女子ゲーmessage☆boardコミュのイケメンシェアハウス完レポ④

第４話

【シェアハウス居間】

リビングの電気は点いているのに、何故か暗く感じた。
昴さんに促されて、ソファーに腰を下ろす。

昴「ほら」

そっと差し出されたカップから、ミルクティーが湯気を立てていた。

主人公「昴さん…」

昴「ゆっくり飲め」

昴さんがキッチンに向かおうとした時、玄関の方から騒がしい声が聞こえた。

昴「帰ってきたみたいだな」

大和「ただいま、昴も○○も帰ってたのか」

漣「…どうしたの？○○…顔色悪い」

拓斗「腹減った。夕飯まだ？」

拓斗さんと遼一さんもリビングに降りてきた。

遼一「拓斗、急かすとまた昴がうるさいぞ？」

拓斗「…じゃ、昼寝でもしてこようかな」

部屋に戻ろうとする拓斗さんがふと、私を見てから立ち止まる。

拓斗「…何かあった？葬式みたいな顔して」

昴「全員いるな、話がある」

昴さんはみんなを見て、空き巣の話をした。
部屋を確認して欲しいという昴さんの言葉に、
それぞれの部屋へと入った後、またリビングに集まった。
何も盗られていないと言うと、遼一さんと拓斗さんもうなずいた。

昴「じゃあ、盗られたのは○○のジュエリーＢＯＸだけか」

昴さんはため息交じりに考え込む。

主人公「…仕方がないです、もうあきらめます」

昴「高価なもんとか入ってたのか？」

主人公「いえ…ブレスレッドが入ってただけで…」

大和「それって、おばあちゃんからもらったってやつ？」

大和さんだけは驚いているようだった。
おばあちゃんからもらった大切なブレスレッド。
価値がないと分かれば、空き巣は捨ててしまうかもしれない。
それを思うと胸が痛む。

大和「大事なものなんだろ？どうにかして取り返さねーと…」

大和さんの言葉に、拓斗さんが考え込むように黙り込んだ。
リビングに暗い雰囲気が漂う。

昴「○○、悪い。ちょっときてくれるか」

主人公「あ…はい」

【シェアハウス台所】

昴さんに呼ばれて、キッチンに立つ。
すると、昴さんがおもむろに言った。

昴「そんな顔するな」

ポンッと大きな手が頭を掴むようにのせられる。

昴「ブレスレッド…俺が取り返してやる」

主人公「え…でも」

昴「お前は何も考えなくていいから。心配するな」

自信に満ちた目が優しく微笑んで、私の胸は急激に鼓動を早めていた。

【シェアハウス居間】

食事が終わると、拓斗さんが昴さんの隣にやってきた。

昴「何だ？」

拓斗「○○の…ブレスレッド取り返すんだろう？オレも手伝ってやってもいーけど」

大和「ちょっと待てよ。俺も手伝う」

漣「取り返さないと」

遼一「勝手なことをされてこのままにしておくわけにはいかない」

主人公「みなさん……ありがとうございます…！」

昴「じゃあ、とりあえず作戦会議でもするか」

遼一「ちょうど、今朝の朝刊に空き巣の被害地域が載ってた」

そういって遼一さんが新聞を広げる。

そこには、被害地域一帯の地図と事件発生日時が書かれていた。

遼一「ニュースで見ても、ここ数カ月でこの辺りに被害が集中してる」

昴さんも新聞を覗き込む。

遼一「こことここ、ここなんか先週だ。だとすると…次はこの辺りじゃないか？」

遼一さんはとなりの町内を示す。

昴「意外と、近所に住んでたりするかもな…」

いつの間に持ってきたのか、拓斗さんがノートパソコンを開いている。

大和「拓斗お前…何してんの？」

拓斗「監視カメラにハッキング…」

大和「は？」

主人公「監視カメラって…」

拓斗「この辺、街頭に監視カメラ付いてるから」
拓斗「これだけいろんなとこ入ってれば、１回くらいどっかに映ってる」

昴「たこ焼きを焼くのが上手いだけじゃなくて、そんなスキル持ってたのか」

拓斗「別に、大したスキルじゃねーし」

拓斗さんがキーボードを叩く音が響く。

拓斗「あ」

昴「どうした？」

拓斗「こいつだ」

遼一「どれだ？」

拓斗「この男」

画面には私たちの家の方からでてくる見知らぬ男性が映っていた。
みんなが、腕を組んで画面を覗き込む。

拓斗「空き巣が入った前後２時間、この道を往復したのはこの男しかいない」

（すごい……拓斗さん）

昴「こいつが…」

大和「あとはこいつがどこに住んでるかを特定できれば…」

拓斗「家も、そう遠くない」

拓斗さんはそう言って、再びキーボードを叩いた。

拓斗「だいたい…この辺りのはずだけど」

拓斗さんが開いた地図上で、１個所のエリアが赤く点滅していた。

主人公「これは…」

拓斗「被害地域と行動範囲、犯人の年齢予測から見て、この辺りに住んでる可能性が高い」

真剣なまなざしでパソコンのモニタを見つめている拓斗さんは、
いつものイタズラしているときとの顔とは、まるで別人だ。
拓斗さんは、解析した監視カメラの映像と地図とを見比べて、何か考え込んでいる。

拓斗「…こいつのこの服の汚れ、なんだと思う？」

昴「汚れ？どっかで擦ったんじゃないのか？」

遼一さんと一緒に覗き込むと、拡大した画像に映る男性が着ている上着には、
うっすらと黄色っぽい汚れが付いていた。

大和「侵入するときか、逃げる時に転んだか…」

昴「でもこんな黄色い汚れ…ペンキでも触ったのか？」

漣「この色…何かの花粉」

漣くんが思いついたように、ぼそりと言った。

昴「花粉？そんなのどこで…」

しばらく沈黙が辺りを包み、思いついたように拓斗さんがキーボードを叩き始める。

拓斗「空き巣は、特定されるような痕跡を残さないように、侵入した家では細心の注意を払うはずだろ」
拓斗「無防備に汚れを付けても気にならないのは、自分の家くらい」

拓斗さんが真剣な顔で続ける。

拓斗「空き巣をするような男が、花を育てるわけない。それなら、その花は自生してるはず」

大和「自生している花か…でも、どこにでもある花だったら…」

漣「いや…」

漣くんはおもむろに立ち上がると、モニタを見て言った。

漣「この色…どこにでもあるような花じゃないよ」

昴「漣、知ってるのか？」

漣「外来種の、日陰を好んで咲く花で……」

拓斗さんが、漣くんの言う条件を元に、場所を絞り込んでいく。
それは、家からは少し離れているものの、ごく近所だった。

拓斗「この辺りを洗ってみるか……」

キーボードを叩く拓斗さんを、固唾を飲んで見守る。

拓斗「このアパートじゃないか？」

大和「おい、すげーな！」

拓斗「ここから一番近いコンビニの監視カメラ…さっきのヤツに似てるやつが映ってる」

遼一「決まりだな」

主人公「こんな近くに住んでるなんて…」

昴「よし、行くぞ」

主人公「えっ…」

昴さんの言葉に戸惑っていると、遼一さんが言った。

遼一「空き巣は下見するって言うからな」
遼一「夜の方が出歩きやすいだろうから、今がチャンスかもな」

主人公「で、でも…」

不意に、頭にぽんと手が載せられた。

昴「ちゃんと守ってやるから」

主人公「昴さん…」

【夜道】

昴「管理人に確認した。そこの１０３号室だ」

裏庭に大きな花が咲くアパートの前。
話を聞きに行った昴さんが、車に戻ってくる。

漣「よく教えてくれたね」

遼一「職権乱用も緊急時なら問題ない」

主人公「職権乱用？昴さんって、お仕事何してるんですか？」

遼一「ＳＰ」

主人公「え、ＳＰってあの……？」

昴「余計なことはいいから」

（毎日スーツを着て出かけていくけど、そんな大変なお仕事だったなんて）

昴「帰ってこないうちに済ませよう」

拓斗「大勢で行くと目立つ。俺が行く」

昴「よし、じゃあ、頼んだ。気をつけろよ」

昴さんの言葉に送りだされ、拓斗さんとともに車を降りた。

【犯人アパート外】

主人公「た、拓斗さん！何してるんですか？」

拓斗「見ればわかるだろ？カギ開けてんの」

拓斗さんは細い針金を鍵穴に挿して、器用に操っている。
テレビでしか見たことのない光景に、思わず息を呑む。

主人公「拓斗さん、どうしてそんな技を…？」

拓斗「企業秘密。……よし」

拓斗さんがゆっくりとノブを回し、ドアを開く。

【犯人アパート中】

後に続いて中に入ると、まるでゴミ溜めのような部屋が広がっていた。

拓斗「ひでー部屋…で、お前のジュエリーＢＯＸってのはこん中にあるか？」

主人公「この中から探すって…」

絶望的な気分になっていると、部屋の隅で光るものを見つけた。

主人公「あ…」

手を伸ばして箱を手に取った時、拓斗さんの携帯が鳴った。

拓斗「…わかった」

主人公「ありました！」

拓斗「急いで出るぞ。犯人が近くにいるらしい」

主人公「え！？」

拓斗「ほら、行くぞ」

慌てて部屋を飛び出すと、私たちは横付けされていた車に飛び乗った。

【車の中】

漣「ブレスレット…あった？」

漣くんの言葉に、私は抱きしめていた箱を開けた。
中にはおばあちゃんからもらったブレスレットがちゃんと入っている。

漣「よかったね」

主人公「うん！」

【シェアハウス居間】

翌朝、リビングに行くと遼一さんがコーヒーを飲みながらニュースを見ていた。

主人公「おはようございます」

遼一「よく眠れたか？」

主人公「はい、いろいろとありがとうございました…」

遼一「別に、俺は何もしてない」

その時、テレビから空き巣事件の犯人逮捕のニュースが流れた。

主人公「これ…」

昴「遼一が通報した」

主人公「遼一さん…ありがとうございました」

遼一「１１０番しただけだぞ。それから……」

遼一さんはふっと笑いながら、コーヒーを口にした。

遼一「礼なら、部屋でって言ったろ？」

そう言って、遼一さんは手を振って部屋に戻っていった。

昴「あ、やべ」
昴「俺はもう行くぞ」

昴さんは時計を見ると、急いで家を出て行った。

主人公「…そうだ、みんなのためにお菓子でも作ってお礼しようかな」

（私のために動いてくれたみんなに、夕食後に食べられるクッキーを）
（特別心配してくれたあの人には、ハートのクッキーでも焼いてみようかな）

主人公「……って私も出る時間だ！」

時計を見て、私も慌ててバッグを掴んだ。
今日は少しだけ早く帰って、クッキーを準備しなくちゃと思いながら。