわわレレレレレわわわわわ」
 とか言っていたかいなかったか、真偽の分からないおぼろな記憶を伴って、ま、春も終わりかー、とすっかり散り切った夜桜を眺めながらやっぱりなぜだか宇宙を感じた。
「宇宙」「嘘」「ツーカー」

 まあ、私がこれからお話しするのは全てが嘘なわけでして。だから、どうか信用しないで下さい、私の話は。そして信用しないで、どうか最後までお付き合い下さい。
 あれは、去年の暮れのことでした。いいえ、正確には、四年前の年の暮を半年後に控えた暑さの厳しいころのことだったと思いますが、正確には覚えていません。私はそのころ大学生、……に憧れる高校生、……だったころを懐かしんでいたような頃でして、年齢で言えばちょうど三十四五六歳から八九歳だったでしょう、その頃私は、宇宙についてとても興味を持っていました。
 宇宙の広さはどれくらいなんだろう、宇宙の起源は何なのだろう、宇宙に外側はあるのだろうか。
 私は、書店に行って宇宙に関するあらゆる書籍を買い集める……程のお金もありませんでしたから、家にこもってパソコンの前でコツコツインターネットで検索……できればよかったのですが、その当時はまだインターネットなんてものがない時代でしたから、ちょうどその時、大学の頃から付き合っていたトオルとかいう名前のアユムという仲のよい仲間がいましたから、――ツーカーの仲、とでもいうのでしょうか、とにかくその後藤という同い年の一個上の先輩と、週末に図書館に行ったりして、宇宙についていろいろと調べるふりをしながらいびきをかいて居眠りをするわけでもなく、まあ、手あたり次第文献に当たっていたわけなんです。
 ここまでのお話を、一回整理しますか? いいですか。ああそうですか。
 そしてその後藤が発見したのです。なんと、私たちが宇宙について研究を始めるはるか以前に、アメリカという中南米の国が「アポロ計画」とかいうお粗末な計画を立てて、月面に人間が着陸したという絵日記を公開しているという記事を。
 私は驚いて斎藤の――あ、いえ、後藤というのは大学時代に仲の良かった先輩で、その当時図書館に一緒に行っていたのは斎藤だったのですが、とにかくその後藤のような斎藤の顔をまじまじと見つめて、こう叫んだのです。
「これは、まずいぞ」
と。
 そうです、その斎藤とは、中学の頃から「即席めん研究会」というのを、もう一人田村という、これは私の友人の中で唯一の女性だったわけですけれども、そのアユムという女性と一緒に「即席めん研究会」というのをやっていまして、スーパーの棚に新商品の即席めんが並ぶと、すかさず買ってきて、いつも斎藤の家で三人で食べていたんですね。で、ある日、
「これはまずいぞ」
と叫んだわけです。私か、アユムがです。
 とにかくその新商品は、小分けの袋の多さの割には、出汁が効いていないんですね。麺も腰がありませんし。だから、「まずい」と評価したのは至極まっとうなことだったわけなんです。
 ところがですよ、普段はおとなしく自分の意見など主張したこともない斎藤が、その時ばかりは顔を真っ赤にしにして、こう言うんです。
「これの、どこがまずいんですか!」
 私は驚いて、再び文献に目を戻しました。
 ――話の整理は、大丈夫ですか? なら、先を続けます。
 後藤が指さすその資料には、確かに人が月面に到達したように見える写真が載っていました。だから私は、こう言ったんです。
「まだ間に合うかもしれない。人類は、まだ月にしか到達していない」
ってね。
 そうしたら、そこにいたアユムが――えっ? アユムは、最初からそこにいましたよ。私の話を、ちゃんと聞いていましたか?
 そのアユムが、言うんです。
「俺たちの夢は、まだ終わっていない」
って。――だから、アユムは男性ですって! なぜそんなことまで言わなくてはわからないのですか?

 田村はズルズルズルっと麺をすすりながら、
「この麺は、画期的だよ。今までの即席めんの中では!」
と、瞳を潤ませています。
 そして私は感極まって、後藤と肩を組みながら、
「アメリカとかいう、最先端のヨーロッパの国でも、まだ月までにしか到達していない。チャンスは、僕たちにもまだある!」
と気炎を上げたのです。
 そしてその場で、
「僕たちが五十歳を迎えるまでに、僕たちの乗り込んだ宇宙船を火星に飛ばそう」
と約束をしたのです。
 さあ、そんな約束をしてしまったものだから、そのあとが大変です。私たちはとにかく、宇宙船を飛ばすための資金を集めなくてはならなくなりました。
 どうやって宇宙船を飛ばすか、どこから飛ばすか、何日で火星に着くのか。そんなことは二の次です。とにかく、宇宙船を飛ばすお金を集めなくてはなりません。
 アユムは、大好きだった即席めんを買うのをやめて、その日から毎日こつこつと貯金を始めました。
 田村だって、後藤だってそうです。もともと彼らにだって、趣味がありました。田村は、何かが好きでしたし、後藤だって、――そう、何かが好きでした。とにかくその好きなことをやめて、毎日十円を豚さん貯金箱に入れていったのです。
 私だって例外ではありません。毎日の苦しい家計の中から、少しずつお金を貯めました。いつか、アメリカとかいうアフリカ大陸にある国より先に火星とかいう木星に到達できる日を夢見て、毎日六円ほど貯金しました。
 その間の私の生活の苦しかったことと言ったらありませんでした。職場へは電車で行くと嘘をついて、毎日歩いて通っていました。電車でも一時間かかる距離ですから、歩くとその二倍くらいはかかります。それを毎日、タクシーを使ったり歩いたりしながら通ったわけです。
 そんなみんなの努力の甲斐あって、私の同級生がみんな五十歳を迎える、ちょうど私が四十五歳の年になるまでに、八十二万円もの資金を貯めることに成功したのです。
「やった!」
「よかったね。よかったね」
 私たちは、互いに抱き合いながら、瞳に涙を浮かべて喜びました。
「これで、宇宙に行けるね」
「アフリカとかいう、アメリカを超えることができるね」
と。
 そしていよいよ、ロケットを飛ばすために、どうすればいいかわからなかったから、近所の焼き鳥屋さんに相談して、とりあえず地元の中古車販売店に相談に行こうと思っていた、三日前から四日後のことです。
 私が、みんなから預かっていたお金を確かめようと、内ポケットのないジャケットに合わせると結構似合いますよ、と店員さんに勧められて買ったタイトなジーンズのお尻のポケットに入れて置いたはずのお金の入った封筒の入った封筒を取り出そうとした時です。
「あっ! しまった!」
 思わず声を張り上げました。
 いくら探しても、お金の入った封筒の入った封筒が、見当たらないのです。
 店員さんがびっくりして、
「どうか、なさいましたか?」
と尋ねるので、私はとっさに、
「いいえ!」
と答えてしまいした。
 でも、その目が血走っていたせいでしょうか、店員さんが、
「どうか、なさいましたよね?」
と、また聞き返してくれるではありませんか。
 私はこの時、「ああ、神様はいるのだ」と、そんなことを心に思いましたが、そんなことは口にしませんでした。
 そして、やっとの思いで、極力平静を保ちながら、店員さんにこう言ったのです。
「宇宙船を買う予定だったのですが、今回は、要らなくなりました」
 その時、その場にもし斎藤がいてくれなかったら、私はどうなっていたでしょう。
 すぐさま、トオルがこう言ってくれたのです。
「今日はお金を忘れました。でも、お金は必ず持ってきます。たったの七十万ですよ? それくらい、いつだって用意できるのです」
 そしてそのあと田村が続けました。
「そうです。後藤の言う通りです。とにかく、宇宙船を買わせて下さい。お金は、明日から千年以内に必ず持ってきます」
「そうです!」
 これは、もはや誰が言ったのか、わかりません。
 私たちが、こうまで真剣になって懇願するからには、店員さんも、了承せざるを得なかったようです。
「わかりました。とにかく、お支払い頂ける、ということですね?」
「はい!」
 その場に居合わせた私は、他の仲間たちの思いまで込めて、返事をしました。
 というわけで、私には今、お金が必要です。
 いくらでもいいです。百円でも、百万円でも。
 今から私の言う、安藤という、ミノルさんの口座に、あなたのお好きな額を、振り込んで下さい。

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