古寺巡礼コミュの欣求の道　　18番　比叡山　延暦寺

欣求の道、最終の寺院は皆様ご存知の延暦寺です
滋賀県、欣求の道
（150）比叡山
延暦寺（えんりゃくじ）
住所　〠　520―0116　滋賀県大津市坂本本町4220　
電話番号　

　077―578―0001(代表）
本　　尊　薬師瑠璃光如来
開山　伝行大師　最澄
創　　建　延暦7年（788）
アクセス　JR京都駅→JR湖西線比叡山坂本駅、江若バス　坂本ケーブル行
きに乗車→ケーブル坂本駅、延暦寺駅→徒歩8分
＜寺歴・縁起＞　H/P　http://www.hieizan.or.jp/
天台宗山門派総本山　新西国33所18番（横川中堂）西国薬師49霊場49番
東海49薬師特別札所　播州薬師霊場特別札所　神仏霊場150番

　根本中堂は、比叡山延暦寺東塔地区に建ち、延暦寺の中心伽藍であり、薬師瑠璃光如来を本尊としています。不滅の法灯も根本中堂に安置されています。また木造建築としては、日本でも有数の建物の一つとなっております。
　　最澄は神護景雲元年（767、766年誕生説あり）、近江国滋賀郡、琵琶湖西岸の三津（今日の滋賀県坂本）で、三津首百枝（みつのおびとももえ）の長男として誕生。幼名を広野（ひろの）と呼ばれました。
早くからその才能を開花させ、12歳で近江の国分寺行表（ぎょうひょう）の弟子となり、宝亀11年（780）に得度、延暦4年（785）に奈良の東大寺戒壇院で具足戒（250戒）を受け、国に認められた正式な僧侶となられたのです。受戒後3ヵ月ほどで奈良を離れ、比叡山に分け入り修行の生活に入られました。そして若き僧最澄は【願文】を作り、一乗の教えを体解（たいげ）するまで山を下りないと、み仏に誓いました。その後、延暦7年（788）に日枝山寺（後の一乗止観院）を創建、本尊として薬師如来を刻まれました。
　【願文】の中で、
「私たちの住むこの迷いの世界は、ただ苦しみばかりで少しも心安らかなことなどない。（中略）人間として生れることは難しく、また生れたとしてもその身体ははかなく移ろいやすい。」と、世の中の無常と人間のはかなさを自覚されました。
　そして、「因なくして果を得、この処（ことわ）りあることなく、善なくして苦を免がる、この処（ことわ）りあることなし。」と因果の厳しさを述べ、だからこそ生きているときに善いことをする努力を惜しんではならないと考え、『願文』の中で五つの【心願】をたてられたのです。
　天台大師智顗の教えを極めたいと願い、桓武天皇の援助を受けて還学生（げんがくしょう）として唐に渡りました。中国天台山に赴き、修禅寺の道邃（どうずい）・仏隴寺の行満に天台教学を学び、典籍の書写をします。その後禅林寺の翛然（しゅくねん）より禅の教えを受けられ、帰国前には越州龍興寺で順暁阿闍梨から密教の伝法を受けられます。こうして、円密一致といわれる日本天台宗の基礎をつくられたのです。
　延暦24年（805）に帰朝してすぐに、高雄山寺で奈良の学僧達に日本で初めて密教の潅頂を授けるなどして、入唐求法の成果を明らかにされました。
当時、「仏に成れるもの、仏に成れないものを区別する」という説もありましたが、最澄は、「すべての人が仏に成れる」と説く『法華経』に基づいて、日本全土を大乗の国にしていかねばならないとの願いが募り、法華一乗による人材の養成を目指しました。

天台法華宗年分縁起　伝教大師筆
　最澄の努力と熱意が通じ、延暦25年（806）1月26日、年分度者（国家公認の僧侶）2名認可の官符が発せられました（天台宗開宗の日）。
2名の年分度者とは、天台教学を学ぶ者（止観業）1名と、密教を学ぶ者（遮那業）1名でした。
その後最澄は、真俗一貫の大乗菩薩戒こそが真に国を護り人々を幸せにすると考え、弘仁9年（818）から翌年にかけて【山家学生式】（さんげがくしょうしき）と呼ばれる一連の上表を行います。さらに弘仁11年（820）、『顕戒論』を著わして比叡山に大乗戒壇の公認を願われたのでした。
しかしその願いも叶うことなく、弘仁13年（822）6月4日、56歳で遷化されました。そしてその7日後、最澄の願いが聞き届けられ、大乗菩薩戒を授ける得度授戒の勅許が下されたのです。
　最澄亡き後、一乗止観院は「延暦寺」の寺額を勅賜され、比叡山延暦寺と呼ばれるようになりました。翌年、弟子の義真が伝法師（後世の天台座主のこと）として後を継ぎます。
　第3世座主円仁によって、延暦寺では横川（よかわ）が開かれ、東塔地区も整備されていきます。また、9年間に亘る入唐求法の成果をもとに、天台教学の中に浄土教を取り入れ、密教を拡充していくなど、その功績は多大なものでした。
　円仁の没後ほどなく、貞観8年（866）、最澄には「伝教大師」、円仁には「慈覚大師」という諡号（しごう）を清和天皇より賜りました。これは日本における初めての大師号であり、最澄・円仁による天台宗の確立が、いかに日本仏教の発展に寄与したかを示すものであります。
また、第5世座主の円珍（智証大師）や五大院安然らによって密教も体系的に整備され、後に東密（真言宗の密教）に対して台密（天台宗の密教）と称されるようになりました。
その後も多くの人材が比叡山で研鑽に励み、学問も修行も充実していきます。平安時代中期には、第18世座主の良源（慈恵大師）によって諸堂の再建と整備がなされ、論義が盛んに行われて教学の振興がはかられました。さらに弟子の源信（恵心僧都）によって『往生要集』が著わされ、これが後の日本の浄土教発展の基礎となりました。
　また、『法華経』や浄土教信仰などは知識人の間に浸透し、『源氏物語』や『平家物語』に代表される古典文学の底流をなしています。円仁が中国からもたらし大成した声明は、日本伝統音楽の源流となり、また能・茶道にも天台の仏教思想が深く入り込んでいるといわれています。
　平安末期から鎌倉時代はじめにかけては、法然・栄西・親鸞・道元・日蓮といった各宗派の開祖たちが比叡山で学びました。こうして後に比叡山は日本仏教の母山と呼ばれるようになったのです。
時代は下り、盛栄を誇った比叡山延暦寺も織田信長の焼き討ちにあい、一時その宗勢に陰りが見えましたが、江戸時代になり徳川家康の懐刀と云われた天海（慈眼大師）によってその勢力を盛り返し、特に寛永寺は西の比叡山に対して東叡山と呼ばれ、その影響力を日本全土に及ぼしたのです。

　天台座主
　天台宗総本山延暦寺の住職として宗祖伝教大師からの法脈を相承し、天台宗徒及び檀信徒の敬仰する天台宗の信仰の象徴的存在です。

　座主とはもと僧団の中で学徳優れた上首を意味し、伝教大師の中国天台山での師、道邃和尚は天台山修禅寺座主と呼ばれていました。比叡山でも宗祖のあと義真和尚が法脈を継ぎ座主と称しましたが、おおやけに官符によって座主職が任命されたのは、義真和尚に続く円澄和尚のあと、円仁和尚（慈覚大師）からです。これ以降、江戸時代末に至るまで天台宗の教学の両輪である止観、遮那（しやな）（真言）両業に通達した者が、天台座主として朝廷から勅旨によって任命されてきました。また、平安中期以降、摂関・院政期以降は、皇族、貴族の出身者が多く任ぜられるようになりました。
　慶応4年第231世座主昌仁が守脩（もりさお）親王として還俗されて以降、一時期座主職の補任は廃止されましたが、その間も法脈は継承され、明治17年に座主の公称が許され今日に至っています。
現天台座主半田孝淳大僧正は、義真和尚から数えて256世となります。
現在、座主職の欠職は許されず、座主が万が一の場合は、探題（たんだい）職の順位で次席の者が直ちに上任する定めになっています。探題職は、定められた経歴法階によって、望擬講（ぼうぎこう）、擬講（ぎこう）、已講（いこう）、という法階を歴任して、探題に補任されます。その補任順位の首席が延暦寺住職として天台座主に上任します。

根本中堂
国宝　江戸時代（寛永19年）
　東塔地区の中心部にある比叡山延暦寺の総本堂であり、伝行大師最澄が
延暦7年（788）に創建した「一乗止観院」を起源とする。現在の建物は織田信長の焼き打ち後、慈眼大師、天海の真言により徳川三代将軍家光が寛永19年（1642）に再建したものである。再建当初は栩葺であったが、寛政10年（1798）以後は銅板葺瓦棒入りとした。
桁行11間、梁間6間、軒高9.78m、棟高24.46m、一重入母屋造りの大建築は山内はもとより滋賀県で最大級の仏堂であり国宝である。

内陣の御前立　薬師如来立像
木造、像高75.0Cm、江戸時代
厨子の中に納められた秘仏の本尊薬師瑠璃光如来立像の御姿を、江戸時代に写したお前立である。秘仏の本尊は東塔北谷の霊木を最澄が自ら刻して安置したと伝わる

根本中堂内陣　　　　　　護摩壇（左脇壇）
　内陣の護摩壇（左脇壇）では毎日薬師護摩が一日も欠かすことなく焚かれ、世界平和と人類の平安を祈り続けている。

不滅の法灯

大講堂　　　　　　　　　　　　内陣
　大講堂はその名が示す通り僧侶の学問研さんの根本道場として発展し、慈恵大師良源によってはじめられた「法華大会広学竪義」をはじめ、最澄始修の「天台会法華十講」等の主要な論義法要が行われている。さらに「涅槃会」「阿覚大師会」「灌仏会」「桓武天皇講」「伝教大師御影供」「天台大師御影供」などの諸法会も此処で修される。また堂内には比叡山で修学修行した各宗の祖師像が各宗派から奉納され祀られている。現在の大講堂は昭和31年（1956）焼失後、山麓坂本の讃仏堂を昭和38年移築再建したものである。
　内陣：中央の本尊は胎蔵界の大日如来、右脇には十一面観音菩薩、左脇には弥勒菩薩を祀っている。最澄は法華一乗と真言一乗戸の一致を説いたが、ここでは本尊大日如来の宝前にて法華経の論義がおこなわれるのが特徴である。

戒壇院
重文　江戸時代（延宝6年）
　南都仏教で行われていた小乗具足海に対して大乗菩薩戒を授ける道場として最澄によって企画された堂宇であり、最澄滅後5年目の天長4年（827）初代義真座主により創建された。現在の戒壇院は延宝6年（1678）の建築で、方3間、一重、裳階付宝形造り、栩葺の建物である。内部は石築の戒壇が設けられ、中央には受戒の三士たる釈迦牟尼仏（戒和上）、文殊菩薩（羯磨師）、
弥勒菩薩（教授師）の三尊が祀られ、毎年、天台座主を伝戒師として円頓授戒がおこなわれている

文殊楼　　　　　　内陣　文殊菩薩坐像
　文殊楼：江戸時代（寛永19年）
根本中堂正面東側の虚空蔵尾にあり、根本中堂の正面としての機能を果たしているが、もとは常坐三昧（坐禅止観）実習の道場として最澄によって企画された寺院である。のちに慈覚大師円仁が中国五台山の文殊菩薩坐像を勧請して創建したので文殊楼と呼んでいる。現在の建物は寛永19年（1642）の再建によるものであり、二重の楼閣となっている。
　文殊菩薩坐像：国内で最も早期に文殊菩薩を祀ったという文殊楼。現在、楼上に安置されている像も、獅子の背上に乗って経巻と剣をもつ、「五台山文殊」とも呼ばれる形式の文殊菩薩座像である。

法華総持院東塔・阿弥陀堂
　東塔：昭和61年・阿弥陀堂：昭和12年
向かって左奥には法華総持院東塔がそびえ立っている。この東塔は最澄が法華経宣布の一大拠点として日本全国に建立を企画した六所宝塔の総元締めとも云うべき近江宝塔にあたる施設である。これを創建したのは円仁であり、唐都長安、青龍寺の鎮国道場の形態を模し、本尊に胎蔵界の5仏を安置して天台密教の根本道場として建立された。
　手前右側の建物は、昭和12年（1936）比叡山開創1150年を記念して創建された念仏回向の道場である阿弥陀堂である。

にない堂
（左側）常行堂（右側）法華堂　重文　桃山時代（文禄4年）
向かって右側が法華堂、左側が常行堂であるが、両堂は渡り廊下で結ばれていて力持ちの武蔵坊弁慶がこの廊下を天秤にして担いだという伝説から「にない堂」とも呼ばれる。
　法華堂：普賢菩薩を本尊とし、法華経に基づき半行半坐三昧と云う天台止観実修の道場である。
　常行堂：阿弥陀仏を本尊として修す常行三昧の道場である。
両堂は同じ形式で、方5間、一重、宝形造り、向拝1間、屋根栩葺の建物である。
西塔（さいとう）

釈迦堂　　　　　　　　　　　　　内陣
　重文　室町時代　西塔の本堂であり、転法輪堂とも西塔中堂とも称する。
転法輪堂は第2世天台座主円澄が承和元年（834）に創建したもので、最澄自作の釈迦如来（秘仏）を本尊として祀る。現在の堂宇は厳かめ2年（1571）の焼き打ち後、豊臣秀吉の明により文禄4年（1595）に三井寺園城寺の弥勒堂（金堂）を移築したものであり、鎌倉時代初期に近い純和様の現存する延暦寺最古の建築物である。

椿堂　　　　　　　　　相輪塔
　椿堂：西塔南谷にあり、かって聖徳太子が比叡山に登った時、常に護持していた観音像を安置して建てられたのが始まりと伝えられている。またこの堂の傍に杖として使っていた椿の枝を刺しておいたところその枝が目を出して大きく育ったとの因縁により「椿堂」と呼ばれるようになった。
　相輪塔：釈迦堂の背後（北東）にあり、元宝幢院の一施設であったが今は宝幢のみ存在する。相輪塔は当初最澄が建立し、法華経や大日興など22部58巻の経典と銘文を納めた。高さは４丈５尺（13.64m）からなり、頂上に金銅の相輪があることで「相輪塔と呼ばれている。

瑠璃堂
　西塔北谷にあり、その昔古仙の霊崛があってそこに最澄自作の薬師如来を安置したのが始まりと伝える。また元慶年中（877～885）本尊が光を放って京都を照耀したので、陽成天皇が驚き怪しんで光を訪ねしめしたところ、ここに至ったので寺に放光院の号を賜ったという言い伝えもある。なおとうどうは比叡山で元亀の兵火を逃れた唯一の現存建物と伝えられている。確実な年代は不詳であるが、室町時代末期の唐様建築で入母屋造り檜皮葺とみられている。

恵心院
第18世良源座主の時、右丞相、藤原兼家が本願主となった永観元年（983）に創建した寺院である。その後、叡山浄土教を大成した恵心僧都源信がここに在したので院の名をとって源信の事を恵心僧都と呼ぶようになり、また源信の没後、いつの頃か恵心僧都の像も置かれて御影堂としての機能を持つことになった。現在の建物は山麓坂本の生源寺横の別当大師堂を移築再建したものである。
横川

横川中堂　　　　　　　　内陣
　横川は西塔よりさらに4Kmほど北に入ったところにある閑寂な修行地で、昔日の面影を最もよく伝える寺域である。
慈覚大師円仁が開いた、横川の中心の建物。昭和17年（1942）に落雷で焼失するまで慶長9年（1604）に淀殿が寄進した堂宇がありました。昭和46年（1971）伝教大司祭長の1150年遠忌を記念して落慶したのが現在の横川中堂である。真西国33所第18番札所にもなっており、巡礼者も多数訪れる堂宇であります。朱塗りも美しい現在の横川中堂は鉄骨鉄筋コンクリート造りで、外観は焼失前と変わらぬ姿で復元されている。
　内陣：昭和17年（1942）雷火に包まれた際、奇跡的に救いだされた本尊の聖観音立像が内陣に納められている。

元三大師堂（四季講堂）　　　　　　　　山門
　江戸時代　もと良源の住坊にあたる定心坊打を起源とする。良源はこの定心坊において春夏秋冬の四季に学徒を集めて大乗経典の講経と論義を始修して以後恒例としたので四季講堂とも呼ばれるようになった。良源没後はこのお堂に良源の画像を安置し、全国の元三大師信仰の中心拠点としての発展を遂げる事になる。ここで毎日横川院内住職の臨番によって行われる御勤めは厳しく「看経地獄」と云われています。良源が変化した鬼の姿を描く「角大師」の魔よけの護符を授けている。別称、おみくじ発祥の寺ともいわれる。

聖観音立像　　　　　薬師如来坐像　　　　　維摩居士坐像
　聖観音立像：横川中堂本尊　重文　平安時代　木造素地　截金　
像高170.6Cm　各地の天台関係寺にしばしば見られる。未敷蓮華に右手を添えて花を開こうとする観音の姿は、本像を写したものである。天台宗の法華一乗の教えの通り、あらゆる人々を救おうとする慈愛に満ちた表情をたたえる。全体に穏やかな彫刻の作風は定朝様の流れをくむ。今は黒く見えるが、素地の上に截金で文様をあらわしており、物心の荘厳が高また12世紀後半の制作であろう。
　薬師如来坐像：重文　平安時代　木造漆箔　像高88.7Cm
延歴寺の根本中堂は、最澄が薬師如来像を自刻し祀った一乗止観院に始まる。
以来、天台宗寺院で最も大切に祀ってきたのが薬師如来像である。
　その名の通り病気平癒が願いの第一だったが、国全体の災いを除く絶大な力を求めて、薬師を本尊とする法会が営まれた。本像は滋賀蓮台寺の本尊として伝えられたものである。厳しくも穏やかな容貌で地髪から肉髻へとなだらかに続き、額が狭いなど、平安時代中期の天台系薬師の特色を示す。
　維摩居士坐像：重文　平安時代　木造彩色　像高34.8Cm　
維摩は在家ながら大乗仏教の教えに通じ、病の際に釈迦が見舞いに使わした文殊菩薩と問答した話が有名である。本像の伏し目がちな表情や左手の二指を立てて語る様は、この時の姿の造形にほかならない。ただ維摩像して異例の結び紐を垂らした頭巾を被るのは最澄請来の天台大師画像によるとの説があり、また頭頂を尖らせるのは圓珍の姿に通じるとの説もある。脇息も含め一材で作る点や、衣文を強くひるがえす点など、制作が平安時代前期に遡ることをうかがわせる。

不動明王二童子坐像
像高：不動明王67.9Cm　制吒迦童子36.7Cm（左）矜羯羅童子39.7Cm（右）
東塔、無動谷の伝来。五大明王は、鎮護国家、災難消除を祈願する二王経法の本尊である。平安時代後期から室町時代初期にかけての記録「門羽記」に、無動寺を開いた相応（831～918）が感得、自刻したと伝える不動ほか五大明王図が載り、本像がこれに各当するものとみられる。躍動感に満ちた造形を、運慶の長男湛慶の作とみる説や、不動二童子より四明王を新しく見る説があるが、いずれにせよ鎌倉時代の主流、慶派仏師の制作になることは間違いない。

降三世明王　軍茶利明王　　大威徳明王　金剛夜叉明王

不動明王立像・千手観音立像・毘沙門天立像
　木造像高：不動明王93.5CM　千手観音106.1Cm　毘沙門天103.4Cm　
平安時代　重文　葛川明王院本尊
この三尊形式は、天台宗独特のもの。観音様と毘沙門天の結びつきは円仁が唐からの帰路嵐に会い、観音様に祈ったところ毘沙門天に救われたとの伝承による。また不動明王が頭髪を巻き髪とし、左目を細めるのも、天台僧安然がまとめた「不動十九観」による。各像とも全体に穏やかで、平安後期の典型的な様式を示す。