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物理学コミュのマンジット・クマール著『量子革命』(新潮社)

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久しぶりに夢中になって読んだ本であり、本当に面白かったです。この本を読むと、アインシュタインとボーアを中心とする量子力学の泰斗たちが、量子力学の解釈の仕方をめぐっていかに激しい論争を続けてきたかが生き生きと描かれています。登場人物の中心はアインシュタインとボーアですが、量子力学の端緒を開いたプランク、量子力学の推進に大きく貢献したハイゼンベルクやシュレージンガーといった人たちの業績も詳しく説明されています。

アインシュタインは最後まで量子力学の完全性に疑問を抱き続け、量子力学に論陣を張る泰斗たちに論争を挑み続けました。アインシュタインの物理学の核心にあったのは、観測されるかどうかによらず、「そこ」にある実在へのゆるぎない信念だったといえるでしょう。一方、ボーアの物理学への考え方は、物理学とは、観測行為をつうじて自然界がどのように記述できるかを考察することであって、観測行為に依存しない客観的実在のモデルを構築することにあるのではないというものでした。

本書のだいぶ後の方ですが、ジョン・スチュアート・ベルという物理学者が登場します。私はこの人のことをほとんど知りませんでした。ベルは「ベルの不等式」というきわめて斬新な発想を生み出します。もしもベルの不等式が成り立てば(実験データがこの不等式の成立を示唆すれば)、量子力学は不完全だというアインシュタインの主張が正しいということになる。一方、もしベルの不等式が破られれば、ボーアが勝利者として立ち現れることになります。そしてアインシュタイン対ボーアの対決は、実験室に持ち込まれました。

そんなとき、アラン・アスペという才能ある実験物理学者が現れます。彼はカルシウム原子から同時に放出されて、互いに逆向きに飛び去るエンタングルした2個の光子を使って偏極の相関を測定することによって、ベルの不等式がどれくらい成り立っているか、あるいは成り立っていないかを検証しました。すると、それまでに行われたどの実験よりも、ベルの不等式が大きく破られていることが示され、その結果は量子力学の予測と見事に一致しました。

こういった実験結果から、アインシュタイン対ボーアの論争は、一応ボーアが勝利したと考えられました。だが、最近、この判定は見直しを受けているようです。実際、量子力学を記述する数学には、「観測者」というファクターは含まれていません。例えば波動方程式の中に「観測者係数」とか「観測者関数」などというものは存在しません。また、いわゆる「波動関数の収縮」については、量子力学は何も語っていません。つまり、どういう観測行為から、どういうメカニズムで波動関数が収縮するのかといったことは全く記述されていないのです。

数学者で物理学者でもあるサー・ロジャー・ペンローズは「私自身は、微視的なレベルよりもさらに下層の世界が実在し、今日の量子力学は根本的に不完全だというアインシュタインの確信を強く支持している」と述べています。

物理学のコミュニティの皆さんの中にこの本を読んだ方がいらっしゃるようであれば、ぜひ感想を伺いたいです。

【目次】

プロローグ

第1部 量子
第1章 不本意な革命―プランク
第2章 特許の奴隷―アインシュタイン
第3章 ぼくのちょっとした理論―ボーア
第4章 原子の量子論
第5章 アインシュタイン、ボーアと出会う
第6章 二重性の貴公子―ド・ブロイ

第2部 若者たちの物理学
第7章 スピンの博士たち
第8章 量子の手品師―ハイゼンベルク
第9章 人生後半のエロスの噴出―シュレーディンガー
第10章 不確定性と相補性―コペンハーゲンの仲間たち

第3部 実在をめぐる巨人たちの激突
第11章 ソルヴェイ 1927年
第12章 アインシュタイン、相対性理論を忘れる
第13章 EPR論文の衝撃

第4部 神はサイコロを振るか?
第14章 誰がために鐘は鳴る―ベルの定理
第15章 量子というデーモン


用語集
謝辞
訳者あとがき
年表
索引

コメント(7)

面白そうですね。その前に量子力学を勉強しないと。
大丈夫だと思います。これを読んでから量子力学を勉強するという順番でも十分いけると思います手(パー)
最近読みました。
内容を一言で表すと「量子力学はいかに創られたか」といったところでしょうか。

質問トピにも書きましたが、この本によるとEPR論文の問題提起により量子もつれが発見されたように読めます。
量子力学からは量子もつれを予想することはできないということでしょうかね。
最近、NHKで超常現象を科学者が解明する、という番組をみました。集団で興奮するときにランダム装置に確率の偏りが見られる、というものでその原因として量子もつれの可能性を論じてました。量子もつれはミクロな現象だとおもいますがマクロでもありうるのでしょうか?また最近の脳科学で究明されている意識と神経回路との関係に興味がありますがペンローズの量子脳のような事はあるのでしょうか?意識は量子的現象なのでしょうか?
面白い本でした。
「物理的な実在の要素はすべて、その物理理論のなかに対応物をもたなければならない」
つまり、
「ある物理量の値を、確実に(確率1で)予測することができるなら、その物理量に対応する物理的実在の要素が存在する」
というアインシュタインの主張は、ψの解釈においてさすがに古めかしく感じました。
現在のように物理探査が高エネルギー領域に及ぶ分野では、物理的実在は理論の検証をもって実在とすると思います。
人間が自然を理解するうえでテクニカルな数学を基盤に構築された理論を、観測によって確かめる以上、対応物がデータの量と精度により「たしかにある」か否かを判定する方向に転換してきたのでしょう。
そんな意味では、まさに流れが変わった(思想が変わった)『量子革命』という過渡期を描いた本だったように思います。

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