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徹真斎の妄想徒然草子コミュの仮面ライダーD.V.L vol.30

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「蛇の道は…って おいおい あまり無茶をしてくれるなよ?モノには限度と加減てもんがあるんだぞ」
困ったような笑みを浮かべる滝を見て本郷が吹き出した。
「ぶふっ 限度と加減だと?どの口が言ってるんだ?」
若い頃 インターポールへの出向以降”乱暴な捜査員”として世界中の警察組織にたらい回しにされていた事実を揶揄する本郷に滝は一言
「っせぇ」
と返してコーヒーを啜る。
「あ、いや その、逮捕をちらつかせたり或いはこう…」
言いながら樫尾は握り拳を振る。
それを見た滝はさもつまらなそうに
「なんだよ その程度か」
とそう呟いて滝はまたコーヒーを啜った。
その時
キリンコロンカラン
ドアのチャイムが鳴った。
瞬間その男はそこに居た。
その場に居た誰もが見ていたわけではないが ”ドアを開けて入って来た”という感覚ではなかった。
そう そのひょろりとした体躯の男は”そこに居た”のだ。
「あ いらっしゃいませ 空いてるお席に…」
我に還った明日香の声を遮って男は手を振った。
「あ いや ちげんスよ 客じゃねんスよ」
「は?では何かご用でしょうか?」
客ではない という男に不信感を隠そうともせず返す明日香であったが 男は意に介さず店内を一頻り見渡して答えた。
「えっと シャカさん今日は居ねんスか?」
「シャ…」
聞き慣れない名前を聞き返そうとする明日香をまたも遮り
「あ 本名なんつったかな あぁ坂田だ 坂田大輔っス 俺がシャカさんて呼んでて…そっスか 居ねんスか どーすっかな…」
明日香は残念そうに呟く男に言伝てがあるなら聞いておきますと言うとメモとペンを取る。
「あー じゃ サイトーが来たつっといてください それでわかると思うんで また来まス」
そう言い残すとドアチャイムが鳴り終わる前に姿を消した。

数分後再びドアチャイムが鳴って大輔が
入って来た。
「あ 大輔さん さっき大輔さんを訪ねてサイトーって人が…」
ここまで聞いて大輔は露骨に顔を歪める。
「は?サイトー?」
「えぇ 大輔さんを”シャカさん”って呼んでましたよ?」
明日香の声を聞いて更に大輔の表情が歪む。
「あの野郎… どうやってここを…」
ぶつぶつと口の中で呟く大輔に本郷が声を掛ける。
「大輔、彼はいったいどういう男なんだ?」
本郷は”サイトー”が店内に入ったタイミングがわからなかった事を伝えた。
「は?どういう事スか?」
「俺達も何がなんだか まるで狐につままれた気分さ 気配を断つとかそういう感じではなかった」
「本郷さんがわからないほど?アイツそこまで腕を上げたのか?あぁ いやソイツは ”西塔寿雲”つって前に世話んなった道場で出会った奴なんスけど…」
かつて大輔が様々な武道格闘技の道場を転々としていた頃 とある空手道場で知り合ったという。
その界隈では有名な実戦空手の師範の道場だったのだが西塔寿雲は師範の下で一二を争う実力者でありまた 指導員というポジションに居た。
よくある話だが西塔寿雲はその状況の上に胡座をかいていた。
慢心していたのだ。
更に ”出稽古”という名目で師範に教えを乞うていた大輔を快く思っていなかった。
西塔寿雲は大輔の出稽古を”道場破り”と捉えていたのだ。
当然両者に軋轢が生まれ、事ある毎に大輔に突っ掛かる西塔寿雲が師範の悩みの種だった。
ある日師範は西塔寿雲の慢心した態度を戒める意味を込めて二人を対戦させた。
無論、当初は流派の試合ルールに則った内容で という約束だったが西塔寿雲の慢心が鎌首をもたげた。
「なんでもアリでいいぜ?」
西塔寿雲はそう大輔に持ちかけた。
大輔自身に異論は無かったが一応確認すべく師範を振り替えると苦々しい表情ながら首を縦にしていた。
西塔寿雲は大輔が自流とルールが違うからという言い訳を理由に敗北を認めないのではないか と考えていたのだ。
また いかなるルールに於ても必ず勝てると絶対の自信を持っていた。
大輔はこれを真っ向から受けて立つ。
大輔にしてみれば限られた制限の中で出来る事の幅を拡げる為の出稽古でありルール無用こそが自身の本道だったのだから正に水を得た魚 西塔寿雲に圧勝という形で闘いの幕を引く。
これを機に西塔寿雲の態度は一変する。
確かに西塔寿雲から慢心した態度は消えた。
しかし西塔寿雲は逆に卑屈な態度を取るようになった。
大輔に対してのみである。
師範は諦め、他の道場生達は辟易したが西塔寿雲の中に”打倒坂田大輔”の想いが宿っていた。
しかしそれを見て取ったのは他ならぬ大輔のみであった。
―コイツは油断ならねぇな… ウッカリ隙を見せたら寝首をかかれかねねぇ…
大輔はそんな不安感を抱いていたがある日突然西塔寿雲は
「武者修行に出る」
そう言い残して姿を消した。
その後大輔もその道場を辞し、新たな師を求めて再び放浪するが いつの頃からか西塔寿雲はふらりと大輔の前に現れては大輔に試合を挑み負けて去る という事を繰り返すようになったという。
「どこでどう調べてくるのかさっぱりわかんねぇんスけど…」
それまで黙って聞いていた滝が軽い口調で言う。
「いやぁ 生きていれば足跡を辿る方法はあるさ」
大輔もその意見は肯定する。
「そういうもんですかねぇ 今は本郷さんのとこにしか通ってないし 余所で名乗ったりもしてないんですよ」
納得出来ないといった物言いで返した大輔は更に続ける。
「それに本郷さんが言ってたような気配の消し方なんて出来るとも思えなくて… いや ヤツの性格から言うと隠形とかの技術には見向きもしないというか…」
「ふむ 攻撃一辺倒だった という事か」
コーヒーを一つ啜った本郷が呟く。
「なにか劇的な事があったんじゃないの?なにかこう、人生の転機みたいな」
大輔のコーヒーを注ぐ明日香をぼんやりと見ながら
「かもしれねぇなぁ…」
ボソリと呟いた。
「で、」
大輔の前にカップを押し出して明日香は先ほどからずっと気になっていた事を口にした。
「なんでシャカなの?」
出されたコーヒーを口許に運びながら答える。
「あぁ アダ名だよ」
一頻り香りを楽しんだ後一口啜る。
「その道場で挨拶する時に噛んじまってな それ以降サイトーのバカがイジってそう呼んでたんだよ」
「イジって呼んでくるのを放っといたの?」
明日香の素朴な疑問に大輔は照れたような笑みを浮かべて
「わりと気に入ってたんでな」
そう言ってからまたコーヒーを啜った。

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