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徹真斎の妄想徒然草子コミュの仮面ライダーD.V.L vol.38 ―最終回

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突如強烈な暴風が襲いかかる。
超巨大輸送機の十数基に及ぶローターが巻き起こすダウンウォッシュであった。
V-22垂直離着陸型輸送機 所謂オスプレイと呼ばれる輸送ヘリコプターが存在する。
そのオスプレイに形状は似ているものの、そのサイズは3〜4倍はあろうか、本家を遥かに上回る巨体を空中で唸らせる。
「教主様!」
突風に倒れたアリ男に駆け寄る竜崎を制して、アリ男はヨロヨロと立ち上がった。
「寄るな竜崎、もうすぐこの体は爆発する なに、心配は要らぬ じき甦ろう お前は残った者を連れてこの場から脱出せよ じきに地下基地に仕掛けた時限装置も爆発する、早く輸送機に そして海外支部をまとめあげ再起を図るのだ」
一方で本郷も突風を受け一瞬怯んだ隙に竜崎は輸送機から降ろされたタラップを掴んでいた。
「教主様!!」
もう一度郷田を振り返り手を伸ばす竜崎を一瞥したアリ男は本郷に向き直る。
「本郷猛よ 貴様との決着がこのような形で終わるのは甚だ不本意だが致し方あるまい だがしかし この体が滅びても私の、このショッカー大首領の本体は滅びぬ 人に悪意ある限り何度でも蘇りまたこの愚かな人類の導き手となろう ふふふ なかなか楽しめたぞ本郷猛よ さらばだ!大ショッカーに栄光あれぇッ!!!」
叫びと共にアリ男は大爆発した。
その予想を大きく上回る爆風の強さにライダー達は身を伏せる。
その瞬間 頭上を巨大な輸送機が爆煙を掻き散らしながら通過した。
大輔が気付くとそこに西塔寿雲の姿は無かった。
― 野郎どこ行きやがった?!
辺りを見回す大輔を嘲笑うが如く上空から西塔寿雲の声が届く。
「ハッハァ シャカさぁん 今回はこのぐれぇにしといてやんよ!次会ったら必ずぶっ殺してやっからよォ! じゃぁなシャカさん!また会おうぜ!!」
大輔が見上げると大きく開いたままの輸送機の搭乗ハッチから西塔寿雲が半身を覗かせていた。
そしてその隣に竜崎龍蔵とあの白い詰め襟の男が立っていた。
「!」
遠ざかる輸送機を睨みながら大輔は固く拳を握り締め唇を噛む。
如何に大輔のマシンが城茂によるスペシャルチューンを施してあるとは言え 敵は空路 追いつけるはずも無い。
口惜しい思いの中、大輔は己の内に燃え上がる炎を見ていた。
― このケリは必ずつけてやる 必ずな
時を同じくして輸送機が現れた付近から爆発が起こる。
そして次々と起こる爆発に本郷が吼える!
「いかん!脱出だ!!」

「あの輸送機は太平洋上で消えた という事だ」
明日香の淹れたコーヒーを一口啜って滝和也は独り言の様に言った。
「恐らくは洋上で待機していた大型船舶に着艦、そのまま移動したものと思われます」
樫尾が黒い手帳をめくりながら後に続く。
「それじゃ探しようが無いな…」
本郷の呟きに思わぬ反応があった。
「いえ、それがですね 当日当該時刻に日本近海を航行していた大型船舶はある程度限られてまして、海上自衛隊のレーダーや海上保安庁の情報と照らし合わせた結果 どうやらフランス船籍の船に着艦した模様です」
樫尾の報告に一文字が驚きの声を上げる。
「へぇ 海自とのパイプも持ってるのか」
「はい、今回の防護服の件で色々と」
樫尾は少し照れた様な顔で手帳を閉じた。
「そうか 奴等フランスに居るのか…」
大輔が拳を握り締めて言う。
「ま その辺はイマイチ不確かなんだが恐らくはフランスで間違いないと思う」
そう樫尾が言うのを受けて風見が返す。
「根拠はあるのか?」
「はい 公式の発表ではありませんが日本のゴール本部解体を受けてフランス支部が西欧本部として活動をはじめると信者達の間では専らの噂で 現地の警察関係者も緊張を余儀なくされていると」
樫尾は信頼できるスジからの情報なので と付け加えた。
樫尾が言い終えるのを待って滝が大輔に向き直った。
「そこで、だ 大輔 いや坂田大輔くん 君には我々特殊テロ対策室のゴール特別専任捜査官として是非フランスに飛んでもらいたい」
「はぁ?!」
「細かい手続きはこちらでやっておくしインターポールが全面的にバックアップしてくれるそうだ 頼めるか?」
滝和也は人懐こい笑顔で正面から大輔に言うが目が笑ってない。
大輔の表情が一瞬くもる。
が、次の瞬間唇の端を歪めて笑う。
「ケッ 選択肢は一つってか 勝手に決めんなよ と言いたい所だが願ってもねぇ話だ 奴等をブッ潰せるならどこへだって行くぜ」
「そいつァ好都合だな」
キリンコロンカラン
喫茶アミーゴのドアが開くとそこにはツナギを着た城茂の姿があった。
「あ 会長!ちっス」
城茂は嘆息しながらミキに言う。
「ミキ、お前はいつになったらまともな挨拶が出来るんだ?まったく…」
「茂じゃないか お前さんがここに来るとは珍しい事もあるもんだ」
一文字の言葉に城茂ははにかんだような笑みを見せた。
「センパイ 茶化さんで下さいよ 俺だってたまにゃコーヒーくらい飲みますよ」
「で?何か用があるんだろ?まさかただコーヒーを飲みに来ただけではあるまい」
にこやかに微笑む本郷の問いにニヤリと唇を歪めて笑った城茂は胸のポケットから一通の封筒を取り出した。
「大輔、ミキ お前ら二人でこのレースに出てみないか?」
大輔が封筒を受け取って中身を確認する。
「パリ→パリ ユーラシア周遊ラリー?なんスかコレ?」
城茂はフフンと鼻を鳴らせて答えた。
「書いてあるまんまさ パリから出発して東欧ロシア中国インド中東の順に各国のチェックポイントを通ってまたパリに帰ってくる 言うなれば世界の大半を回る、世界一無茶苦茶で苛酷って噂のレースさ 本番は2年後だがそれまでのならしを兼ねて来月からフランスを拠点にいくつか小さなレースに出てもらわなきゃならん 要は本番までの実績作りにな」
それまであんぐりと口を開けていたミキが大輔の手から引ったくるように封書を奪い取って穴も開けよとばかりに何度も何度も読み返す。
「か 会長これ”男女ペアが必須条件”って…」
「そう 男女ペア 恋人夫婦親子兄妹(姉弟)アカの他人 何だってかまいやしない 男女ペアが出場の必須条件だ ジェンダーフリーのこのご時世にわざわざ と思うようなレースだがお前さん方なら最速で優勝間違い無し ミキが海外で名前を売る絶好のチャンスだろ?」
ミキは目を輝かせて鼻息も荒く書類を握り締めている。
いつになく饒舌な城茂に冷ややかな視線を送りながら大輔が口を開いた。
「で そいつに俺が付き合わされるってわけだ 俺はタチバナレーシングチームに入ったつもりは無ぇぜ?いつからあんたんとこのレーサー扱いなんだよ」
城茂は大輔を横目にニヤリと笑って
「お前さんのマシンをチューンした時からさ あのとき契約書にサインしたろ?あれは所属契約も兼ねてたのさ」
「チッ 詐欺じゃねぇか」
毒づいた大輔の目は笑っている。
まんざらでもないらしい。
「じゃあ 話は決まったな 出場手続きはやっておく」
したり顔の城茂の言葉を受けて
「渡航手続きはこちらでやろう ある程度の予定が決まり次第樫尾に連絡してくれ」
滝がにこやかに言う。
「フランスと言えば敬介と弘が居たはずだな」
ふと思い出す本郷。
仮面ライダーX神敬介、そしてスカイライダー筑波弘 この二人もまたかつて世界を守って闘った男達であった。
「うむ ではあの二人にはこちらから連絡しておこう」
一文字隼人はキッチンのメモになにやら書き込んだ。

「なんか終わったと思った途端にバタバターって感じだね」
さおりはため息まじりに言う。
「あー うん まだなんだか実感湧かないけどねー」
ぼんやりした口調でミキが応える。
あれから数日 ミキの渡仏を前に二人でツーリングに来ていたのだ。
ここはかつてミキがトラタイガーによって瀕死の重傷を負わされたあの峠道だ。
ガードレールに腰を預けた二人はしばらくの間黙って夕日を見つめていた。
夕日が沈みきる瞬間 さおりは口を開いた。
「ミキ、あ あのさ…」
「んー? あ!『いつまでもズッ友だョ』とか言うなよな?」
怪訝そうに顔をこちらに向けるミキに
「いちいち言わなきゃならない仲じゃないでしょ」
「そりゃそうだ」
笑うミキに呆れながら答えるさおりは急に真面目な顔を作る。
「頑張ってね って言いたいとこだけど 無理はしないで ミキはすぐ意地んなって無茶するとこあるから…」
「心配要らないって 海外だし土地勘もなんもないけどレースなら負けない!」
握り拳を立てて鼻息も荒く答えるミキにさおりは神妙な面持ちのまま
「レースだけの話じゃないよ フランスにはあの竜崎が居るんだよ?あのサイトーとかいう気持ち悪い人も レースしながらゴールとも闘わなきゃならないんだよ?!」
さおりのあまりの剣幕に気圧されたミキであったが
「それなー 実のところあんまり気にしてないんだー」
「気にしてないってあんた!」
「だってさぁ 先々の事で色々悩んでもしょうがないじゃん アタシほら、ソクブツテキっての?そんなんだからさ そん時なんとかすればいいやって」
「ちょっ、、、もぅ」
あっけらかんと笑うミキに怒る気と共に心配も吹き飛んでしまうさおりであった。
「帰ろっか」
「うん」

「じゃあ元気でな 向こうでも稽古は欠かさんようにな」
本郷ががっしりと大輔の手を握る。
「はい ありがとうございます!」
「手筈通りお前達のマシンは敬介さんの所に送っておく 安心して空の旅を楽しんで来な」
城茂はニヒルな笑みを浮かべて親指を立てた。
今回のレースに合わせて二人のマシンを再調整したという。
「ミキ、………………」
さおりはミキの手を握り締めて言葉にならない想いをただただ頷く事で伝えようとしていた。
「わかったから泣くなって 確かに命懸けかも知んねーけどゼッテー帰って来っから」
そう言うミキの目も潤んでいた。
その事実を誤魔化すかのようにミキは声を上げる。
「てかなんでスーツなんだよアンタ ご丁寧にスリーピースで!」
ミキの言う通り大輔はダークブラウンのスリーピースに赤いネクタイでバチバチにキメていた。
「んだよ っせぇな ライダーが海外つったら三つ揃いだろうがよ?!そういうルールなんだよ!!」
― そんなルールは無い 無いぞ大輔 しかし良い 良いぞ大輔!
胸を熱くする本郷以下ロートルライダーの面々であった。
「ところで樫尾さんはどうしたの?」
思い出したように明日香が言う。
俺が答えよう とばかりに滝が右手を上げた。
「あぁ ヤツには先に行ってもらってる 向こうでちょっとしたトラブルがあったみたいでな こちらの手続きや二人のマシンの回収もあるしな」
「何それ!聞いてないんですけど!」
見送りすら出来なかったと膨れっ面を見せる明日香。
「ははは 勘弁してやってくれ なにしろ急な話だったからな」
「帰って来たらぶっちめてやんだから」
元レディースの明日香の”ぶっちめる”がどんなものなのかを想像してさおりは背筋に寒いものを感じた。
「さ、そろそろ搭乗時間だから行くわ 心配すんな ゴールの奴らブッ潰してレースもブッちぎりで優勝して帰って来てやらぁ」
「このミキさんがついてるからな トーゼンだよ!」

二人を見送って数日、さおりは再び戻ってきた穏やかな日常を噛み締めていた。
「じゃ店開けるよ さおりは看板出してきて」
明日香に言われてドアに向かったさおりをドアチャイムが襲う。
キリンコロンカラン
「先輩!新聞読みましたか?!」
「キャッ」
「おぉ さおりか すまん 先輩はまだか?」
どうやら今朝の朝刊を手にした風見志郎であった。
「本郷さんならまだですけ…あ」
さおりは風見の肩越しに本郷の顔を見つけた。
「どうした風見 今日は早いな」
「先輩 これを見て下さい」
持っていた新聞を拡げた風見と顔を寄せた本郷は低く唸る。
「むぅ これは… 滝に連絡を入れてみるか…」
ゴールの事が片付いたと思った途端に事件の臭いがする。
本郷の反応にまた殺伐とした日々が始まるのかも知れない と些かげんなりするさおりであったが心の片隅にちろちろと小さな炎が燃えはじめている事も認識していた。
もしかすると自分は闘いに明け暮れる日常を求めているのかも知れない 等と考えていると いつもの席に着いていた本郷が立ち上がって口を開いた。
「明日香 ちょっとさおりを借りて行く」
明日香は小さくため息をついて
「滝さんのとこですね ハイハイ行ってらっしゃい さおり、遅くなるなら連絡入れなよ?」
「はぁーい 行ってきまぁーす」
まるでちょっと買い物にでも行くような何気無さでさおりは店の前に停めてあった相棒 アモンに跨がりアクセルを開く。
店から離れて行く三台のバイクを見送りながら明日香はもう一度小さくため息をついた。
「ったく…」


                ― 完 ―

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