ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

徹真斎の妄想徒然草子コミュの仮面ライダーD.V.L vol.32

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「え… どちら様でしたっけ?」
きょとんとするさおり。
「ヤだなぁ スッとぼけちゃってぇ ほらサイトーっスよ サ・イ・ト・ウ」
ニヤついた顔を近付けて ほら、イケメンですよ と言わんばかりに西塔寿雲は己の顔を指差した。
「え あの ごめんなさい ちょっとわからないですごめんなさい」
困惑の中謝罪しながらさおりは己の記憶を遡り”サイトー”と名乗るニヤけた男を思い出そうとした。
……………わからない それがさおりの記憶が捻り出した答えであった。
「え マジで覚えてねンスか?いやほらこないだアミーゴ行ったっしょ?シャカさん居るかつってほら」
なおも食い下がった西塔寿雲の吐いた”シャカさん”という言葉でさおりは思い出した。
「あぁ そういやなんかそんな人居ましたねぇ」
―こンのクソアマァ…
危うく口から出そうになった言葉を西塔寿雲はなんとか飲み込んだ。
自信家の西塔寿雲にしてみれば 自分の事が記憶にない などという事は屈辱でしかない。
込み上げる怒りを抑え込み顔の筋肉だけで笑顔を取り繕う。
「いやぁ 参っちゃったなぁ てかこんなとこで出会えたのも何かの縁だしちょっとお茶でもどースか?」
ここはアミーゴから程近い 徒歩数分の場所に位置する。
そんな場所で偶然を装うとは如何なものか などと訝しむさおりではなかった。
「あ お茶でしたらアミーゴがすぐそこなんでそちらで…」
「や そうじゃなくてさ 別んトコ行かねーかつっ…」
西塔寿雲が苛立ちはじめた時 さおりの背後から声が掛かった。
「その女ァやめといた方がいいぜ?」
傘2本をぶらぶらさせながらニヤついた表情の大輔が立っていた。
西塔寿雲が眉間にシワを寄せて低く吐き出す。
「!!…シャカさん…ひ、久しぶりスねぇ」
「また俺にぶっ倒されにきたのかぃ?ったく懲りねぇ男だな」
西塔寿雲との間合いを測りながらしかしそれと気付かれぬようゆっくりと近づく大輔。
「っせえな 俺ァあん時より更に強くなってんスよ 今までの分シャカさんに熨斗付けて返せるぐれぇにはね」
言いながら西塔寿雲はゆっくりと腰を落とす。
大輔の動きに気付いたのだ。
―チッ 気付かれたか
心の内での舌打ちを悟られぬよう不敵な笑みを浮かべたまま大輔は動きを止めた。
「ほぅ そりゃまた威勢がいいな なら今ここでやるかい?」
腰を落として構えを取ろうとした時西塔寿雲が動いた。
「おっと 今日はやんねぇスよ」
言うなり数歩飛び退く。
―チッ 間合いの外か
あと一歩、数センチで大輔の間合いに入っていたのだが 西塔寿雲はすんでのところで躰したのだ。
「今日はただのナンパっスよ」
言うが早いかさおりの腕を掴んで引き寄せ、その細い肩に手をまわす。
「って事だからサ どっか行こうよ」
ニヤついた顔をさおりの顔に近付けるとさおりはまっすぐ正面に腕を伸ばし、スゥと一息吸い込んで伸ばした掌を返して拳を握る。
どっ
「ぅぐぇ」
踏み潰された蛙の様に呻いた西塔寿雲は思わず片膝をつきかけた。
西塔寿雲の鳩尾にさおりの肘がめり込んだのだ。
「お断りします あと口が臭い」
普段ニコニコと微笑みを絶やさないさおりが冷たい無表情のまま吐き捨てた。
「な? だからやめとけつったろ」
憐れむように大輔が嘲笑う。
その一方で大輔は顔には出さないが心中驚愕していた。
―ここしばらくの稽古で成長したさおりのエンピを食らって沈まねぇとは… こりゃナメてかかると火傷じゃすまねぇな…
「クソッ 今日のところは引き上げてやらぁ じゃあなシャカさん 次会ったらぶっ飛ばしてやんよ!!」
捨て台詞を残し西塔寿雲は右手を振ってするりと路地に消えた。
カカッ
瞬間 大輔の左後方に位置していた電柱から小気味良く高い音が聞こえた。
丁度大輔の顔の高さに金属の針が2本刺さっていた。
西塔寿雲が消える瞬間何かを投げた事を瞬時に悟った大輔は最小限の動きで躰していたのだ。
―チッ 味な真似しやがる 野郎ウデ上げやがったな… 厄介な事にならなきゃいいが…
まるで大輔の不安を煽るように空はその暗さを増す。
雨が少し強くなった。

「へぇ こないだの人が へぇ〜」
明日香が大輔のカップにコーヒー(無論オリジナルブレンド『マンマンジル』である)を注ぎながらさおりの報告を聞いていた。
「いや〜しかしモロにさおりのエンピ食らって膝をつかなかったのには驚いたね そこだけは褒めてやりたいね」
軽口を叩きながら大輔は明日香からカップを受け取る。
その時
「さおりの手加減も板についてきたという事か」
カウンターの奥でグラスを磨いていた一文字が会話に参加してきた。
「え?手加減?どういう事ですか?」
きょとんとした表情でさおりは聞き返した。
「?! さおり お前まさか手加減しなかったのか?」
突如眉間にシワを寄せる一文字。
「え?だって馴れ馴れしく肩なんか抱いてくるんだもん手加減なんかするわけ…」
そこまで聞いて一文字が考えている事に大輔も気付いた。
「あの野郎まさか…」
二人の考えが読めずキョロキョロするばかりのさおり。
呆れ顔を隠さず大輔が諭すように言う。
「つまり お前さんは尋常な人間とは違う そのお前さんが手加減もせず放ったエンピを食らって膝をつかなかったんだぜ? どう考えたっておかしいだろ クソ なんでこんな事に気付かなかったんだ…」
「! …という事はあのナンパ野郎もゴールの…」
ようやく合点がいって青ざめるさおり。
「現時点での断定は危険だがその可能性は高い、極めて だ」
ぼそりと言う一文字に
「いや ゴールだとしたら俺の所在を掴んだ理由も納得できるし本郷さんや風見さんがヤツの気配に気付かなかった事も それにあの針も」
言いながら大輔は背中を冷たい汗が流れるのを感じていた。
「針?」
一文字の問いに大輔はジャケットの内ポケットから先程の針を取り出した。
「この畳針の親玉みたいなのを投げてコンクリートの電柱に?」
「えぇ 深々と」
どこか何かで見たことのあるような、そんな不思議な輝きを持つ金属の針。
「長さ凡そ30cmの暗器か… よし取り敢えずコイツは預かろう」
しげしげと眺めていた一文字は側にあったキッチンペーパーで針をくるんだ。
「どうするんです?」
大輔が訊くと一文字は
「畳でも打つかな ははは この後藤堂博士が来るんでな 一緒に分析してみようと思ってね」
そう言って地下へのエレベーターに向かう。
「じゃ明日香 後はよろしく」
エレベーターの扉が閉まる瞬間、明日香に丸投げした一文字が地下に消えた。
「はぃはぃ ったく…」
無表情で呆れる明日香に大輔が恐る恐る声を掛ける。
「こ、コーヒーおかわり」

「一文字さんこれは…」
アミーゴの地下メンテナンスルームで一文字から件の針を受け取り、包みを開けて見るなり藤堂は驚愕した。
「見覚えのある輝きだと思わないか?」
「えぇ勿論です! これは、この輝きは恐らくオリハラ鋼! さおりやミキのスーツにも使われているオリハラ鋼です!! しかしこれは一体?! 一文字さんこれをどこで?」
分析結果が出るまでは断定出来ないとしながらも藤堂は間違いないと言う。
「実は…」
一文字は先程大輔から聞いた顛末をそのまま話した。
「………なんと、、、うーん さおりのベルトを作る際、極秘裏且つ試験的にオリハラ鋼を使用するという話は聞かされていましたが そのサイトーなる人物がゴールの改良人間だとすると織原製鋼がゴールの、いや財団Xの兵器開発に本格参入したという事かも知れません…」
藤堂の額を冷たいものが流れる。
一文字は虚空を睨み呟いた。
「死の…商人か…」
外はまだ雨が降っていた。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

徹真斎の妄想徒然草子 更新情報

徹真斎の妄想徒然草子のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング