KENICHI図書館コミュの誰かを守る為に…-消防官青山大介-4

梅雨明けの週末、青山達は高速道路上で渋滞に巻き込まれて
トホホといった表情で雑談していた。

「よりによってこんな日に訓練センターにお呼び出しとは・・・」
「まぁ、出場から回避されるだけマシですよ」
「ハンドル握る身にもなって下さいよ！」

といった感じで、渋滞のイライラを紛らわしていた。

高速道路から持ヶ谷バイパスへ抜けて暫くすると更に流れが
悪くなる。訓練開始予定に間に合うか気になって来た所で、
ものすごい勢いのスポーツカーが路肩を抜き去っていく。

「あ！？道交法違反してやがる！！！」
「まぁ、あれをとっ捕まえるのは警察さんの仕事だから・・・。」

再び気だるい空気が車内を支配しようとしたその時。
前方から大音量の「嫌な音」が聞こえてきた。
全員がまさか？と疑ったが、この位置では何が起こったかも
把握できなければ、指令室からの指令もない。

我慢して、暫く通常走行で進むと・・・見えた！
やはり、先ほどのスポーツカーが事故っていた。
しかも、横転している上に他の車両を巻き込んで、青山は
絶句した。当然、交通事故現場へは何度か出場している。
だが、今回は想像を絶した。

助手席の小隊長が、司令室へ一報を送ると、中第２は緊急走行で
路肩をすり抜け部署する。

「小原！拡声器を使って後続車両に注意を促せ！」
「大谷！状況を本部に送れ！」
「他は現場確認するぞ！」

現場を確認すると、事故車両は全部で４台。
スポーツカーは横転して他の車両のキャビン上に乗り上げている。
青山達は脱出不能・ガソリン・オイルの流出確認をしていく。

「事故車両Aからガソリンの流出と脱出不能２名を確認！」
「負傷の程度は？」
「現在確認中！」
「事故車両Cは脱出不能は無し。軽傷者４名！内１名は子供！」

事故状況が明らかになっていくが、事故車両B（横転したスポーツカー
の下敷き）は何名が乗っているのかも掴めない。
焦りを抑えて確認を続ける。ふと、中第２（消防車）の後方を見ると、
最悪だった。先を急ぐ者達が路肩をそうこうした挙句、緊急車両の
現場への接近が困難な状態だった。

小隊長は無線担当の大谷に増強部隊の接近が困難である旨と、
航空隊の要請を送るよう頼む。

「事故車両B、脱出不能２名！傷病の程度は不明、意識アリ！！」

状況は判明したが、我々だけではどうする事もし難い。
今回の事故は負傷者が１０名、内、脱出不能が６名。
２次事故防止と増強部隊到着まで凌ぐ方針を取る。

「小原・西島・青山で、警戒筒先を設定！」
「大谷は・・・」

今度は後方の中第２の方から「嫌な音」が・・・。
振り返ると、小隊長・大谷、そしてバイクの男がうずくまっていた。
幸い、３名とも意識はある。そして自力で立ち上がったが、
苦悶の表情を浮かべる。

まともに活動可能なのは先輩の西島・小原・青山の３名、
無事に任務を全う出来るのか？青山は不安になった。

続く