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徹真斎の妄想徒然草子コミュの仮面ライダーD.V.L vol.33

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富士演習場…
霊峰富士の麓に広がる広大な平野は自衛隊の管轄下にあり総合火力演習の会場としても知られている。
その一角 付近を通る一般道から離れた位置にテントとパイプ椅子が設置されていた。
一般的なキャンプで使用するテントではなく、運動会等のイベントで使用する屋根と骨組みだけの いわゆる『集会用テント』と呼ばれるものである。
その下にパイプ椅子が並べられている。
防衛庁や警視庁その他関係各所から数人ずつ視察に来ている為、来賓席として設えてあるのだ。
各々仰々しい挨拶とわざとらしく交わされる握手をする老人達から少し離れた位置に本郷達の席はあった。
「ンだよソーリは来てねぇのかよソーリはよぉ」
総理大臣に見えるチャンスがあるかも知れないと思っていたミキが口の中でぶつくさ言う。
「その代わり大臣や長官はたくさん来てるぞ」
なだめる様に言う風見に対しミキは
「そんなん見たことねぇじーさんばっかじゃん」
落胆を露にする。
「芸能人じゃねぇんだからはしゃぐんじゃねぇ」
「むぅー」
ぴしゃりと大輔に言われ、ミキは口を尖らせて黙りこんだ。
この新型防護服の火力演習は非公開で行われている。
また観覧者も一般人は居らず政府各省庁と開発に携わった企業の関係者に限られている。
当然 自衛隊の総合火力演習等に比べて圧倒的少数の為、拡声器等でのアナウンスも無い。
樫尾大介は枯れよとばかりに声を張り上げる。
「えー それでは これよりこのほど開発された防護服の試験的導入にあたって、新規に設立されました機動部隊『マジスティック12』のお披… 火力演習を開始します!」
と同時に藤堂博士による機能の説明と用途についての説明があって実演が始まる。

「マジスティックって…」
部隊名のネーミングに大輔が絶句する。
「もうちょっとなんとかならなかっ… てか誰も止めなかったんスかねぇ」
「Magnetic Intelligent Static Commanderの略なんだそうだ 前に滝が嬉しそうに話してたよ」
めずらしくニヤニヤしながら本郷が話す。
「Mg.I.St.Cねぇ… で12人だからって事スか…」
「警視庁からは機動隊員、自衛隊からはレンジャー部隊、それぞれ選りすぐりの12人なんだそうだ」
そう付け加えた本郷を他所に難しい顔をしながら大輔は
― しかし滝さんの事になると急にイジりだすよなぁ この人…
とかそんな事を考えていた。

「あ 偉い人の挨拶とか無いんだ」
さおりが小声で呟いたのを風見が拾う。
「うん 恐らく非公開故だろうな」
「長ったらしい無駄な挨拶が無くて助かる」
ちくりと一刺しする本郷。
「しかし壮々たる面々ですね 政府や警察、自衛隊関係者ばかりでなく有名企業の幹部クラスも居る」
結城丈二が感心したように言うのを風見が受ける。
「あれは河滝重工、その隣は光石重工 向こうはジャパンオーシャンユナイトか お あれは噂の織原製鋼だな ははは さながら軍需産業博覧会だな」
胸に輝く社章を確認していく風見。
自衛隊ばかりでなく世界中の軍隊を相手に戦争兵器の製造・輸出を手掛ける企業の幹部連中が肩を並べて席に就いている。
風見はその中に1人、奇妙な空気を纏う男が居る事に気付いた。
「おや?1人だけ若い男が居るぞ?彼はいったい…」
風見が口にした疑問を結城が受ける。
「白いスタンドカラーというのか、学生服のような詰め襟に… 社章を着けていないな?」
不意に背後で”気”が膨れ上がる。
「どうした?大輔」
いち早く気の変化に気付いた本郷が振り向いた。
大輔は怒ったような、それでいて込み上げる笑みを噛み殺すかのような奇妙な表情で赤くなったり青くなったりしていた。
「ほ、本郷さん… やべぇっスよ… 見つけちまいました…」
「いつも冷静なお前らしくないが… 何を見付けたって?」
震えながら言葉を吐き出す大輔を見て尋常ならざる事態である事を認識する。
「あ…あの学ラン野郎… あの学ラン野郎と隣のじいさんのツラ、見覚えが… えぇ 忘れようったって忘れられねぇや…」
「知ってるのか?!」
「俺が電撃兵器のマトにされたって話はしましたよね?そんとき居たんですよ あの学ラン野郎と隣の爺が…」
「なんだと?!」
「本郷さん、俺 俺イッちまっていいスか?」
本郷は今にも飛び出して一暴れしようかという勢いの大輔を制した。
「まて ひとまず落ち着け 今あの二人をどうにかしたところでゴールや財団Xだったか?その組織の壊滅には繋がらん 大輔すまんがここは抑えてくれ」
悪の組織ショッカーに無理矢理改造人間にされてしまった本郷は大輔の気持ちを痛いほど理解していた。
大輔は本郷ほど正義というものに目覚めていたわけではないがやはり悪の組織への思いは本郷や他のライダー達と変わる所は無い。
まして己を失敗作、実験台として闇に葬り去ろうとした組織だ。
これまでに味わった屈辱や苦労が大輔の脳裡を過る。
それはまるで恋い焦がれるような熱い熱い想い。
怒りと恨みとが炎と燃えて大輔の中で渦巻く。
しかしずっと探し続けていたその組織の手がかりをここで暴れる事で失うわけにはいかない。
本郷の言葉に自分への理解や本郷達の思いを読み取った大輔はそれでも震えながら無理矢理己の怒りを圧し殺す。
「ぐ… わ わかりました 奴等をここで殺しても組織は潰れねぇ… わかってます、ここは無理矢理ガマンしますよ クソッ 今に見てろよ…」
そう呟いて大輔は膝の上に置いていた拳を一度開いてまたしっかりと握り締めた。

そうしている間にもプログラムは進む。
「では一旦休憩を挟みます 最後のプログラムである模擬戦は 休憩の後、2時間後です」
張り上げた樫尾の声で観客席がざわつく。
トイレはどこだ?タバコは吸えないのか?
本郷以下ライダー組はその様子を見て些かげんなりしていた。
「なんつーか… エラい人つっても普通のおじさんと変わんねぇなぁ」
ミキがボソリとこぼす。
「”俗物”ってんだよ そういうのを」
落ち着きを取り戻した大輔が拾う。
「たとえば今ゴールの奴等が現れたらその俗物も守って闘わなくちゃならないんですかね」
不機嫌そうに言うさおりの言葉は本郷達に深く突き刺さる。
そう 本郷達がその一命を懸けて守ってきたものは果たして大輔の言う”俗物”なのだろうか?
否!断じて否!!
確かにこの俗物達をも含む形ではあるものの自分達が命を賭して守りぬいてきたものは世界中の人々の平和な生活そのものであったはずだ。
その思いに達した本郷が口を開こうとしたその時 一瞬早く滝の言葉が青天の霹靂の如く轟いた。
「あ?別に守らんでいいぞ?」
意外と言えば意外な一言に本郷は目を剥いた。
そんな本郷を知ってか知らずか滝はどこか面倒臭そうに続ける。
「もし今この場にゴールの連中が現れたとして だ、お前さん方には誰を守るとかではなく むしろゴール撃退に専念してもらいたい 年寄り共の護衛はあそこに並んでる新兵器チームにやってもらうさ」
「そんなんでいいんですか?」
俗物呼ばわりしたとは言え政治家や大企業の要人に対する滝のぞんざいな扱いに驚くさおりであった。
「かまわんさ そもそも災害救助や凶悪犯罪に対応するための装備だ それに奴等の代わりなんざゴマンと居る ここで何人か欠けたところで… あ これオフレコな」
両手をチョキの形にしながらイタズラっぽく笑う。
その後ろ姿を見ながら
―この人の下なら出世出来なくてもいいかな
改めてそう思う樫尾であった。

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