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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第130回『まだ、愛されたいオス』チャーリー作(自由課題)

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 女性から、紳士的だと言われる。
 優しく、人が良く、女性への敬意を欠かさない男性だと言われる。
 そのたびに、いたたまれなさと寂しさを覚える。
 「そんなことない」と否定しても、女性は俺が謙遜しているだけだと信じて疑わない。無邪気な彼女たちの称賛を浴びると、ますます男であることが嫌になる。いっそのこと、自分の本性をあけすけにぶちまけてやろうかという気にさえなる。
 でも、そんな勇気はない。もうこれ以上、女性に嫌われたくない。
 だから俺はひたすら紳士を演じている。



 中学生の頃、女子に痴漢していた。
 当時は、異性とまともに会話できないほど、奥手だった。どう話しかけていいかもわからず、もじもじした。視線が合うだけで真っ赤になった。
 その一方で、頭の中はセックスのことばかりだった。女子の裸への好奇心が強く、性欲が抑えきれなかった。常識的な段階を踏むことができず、やり場のない性欲は、女子の尻を触るという衝動で発露した。
 十二、三才なら、自分がどんなにいただけない行為をしているか、自覚はあった。
 だから初めは恐る恐るだった。全校集会の移動など、人ごみでコソコソ触った。というより、手のひらをそっと当てる、または偶然当たったように装っていた。
 しかし、幸運なことに誰にも気づかれなかった(あるいは気づかれていたのかもしれないが、大事にはならなかった)。それをいいことに病みつきになった。廊下のすれ違いざま、教室、学習塾、プール。果ては学校を飛び出して、家族旅行中のテーマパークで。相手の人数や回数は数えたことがない。とにかく、機会を見つければスカートの中に手を差し込んだ。
 触るのは、いつも尻だった。取り立てて尻に興奮していたわけじゃなかった。
 胸はすぐに気づかれるだろうし、局所まで手を伸ばすのも発覚の恐れがあるように思った。下着をのけて、その下に指や手を入れるのもためらわれた。相手が気づいたときにすぐに手を引っ込めることができないし、下着に指を取られて抜けなくなったら目も当てられない。そういうところだけは頭が回った。
 でも、バレるのがただ怖かっただけだった。
 相手は誰でもいいわけじゃなかった。みんなから好かれ、注目を浴びるような、可愛くてきれいな子を好んだ。
 繰り返すが、そういう子に話しかける勇気はない。でも憧れの女子と、どこかでつながっていたかった。俺にとっての唯一の女子との接点は、痴漢だった。
 話して仲良くなるだとか、告白するだとか、そんな気はなかった。女子は性欲の対象で物と同じであり、尻しか見ていなかった。その暖かくて、丸みを帯びた柔らかさを手で堪能するための存在に過ぎなかった。たとえ手や指先に残るのが、ポリエステルや綿の無機質な生地の感触だけだったとしても、俺は満足していた。
 物事には何にせよ、初めと終わりが付き物だ。ましてや、大っぴらにできないような行為なら、終わりが来るのも早い。
 痴漢を止めたのは、やはりバレたからだった。
 しかしそれは予想もしない形だった。痴漢している最中に大声を上げられ、手首を捕まえられて教師や警察に突き出されるとか、そんなわかりやすいものではなかった。いっそ、そんなふうにみんなの前で糾弾される方が良かったかもしれない。
 ある日の塾だった。
 授業中、いつものように前の席の女子の隙を窺っていた。
 通っていた塾の教室は、席の間の移動に困るほど狭く、前後の席は机一つ分の間隔を残して密着していた。簡素な会議机と背もたれのない長いすで、机の下から手を伸ばせば、誰にも悟られることなく、前の席に手が届いた。
 そのとき痴漢していた相手は、初めて触る女子だったと思う。塾に通っていたのは、同じ中学の同級生がほとんどで、その子はクラス内でも目立つグループにいた、姦しい女子だった。
 自習の時間で、講師がいなかった。リラックスしたその子は上半身を机の上に横たえ、ちょうど後ろの席の俺に尻を突き出すような姿勢で座っていた。
 俺にとってはいい獲物も同然だった。周囲に目を配って慎重に手を伸ばし、指先で尻の形をなぞるように触った。張りのあるゴムボールみたいで、その触り心地に思わずうっとりした。講師のいない気のゆるみから、つい俺は調子に乗った。気がつくと、舐めるように手の平でじっとり撫でてしまっていた。
当たり前だが、相手は気づいた。彼女は突然のことに戸惑ったように身じろぎした。こちらを振り向きはしなかったが、その背中は言葉よりもはっきりと「何か触れたような気がしたが、気のせいだろうか」と語っていた。それでも俺は執拗に撫で回し続けた。性欲の奴隷になったように俺は尻を手で味わった。とうとう彼女は確信を深めて、姿勢を起こした。ちょうどそのとき講師が戻ってきたので、俺は慌てて手を引っ込めた。その日はそれで終わり、何事もなかった。
 だがその翌日か、翌週の塾だった。
 登校し、教室に入ると、彼女が同じ中学の男女に痴漢を打ち明けている姿を目撃した。 ガヤガヤと騒がしい教室の黒板のあたりで、彼女は神妙な面持ちで、こちらを盗み見ていた。ちょうど俺の席は教室の後ろの方だったので、彼女たちの会話の中身は聞こえなかったが、その表情や様子から被害を訴えているのは明らかだった。相談されていた男子は、あからさまに困惑した目で俺を見ていた。
 俺は平静を装いながら、真っ青になっていた。
 とうとうバレてしまったという恐怖が、渦になって俺を飲み込んだ。この後待ち受けているだろう、痴漢相手の女子からの追及が怖くて、俺は教室を飛び出したくなった。でも無意味に逃げれば、かえって相手の疑いを深めるのではないかと勘繰った。結局、俺はどうすることもできず、何をする勇気もないまま、授業を受けた。その時間は、囚人が死刑を待っているかのような拷問に等しかった。
 それに関わらず、俺は断罪されることはなかった。
 いつ相手から肩を掴まれるのかとビクビクしていたのに、相手の女子も相談を受けた者たちも、何もしなかった。後日、呼び出しがあるのかと警戒もした。しかし職員室やPTAに呼び出されることもなかった。
 その代わり、俺は痴漢した別の相手から思わぬしっぺ返しを食らった。
 塾の一件から何週間も経った後だと思う。中学の教室でそれは起こった。
 そのときも自習の時間だった。中学生がおとなしく自分の席に座っているわけもなく、みんなそれぞれ親しい友達同士で集まったり、席を移動したりして思い思いに過ごしていた。
 ある女子が、さりげなく俺の近くにやってきた。クラスの中でもとびきり可愛いと評判の子だった。お世辞抜きに、アイドルグループのセンターを張れそうくらい、人目を引く美貌の持ち主だった。もちろん以前から繰り返し痴漢していた相手で、塾で発覚した後でさえも、俺は何度も性欲のはけ口にした子だった。
 彼女は表向き、俺には用はないという風に振る舞っていた。俺の隣にいた女子を話す振りをして、俺に背を向けた。
だが、次の瞬間、俺は驚きで心臓が高鳴った。その子は立ちバックでもするような姿勢で、机にひじを置き、こちらに尻を向けてきた。何度も撫でさすった、丸くて柔らくて形のいい尻を大胆に俺の目の前に突き出した。
 あからさまに俺を誘惑しているのだった。
 思わぬことに、俺は頭が真っ白になってその場に伏せった。机の上で組んだ両腕の中に顔を沈めて、必死に眠ったふりを装った。昼休みや放課後なら、慌てて教室を飛び出していただろうが、そのときは席を離れることは許されなかった。
 そのときになって、ようやく俺はクラス中に痴漢行為がバレていることを知った。
 塾での行為は、いつの間にか学校中に広まっていたようだった。俺は中学でも塾でも見境なく痴漢していたから、噂が広まるのは当然だった。
 冷や汗が噴き出した。塾では発覚しても中学ではバレていないと思って、痴漢を繰り返していた自分がたまらなく惨めだった。
 こんな責め苦を味わうなら、親や教師に知られて転校処分にでもなった方がいくらかマシなような気さえした。でも、そんなことを白状する勇気はとうとうなかった。
 高校進学を機に、二度と痴漢はしないと誓った。ようやく自分の行為を改めようと反省した。でもいくら内省したところで、それは本当の贖罪なのか。ただの自己満足じゃないのか。その証拠に、いつも過ちの影は俺について回った。
 高校には、俺が痴漢した相手の子が何人も進学していたし、同じクラスにもなった。彼女たちから過去のことを触れることは一切なかったが、逆にそれが俺の罪悪感を一層色濃いものにした。卒業し、地元を離れて東京の大学へ進学して忘れた(許された)ような気になっても、それは束の間だった。
「お前。中学のときにクラスの○○さんに痴漢したのバレて、土下座したんだって?」
 帰省して地元の友達との酒の席で、唐突にそんな話を聞かされ、肝をつぶしたこともあった。噂が妙な尾ひれをつけて、いまだに蔓延していることに恐怖を覚えた。冗談言うな、と酔っぱらったふりをして笑ってごまかすのが精いっぱいだった。それから地元の友人には会いづらくなり、何のかんのと理由をつけて距離を取らざるを得なくなった。
 だが、それは大したことではなかった。
 痴漢をやめた高校以来、奥手な俺も徐々に女性を一人の「人間」として見ることができるようになった。性欲のはけ口や道具のように見る目を改め、理性的に接しようと努めた。女性とまともな会話をし、段階を踏んで常識的な関係を築けるようになってきた。
幸運なことに、ある女性と付き合うことができた。
 相手は年下で、女子大に通う大学生だった。男と付き合った経験は一度もなく、セックスに関しては初心そのものだった。手をつなぐだけで頬を赤らめるほどで、その姿はたまらなくかわいかった。
 彼女と付き合った日々は、遅い青春がやってきたかのようにみずみずしく、幸せに満ちていた。なにより彼女が、俺のような男を好きでいてくれることがただ嬉しかった。
 しかし相手の気持ちを知れば知るほど、俺は自己嫌悪に陥った。プラトニックな関係に幸福感を覚える一方、俺は彼女に欲情していたからだ。セックスへの渇望は、痴漢をやめてからもずっと俺の中でとぐろを巻いていた。したい。やりたい。彼女を思い浮かべるたび、妄想がふくらんだ。彼女と会ってしゃべっているときでさえ、止まらない。今すぐここで服を脱がし、どんな乳房か、アソコか。色や形、肌触り、匂い、味をたしかめたくて仕方なかった。
 その一方で、彼女をセックスの対象として見ることに嫌悪感も覚えた。性欲のはけ口、道具。痴漢した後、尻の感触を思い出しながら、触ったその手でオナニーした昔のように、彼女とつないだ手で陰茎をしごく自分を殺したくなった。「じゃあまた明日ね」と言って別れ際にハグしたときも、火であぶった鉄の棒のようにペニスは熱く勃起していた。それを悟られたくなくて、隠すのに必死だった。
 好きな相手とセックスを通じて結ばれたい気持ちと、自分の性欲の醜さを大好きな人の前で露わにするのが怖くて、感情はぐちゃぐちゃになった。結局彼女とは一線を超えられないまま、別れた。
 そのあと、三十代に入っても童貞だった。何かに突き動かされるような焦燥感を覚えて、衝動的にソープへ行った。ソープ嬢なら、相手だって性欲のはけ口とされることを受け入れている。そう言い聞かせて、しようとした。それなのに中折れして最後までできなかった。
 女子の尻を撫でまわしていた男は、金を払い同意している女性にさえ、性欲をさらけ出すことに後ろ暗さを覚えていた。
 俺は、生きている女性とセックスできない。
 パンツの布ごしなら性欲をぶちまけられるのに、生きた人間として相対すると一気に萎えてしまう。そんな自分の身勝手さがたまらなく不快だった。女性の嫌がる行為でしか興奮できない。セックスする勇気もない。
 痴漢をしていた俺は、健全なセックスができない。そういう宿命なのだと悟った。過去の償いは、不能という形で降りかかってきた。
 男であることが嫌になった。性欲さえなければ、こんなことにならなかったのにと思った。
 去勢すれば許してもらえるのだろうか。性欲がなくなれば、呪いのような罰は終わるのだろうか。
 罪滅ぼしの機会を探しながら、一方では見苦しく未練を抱えている。
 いちゃつくカップルを見るたび、後ろめたさも罪悪感も覚えることなく、互いに望んでセックスできる関係がうらやましい。
 俺もいつか、そういう関係になれるのだろうか。そう望んで、ひたすら自慰をしている。


<了>

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