今回の課題本はV.E.フランクル著『夜と霧』(新版・池田香代子訳)でした。男性4名、女性5名、計9名の参加となりました。
初参加で、課題本を以前に読んだことがある方々が来て下さいました。
まずは、全体を読んだ感想を参加者全員に話してもらいました。
○収容所体験の怖さ、しんどさ。
○強制収容所体験記にしては読み易い(複数意見)。
〈理由〉
・訳が良い。エピソードが完結しており、まとまりが良い。
・旧版は行間が狭く、収容所生活の厳しさがメインに印象に残る感じ。アウシュビッツ=凄惨で終わらない感じ。
・客観的に書かれているので入って来やすい。
・「事実の報告ではなく、体験記」だからか、この手の本にしてはやさしめ(描写が)。
○著者の人柄の良さがでている（複数意見）
〈具体的には〉
・相手の気持ちを慮り、全ての人に対して人間として接している。
・エピソードの1つ1つがセラピストみたい。
この後は、複数の参加者から自発的に問いが投げかけられ、ファシリテーター的には他人の褌で相撲を取らせてもらい…。もとい、大変有意義な展開になりました。
Q:著者が冒頭で「これは事実の報告ではない、体験記だ」と書いているが、この一文を疑問に思った。同じように疑問に感じた人はいるか？
〈疑問に感じた参加者の意見〉
○生活の酷さ等を説明する“記録”とは別のものを何故世に出したいんだろう？と思った。数値とか客観的な報告ではなく、その場にいて感じたことを心理学的に（臨床の場では、“個の経験”を大切にする）記述したかったのでは？
○��ナチスの所業を語ることができるのか？”という意識がある。「ショアー」という、ホロコースト体験をした人をインタビューする9時間にわたる映画がある。これは、語る前に“言葉に詰まる”場面も含めて撮りたかったという制作側の意図があると聞いている。歴史を語るにはそういう配慮をする必要があるということでは？
○収容所体験を話すことは、想像を絶する勇気が必要と思われる。そこを敢えて実名を出したことの意味は何か？と考えてしまった。
Q:この本は以前にも読んだことがあるが、毎回「生きることがわたしたちから何を期待しているかが問題なのだ」（p129)が分からない。皆さんの意見を聞かせてほしい。
〈参加者の意見〉
○この本を書かせた軸になるものと思われる。クリエイティブなことをするのが許されない環境で、生きる意味を運命的に受け入れること。
○生きること=可能性を選ぶことだが、実際は選べない=“期待されている”（と思うしかない）
○“ここまでして何で生きないといけないの？”と思う人もいる。限局的な環境に意味を持たせる。死ぬ瞬間まで“どう生きるか”を示すこと。
○死ぬ側から生きる意味を問いかける。生存することがスタート→生きる糧にしよう。
〈投稿者の感想〉
本当に充実した会で、2時間半ではとても語り尽くせない内容だと思いました。
こうしてまとめてみて改めて思ったのですが、フランクルがこの本を書いた意義はシンプルに「拘禁にかんする心理学や精神病理学に寄与する」(p9)為だったのではないでしょうか。
読書会中にも「ナチスの所業を語ることができるのか」「数字ではなく、実際に収容所にいた人の日常を記述する意味」等の発言がありましたが、本当に“極限状態に置かれた人の心理的変容の段階”みたいなことを体系的に記述するなら、大規模なアンケート調査とか、ヒアリング調査をベースに分析をかけることが必要と思われます。しかし、当然ながらこのような調査には倫理的な問題が生じることが予想されるため、フランクル自身の“事例研究”という形で世に出したのではないでしょうか。
この書が精神病理学的にどのように活用されているかは私の理解の範囲を超えてしまいますが、希望が全く持てないと思われる状況で、針に糸を通すが如くに「自分が生きる意味」ではなく、「生きることが運命から期待されている意味」を見つけ出す。現実を必要以上に甘く見積もらない客観性を保つ。自分が「人間」であるという理性を失わない。自分が心の中で思うことは自分で選べてどんな相手であってもコントロールできるものではないという強い信念を持つ。等が大切なのではないかと思いました。
そして、これらのことは現代社会でも十分当てはまるのではないかな、と思いました。
参加された皆様のお陰で有意義な会になったことに感謝して、報告を終わります。
初参加で、課題本を以前に読んだことがある方々が来て下さいました。
まずは、全体を読んだ感想を参加者全員に話してもらいました。
○収容所体験の怖さ、しんどさ。
○強制収容所体験記にしては読み易い(複数意見)。
〈理由〉
・訳が良い。エピソードが完結しており、まとまりが良い。
・旧版は行間が狭く、収容所生活の厳しさがメインに印象に残る感じ。アウシュビッツ=凄惨で終わらない感じ。
・客観的に書かれているので入って来やすい。
・「事実の報告ではなく、体験記」だからか、この手の本にしてはやさしめ(描写が)。
○著者の人柄の良さがでている（複数意見）
〈具体的には〉
・相手の気持ちを慮り、全ての人に対して人間として接している。
・エピソードの1つ1つがセラピストみたい。
この後は、複数の参加者から自発的に問いが投げかけられ、ファシリテーター的には他人の褌で相撲を取らせてもらい…。もとい、大変有意義な展開になりました。
Q:著者が冒頭で「これは事実の報告ではない、体験記だ」と書いているが、この一文を疑問に思った。同じように疑問に感じた人はいるか？
〈疑問に感じた参加者の意見〉
○生活の酷さ等を説明する“記録”とは別のものを何故世に出したいんだろう？と思った。数値とか客観的な報告ではなく、その場にいて感じたことを心理学的に（臨床の場では、“個の経験”を大切にする）記述したかったのでは？
○��ナチスの所業を語ることができるのか？”という意識がある。「ショアー」という、ホロコースト体験をした人をインタビューする9時間にわたる映画がある。これは、語る前に“言葉に詰まる”場面も含めて撮りたかったという制作側の意図があると聞いている。歴史を語るにはそういう配慮をする必要があるということでは？
○収容所体験を話すことは、想像を絶する勇気が必要と思われる。そこを敢えて実名を出したことの意味は何か？と考えてしまった。
Q:この本は以前にも読んだことがあるが、毎回「生きることがわたしたちから何を期待しているかが問題なのだ」（p129)が分からない。皆さんの意見を聞かせてほしい。
〈参加者の意見〉
○この本を書かせた軸になるものと思われる。クリエイティブなことをするのが許されない環境で、生きる意味を運命的に受け入れること。
○生きること=可能性を選ぶことだが、実際は選べない=“期待されている”（と思うしかない）
○“ここまでして何で生きないといけないの？”と思う人もいる。限局的な環境に意味を持たせる。死ぬ瞬間まで“どう生きるか”を示すこと。
○死ぬ側から生きる意味を問いかける。生存することがスタート→生きる糧にしよう。
〈投稿者の感想〉
本当に充実した会で、2時間半ではとても語り尽くせない内容だと思いました。
こうしてまとめてみて改めて思ったのですが、フランクルがこの本を書いた意義はシンプルに「拘禁にかんする心理学や精神病理学に寄与する」(p9)為だったのではないでしょうか。
読書会中にも「ナチスの所業を語ることができるのか」「数字ではなく、実際に収容所にいた人の日常を記述する意味」等の発言がありましたが、本当に“極限状態に置かれた人の心理的変容の段階”みたいなことを体系的に記述するなら、大規模なアンケート調査とか、ヒアリング調査をベースに分析をかけることが必要と思われます。しかし、当然ながらこのような調査には倫理的な問題が生じることが予想されるため、フランクル自身の“事例研究”という形で世に出したのではないでしょうか。
この書が精神病理学的にどのように活用されているかは私の理解の範囲を超えてしまいますが、希望が全く持てないと思われる状況で、針に糸を通すが如くに「自分が生きる意味」ではなく、「生きることが運命から期待されている意味」を見つけ出す。現実を必要以上に甘く見積もらない客観性を保つ。自分が「人間」であるという理性を失わない。自分が心の中で思うことは自分で選べてどんな相手であってもコントロールできるものではないという強い信念を持つ。等が大切なのではないかと思いました。
そして、これらのことは現代社会でも十分当てはまるのではないかな、と思いました。
参加された皆様のお陰で有意義な会になったことに感謝して、報告を終わります。
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