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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第17回 たかーき作 コミュニケーション(2)

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その人は、俺の事を後ろから見ているようだ。
何故、俺の後ろにいる?なぜ俺を見ているのだろう?それはわからない。しかし、俺は、なぜかその人の考えが、直感的にわかった気がした。かなりネガティブなオーラが出ている。どうも今俺の後ろで、何か寂しそうな感じで立っているみたいだった。俺の後ろにいるはずなのに、俺は、なぜだろう。その人がこの目で見えた気がした。
いや、気がした、じゃない。俺の後ろにその人がいる。その人は、真っ黒な姿形で顔つきが全くわからない。しかし、ハッキリした感覚として、見えたと思った。何より不思議だったのは、俺は、その人の事を知ってる気がした、という事だ。その人は、まさに俺の右肩に、その寂しそうな手を置こうとしていた。
「えっ」
俺は、後ろを振り返る。
するとその瞬間、今さっきまで網膜の、いや、網膜ではないけど、この目と脳の間のどこかに、影として焼き付いていた、その黒い人は、今この目に映し出される光景の中心から消えてなくなっていた。長い間影を見続けた後に何もないところを見た時のように、その輪郭だけは残っているようでも、それはすでに俺の脳の中に存在しているだけ。
「どこに行ったの?」
俺はそう口に出して言った。そして、それを言った次の瞬間だった。俺は震えた。壮大な錯覚をしているんだという事に気付いて、はっとした。その人がどこに行ったのか、という事じゃない。

そんな人、初めからいなかったんだ。

「まさか?」という感じがした。入ってしまったんだ。と思う。いや、実際そうなっている。聞くまでもない。入ったんだ。
急に落ち着かなくなってきた。今、ここにいる自分が、一瞬の内に自分ではない誰かにすり替わってしまったような恐怖で、心の奥が震えてきて、そうなると、いよいよ何もかもが危ない気がした。その震えも、自分の精神が震えているのか、物理的な震えなのか、よくわからなくなってきた。このままでは、持っていかれると思った。自分をキープできない。自分はどんどん持っていかれる。
そう思って、落ち着いて気持ちをハッキリさせようと決意し、深呼吸をしたところ、それが功を奏したのか、だんだん感覚がはっきりしてきた。その心の奥底に感じていたはずの震えは、実は心理的な錯覚でもなんでもなくて、実際に自分の肩から先がカタカタ震えているだけに過ぎなかった。より具体的には、それは実は外圧的な影響による震えだ。周りから、自分の両腕が、なんかこう、カサカサカサとゆすられている、という事だったのだ。
「蜘蛛がいる?」
ふと、そんな風に思った。きっと単に虫が腕に付いているのだろう。自分の右腕がかなりはっきり、もぞもぞ、もぞもぞと動いている。でも、左腕だけだ。どうも左腕だけがずっと震えてるらしい。動いている感じがする。よくわからないけど今、もぞもぞするって。ずっと精神的な問題だと思ってたけど、そうじゃなくて、実際問題として、今、虫がついてるから、もぞもぞ、もぞもぞって。
「蜘蛛!」
ウワーッ!と俺は、自分でもまるで意味がわからないくらい突然に叫び声を上げた。右手で思いっ切り、左腕をバッバッバッと、何度も叩きまくっていた。俺は、今、自分が急に驚いた事に対して驚いていた。
痛い。叩かれた腕が痛んだ。右手をどけて、叩いた個所を見てみると、そこには、ただ腕があるだけだった。ただの俺の腕。激しく叩いたせいで潰れてしまった蜘蛛の死体が緑色の血を流している…わけでもない。そこには一本の人間の腕が俺の肩から、生えてるだけだった。俺の目には確かに腕が、映っている。
蜘蛛が確かにいたと思う。妄想?俺には、妄想だと思えない、どう考えても、今そこにいたとしか思えない!でも、そうしたら、本当はいなかった。
蜘蛛なんて、いなかった。
「…え?あれ?」
俺は、その時怖さと、好戦的な気持ちと、嬉しさとが混然一体となった感情にいる事に気付いた。…そうだ。なんかわからないけど、俺は今、もう何が起きてもおかしくない状況になってしまったらしい。何が来ても、誰に襲われても戦わなきゃいけないのだろう。どこから来る?何が来る?わからない!わからないんだ、突然何かに襲われそうで!
そう思っていると、「何か」ではなくて、今度は本当に、この「空全体」が、まるで俺を呼んでいる気がした。妄想じゃない。これははっきり感じるから、妄想じゃない。空が俺を見てる。そうとしか思えない。
「さっきの人だ。まだ俺の事、見てる?」
俺はあの黒い影の人が、空にいるんだと思った。空から、心臓の鼓動が聞こえてくる気がした。でも、じっと空を見つめても、そこには黒い空に、星がキラキラと煌いているだけ。何にもいやしない。それなのに俺は空に眩暈がして耐えられない。あまりにも大きな力を感じる。

何だよ。
何だってんだ、これ。
でも、ああ、何だろう、「こういう事」じゃん。
「こういう事」なんだよ、まさに言葉じゃなくて、体全体で俺、言うけど、「こういう事」なんだよ。
あれ、さっきから俺の耳に入ってきているのって、サイケの音だよね?やばい。おかしい!音が、音として入ってこない。何かこう、音楽が巨大な揺らぎになって体を襲ってくる。怖い!何があっても構えていないといけないから、この先、相当やばいかも。本当に持っていかれてる。これは何だ?何かが体全体を包んでいて、それらが俺に対して、何だろう、敵意を向けている。
さっきの人のせいだ!さっきの黒い人、もういないけど、なんか、俺に何か言いたそうだったもん。その人の敵意?嫉妬?孤独感?っていうのは、なんていうか、わからないんだけど、それらの感情がこの空に溶けて、空全体が何かに変わっていくようだ。
やばい、なんか、まずい。けどとにかく言えるのは、凄い。
空がぐるぐるする。悪意で回ってるのか、自然の事として回ってるのか、わかんないけど、空という物が、上下でいう上って感じじゃない。天球っていうのかな。
ぐーっと、なんか引っ張られていく。遠心力で吸い込まれてるんだ。「上に」じゃなくて、「奥に」。宇宙の奥。
フラクタルみたいなもん。だって、大きくなっても小さくなっても同じ事になるから。なんていうか、うまく言えないけど、どんなに奥に行っても同じ事になるんだ。今は、宇宙はどんどん奥に行ってる。だから、大きくなっていくんだ、宇宙が。音楽に合わせて。でも、大きくなったらまた、元に戻るよ。そうして結局宇宙は小さくなる。
これって、空が本性を現しちゃったっていう事なのか。
空と言うのは丸いんだ。俺たちは上にあると思っていただけ。空っていうのを。3次元っていうのは上とか下とかを3次元っていうんだろうけど、4次元なんだよ、本当は。だって、今感じるんだもん。4次元なんだって。今まさに空と対話できてるのかな、俺って。
逆に凄いよね、普段の俺らってさ。空と対話してねーんだよ?空があるのに。
メルカトル図法だっけ。地図にあるやつ。本当は丸い地球を四角くしちゃうから、あんないびつでめちゃくちゃな地図になる。それが普段の見方。そうすると、俺たちが見てる全てって、近似みたいな感じなのかな。言葉で、柔らかい本質を無理に引き延ばしちゃって。宇宙に価値観なんて、漂うようにあるだけなんだ!どこかに止まってるわけない!価値観だって、人間だって、この大地だって。言葉って、物を止まってることにしちゃうだろ?でも本質は、言葉じゃないんだよ。
ああ凄い、繋がってる、繋がってる。自分が今中心にいて、空とか大地とか全部パノラマみたいに捉えてる。俯瞰、ってんじゃなくて、なんていうの?これ。逆に内側から見てる感じなの。今。レンズに移った宇宙って実はこういう風に見えるんだね。人もいるけど宇宙もそこに同時に存在してる。大地っていうのは、宇宙に突き出した岬のように出っ張っていて、本当は空の方が本質に近い。それは宇宙と繋がってる。俺たち人類は本質に歯向かうように突出した頂の、ほんの狭い先っちょで何かこねくり回してるだろ?それって全てを包含するこの宇宙に対して…、勝ち目、あんの?
木に、枝が生える。それと同じなんだよ。宇宙に俺達が生えてるって。音楽っていうのも実は、そういう事なんだ。音楽って宇宙の周波数だ。理屈じゃない。音は対象として聞くもんじゃない。音は鼓動なんだ。心臓も鼓動あるけど、全ての物事に鼓動ってあって、ほら、パソコンにも鼓動ってあるだろ?人間が作り出した物事はなんで鼓動を持っちゃうのかっていえば、俺たちが宇宙の枝だからだよ。物を作るっていうのは宇宙の末端である俺らが、宇宙の鼓動をそのまま複製してるんだ。木は枝を作る。宇宙も枝を作る。人間も腕をはやし、指をはやす。指先から意思を伸ばしてる。全部繋がってるから。宇宙の原理で動いてる。木も人間も星も音楽も、俺たちが作るあらゆる物事も、全部知らないうちに同じになってる。
繋がってる。俺のこめかみの辺りから、なんか入ってくる感じがする。多分、錯覚じゃない。妄想じゃない。だから、もう驚かない。
第一、普段からそう言う物は入ってきてるんだよ。空気中に波って絶対あるじゃん?風の波、音の波、重力の波…。って事は精神的な波だって、実は入ってきてる…、それは俺だけじゃないんだよ。全ての人に共通で、空間をあまねく、ユビキタスっていうの?漂ってて、それって実は誰でも繋がってるんだよ。今まで、そういう事って俺だけにしかわからないと思ってたけど、そうじゃなかったんだろ!
その精神的な波に敏感になれてるって事だろ?
それが調和だろ。コミュニケーションだろ!
そういう能力が解放されたんだ。
それって、凄い事なんだ…。

そう思いながら、俺は、頭の中で色々と考えが湧いてくるのにまかせ、地面に大の字になって寝ころんだ。
あー、これってなんだろう、ぶっちゃけると、気持ちいい。
空を見る。空の鼓動が聞こえる。いや、音楽か。でも、空の鼓動でも宇宙の鼓動でも、音楽は音楽だし、サイケはサイケだけど。はー、凄い、これ俺大丈夫なのかな。やばい。色んな事が繋がってて、ハッキリしてる。
俺は、自分が今どういう感触にいるのかを確かめたくて、目をつぶってみた。
目をつぶってみると、目を開けるより目を閉じる方がずっと明るい事がわかった。赤と青と黄色の縞模様が、太陽みたいにグルグル、ギラギラしているのだ。
きつい。やたらめったら引っ張られたり戻されたりで。もう少し落ち着いてもいいと思うんだけど。
その真ん中に、あれれ、人がいるのがわかった。
ぶかぶかのタイパンツを穿いている、男の人で、それはどこかで見た事のある顔だ。
ノブさん?俺はそう気付いた。ノブさんは何か服やらズボンやら、一生懸命に畳んでいるようで。まあそりゃ、忙しいんだもん、仕方がないよね。家族もいるし。仕事なんだよ。頑張ってるよね。
「ノブさん、何してんの?」
俺はその人に尋ねる。でも、返事はなかった。
「ノブさん?」
返事をしないノブさんの、その着ている服を見てると、カラフルなタイダイ模様だ。赤青緑黄色、いうより、この世の中にある全ての色を網羅してるようなカラフルさで、それが万物の理でも表現しているんだか何だか知らないけど、その服の色が漏れてるから視界一面がこんな色なんだ。
『あー。全然だめ。ホームレスになりそう。』
ホームレス?ノブさんは独り言のように呟いた。
「何言ってんだよ。大丈夫。空は許してくれるよ」
『カミさんは許してくれないよ〜。』
「なーに言ってんすか!そういうの良くないって!」
ノブさんは、やっぱりノブさんだった。
「ノブさん、俺さー、わかった。コミュニケーションの意味」
「うーん」
ノブさんは、仕事に追われている。俺の雑談には耳を傾けてくれないのかな。
『ノブさん焦らせてもだめだよ〜』
と、聞き慣れた女の子の声。ちょっとしゃがれてる、いつも聞いてる声。ミカちゃんかな?
「あれ、ミカちゃん?すごい格好だね!」
暗闇の奥の方にいる、その不思議なミカちゃんは、オレンジ色のベレー帽をかぶって、茶色の髪の毛の先端にはピンクや水色のエクステを何本も付けていた。両頬には真っ赤な色を塗っていて、なぜか緑色の口紅。ミカちゃんにしちゃ、ちょっと、オフザケが過ぎるかなあ。
服も服で、とても柔らかくてひらひらした、亜麻色の素材でできていて、何の模様だか全くわからない、でも何かの意味はありそうな象徴画のような模様が描いてあった。
『ネパール行ってきたのさ』
たばこをふかしながらミカちゃんは、とても幸せそうな、素直な笑みを浮かべて話している。なんだか、子供に戻ったようで可愛い。
「そうだったんだ?」ネパールのファッションなんてわからないけど、これがそうなんだろう。
『高かったさ〜。』
「何が?」旅費の事なのか、服の値段の事なのか。
『標高』
「そ、そうなんだ」
そりゃそうだよな。ネパールの話してる時、高いって言ったら、標高以外ないだろ。鈍すぎる。何で俺は、その程度の文脈も読めないんだろう?
『Nくんも、一緒にネパール行くんだよ〜』
黒い煙がモクモクしている。その黒い煙は、自由を表しているんだ。きっと。
「俺が、ネパールに行くの?」
『Nくん、もっと自由になりな?』
「ミカちゃん、嘘だろ?」
ミカちゃん、今、目が笑ってない。言ってる言葉は、たばこの煙にかき消されて、今ミカちゃんの言う言葉を聞いたら、自分は、真っ黒になってしまいそうだ。
たばこ?たばこだよね?たばこを燃やした時よりもずっと黒い煙だ。それがだんだん立ちこめてきた。黒さでミカちゃんの顔も、どんどん黒に覆われていく。黒い顔。その目が俺の方を見てきて、俺は凄く、不安な気分になってきた。
『N君?』
その人はもうミカちゃんじゃなくなった。
「あれ、さっきの黒い人?」
俺の前に見えたのは、確かにさっきの、黒い人だ。
「なに?えっ?」
その人は、確かに黒い人だった。おかしい。あれはただの幻覚だったはずなのに。黒い人は、俺の目の前に呆然と立ち尽くしている。怖い。何を考えているのかわからないし、その人は誰なのかもわからないんだ。全然表情が見えないし、何をしようとしてるのかも!

「はーっ!」
俺は大きく息をして、俺は目を開けると、まぶしくぎらついた世界はシャットアウトされた。
そうすると、目の前にはもう、あの怖くて黒い人は、どこにもいなかった。開けた視界一面には、ただ暗い空があって、それは押しも引っ張りもしない、奥行きもない、固定されたいつも通りの暗闇に戻ったようにも見えた。星が沢山綺麗に照り輝いている。ちょっとゆがんでいないと言えば嘘だけど、やっぱり空って平べったい。線を引けばそのまま星座を描けてしまうみたい。
等時性のある正確無比な音楽が、歪まずに時を刻み続ける。
さっきよりも、薬の効き目、落ち着いたのだろうか?
手を、空に向かって伸ばしてみた。その腕を見て、
「蜘蛛、いるわあ」
と、一人で俺は嘘を言ってみた。
いやいや、見ての通り、蜘蛛なんていない。尤もそれは、見えている物だけを信じればそうなるだけで、見たい物を実際にあると信じれば、蜘蛛はいるんだ。でも、今はいないという事にしたいんだと思う。だから、いない。
「ウワッハッハハハ!」
自分が面白くて笑ってしまう。そうだ。見えているという事は、見えたいと思っているから見えているだけ。見えていないという事は、見えていない事にしたいから見えていないだけなんだよ!
でも間違いなく、蜘蛛がいてもいなくても、俺の腕は俺の腕だ。拳は握りしめたり、開いたりできる。つまり間違いなく俺の腕だ。
「ウヒヒ」
薬はまだ効果は続いているだろうか?さっきよりちょっと落ち着いた気もするけど、わからない。ただ、決していつもと全く同じ場所に戻ってきたようには思えない。いつもの現実と、今はまだ何かが違う感じだった。多分まだ俺は、嬉しいんだと思う。たまらなく嬉しい。今は積極的になれるし、何もかも、受け入れられる。壁も破れる。守る物なんてない。とにかくそういう感じ。
俺はすごく人と話をしたくなっていた。誰かと、何かを話したい。誰かと繋がっていたい。今なら心の底から繋がれる気がした。そんな気持ちがはっきりとわかってきたから、俺は立ち上がった。ふらつきそうになるけど、確かに俺の下半身には二本の脚が生えていて、靴底は地面を支えたから、ちゃんと俺の脳は体の末端の神経まで命令を出せてる状態なんだ。
さっきの公衆トイレの方に行こうとした。カナエちゃんたちがまだいるはず。
「あえ、N君?」
「うん。ウワッハッハハハ!」俺は返事をしながら、笑ってしまった。
「ちょ、やばいじゃん!どう?初めてやってみて」
俺は、感想を求められた。何だろう。いつもなら、別に、とか言っちゃうんだけど、今日はどんどん話したい気分になった。
「うーん、なんか、すごく色々見えちゃった」
「ちょ、何見えたんだよ!」カナエちゃんが笑いながらそう言った。
「く、蜘蛛とか」
「はー?」と、カナエちゃんは不満そうな声で言った。
「クモとかいっつも見えんじゃん!」
「え?そうなの?」
「私は綿菓子に見えた!」
「て、ちょ、カナエちゃん」
カナエちゃんは、勘違いをしているみたいだ。
「そっちの雲じゃなくて」
なんだか、話が噛み合わない。でもいい。結局みんな繋がってるんだ。ちょっとくらい噛み合わなくても。
俺は、バックに流れ続けている音楽を聴きながら、たまらなく酔いしれていた。何もしないでも体が勝手に音楽に合わせて動いていたし、音に沿って頭は揺れ続けていた。頭の中に光の渦を作る機械のようなな物があって、その蝸牛管みたいなところから、どんどん青白い音が漏れ出してきている。それに自分の体全体がもう持っていかれている。いつもドン、ドンという音に合わせて踊ってる感じだけど、今日はドゥルルル、ドゥルルルという細かい音にまで、もう全部体がついて行ってるし、精神もリンクできている。
「ちょ、N君、ずーっと体ぶるぶる震えてる!」
カナエちゃんは、面白がって俺の事をそう言ってきた。震えてる?俺は全然そんな気はしてない。
「震えてんじゃなくて、揺らしてるんだよー!」
俺は答えた。だって実際そうなんだ。体が細かい音の一つ一つを全部聞き分けているし、いつもわからない部分が聞こえてるんだ。サイケって、ただ単にそういう音楽なんだって思ってたけど、この宇宙とリンクできた時に聞こえるやばい部分っていうのが今わかってるから、それに体が全部反応できてるんだ。
俺は全身で、今俺が宇宙とリンクしている状態を表現したくなってきて、そのままシャンと立ち上がって、DJブースの方を見た。人、人、人。それらは等時性ある音に刻まれて支配されている。みんな一人一人は、動きたくて動いているのかもしれないけど、俺にはわかってる。これは儀式だ。みんな音楽を通じて宇宙とコミュニケーションしてる。俺もその仲間に入りたかった。それで俺は、ブース前にゆっくり歩いて行った。
音が、どんどんリアルに聞こえてくる。ターンテーブルから放たれる音が少しずつ近づいていくにつれて、体に、その、音の持つ匂いとか、音の持つ磁力の力によって俺の脳内の蝸牛管がどんどん右へ、左へと、傾いては元の向きに起きて、そのたびに俺は手を、グワッと上方向に伸ばしたり、脚をグニャーと曲げたり、ブルブルッと体全体を縮小させ、また全てを開放するかのようにパカッと開いたり。目をつぶりながら、ひたすら踊っていた。1音、また1音、出る。曲がる。萎む。跳ぶ。傾く。反る。回る。
やば、何だこれ。俺は今、踊りながら、サイケデリックトランスのプロモーションビデオの映像みたいに、瞼の裏側に頭の中に面白い映像をいくらでも浮かべる事ができていた。…キノコがたくさん生えている。キノコの先端が、ぱかっと開いて女の子が出てくる。何人も何人も。女の子は口から緑の光線をたくさん出して、その光が映し出すのは数百匹の蝶。羽ばたきは、今かかっている音楽に合わせて動いている。一ひら毎に、世界を上から見ている神様にその意思が伝わる。神様は、ついに目を覚ました。その右手を下界に伸ばして、全知全能なるその力を震わせると、音楽に合わせて、世界のありとあらゆる構築物が天に浮いていく…。
ふと、今かかっている音楽が、よりグルーヴィーというか、グニャグニャした感じの曲に変わったようだ。
その歪曲は、そうだな、神様のファンキーさを表しているんだ。神は、音に合わせて踊り出す。地上に咲き乱れるように飛び続ける色とりどりの蝶たちは、ピョンピョンととび続け、ついに空へ一斉に飛び立つ。空に巨大な蝶が。蝶は羽を思い切り広げると、地上に輝く鱗粉が。触れた人々、虹色に染まる。彼らは天を見る。神、地上へ力を送る。虹色に染まった人々、誰もかれも、その巨大なエネルギーになす術もなく、体が勝手に動き出した。みんな踊っている。踊るしかなくなって。
そこへ…うん?よくわからない人影が、悠然と歩いてくる。音楽に、体を揺らしながら。右、左、右、左、こっちへ来る。右、左、右、左、まだ来る。誰もそいつを止めっこない。その正体は…。
あの黒い人だ!黒い人は何かを言いたそうに、俺の方へ来る。右、左、右、左。来る。来る。来る。そして…。

「痛えんだよ!こら!」

突然大きな、人間の声がその幻想世界の全体に響き渡ると、今俺の体が、何かによってつかまれているような感触を覚えた。

「どこ見てんだよ!」

その声があまりに大きかったので、俺は、その世界をシャットダウンして、瞼を開ける事にした。開けると、さっきまで幻想世界を創造するための糧にしていた音楽が、DJブースでターンテーブルから淡々と出力されているだけの、現実世界に戻った。俺の右腕、二の腕あたりを別人の手がまさにつかんでいる。
その声は、確かに怒っていた。知らない彼の声を聴いて俺は咄嗟に、非常にまずい雰囲気を感じた。「すいません」という言葉が、酔いから冷めたばかりの俺の口から出た。その後、俺はその手の持ち主の、顔の方を向いた。
「…」
怖そうな風貌の男が、俺を睨み付けていた。何も言わない。俺は、もう一度「すいません」とその人の目を見ながら声を絞り出した。
すると、その怖そうな怒っていた人は、何を思ったのか、それ以上怒るでもなく、俺の手を放した。
俺は、内心まだドキドキしながら、その人に何度も頭を下げるしぐさをしながら、早歩きして、さっきまでカナエちゃんのいた所に歩いた。

「…ふーっ!」
やばい目にあった!今の人、めちゃくちゃ怖そうな感じだった。でも、俺はなんだか嬉しかったかもしれない。薬で羽目を外してしまったという経験も、そうやって怖い人から絡まれる経験も、うまく逃げられたっていう経験もできて。
「ちょ、N君やべーな!めっちゃ決まってんじゃん!」
という声がそこから聞こえてきたので、見ると、そう言ったのはヤスさんだった。ヤスさんの奥には社長さんも座っている。
薄い電灯のおかげで見えた、ヤスさんのその目つきは、さっきの感じとは全然様子が違っていた。きっとヤスさんも決まっている。

「ヤスさん、社長さん。あ、えっと、俺、今大変でしたよ!めっちゃ、やばそうな奴と絡んじゃってて」
「ハハハッ!」
ヤスさんは、なぜか笑った。え?今のは何を笑ったんだろう。別にどうでもいいけど、ちょっと意味がわからない。
「じゃ、もっとやばい事やってみようか!」
ヤスさんは、そう言うと右手に持った、さっき薬を使う前に俺がやっていた、火を付ける例の道具を取り出して、にっこり笑った。
「社長が見たいんだってさ」と、ヤスさんが言う。
「薬使った状態で、これをやる人の、初めてになってよ」社長さんもお願いしてきた。
俺は、とてもウキウキした。そうだ。多分まだ行ける。行けるところまで行ってみよう。それで、みんなと通じ合えるんだったら。
「わかりました」

コメント(11)

「うは!マジで!」
「でも、そこまで仰るなら、ライター貸してくれれば、やります!」
そうだ、こういうことだよ、青春って。俺はここでやめるというのだけは、ないと思った。誰も知ってる人がいないような場所に一人来て、いきなりドラッグやって、やばそうな奴とも絡んで、しかも火を使った危険な遊びしてさ。こういう事が、絶対、後で生きるんだよ!後々、俺がおっさんになって人生振り返った時、こういう事をした経験が、その…、きっと、自慢できるようになるんじゃないか。
ヤスさんは、俺を見てゲラゲラ笑っていた。社長さんも、何も言わない。
きっと俺は、求められてるんだと思った。

その時、今流れていた音楽が切り替わって、別の音楽が始まった。有名な曲だ。ブースから、ものすごい歓声が上がって、何人もの人々が、曲目当てにブースに戻ってきた。この曲、何度も何度も聞いたことある。そう、この曲は、何かを回す芸当にはぴったりの曲だった。その事で俺はもっとウキウキしてきた。
俺は、その2つの道具の先端に火を早速つけた。小さな火は、そのボールにしみ込んだ灯油を伝って、ボール全体を、メラメラと燃えさせる。今見てみると、火というものは、こんなにも不規則なものだったか。まるで意思を持っているみたいだ。やばい。気持ち悪い。だけど、明るい。
「どいててくださいね!」
そう言って、その二つのチェーンの取っ手を持つと、俺はいつもの調子で、チェーンの先に付いた火を回し始める。そう、いつもの調子だ。いつも通りに。
「おー、やばいって!めっちゃ早くない!?」
いつの間にか、カナエちゃんも一緒に俺のファイアーダンスを見てて、火の回り方について何か言っている。
…そうだろうか?俺はいつも通りの感じで回していると思ってた。自分では淡々としたつもりで、火のついたチェーンを回し続けた。カナエちゃんも今完全に決まってる状態で、そういう風に見えているんだろう。

Round and Round and Round and Round and...

会場全体が、その曲の歌詞を歌いながら踊っていた。
俺はその音楽に合わせて、ダンスをするように火を回し続けた。時々体ごと反転させたり、ジャンプしてみたり、頭の上で回してみたり。やばい。いつも感じてなかったけど、火の輝きって、すさまじいエネルギーを持ってる!自分の回りに軌道を描きながら、入ってくる。その力。
何だろう。今、この二つの火が放つ明かりの意思と、音楽の持つ意思と、宇宙の意思とを、感じながら踊れていると思う。
凄い、凄いなあ。
何だろう、1年前を思い出す。クラブで踊って、絶頂感を感じてた時。死んでもいいって思ってたあの時…。

Round and Round and Round and Round and...

あれ以上の多幸感ないって思ってた。でも今は?今幸せだよね?
だとしたら、良かった!俺、まだ終わってない!今、みんなの事も、喜ばせられているし、あと…。
いや、もういい、とにかく完全に今は、今は…。とても凄い状態、だからさ。
何もかも繋がってる。いつもと完全に違ってる。

Round and Round and Round and Round and...

ああ、頭の中が回ってる。2つの白い光の玉が、今、目の前に見えてる。
さっきからずっと見えていた幻想的な風景が、また頭の中に広がってきた。今、いつでも自由自在に、起きているのに夢の中に行くことができる状態なわけだし、おまけに、音楽を通じてこの宇宙を、全身全霊で感じてて…。
きっと俺は今幸せだ。幸せ…。
「ちょ、N君!燃えてるからー!」

カナエちゃんの声が、急に響いてきた。
「は、はあ?」
俺は、何かを感じてダンスをやめると、その途端に自分の肩が、やたら熱い事に気付いた。
「あーっはっはっは!やばいって」
見ると、俺の服の肩の部分に、火が引火していた。
「うわあ!」と叫んだ。とにかく驚いて、「また妄想では?」という疑念も一瞬あったものの、どう見ても服が白い光を放ちながら輝いているのは、明らかにわかった。だから慌てて、燃えたままのチェーンを地面の砂浜に、ほとんど落とすように置き、2枚重ねの服を1枚脱いだ。
「ちょ、マジN君大丈夫かよ!」カナエちゃんが、半分真面目に、半分笑って言った。
引火した服を脱ぐと、下に着ているTシャツまでは、燃えていなかった。俺は服の素手で燃えてる所を何度も何度も、必死で払う。手が、やけどしそうに熱い。服には大きめの穴が開いてしまっていた。
しかし、どうにか、火は消えた。
「消えた!アーッハハハ!」
俺の様子を見て、カナエちゃんやヤスさん、そして社長さんは手を叩いて笑った。
…俺は、服の火が消えても戸惑っていた。どういう表情をしていいのかわからない。まださっき落とした火のついたチェーンのボールは、消えずに燃え続けてる。

Round and Round and Round and Round and...

「N君!まだあるじゃん!もう一回!」
カナエちゃんが、相変わらずケラケラ笑いながら言う。
俺は下に目を落とす。確かにチェーンの先端のボールからは、火が消えていない。まだダンスを続けようと思えばできる。
でも、あれ?何だろう。
俺は、今カナエちゃんに対して、薬をやる前の車の中で、通行人に対して考えていたあの冷めた感情と、同じ感情を持ってしまってる事に気付いた。
「なんで、笑うやつは、笑ってるの?」
何が、面白い?カナエちゃんは、今、何が面白くて、笑ってる?
考え始めて、俺はもう、またやろうという気になるどころか、ボーっとその火が燃え尽きるのを見届けるだけで、そのまま頭が働かなくなってしまった。そうして、何もしないでいると、火はやがて完全に消えた。
「あれ!?N君終わり?」
カナエちゃんの隣にいたヤスさんも、そう質問した。
「…はい」
「ちょ、マジか!」
社長さんが口を開いた。
「せっかく、見てたんだから、途中でやめなくてもいいんじゃないかなあ?」
社長さんは、心底、残念そうに言った。
「もう一回、火つけようか?中途半端だし」
と、ヤスさんが、社長さんのためを思ったのか、俺にそう言った。
「…いや、すいません。なんか疲れました」
俺は断った。確かに今凄く疲れていて休みたいと思ったのは、事実だった。なので俺は、カナエちゃん、ヤスさん、社長に、
「ちょっと、一人になります」
と言った。

「何やってんだ?」と自問した。楽しい、絶頂感、幸せ。そういう言葉を信じて、踊ってた。でも、どうだったろう?楽しかった?
一度目をつぶり、考えようとした。…しかし、目をつぶった途端、まだ俺の脳内にはさっきの火の幻想が残っていて、瞼の裏側に真っ白な2つの光が盛んに燃え盛りながら回転しだして、その映像で考えるどころじゃなくなってしまう。だから「ふーっ!」と、またため息をついてまた目を開けた。
駄目だ。ちょっと落ち着ける所に行こう。俺は会場を後にし、入口の所まで歩いて戻っていった。だんだん足場が悪くなっていく。海を背に歩いていくと、会場は遠のき、音楽はより小さく聞こえる。人は誰もいなくなった。
俺は自分の服の、肩のあたりを手で触ってみる。確かに燃えてる。大きな穴が指でもわかる。自己責任だ。ちょっと間違えたら、大変だった。人に迷惑かけなかっただけ、良かったのかもしれない。

楽しいと思っていたのは、楽しいと思いたいから、そう思っていただけではないか?
結局、繋がってるようで、繋がってなかった。カナエちゃんも、ヤスさんも、社長さんも。…いや、それだけじゃない。結局友達とかもみんなそうじゃない?家族も。先生も。繋がってるようで、繋がってない。
じゃあ何となら、繋がってるんだろう?何とも、繋がってないんじゃないの?
…いや、違う。繋がってはいるんだと思う。でも、通じ合わないんだ。繋がってはいるけど、通じない。何かが、いつもズレてんだ。なんでだか、わからない。もう、どうでもいいよ!どうせ俺は、薬を使ったらコミュニケーションが取れるようになるのだと期待してたんだ。何でそんな事で、使ってしまったんだろう。使っても使わなくても、俺の感情はみんなの感情と違う。それは最初から、もうどうしようもないんだからさ。
でも、一体、なぜ違う?なぜ同じになれない?
「…当たり前か」
つい言葉が口から出た。余りに簡単な事自問していたみたいだ。
だって、他人だから。同じ鼓動が流れてても、同じ宇宙に生きてても、違うんだよ感情は。そりゃ、他人同士でも物理的には繋がってる。でも、全く同じ物じゃない。考えてる事も、感じてる事も。他人は笑っても、俺は何が面白いかわからない。俺が面白い事は、他人は面白くない。当たり前じゃないか、そんな事。

そんな事を考えながら歩くと、会場の乱痴気騒ぎを遠目に見やる事すら下らなくなってきた。誰とも話をしたくない、いつもの自分が戻ってきた気がした。
とぼとぼと、俺は意味もなく会場の外に向かって歩く。つまらない。何をしたってつまらないんだ。ドラッグを使ったから何だというのだろう。毎週のようにレイヴに来てて、今回はたまたまドラッグに手を出したけど、それは今回そうなったってだけ。そうなってもそうならなくても、何か変わる?どうせつまらないじゃないか。
結局、今日という日も、今という時間も、どういう行動にしても、いつもやっている日常の延長なのかもしれない。
人とは繋がってるけど、通じてはいない。友達とも、親とも、親戚とも、先輩とも、繋がってても何も通じてない。そして、それは当たり前。これ以上ないくらいに当たり前。そんな事で悩むのはバカじゃないのってくらいに、当たり前なんだよ。……もう、いいよ。みんな、そうなんでしょ?みんな、通じ合わなくても我慢できてるってだけ。俺だけが甘えているから、我慢できないだけ。
会場から流れる、激しい音楽は、遠くに聞こえてて、この耳の中まで入って来てるのに、感性の中までは最早入ってきてくれなかった。確かにまだ、音楽で大地が揺れてるような感触がある。ドラッグを使わない時よりも激しく。でも俺の感情は、もう揺れてもいない。すっかり心は固まったままになった。嬉しいとか、幸せとかいった、岩盤のように固まった凝りを解きほぐす系統の感情は、悉く枯渇しきって、感情にすっかり湿気が無くなった。
歩みを進める。そのまま、さっき車を止めた広場を過ぎ、その砂利道を国道の方に向かって歩いている時には、自分が今本格的に白けきっている事がハッキリとした。
その石だらけの道路は真っ暗闇で、極僅かに街灯が照っている箇所があるだけ。頭の上には鬱蒼と生い茂った林の、木の枝が覆い被さるようになってる。背中の方から、あの煮えたぎるような音楽はまだ確かに聞こえているのに、林のこの上ない静寂感が、この世の物と思えないほど気持ちよく感じ、俺は、もう一度目を閉じてみる。
…駄目だ。まだ目を閉じるとサイケ模様が一面に浮かんでしまうみたいだ。暗闇の表面に青とか緑とかの寒色系の色が踊り出し、渦を巻いては闇にほどけ、また光っては消滅する。…こんなに白けてるのに、薬の効果って全然消えないんだな、幻覚的な作用は。ま、高揚感とかは薬の作用そのものじゃなかったみたい。だからもう、消え失せてる。
もう一度、目を開ける。すると、網膜からは光が入ってくる。光は像を結ぶから、俺の前に広がる林の映像が入ってくる。暗闇の中にも、ハッキリ木々の動きが見える。でももう、薬の気持ちよさはなくて、自分が今いる世界は現実という世界であり、見えている全ては、いくら着飾っても所詮、日常の延長である気がした。そう、この今も日常。非日常だと思う事は全部、作られた非日常感を、絶対に本質的に別の何かなのだと、願望で輝かせているだけ。
全部、無駄なんだ。繋がってるから。現実も、非現実も。学校の勉強も、バイトのつまんなさも、人に愛想笑いする気苦労も、今ここで感じてる感覚も、全部の出来事は繋がってる。
いつも、何か出来事の度、「今度こそ」といきり立って、日常の全てを変えるきっかけみたいに捉える。出来事に意味を与えたり名前を付けたりして、期待する。「これで全てが変わる」と、いちいち思って。でも、それは何も本質を変えない。結局は、何をやっても、何もやらなくても、大して人生って変わってない。でも、「それでもいつか必ず」って思う。何かが起きるたびに、今度こそ必ず全ての事を本質から、根底からひっくり返したいって。
でも、もう全ての出来事に意味はないのかもしれない。
今まで出来事や人生に、与え続けていた意味も、色あせてきている。意味を与える事に疲れてきた。とうとう、そうなっちゃう時が来てしまったんだ。いつかこうなる事は、本当はどこかでわかっていた気もする。二十歳くらいから、言葉にできなかったけど、なんとなく感じてたかもしれない。それが今来たのかな。もう、俺、人生の楽しい事は終わりなのかな。あとは死ぬまで、日常を、機械みたいに、時間が消えるまで流し続ける事を人生と呼ぶようになるんだ。

空しくなってきて、俺はふと、携帯を見る事にした。
>>[5]
ありがとうございます。主人公は、学生時代の私自身をモチーフにしています(他の人物やストーリー自体はあくまで作り話です)。脚色もしていますが、自分が昔感じていたままの事を、恥ずかしいとか関係なく赤裸々に書き下してみると、魂のこもった面白い話が書けると思って書きました。
この作品は、緊張感というものはないと思ってます。
面白かったです。
以前から感覚の問題に興味があるのでなおのこと良かったです。
SF小説に、赤いものを見たときに何かの音が聞こえるようになるとか、辛いことを嬉しいと感じるようになるなど、感覚の異化(?)を取り入れようと思っていたので、たかーきさんが書いた「空がこちらを見ているように感じる」とか「他の存在と繋がってるように感じる」というのはSFにも使えることだな、と勉強になりました。

ストーリーについては、人生に極限の虚しさを感じた主人公が次にどこに行き着くのかが楽しみです!

「あとは死ぬまで、日常を、機械みたいに〜」の一文の表現は魅力的な表現だと思いました。言葉の並びも好きですが、句読点の区切り方もむなしさが出ていて良かったです。
>>[7]さん
ありがとうございます。
そういう感覚は、経験してみないとわからないのではないか、という気もします。私もそこまで深く入り込んだわけではないですが。ただSFに取り入れるのであれば、多少人工的に感覚というものを作ってしまってもいいので、とりあえず書いてみてもいいでしょうね!
ストーリーは大まかには、ラストシーンまでできています。まだかかりそうですが。
>>[8]
ありがとうございます。時々畳みかけるようにしてメリハリを付けないと、ただでさえ小説というメディアは文章だけで単調なので、読むのが大変なんじゃないかと思います。読むのを作業にさせないためです。

感想をいただく際に、具体的に気に入った言葉をいただけると私としては励みになります。ありがとうございます。

あと10000字では終わらないかもです…。が、プロットは最後までできてるのでお楽しみに。
うまく言えないけれど、その感じ、よくわかります。ライブ会場でお酒飲むなりして夜も眠らず踊りまくって、なんだか感覚が変容していく感じ。そこで人生の真理を見たように思ったのに、いきなり失速して急に失望してみたりとか。共感を覚える人は案外多いと感じました。
それを文章でリアルに表現できるたかーきさんの才能!それに脱帽です。

この小説は書き手と主人公の距離感がものすごく近い感じがして、そこになんだかドキドキもします。

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