☆ストーリー☆
この世には、目には視えない化物『悪霊』と、目に視える化物『妖怪』が在る。
奴等が時として悪さをするので、それを退治する者達が存在していた。
☆主要キャラ☆
吉山 樫斗（よしやま かしと）
妖怪専門の退治屋（陽属性）
三節棍を使う
流星群(サイリウムばら蒔く)と織姫(警棒サイズのサイリウムを振るう)が必殺技
『三日月の退治屋』
吉山 湊斗（よしやま みなと）
呪詛師で樫斗の二卵性の弟（陰属性）
呪具を使う
そこら辺の物を呪具に換える
『世界最凶の呪詛師』
アキ
正体は地獄の番犬、ケルベロス（陰属性）
魔界の銃を使う
パワータイプ
吼える事で魔を祓える
『地獄の番犬』
八巻 鈴華（やまき りんか）
悪霊専門の陰陽師（陰陽属性）
式具を使う
結界(空間隔離)が創れる
『世界最小陰陽師』
ユキ
正体はヤマタノオロチ（陰属性）
鞭を使う
邪眼が使える
対妖怪専門のボディーガードを始めたようだ
『八又の白蛇』
朔夜（さくや）
猫又で占い師（陰属性）
武器はない
眷属が何処にでも居る
『占いニャンコ』
山元 夏樹（やまもと なつき）
妖怪も悪霊も祓える僧侶（陽属性）
法具を使う
結界(対称隔離)が創れる
『男の娘僧侶』
白井 野厘（しらい のり）
神社の神主（陽属性）
祝詞を使う
竹箒で叩いて来る
『先生』
野狐（のこ）
野厘の神社の妖狐（陽属性）
結構万能
マイペース
『御狐様』
覇道 宮流(はどう くる)
召喚師(陰陽属性)
魔道書を使う
顔が広い
『美し過ぎる召喚師』
☆サブキャラ☆
千歳 恵麻(ちとせ えま)
警視庁捜査一課の婦警
様々な武術で五段の腕前
鈴華の友人
牧川 忠司(ぼくかわ ただし)
車の販売業者
裏の顔は便利屋
久瀬 鯉或(くぜ りある)
俳優
樫斗の友人
夏目 静一(なつめ せいいち)
高校の英語教諭
湊斗の友人
ちょっぴり霊感あり
闇沼(やみぬま)
能力者専門のハンター
湊斗と樫斗の知人
妻子を溺愛しているクールな三十代
卑蒼(ひそう)
薬局の店長兼裏の薬屋
湊斗の知人
家庭の事情で、一回り離れた妹を娘として育ててるイケメン
☆こっちも続編擬きを書いてみよう☆
月雛 綾志(つきひな りょうし)
高校一年生
両親の不仲を苦にした、自殺未遂の常習犯。
義隆(よしたか)
高校三年生？
何か秘密があるらしい。手首に躊躇い傷が多数。
麻生 夏帆(あそう なつほ)
高校一年生
責任感が強過ぎて自傷行為に行き着く癖がある。
原野 有紗(はらの ありさ)
高校三年生
心配性のお姉さん。落ち込みやすい。
久留米(くるめ)
高校二年生？
掴み所のない好青年。ちょっと謎。
白石 光也(しらいし みつや)
高校二年生
創作活動が趣味。若干猪突猛進？
キャラも設定も増えるよ(笑)
この世には、目には視えない化物『悪霊』と、目に視える化物『妖怪』が在る。
奴等が時として悪さをするので、それを退治する者達が存在していた。
☆主要キャラ☆
吉山 樫斗（よしやま かしと）
妖怪専門の退治屋（陽属性）
三節棍を使う
流星群(サイリウムばら蒔く)と織姫(警棒サイズのサイリウムを振るう)が必殺技
『三日月の退治屋』
吉山 湊斗（よしやま みなと）
呪詛師で樫斗の二卵性の弟（陰属性）
呪具を使う
そこら辺の物を呪具に換える
『世界最凶の呪詛師』
アキ
正体は地獄の番犬、ケルベロス（陰属性）
魔界の銃を使う
パワータイプ
吼える事で魔を祓える
『地獄の番犬』
八巻 鈴華（やまき りんか）
悪霊専門の陰陽師（陰陽属性）
式具を使う
結界(空間隔離)が創れる
『世界最小陰陽師』
ユキ
正体はヤマタノオロチ（陰属性）
鞭を使う
邪眼が使える
対妖怪専門のボディーガードを始めたようだ
『八又の白蛇』
朔夜（さくや）
猫又で占い師（陰属性）
武器はない
眷属が何処にでも居る
『占いニャンコ』
山元 夏樹（やまもと なつき）
妖怪も悪霊も祓える僧侶（陽属性）
法具を使う
結界(対称隔離)が創れる
『男の娘僧侶』
白井 野厘（しらい のり）
神社の神主（陽属性）
祝詞を使う
竹箒で叩いて来る
『先生』
野狐（のこ）
野厘の神社の妖狐（陽属性）
結構万能
マイペース
『御狐様』
覇道 宮流(はどう くる)
召喚師(陰陽属性)
魔道書を使う
顔が広い
『美し過ぎる召喚師』
☆サブキャラ☆
千歳 恵麻(ちとせ えま)
警視庁捜査一課の婦警
様々な武術で五段の腕前
鈴華の友人
牧川 忠司(ぼくかわ ただし)
車の販売業者
裏の顔は便利屋
久瀬 鯉或(くぜ りある)
俳優
樫斗の友人
夏目 静一(なつめ せいいち)
高校の英語教諭
湊斗の友人
ちょっぴり霊感あり
闇沼(やみぬま)
能力者専門のハンター
湊斗と樫斗の知人
妻子を溺愛しているクールな三十代
卑蒼(ひそう)
薬局の店長兼裏の薬屋
湊斗の知人
家庭の事情で、一回り離れた妹を娘として育ててるイケメン
☆こっちも続編擬きを書いてみよう☆
月雛 綾志(つきひな りょうし)
高校一年生
両親の不仲を苦にした、自殺未遂の常習犯。
義隆(よしたか)
高校三年生？
何か秘密があるらしい。手首に躊躇い傷が多数。
麻生 夏帆(あそう なつほ)
高校一年生
責任感が強過ぎて自傷行為に行き着く癖がある。
原野 有紗(はらの ありさ)
高校三年生
心配性のお姉さん。落ち込みやすい。
久留米(くるめ)
高校二年生？
掴み所のない好青年。ちょっと謎。
白石 光也(しらいし みつや)
高校二年生
創作活動が趣味。若干猪突猛進？
キャラも設定も増えるよ(笑)
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コメント(203)
唯月「で、扉は何処に・・・」
鳴舞「にゅ・・・」
しぱらく建物内を歩いていたら、鳴舞が目覚めた。
唯月「お早うイヴちゃん、降りて」
鳴舞「お早うイヅ君、それ何？」
降ろされた鳴舞が、ペットボトルくらいの鍵を指す。
唯月「この鍵で開ける扉を探してる」
鳴舞「そーなんだ・・・」
「きゃあぁあーっ!!」
淡々と話していたら、角を曲がった向こうから悲鳴が。
二人は、こっそり覗く。
『寂しいよぉ。友達欲しいよぉ。お前一人か？友達いないか？』
「ああぁーっ・・・」
《ギュルンッ》
歌舞伎役者みたいな顔のコケシに女子が捕まり、蜘蛛の糸か何かを吐き掛けられ、コケシにされた。
唯月「何あれ、コケシのぼっち狩りか？」
鳴舞「私達は友達だから大丈夫」
《ギュッ》
二人は、手を繋いだ。
唯月「あ、扉」
鳴舞「七本要るみたいだね」
やっと見付けた扉には、鍵穴が７つ。
唯月「あれか、七人いないとクリア不可？」
鳴舞「じゃあ探さなきゃ、生きてる人」
二人は溜め息をつき、歩き出した・・・
鳴舞「にゅ・・・」
しぱらく建物内を歩いていたら、鳴舞が目覚めた。
唯月「お早うイヴちゃん、降りて」
鳴舞「お早うイヅ君、それ何？」
降ろされた鳴舞が、ペットボトルくらいの鍵を指す。
唯月「この鍵で開ける扉を探してる」
鳴舞「そーなんだ・・・」
「きゃあぁあーっ!!」
淡々と話していたら、角を曲がった向こうから悲鳴が。
二人は、こっそり覗く。
『寂しいよぉ。友達欲しいよぉ。お前一人か？友達いないか？』
「ああぁーっ・・・」
《ギュルンッ》
歌舞伎役者みたいな顔のコケシに女子が捕まり、蜘蛛の糸か何かを吐き掛けられ、コケシにされた。
唯月「何あれ、コケシのぼっち狩りか？」
鳴舞「私達は友達だから大丈夫」
《ギュッ》
二人は、手を繋いだ。
唯月「あ、扉」
鳴舞「七本要るみたいだね」
やっと見付けた扉には、鍵穴が７つ。
唯月「あれか、七人いないとクリア不可？」
鳴舞「じゃあ探さなきゃ、生きてる人」
二人は溜め息をつき、歩き出した・・・
鷹夜「・・・え、俺も？まだ小学生なんだけど、高校生の姿で出るのか？」
悠治「やったー♪出番だー♪」
〜？？？〜
悠治「あの“えんがちょ”ってコケシ、怖かったな!!捕まったらコケシにされちゃうんだから!!」
鷹夜「手を繋いでいれば捕まらない」
“かごめかごめ”をクリアし、手を繋いで歩く男子が一組。
悠治「俺の鍵と鷹夜の鍵で、取り敢えず２つ。さっき見付けた扉には鍵穴が７つあったから、残りは５つか。それと多分、生きてる人も探さなきゃ」
鷹夜「ああ」
二人が廊下を歩いていると。
《ビューンッ》
『見付けた!!』
『遊ぼー!!』
コケシが２体、飛んで来た。
コケシ、鷹夜、悠治、コケシ・・・で、直線上になるように降り立つ２体。
悠治「また“かごめかごめ”？」
鷹夜「違うようだ」
《ビヨーンッ》
１体の腕が伸び、相棒がそれを掴む。
『大縄!!四人で100回だ!!』
鷹夜「え、二人しか・・・」
『叫べ!!スタート!!』
鷹夜「・・・」
《パシンッ》
いきなり始まった大縄跳びに、悠治と鷹夜は否応なく参加させられた。
『ミスって縄に当たったら、スパッと切れてサヨウナラ!!』
『早く誰か呼ばないとバテるぞ!!』
悠治「ひぃいっ!!」
《パシンッパシンッパシンッパシンッ》
コケシに脅され、悠治が引き吊る。
悠治「だ、誰か!!誰か来てくれ!!」
鷹夜「・・・ん？」
《パシンッパシンッ》
悠治が叫んでいると。
鳴舞「鷹夜君っ」
鷹夜「鳴舞」
《バッ》
何と、鳴舞が飛び込んで来た。
唯月「イヴちゃん、せめて一声かけてくれないか(汗)」
鳴舞「ごめん、幼馴染みだから、つい」
《パシンッ》
続いて唯月も大縄に入った。
唯月「で、この状況は？」
悠治「四人で100回!!跳んだらクリア!!」
唯月「鍵は？」
悠治「２個ある!!」
《パシンッパシンッパシンッパシンッ》
冷静に問う唯月に、悠治が答えた。
唯月「自己紹介は後で良いな？」
悠治「勿論!!」
鷹夜「跳べるか鳴舞？」
鳴舞「任せて」
《パシンッパシンッパシンッパシンッ》
こうして四人は、力を合わせて大縄を跳んだのだった・・・
悠治「やったー♪出番だー♪」
〜？？？〜
悠治「あの“えんがちょ”ってコケシ、怖かったな!!捕まったらコケシにされちゃうんだから!!」
鷹夜「手を繋いでいれば捕まらない」
“かごめかごめ”をクリアし、手を繋いで歩く男子が一組。
悠治「俺の鍵と鷹夜の鍵で、取り敢えず２つ。さっき見付けた扉には鍵穴が７つあったから、残りは５つか。それと多分、生きてる人も探さなきゃ」
鷹夜「ああ」
二人が廊下を歩いていると。
《ビューンッ》
『見付けた!!』
『遊ぼー!!』
コケシが２体、飛んで来た。
コケシ、鷹夜、悠治、コケシ・・・で、直線上になるように降り立つ２体。
悠治「また“かごめかごめ”？」
鷹夜「違うようだ」
《ビヨーンッ》
１体の腕が伸び、相棒がそれを掴む。
『大縄!!四人で100回だ!!』
鷹夜「え、二人しか・・・」
『叫べ!!スタート!!』
鷹夜「・・・」
《パシンッ》
いきなり始まった大縄跳びに、悠治と鷹夜は否応なく参加させられた。
『ミスって縄に当たったら、スパッと切れてサヨウナラ!!』
『早く誰か呼ばないとバテるぞ!!』
悠治「ひぃいっ!!」
《パシンッパシンッパシンッパシンッ》
コケシに脅され、悠治が引き吊る。
悠治「だ、誰か!!誰か来てくれ!!」
鷹夜「・・・ん？」
《パシンッパシンッ》
悠治が叫んでいると。
鳴舞「鷹夜君っ」
鷹夜「鳴舞」
《バッ》
何と、鳴舞が飛び込んで来た。
唯月「イヴちゃん、せめて一声かけてくれないか(汗)」
鳴舞「ごめん、幼馴染みだから、つい」
《パシンッ》
続いて唯月も大縄に入った。
唯月「で、この状況は？」
悠治「四人で100回!!跳んだらクリア!!」
唯月「鍵は？」
悠治「２個ある!!」
《パシンッパシンッパシンッパシンッ》
冷静に問う唯月に、悠治が答えた。
唯月「自己紹介は後で良いな？」
悠治「勿論!!」
鷹夜「跳べるか鳴舞？」
鳴舞「任せて」
《パシンッパシンッパシンッパシンッ》
こうして四人は、力を合わせて大縄を跳んだのだった・・・
『100回だ!!』
『おめでとう!!』
《ボォンッ》
四人で力を合わせて大縄を100回跳んだら、コケシが爆発して片方が鍵になった。
悠治「よっしゃー!!」
唯月「イヴちゃん、大丈夫？」
鳴舞「疲れた」
鷹夜「立てるか？」
ガッツポーズをする悠治、鍵を拾う唯月、鳴舞を支える鷹夜。
仲良しだな。
悠治「そうだ、自己紹介!!俺は悠治!!んと、俺の母ちゃんと、鷹夜の父ちゃんと、鳴舞の父ちゃんが友達なんだ!!」
鷹夜「鷹夜だ。鳴舞の父と悠治の母は、俺の父さんを兄のように慕っている」
唯月「唯月。イヴちゃんの中学からの友達。よろしく」
鳴舞「私は・・・三人と友達だから良いか」
鳴舞は、小首を傾げた。
「ねえ君達」
「俺達も混ぜてよ」
「扉を開けるには七人必要だろ？」
悠治「ん？」
そこに、何かチャラチャラした三人組が登場。
歳上のようだ。
唯月「・・・そう、ですね」
悠治「これで七人か!!早く行こう？」
警戒する唯月と逆に、悠治は喜んで扉の方へ早歩き。
「ね、君は何て名前なの？」
「可愛いね、一年生？」
「俺達、三人ともボクシング部の三年でさぁ」
鳴舞「・・・」
三人は、鳴舞に手を伸ばした。
唯月「イヴちゃんに触らないで下さい」
「お？」
だが、唯月が間に入る。
「何だよ、俺達は彼女に話してるんだぜ？」
「大縄を跳べたくらいで、調子に乗るなよ？」
「イヴちゃん？つーの？俺達の側に居なよ、こんな奴等より君を守れるぜ？」
一人が、鳴舞に手招きする。
鳴舞「私は一人で平気。何かあっても、イヅ君達に守って貰うから平気」
「はぁ？こんな弱そうな・・・べっ!?」
《ゴッ》
鳴舞が舌を出すと、一人が唯月を突き飛ばそうとした。
が、それより早く、下顎を蹴り上げられた。
「テメッ・・・!?」
「ぎゃあ!?」
《ガッ ドゴッ》
残りの二人も、のされた。
唯月「人数合わせの雑魚が、ゴチャゴチャ五月蝿いんだよ」
鳴舞「あらら」
鷹夜「よせ、必要な人員だ」
不愉快そうな唯月を、鷹夜が止める。
悠治「何してんだよー？早くー!!」
鳴舞「ユーちゃん待って」
唯月「行きますよ“先輩方”？」
鷹夜「立てますか？」
そんなこんなで、七人で７つの鍵を回し、一同は次のゲームに誘われるのだった・・・
鳴舞「お疲れ様」
悠治「お腹空いた!!」
唯月「僕は眠い」
鷹夜「(-.-)Zzz・・・・」
『おめでとう!!』
《ボォンッ》
四人で力を合わせて大縄を100回跳んだら、コケシが爆発して片方が鍵になった。
悠治「よっしゃー!!」
唯月「イヴちゃん、大丈夫？」
鳴舞「疲れた」
鷹夜「立てるか？」
ガッツポーズをする悠治、鍵を拾う唯月、鳴舞を支える鷹夜。
仲良しだな。
悠治「そうだ、自己紹介!!俺は悠治!!んと、俺の母ちゃんと、鷹夜の父ちゃんと、鳴舞の父ちゃんが友達なんだ!!」
鷹夜「鷹夜だ。鳴舞の父と悠治の母は、俺の父さんを兄のように慕っている」
唯月「唯月。イヴちゃんの中学からの友達。よろしく」
鳴舞「私は・・・三人と友達だから良いか」
鳴舞は、小首を傾げた。
「ねえ君達」
「俺達も混ぜてよ」
「扉を開けるには七人必要だろ？」
悠治「ん？」
そこに、何かチャラチャラした三人組が登場。
歳上のようだ。
唯月「・・・そう、ですね」
悠治「これで七人か!!早く行こう？」
警戒する唯月と逆に、悠治は喜んで扉の方へ早歩き。
「ね、君は何て名前なの？」
「可愛いね、一年生？」
「俺達、三人ともボクシング部の三年でさぁ」
鳴舞「・・・」
三人は、鳴舞に手を伸ばした。
唯月「イヴちゃんに触らないで下さい」
「お？」
だが、唯月が間に入る。
「何だよ、俺達は彼女に話してるんだぜ？」
「大縄を跳べたくらいで、調子に乗るなよ？」
「イヴちゃん？つーの？俺達の側に居なよ、こんな奴等より君を守れるぜ？」
一人が、鳴舞に手招きする。
鳴舞「私は一人で平気。何かあっても、イヅ君達に守って貰うから平気」
「はぁ？こんな弱そうな・・・べっ!?」
《ゴッ》
鳴舞が舌を出すと、一人が唯月を突き飛ばそうとした。
が、それより早く、下顎を蹴り上げられた。
「テメッ・・・!?」
「ぎゃあ!?」
《ガッ ドゴッ》
残りの二人も、のされた。
唯月「人数合わせの雑魚が、ゴチャゴチャ五月蝿いんだよ」
鳴舞「あらら」
鷹夜「よせ、必要な人員だ」
不愉快そうな唯月を、鷹夜が止める。
悠治「何してんだよー？早くー!!」
鳴舞「ユーちゃん待って」
唯月「行きますよ“先輩方”？」
鷹夜「立てますか？」
そんなこんなで、七人で７つの鍵を回し、一同は次のゲームに誘われるのだった・・・
鳴舞「お疲れ様」
悠治「お腹空いた!!」
唯月「僕は眠い」
鷹夜「(-.-)Zzz・・・・」
『こんな世界から消えてなくなりたい』
〜・・・〜
「おい、起きろ!!」
「ふぇ・・・」
月雛 綾志は、誰かの声で目が覚めた。
「やっと起きたか」
「これで全員だな」
「大丈夫？気分はどう？」
「真っ青だぁお？」
「起き上がれますか？」
「・・・ふぇ？」
周りを見れば、知らない男女が居た。
「ったく(汗)ここは何処なんだ(汗)」
「どっかの教室」
「や、それは分かる(汗)そうじゃなくて、自分の学校の自分のクラスに居たハズなのに、ここは違うから何処なんだ・・・とな(汗)」
「それが分かれば苦労はしない」
高校の制服を着た男子が二人、彼等が集められた教室を調べている。
「自己紹介がまだだったね？私は原野 有紗(はらの ありさ)。高校三年生。よろしく？」
「麻生 夏帆(あそう なつほ)だぁお？高校一年生なんだぉ？」
「・・・え？」
夏帆の自己紹介に、綾志が目をパチクリ。
どう見ても小学生である。
「私服の学校なんだぉ!!」
「・・・あぅ。月雛 綾志(つきひな りょうし)、です」
夏帆に人差し指を突き付けられ、綾志は後退りながら名乗った。
「ふふふ。私は久留米(くるめ)。高校二年生です」
「俺も二年生。白石 光也(しらいし みつや)」
「義隆(よしたか)、高校三年生」
教室を調べていた光也と義隆が、座り込んだ。
「ねぇ皆？ここに来た経緯とか覚えてる？」
「自分のクラスに居たハズなんだってば(汗)」
「忘れたな」
有紗の問いに、光也と義隆が答える。
「窓も扉も開きませんし、出られないのでしょうか？」
「何でこんな所に集められたんだぁお？」
「・・・何でだろう」
綾志は膝を抱え、目を潤ませた。
「あららら(汗)大丈夫？」
「おいおい(汗)男だろ(汗)泣くなよ(汗)」
「男の子だって泣きたい時もあるよね(汗)」
「甘やかしますね原野先輩(汗)」
有紗と光也は、膝に顔を埋めた綾志に慌てる。
「とにかぁく!!」
「のわっ!?」
急に夏帆が立ち上がり、光也が驚く。
「扉を開けて脱出だぁお!!何か呪文とか無いの？“ひらけごま”とか“ビビディバビディブー”とか？」
「そんなんで・・・」
《スパーンッ》
光也が呆れた、その時。
スライド式の扉が開いた。
「マジでΣ(゜Д゜)!?」
「開きましたねぇ」
「適当かよ」
義隆は溜め息をついた。
「ひとまず二手に分かれるぞ。女子供はここで待機。俺達が軽く周りを調べて来る。幸い、時計は機能しているから30分したら戻る」
「え、時計!?マジだ!!黒板の上に壁掛け時計!!ちゃんと動いてる!!義隆先輩、すげぇ!!」
「30分しても戻らなかったり、何か異変があったら教室を移動して下さい」
三人は、教室から出た。
「あー・・・おいガキ」
「ぴっ!?」
去る前に、義隆が綾志を振り返る。
「俺達に何かあったら、女共はテメェが守るんだ。シャキッとしろ」
「・・・ふぇえっ」
義隆は綾志を睨み付け、光也と久留米を連れて歩き出した・・・
続く
〜探索side〜
「・・・なぁ義隆先輩？さっきの会話で一つ気になったんだけどさぁ？」
「？」
最初に居た教室を出て、ひとまず同じ階の教室を探索する事にした男子三人。
「原野先輩が“ここに来た経緯”を聞いた時、“忘れた”って答えたよな？」
「・・・そうだったか？」
「“分からない”とか“覚えてない”じゃなく、“忘れた”？まるで覚えていた時期があったみたいじゃないか？久留米はどう思う？」
「さあ？そこまで違和感を覚えませんでした。お役に立てず済みません」
光也は、二人の顔色を伺う。
「久留米もさぁ、妙に落ち着いてるよな？」
「私は元より、少しのんびりした性格なので」
「お前、何か疑っているのか？」
義隆は眉間にシワを寄せた。
「悪いな義隆先輩。きっと協力し合わなきゃならないんだろうけど、ゲームとか漫画だと仲間に情報を持った奴が居たりするだろ？二人のどっちかが“そう”だったりしないかなぁ、ってさ」
「漫画の読み過ぎだ」
「この状況で言います？」
「あはは、確かに」
呆れる義隆に、光也が肩を竦める。
久留米は疑われているにも関わらず笑顔だ。
「それに、泣いてる月雛に“女子を守れ”なんて。何か起きる事が前提みたいだ」
「こんな訳の分からん状況だ。男なら女共を気にかけるくらいして貰わないとな」
「スパルタですね」
義隆は、あまり人と目を合わせないタイプらしい。
綾志を睨んだ時以外、誰とも視線が絡んでいない。
「・・・義隆先輩？」
「ちっ」
確信したような光也の声色に、義隆が舌打ち。
「俺が初めて“ここ”に来たのは、もう気が遠くなるくらい昔の話だ。何十年前だか忘れたよ。最初に一緒だった奴等は、とっくに死んでる。その次も、その次も、次も次も次も・・・皆死んだ」
「私以外は」
「って二人共“そう”なのかよΣ(゜Д゜)!?」
二人の言葉に、光也が目を見開いた。
「“ここ”から出る方法を、ずっと探し続けて来た。だが出口も手がかりも無かった・・・そんな絶望的な状況を、待機中の三人に伝えられるか？」
「義隆先輩・・・」
「お前を連れ出したのは、勘づかれそうだったからだ。あの三人の前で論破されちゃ堪らないからな」
「・・・」
光也は口を閉ざした。
「それと、もう一つ」
「え・・・」
《カタンッ》
義隆は、言いながらゆっくり二つ向こうの教室に目をやった。
「あーゆーのが出るんだと、教えておこうと思ってな」
「わぁ大きい」
「ぎゃーっΣ(゜Д゜)!?」
物音を立て、のっそり現れたのは・・・扉が取り払われた教室の出入口からギリギリ出られるサイズの牛!?
「“ここ”に引きずり込まれる者の共通点は、元いた世界から何かしらの理由で逃げ出したくなった奴。その“負の感情”が妖怪共のいる“ここ”と元いた世界を繋ぎ、俺達を閉じ込めている・・・と、俺は仮定した」
「だからと言って、“帰りたい”と心から願っても帰れないようですが。妖怪達にとって私達は食糧。一度閉じ込めたら逃がさないつもりなのでしょうね」
「その年季の入った冷静さが怖いんだがΣ(゜Д゜)!!」
《ズシーンッ》
ゆっくり近付いて来る牛に、三人は後ずさるのだった。
〜待機side〜
《ズシーンッ》
「ぴゃっ!?」
「何だぉ!?」
「じ、地震!?二人共、頭を守って!!机の下に隠れなきゃ!!」
牛が歩く毎に床が揺れ、待機組は訳も分からず慌てた。
「机の足をしっかり持って!!下手に動かない!!揺れが収まっても油断しちゃ駄目よ!!」
「く、くきゃ」
「・・・先生みたい」
テキパキ指示を出す有紗に、二人は感心した。
「探索に行った三人は大丈夫かしら？ひとまず地震の時の心得くらいはあるよね、高校生だし」
「・・・ねえ？地震が起きてるのに、出入口の扉は揺れでズレて閉まりそうになるとか無いんだね？」
「ふぇえっ？」
ふと、夏帆が出入口を見る。
「ずっと開かなかったのに急に開いたくらいだし、今度は閉まらなくなっても不思議じゃ・・・」
「急に開いたくらいだし、急に閉まってまた開かなくなる可能性もあるよね？」
「ひっ!?」
夏帆の言葉に、綾志が怯える。
「思い過ごしなら良いけど、恐いよね。机は沢山あるんだし、扉に挟んで置こう」
「な、夏帆ちゃん!?」
「ぴぃいっ!?」
《タンッ》
夏帆は隠れていた机を抱え、出入口に走った。
《ガタタンッ》
「・・・問題なく置けた？やっぱ思い過ごし？」
夏帆は隠れていた机と、手近な机を出入口に並べて扉が閉まらないようにした。
「な、夏帆ちゃん(汗)何かあったらどうするの(汗)」
「大丈夫だぉ♪」
「・・・あ」
《ズシーンッ》
有紗が夏帆に駆け寄り、無事を確認した、その時。
再び床が揺れ、それに呼応して出入口の扉が勢い良く閉まった・・・
続く
「・・・なぁ義隆先輩？さっきの会話で一つ気になったんだけどさぁ？」
「？」
最初に居た教室を出て、ひとまず同じ階の教室を探索する事にした男子三人。
「原野先輩が“ここに来た経緯”を聞いた時、“忘れた”って答えたよな？」
「・・・そうだったか？」
「“分からない”とか“覚えてない”じゃなく、“忘れた”？まるで覚えていた時期があったみたいじゃないか？久留米はどう思う？」
「さあ？そこまで違和感を覚えませんでした。お役に立てず済みません」
光也は、二人の顔色を伺う。
「久留米もさぁ、妙に落ち着いてるよな？」
「私は元より、少しのんびりした性格なので」
「お前、何か疑っているのか？」
義隆は眉間にシワを寄せた。
「悪いな義隆先輩。きっと協力し合わなきゃならないんだろうけど、ゲームとか漫画だと仲間に情報を持った奴が居たりするだろ？二人のどっちかが“そう”だったりしないかなぁ、ってさ」
「漫画の読み過ぎだ」
「この状況で言います？」
「あはは、確かに」
呆れる義隆に、光也が肩を竦める。
久留米は疑われているにも関わらず笑顔だ。
「それに、泣いてる月雛に“女子を守れ”なんて。何か起きる事が前提みたいだ」
「こんな訳の分からん状況だ。男なら女共を気にかけるくらいして貰わないとな」
「スパルタですね」
義隆は、あまり人と目を合わせないタイプらしい。
綾志を睨んだ時以外、誰とも視線が絡んでいない。
「・・・義隆先輩？」
「ちっ」
確信したような光也の声色に、義隆が舌打ち。
「俺が初めて“ここ”に来たのは、もう気が遠くなるくらい昔の話だ。何十年前だか忘れたよ。最初に一緒だった奴等は、とっくに死んでる。その次も、その次も、次も次も次も・・・皆死んだ」
「私以外は」
「って二人共“そう”なのかよΣ(゜Д゜)!?」
二人の言葉に、光也が目を見開いた。
「“ここ”から出る方法を、ずっと探し続けて来た。だが出口も手がかりも無かった・・・そんな絶望的な状況を、待機中の三人に伝えられるか？」
「義隆先輩・・・」
「お前を連れ出したのは、勘づかれそうだったからだ。あの三人の前で論破されちゃ堪らないからな」
「・・・」
光也は口を閉ざした。
「それと、もう一つ」
「え・・・」
《カタンッ》
義隆は、言いながらゆっくり二つ向こうの教室に目をやった。
「あーゆーのが出るんだと、教えておこうと思ってな」
「わぁ大きい」
「ぎゃーっΣ(゜Д゜)!?」
物音を立て、のっそり現れたのは・・・扉が取り払われた教室の出入口からギリギリ出られるサイズの牛!?
「“ここ”に引きずり込まれる者の共通点は、元いた世界から何かしらの理由で逃げ出したくなった奴。その“負の感情”が妖怪共のいる“ここ”と元いた世界を繋ぎ、俺達を閉じ込めている・・・と、俺は仮定した」
「だからと言って、“帰りたい”と心から願っても帰れないようですが。妖怪達にとって私達は食糧。一度閉じ込めたら逃がさないつもりなのでしょうね」
「その年季の入った冷静さが怖いんだがΣ(゜Д゜)!!」
《ズシーンッ》
ゆっくり近付いて来る牛に、三人は後ずさるのだった。
〜待機side〜
《ズシーンッ》
「ぴゃっ!?」
「何だぉ!?」
「じ、地震!?二人共、頭を守って!!机の下に隠れなきゃ!!」
牛が歩く毎に床が揺れ、待機組は訳も分からず慌てた。
「机の足をしっかり持って!!下手に動かない!!揺れが収まっても油断しちゃ駄目よ!!」
「く、くきゃ」
「・・・先生みたい」
テキパキ指示を出す有紗に、二人は感心した。
「探索に行った三人は大丈夫かしら？ひとまず地震の時の心得くらいはあるよね、高校生だし」
「・・・ねえ？地震が起きてるのに、出入口の扉は揺れでズレて閉まりそうになるとか無いんだね？」
「ふぇえっ？」
ふと、夏帆が出入口を見る。
「ずっと開かなかったのに急に開いたくらいだし、今度は閉まらなくなっても不思議じゃ・・・」
「急に開いたくらいだし、急に閉まってまた開かなくなる可能性もあるよね？」
「ひっ!?」
夏帆の言葉に、綾志が怯える。
「思い過ごしなら良いけど、恐いよね。机は沢山あるんだし、扉に挟んで置こう」
「な、夏帆ちゃん!?」
「ぴぃいっ!?」
《タンッ》
夏帆は隠れていた机を抱え、出入口に走った。
《ガタタンッ》
「・・・問題なく置けた？やっぱ思い過ごし？」
夏帆は隠れていた机と、手近な机を出入口に並べて扉が閉まらないようにした。
「な、夏帆ちゃん(汗)何かあったらどうするの(汗)」
「大丈夫だぉ♪」
「・・・あ」
《ズシーンッ》
有紗が夏帆に駆け寄り、無事を確認した、その時。
再び床が揺れ、それに呼応して出入口の扉が勢い良く閉まった・・・
続く
〜待機side〜
《スパァーンッ》
「わっ!?」
「きゃっ!?」
「あぅっ・・・」
出入口の扉が勢い良く閉まった、その瞬間。
有紗と夏帆を突き飛ばしつつ、綾志が教室の外に飛び出した!!
綾志は、そのまま顔面から転ぶ。
「綾志君っ(汗)」
「月雛君、大丈夫かぉ？」
「い・・・痛い・・・(泣)」
二人に助け起こされ、綾志はグスグス泣きながらも立ち上がった。
「何で急に突き飛ばしたりしたの？」
「だ、だって・・・久留米さんが・・・異変があったら教室から出ろ、って・・・」
有紗に問われ、綾志はメソメソしながら答えた。
「義隆さんも・・・女の子・・・守れって・・・」
「で、教室から出す為に突き飛ばしたのかぉ？」
「ご、め・・・なさっ・・・あぁうぅう〜・・・」
「泣くなだぉ(汗)」
綾志が泣き止まないので、夏帆は困ってしまった。
《ガタガタガタッ》
「・・・駄目ね、開かないわ？」
「くきゃ？あぁ、教室の扉？また開かないの？」
元いた教室の扉は、再び開かなくなっていた。
挟んでいた机は、グシャアッと潰されている。
「ぐすっ・・・ひっく・・・!!」
「泣かない泣かない(汗)」
「どうするかぉ？ここで男子を待つ？てか、何処まで探索に行ったんだぁお？」
夏帆は周りを見渡した。
教室の外は廊下。
右にも左にも、他の教室に向かう路がある。
「下手に動いて迷子になったら恐いし、やっぱり教室の前で待機かなぁ？」
「そだね」
「・・・ぴゃあぁあっ!?」
「「!?」」
《ビクーッ》
二人が頷き合った瞬間、綾志が悲鳴を上げた。
「ど、どうしたの綾志君っ(汗)」
「あ、あそこ・・・何か動いたっ・・・」
「くきゃあ？」
綾志は震えながら消火器が置いてある壁際を指す。
「何か・・・くきゃ、ネズミだぉ(汗)」
「あらら(汗)」
夏帆が溜め息混じりに消火器に近付くと、その陰にツガイのネズミが。
「ネズミぐらい・・・」
「危ないっ!!」
《ズワッ》
振り向いた夏帆。
その隙を狙っていたかのように、ツガイのネズミは夏帆より大きく膨れ上がった。
ネズミの紅い眼が、夏帆の姿を捉える。
「きゃあぁあっ!?」
「夏帆ちゃん!!」
《ズガァンッ》
ネズミが振り降ろした手を、夏帆は間一髪で回避。
素晴らしい反射神経だ。
「ネズミの化物だぉーっ!!」
「夏帆ちゃん早く!!」
「うわぁあぁあーんっ!!」
《バッ》
夏帆、有紗、綾志の順に走り出し、ネズミから逃げる。
「どっどうしようっ!?適当な教室に逃げ込んだら袋のネズミになっちゃう!?」
「上手いっ(汗)座布団一枚っ(汗)」
「びぇえぇーんっ!!」
《ダダダダダッ》
夏帆と有紗のやり取りに、綾志は突っ込まない。
「・・・あぅっ」
《ベチャッ》
必死で逃げていた綾志は、足が縺れて転倒。
「月雛君っ」
「綾志君!!大丈夫っ・・・」
「良いから逃げてーっ!!」
《グワッ》
立ち止まる夏帆。
戻ろうとする有紗。
転んだまま叫ぶ綾志に、追い掛けて来たネズミの手が振り下ろされる。
(パパ、ママ、お姉・・・せめて、もう一度・・・家族で仲良く御飯食べたかった・・・)
「僕は・・・要らない子・・・」
《グシャアッ》
ネズミの手は、虚ろな瞳の綾志を潰した。
「「嫌ぁあぁあーっ!?」」
女子が、悲鳴を上げる。
《・・・ブシューッ!!》
「・・・へ？」
「え・・・」
だが次の瞬間、綾志を潰したネズミの手は、赤黒い血を噴き出して裂けた。
夏帆と有紗が、固まる。
「ふ・・・え・・・？」
「綾志君!?」
「つ、月雛君!?何で!?」
《ボタボタッ》
裂けた手の下から、ネズミの血にまみれた綾志が現れた。
「ち・・・血ぃいぃいーっ・・・!?」
「月雛君、上!!」
「って言うか後ろ!?」
《グワッ》
パニックを起こす綾志の背後から、怒ったネズミが無事な方の手を振り上げて襲い掛かる!!
「うわぁあぁあーんっ!!」
《ズパァアーッ》
綾志は訳も分からず、いつの間にか持っていた打刀でネズミを真っ二つに斬った!?
〜20分後〜
「はぁ？妖怪に襲われたけどガキが斬った？」
「おやおや、さっぱり要領を得ませんね？」
「月雛、大丈夫か？」
さて、しばらくして戻って来た男子。
「こっちも牛の妖怪は出たが」
「足を踏み鳴らして地震を起こすので、逃げるのに難儀しましたよ」
「でも武器なんて何処にも無かったぞ？月雛、いつの間に刀なんて？」
光也は首を傾げた。
(今までにない事態だな)
(ふむ、良い兆候である事を祈りますね)
義隆と久留米は、こっそり目配せを交わして頷くのであった・・・
続く
《スパァーンッ》
「わっ!?」
「きゃっ!?」
「あぅっ・・・」
出入口の扉が勢い良く閉まった、その瞬間。
有紗と夏帆を突き飛ばしつつ、綾志が教室の外に飛び出した!!
綾志は、そのまま顔面から転ぶ。
「綾志君っ(汗)」
「月雛君、大丈夫かぉ？」
「い・・・痛い・・・(泣)」
二人に助け起こされ、綾志はグスグス泣きながらも立ち上がった。
「何で急に突き飛ばしたりしたの？」
「だ、だって・・・久留米さんが・・・異変があったら教室から出ろ、って・・・」
有紗に問われ、綾志はメソメソしながら答えた。
「義隆さんも・・・女の子・・・守れって・・・」
「で、教室から出す為に突き飛ばしたのかぉ？」
「ご、め・・・なさっ・・・あぁうぅう〜・・・」
「泣くなだぉ(汗)」
綾志が泣き止まないので、夏帆は困ってしまった。
《ガタガタガタッ》
「・・・駄目ね、開かないわ？」
「くきゃ？あぁ、教室の扉？また開かないの？」
元いた教室の扉は、再び開かなくなっていた。
挟んでいた机は、グシャアッと潰されている。
「ぐすっ・・・ひっく・・・!!」
「泣かない泣かない(汗)」
「どうするかぉ？ここで男子を待つ？てか、何処まで探索に行ったんだぁお？」
夏帆は周りを見渡した。
教室の外は廊下。
右にも左にも、他の教室に向かう路がある。
「下手に動いて迷子になったら恐いし、やっぱり教室の前で待機かなぁ？」
「そだね」
「・・・ぴゃあぁあっ!?」
「「!?」」
《ビクーッ》
二人が頷き合った瞬間、綾志が悲鳴を上げた。
「ど、どうしたの綾志君っ(汗)」
「あ、あそこ・・・何か動いたっ・・・」
「くきゃあ？」
綾志は震えながら消火器が置いてある壁際を指す。
「何か・・・くきゃ、ネズミだぉ(汗)」
「あらら(汗)」
夏帆が溜め息混じりに消火器に近付くと、その陰にツガイのネズミが。
「ネズミぐらい・・・」
「危ないっ!!」
《ズワッ》
振り向いた夏帆。
その隙を狙っていたかのように、ツガイのネズミは夏帆より大きく膨れ上がった。
ネズミの紅い眼が、夏帆の姿を捉える。
「きゃあぁあっ!?」
「夏帆ちゃん!!」
《ズガァンッ》
ネズミが振り降ろした手を、夏帆は間一髪で回避。
素晴らしい反射神経だ。
「ネズミの化物だぉーっ!!」
「夏帆ちゃん早く!!」
「うわぁあぁあーんっ!!」
《バッ》
夏帆、有紗、綾志の順に走り出し、ネズミから逃げる。
「どっどうしようっ!?適当な教室に逃げ込んだら袋のネズミになっちゃう!?」
「上手いっ(汗)座布団一枚っ(汗)」
「びぇえぇーんっ!!」
《ダダダダダッ》
夏帆と有紗のやり取りに、綾志は突っ込まない。
「・・・あぅっ」
《ベチャッ》
必死で逃げていた綾志は、足が縺れて転倒。
「月雛君っ」
「綾志君!!大丈夫っ・・・」
「良いから逃げてーっ!!」
《グワッ》
立ち止まる夏帆。
戻ろうとする有紗。
転んだまま叫ぶ綾志に、追い掛けて来たネズミの手が振り下ろされる。
(パパ、ママ、お姉・・・せめて、もう一度・・・家族で仲良く御飯食べたかった・・・)
「僕は・・・要らない子・・・」
《グシャアッ》
ネズミの手は、虚ろな瞳の綾志を潰した。
「「嫌ぁあぁあーっ!?」」
女子が、悲鳴を上げる。
《・・・ブシューッ!!》
「・・・へ？」
「え・・・」
だが次の瞬間、綾志を潰したネズミの手は、赤黒い血を噴き出して裂けた。
夏帆と有紗が、固まる。
「ふ・・・え・・・？」
「綾志君!?」
「つ、月雛君!?何で!?」
《ボタボタッ》
裂けた手の下から、ネズミの血にまみれた綾志が現れた。
「ち・・・血ぃいぃいーっ・・・!?」
「月雛君、上!!」
「って言うか後ろ!?」
《グワッ》
パニックを起こす綾志の背後から、怒ったネズミが無事な方の手を振り上げて襲い掛かる!!
「うわぁあぁあーんっ!!」
《ズパァアーッ》
綾志は訳も分からず、いつの間にか持っていた打刀でネズミを真っ二つに斬った!?
〜20分後〜
「はぁ？妖怪に襲われたけどガキが斬った？」
「おやおや、さっぱり要領を得ませんね？」
「月雛、大丈夫か？」
さて、しばらくして戻って来た男子。
「こっちも牛の妖怪は出たが」
「足を踏み鳴らして地震を起こすので、逃げるのに難儀しましたよ」
「でも武器なんて何処にも無かったぞ？月雛、いつの間に刀なんて？」
光也は首を傾げた。
(今までにない事態だな)
(ふむ、良い兆候である事を祈りますね)
義隆と久留米は、こっそり目配せを交わして頷くのであった・・・
続く
〜廊下〜
「おいガキ、ちょっと刀を見せてみろ」
「ぴゃっ!?」
義隆に手を伸ばされ、綾志が身を固くする。
「お前、いちいちビビるな。良いから・・・!?」
「ふえっ!?」
《スルッ》
義隆が刀を掴んだ、ハズだった。
しかし綾志が抱えている刀は、義隆が触れた部分だけ立体映像のように触れなかった。
「・・・持ち主にしか触れないのか？」
「そのようですね」
義隆と久留米は溜め息をついた。
「ぶぇえぇえっ・・・帰りたいよぉ・・・ここは何処なのぉ・・・」
「あわわわわ(汗)泣かないで綾志君(汗)」
「よしよしよし(汗)」
綾志が泣くので、女子が宥めてやった。
「つ、月雛(汗)落ち着け・・・」
「確かに、ここは何処なのでしょう？」
「お前、本当に帰りたいのか？」
光也が言いかけた時、久留米と義隆が疑問を口にした。
「義隆君？どう言う意味？こんな怖い目に遭ったら、帰りたくなるのは当然なんじゃあ？」
「一応、全員に聞くが。お前等、何度も“こんな世界から消えてなくなりたい”とか思ってなかったか？」
「「「!?」」」
有紗の問いに質問を返す義隆。
その質問に、一同が反応した。
「ここは、そう言う奴等の“負”の感情が鍵となって開かれた扉の世界。俺は、そう推測している」
「くきゃあ・・・“ここは何処”の答えとして、確かに納得出来なくはないけど」
「“負の世界”・・・だから、それを糧とする妖怪が居るって事？」
心当たりがあるのか、夏帆と有紗が俯く。
「まあ“そう言う世界”だと仮定して、何で学校みたいな空間なんだ？何で高校生だけが集まってるんだ？」
「さあな？」
「思春期が一番美味しいのでしょうか？」
男子(綾志以外)は首を傾げた。
「それに、月雛の刀。何で月雛にしか触れないのか。何で月雛が持ち主になったのか。その刀じゃないと妖怪は倒せないのか？」
「分からない事だらけだな」
「他にもあるのでしょうか？」
久留米は顎に手を添えて考え込んだ。
「・・・考えても仕方がなさそうだ。また二手に分かれて探索するぞ。30分したら、ここに集合だ」
「編成はどうしますか？」
「編成(笑)」
久留米の発言に、光也が吹いた。
「女子は分かれて貰うぞ。どうせ庇うんだ、一人ずつの方が良い」
「ちょっと!!庇って貰わなくても良いぉ!!」
「な、夏帆ちゃん(汗)しーっ(汗)」
義隆に喰ってかかる夏帆を、有紗が止める。
「俺はガキと原野を連れて行く」
「ぴゃっ!?」
「わっ(汗)」
義隆は二人の腕を掴み、さっさと行ってしまった。
「何だぉアイツ!!一人で何でも決めて!!話し合いと言う選択肢はないのかぉ!?」
「まぁまぁ。義隆さんなりに、全員を守ろうと一生懸命なんですよ？」
「俺達も行こうぜ？」
憤慨する夏帆を宥め、二人も歩き出す。
〜義隆side〜
「おいガキ？その刀、持っていて不都合や不調はないか？」
「ぴゃっ!?」
行き止まりにある生物室を調べていた三人。
ふと、義隆に声をかけられ、綾志が驚く。
「いちいちビビるな」
「ご、め・・・なさ・・・だ、大丈夫・・・ですっ」
綾志は涙目だ。
「義隆さーんっ(汗)」
「何だ」
有紗に呼ばれ、義隆はそちらへ行く。
「掃除用ロッカーの上に、何か箱があるんだけど取れないの(汗)」
「椅子でも踏み台にしたらどうだ？」
「そう思ったんだけど、見て？どの椅子も、脚が腐っているの(汗)」
「・・・何だと？」
有紗に言われて義隆が椅子を調べると、確かに木で出来た椅子は全て、脚が腐っている。
(おかしい。今まで備品が腐っていた事はない。妖怪や俺達が破壊しなければ損傷もなかった。なのに、何故この教室の椅子は腐っている？)
「・・・おいガキ」
「ひゃいっ!?」
義隆は眉間にシワを寄せ、綾志を呼んだ。
「肩車してやるから、ロッカーの上の箱を取れ。何があるか分からないから刀は構えておけ」
「か、刀・・・持ったまま・・・そんな・・・」
「大丈夫!!落としてくれたら私がキャッチする!!」
震える綾志を有紗が励ました。
「行くぞ」
「ひぃいぃいっ」
「頑張って!!」
《グインッ》
義隆は綾志を肩車し、立ち上がる。
綾志は震えながら、何とかバランスを保って箱に手を掛けた。
「か、片手で掴むには・・・大きいから・・・落としますね・・・」
「任せて!!」
《ズリッ》
綾志が箱を落とし、有紗が両手でキャッチ。
「まだ開けるな。おいガキ、さっさと降りて身構えろ。箱は俺が開ける」
「ふぇっ・・・」
《トッ》
義隆は綾志を降ろし、有紗から箱を受け取る。
綾志はメソメソしながら刀を構えた。
「開けるぞ」
「はぅう・・・」
「き、気を付けて(汗)玉手箱じゃないと良いね(汗)」
《カパッ》
義隆が、箱を、開けた・・・
続く
「おいガキ、ちょっと刀を見せてみろ」
「ぴゃっ!?」
義隆に手を伸ばされ、綾志が身を固くする。
「お前、いちいちビビるな。良いから・・・!?」
「ふえっ!?」
《スルッ》
義隆が刀を掴んだ、ハズだった。
しかし綾志が抱えている刀は、義隆が触れた部分だけ立体映像のように触れなかった。
「・・・持ち主にしか触れないのか？」
「そのようですね」
義隆と久留米は溜め息をついた。
「ぶぇえぇえっ・・・帰りたいよぉ・・・ここは何処なのぉ・・・」
「あわわわわ(汗)泣かないで綾志君(汗)」
「よしよしよし(汗)」
綾志が泣くので、女子が宥めてやった。
「つ、月雛(汗)落ち着け・・・」
「確かに、ここは何処なのでしょう？」
「お前、本当に帰りたいのか？」
光也が言いかけた時、久留米と義隆が疑問を口にした。
「義隆君？どう言う意味？こんな怖い目に遭ったら、帰りたくなるのは当然なんじゃあ？」
「一応、全員に聞くが。お前等、何度も“こんな世界から消えてなくなりたい”とか思ってなかったか？」
「「「!?」」」
有紗の問いに質問を返す義隆。
その質問に、一同が反応した。
「ここは、そう言う奴等の“負”の感情が鍵となって開かれた扉の世界。俺は、そう推測している」
「くきゃあ・・・“ここは何処”の答えとして、確かに納得出来なくはないけど」
「“負の世界”・・・だから、それを糧とする妖怪が居るって事？」
心当たりがあるのか、夏帆と有紗が俯く。
「まあ“そう言う世界”だと仮定して、何で学校みたいな空間なんだ？何で高校生だけが集まってるんだ？」
「さあな？」
「思春期が一番美味しいのでしょうか？」
男子(綾志以外)は首を傾げた。
「それに、月雛の刀。何で月雛にしか触れないのか。何で月雛が持ち主になったのか。その刀じゃないと妖怪は倒せないのか？」
「分からない事だらけだな」
「他にもあるのでしょうか？」
久留米は顎に手を添えて考え込んだ。
「・・・考えても仕方がなさそうだ。また二手に分かれて探索するぞ。30分したら、ここに集合だ」
「編成はどうしますか？」
「編成(笑)」
久留米の発言に、光也が吹いた。
「女子は分かれて貰うぞ。どうせ庇うんだ、一人ずつの方が良い」
「ちょっと!!庇って貰わなくても良いぉ!!」
「な、夏帆ちゃん(汗)しーっ(汗)」
義隆に喰ってかかる夏帆を、有紗が止める。
「俺はガキと原野を連れて行く」
「ぴゃっ!?」
「わっ(汗)」
義隆は二人の腕を掴み、さっさと行ってしまった。
「何だぉアイツ!!一人で何でも決めて!!話し合いと言う選択肢はないのかぉ!?」
「まぁまぁ。義隆さんなりに、全員を守ろうと一生懸命なんですよ？」
「俺達も行こうぜ？」
憤慨する夏帆を宥め、二人も歩き出す。
〜義隆side〜
「おいガキ？その刀、持っていて不都合や不調はないか？」
「ぴゃっ!?」
行き止まりにある生物室を調べていた三人。
ふと、義隆に声をかけられ、綾志が驚く。
「いちいちビビるな」
「ご、め・・・なさ・・・だ、大丈夫・・・ですっ」
綾志は涙目だ。
「義隆さーんっ(汗)」
「何だ」
有紗に呼ばれ、義隆はそちらへ行く。
「掃除用ロッカーの上に、何か箱があるんだけど取れないの(汗)」
「椅子でも踏み台にしたらどうだ？」
「そう思ったんだけど、見て？どの椅子も、脚が腐っているの(汗)」
「・・・何だと？」
有紗に言われて義隆が椅子を調べると、確かに木で出来た椅子は全て、脚が腐っている。
(おかしい。今まで備品が腐っていた事はない。妖怪や俺達が破壊しなければ損傷もなかった。なのに、何故この教室の椅子は腐っている？)
「・・・おいガキ」
「ひゃいっ!?」
義隆は眉間にシワを寄せ、綾志を呼んだ。
「肩車してやるから、ロッカーの上の箱を取れ。何があるか分からないから刀は構えておけ」
「か、刀・・・持ったまま・・・そんな・・・」
「大丈夫!!落としてくれたら私がキャッチする!!」
震える綾志を有紗が励ました。
「行くぞ」
「ひぃいぃいっ」
「頑張って!!」
《グインッ》
義隆は綾志を肩車し、立ち上がる。
綾志は震えながら、何とかバランスを保って箱に手を掛けた。
「か、片手で掴むには・・・大きいから・・・落としますね・・・」
「任せて!!」
《ズリッ》
綾志が箱を落とし、有紗が両手でキャッチ。
「まだ開けるな。おいガキ、さっさと降りて身構えろ。箱は俺が開ける」
「ふぇっ・・・」
《トッ》
義隆は綾志を降ろし、有紗から箱を受け取る。
綾志はメソメソしながら刀を構えた。
「開けるぞ」
「はぅう・・・」
「き、気を付けて(汗)玉手箱じゃないと良いね(汗)」
《カパッ》
義隆が、箱を、開けた・・・
続く
〜義隆side〜
《ズモモモッ》
「ぴゃーっ!?」
「煙!?」
「やっぱり玉手箱!?」
義隆が箱を開けると、中から煙が噴き出した!!
《バッ》
「斬れ!!」
「きゃあっ!?」
義隆は箱を宙に放り投げ、有紗を肩に担いで距離を取った。
「け、煙・・・斬れるの・・・？」
《ズシャアッ》
綾志は困惑しながらも、箱ごと煙を切りつけた!!
『ピギャアォアーッ』
「うわぁあっ!?」
《ブッシャアァアーッ》
煙から悲鳴が上がり、赤黒い血液が噴出!!
《バッ》
「妖怪だ!!でかしたガキ!!」
「１年生に何させてるのΣ(゜Д゜)」
「ふぇえぇーんっ(泣)」
義隆と有紗は綾志の側に戻り、箱と飛び散った血液を見やる。
「妖怪が出ただけで、脱出への糸口はなしか？」
「怖かったね綾志君(汗)」
「・・・あぅ」
有紗に撫でられていた綾志が、真っ二つになった箱に手を伸ばした。
《ヒョイッ》
「“夕陽堕ちて 暗闇の中 我は待つ”？」
「ふぇっ・・・」
が、真っ二つの箱を拾い上げたのは義隆だった。
箱を元のように合わせ、底に書かれた字を読む。
(“今まで”に無かった奇襲と暗号。やはりコイツ等が来た事で、“何か”が変わった。吉と出るか凶と出るかは俺達次第だな・・・無駄にして堪るかよ)
「久留米達と合流するぞ」
「え、持って行くの箱Σ(゜Д゜)!?」
「待っ・・・えぅっ・・・」
さっさと歩き出す義隆に、有紗と綾志が慌てて追い縋る。
〜久留米side〜
「ここは社会科資料室ですね」
「教科書だらけだな。何年分あるんだ？」
「はっくしょん!!」
義隆達が箱を入手した頃、久留米達は資料室にいた。
「これは歴史の教科書ですかね？」
「織田信長かぁ」
「はっくしょん!!」
教科書を読んでいる場合ではない。
「ここ、もしかして実在した学校・・・」
「はっくしょん!!」
「だぁあっ(汗)何だ、さっきから(汗)大丈夫か麻生(汗)」
先程から夏帆のクシャミが止まらない。
「埃っぽいぉ(泣)鼻と涙が止まらないぉ(汗)」
「うーわー(汗)辛いな(汗)」
「おいたわしや」
夏帆は資料室から一歩出て、ハンカチで涙を拭っている。
「ねぇ、ここが実在した学校なら・・・はっくしょん!!何処かに学校の名前・・・はっくしょん!!表彰状とかトロフィーとか・・・はっくしょん!!」
「そっか!!学校が管理してる物には学校名が書かれているハズだよな!!」
「聡明ですね夏帆御嬢様」
《バッ》
夏帆に言われ、二人は教科書やファイルに学校名を探してみた。
「名前、名前・・・あっ!!」
「白石君？」
「あったぜ久留米先輩!!ここ!!」
「・・・神奈川県立端鞠高等学校？」
光也が地球儀の裏側を調べると、そこには黒のマジックで学校名が書かれていた!!
「学校名が分かりましたね」
「30分は経ってないが、義隆先輩達と合流するぜ!!」
「くきゃ(汗)鼻ツラタン(汗)助かった(汗)」
《バッ》
地球儀を持ち、別れた場所へ急ぐ三人。
「・・・けど、神奈川の高校だろ？俺は埼玉県民なんだけど(汗)」
「私は千葉県民です」
「東京都民だぁお」
《タタタタタッ》
生息地、バラバラ。
〜・・・〜
「“夕陽堕ちて 暗闇の中 我は待つ”？何の暗号でしょうね？」
「“神奈川県立端鞠高等学校”？聞いた事ないな？」
無事に合流した一同は、持ち寄った情報に首を傾げる。
「俺は神奈川県民だけど、端鞠高校なんて知らないぜ？」
「私は富山県立」
「あ、の・・・」
義隆と有紗が考えていると、綾志がビクビクしながら挙手した。
「は、端鞠高等学校・・・去年まで・・・女子校・・・今年から・・・共学で・・・」
「知ってるのかガキ？」
「僕の・・・学校・・・」
「はっ？」
綾志は声を搾り出し、驚愕の事実を告げる。
「でもでもっ・・・こんな造りじゃないですっ・・・」
「建て替え前の姿、とか？」
「カレンダーとかあればなぁ(汗)」
有紗と夏帆が溜め息をつく。
「“夕陽堕ちて 暗闇の中 我は待つ”。この意味に心当たりは？」
「夕陽・・・ふぇえっ」
「分からないようですね」
義隆に箱を突き付けられ、綾志は泣き出した。
「・・・夕陽ってさぁ、西に沈むよな？」
「当たり前だ」
「常識的には」
ふと、光也が口を開いた。
「月雛？お前の高校、西館とかあるか？」
「西棟・・・旧校舎が・・・」
「そこで一番暗い教室は？」
「地下室・・・」
光也は何か気付いたようだ。
「早く言えガキっ」
「地下室には何がある？」
「あわあわあわっ・・・」
義隆と光也に詰め寄られ、綾志はパニックに陥った。
「月雛君、落ち着いて下さい」
「地下室には、何かあるの？」
「あぅっ・・・」
久留米と有紗が、綾志を宥めた・・・
続く
《ズモモモッ》
「ぴゃーっ!?」
「煙!?」
「やっぱり玉手箱!?」
義隆が箱を開けると、中から煙が噴き出した!!
《バッ》
「斬れ!!」
「きゃあっ!?」
義隆は箱を宙に放り投げ、有紗を肩に担いで距離を取った。
「け、煙・・・斬れるの・・・？」
《ズシャアッ》
綾志は困惑しながらも、箱ごと煙を切りつけた!!
『ピギャアォアーッ』
「うわぁあっ!?」
《ブッシャアァアーッ》
煙から悲鳴が上がり、赤黒い血液が噴出!!
《バッ》
「妖怪だ!!でかしたガキ!!」
「１年生に何させてるのΣ(゜Д゜)」
「ふぇえぇーんっ(泣)」
義隆と有紗は綾志の側に戻り、箱と飛び散った血液を見やる。
「妖怪が出ただけで、脱出への糸口はなしか？」
「怖かったね綾志君(汗)」
「・・・あぅ」
有紗に撫でられていた綾志が、真っ二つになった箱に手を伸ばした。
《ヒョイッ》
「“夕陽堕ちて 暗闇の中 我は待つ”？」
「ふぇっ・・・」
が、真っ二つの箱を拾い上げたのは義隆だった。
箱を元のように合わせ、底に書かれた字を読む。
(“今まで”に無かった奇襲と暗号。やはりコイツ等が来た事で、“何か”が変わった。吉と出るか凶と出るかは俺達次第だな・・・無駄にして堪るかよ)
「久留米達と合流するぞ」
「え、持って行くの箱Σ(゜Д゜)!?」
「待っ・・・えぅっ・・・」
さっさと歩き出す義隆に、有紗と綾志が慌てて追い縋る。
〜久留米side〜
「ここは社会科資料室ですね」
「教科書だらけだな。何年分あるんだ？」
「はっくしょん!!」
義隆達が箱を入手した頃、久留米達は資料室にいた。
「これは歴史の教科書ですかね？」
「織田信長かぁ」
「はっくしょん!!」
教科書を読んでいる場合ではない。
「ここ、もしかして実在した学校・・・」
「はっくしょん!!」
「だぁあっ(汗)何だ、さっきから(汗)大丈夫か麻生(汗)」
先程から夏帆のクシャミが止まらない。
「埃っぽいぉ(泣)鼻と涙が止まらないぉ(汗)」
「うーわー(汗)辛いな(汗)」
「おいたわしや」
夏帆は資料室から一歩出て、ハンカチで涙を拭っている。
「ねぇ、ここが実在した学校なら・・・はっくしょん!!何処かに学校の名前・・・はっくしょん!!表彰状とかトロフィーとか・・・はっくしょん!!」
「そっか!!学校が管理してる物には学校名が書かれているハズだよな!!」
「聡明ですね夏帆御嬢様」
《バッ》
夏帆に言われ、二人は教科書やファイルに学校名を探してみた。
「名前、名前・・・あっ!!」
「白石君？」
「あったぜ久留米先輩!!ここ!!」
「・・・神奈川県立端鞠高等学校？」
光也が地球儀の裏側を調べると、そこには黒のマジックで学校名が書かれていた!!
「学校名が分かりましたね」
「30分は経ってないが、義隆先輩達と合流するぜ!!」
「くきゃ(汗)鼻ツラタン(汗)助かった(汗)」
《バッ》
地球儀を持ち、別れた場所へ急ぐ三人。
「・・・けど、神奈川の高校だろ？俺は埼玉県民なんだけど(汗)」
「私は千葉県民です」
「東京都民だぁお」
《タタタタタッ》
生息地、バラバラ。
〜・・・〜
「“夕陽堕ちて 暗闇の中 我は待つ”？何の暗号でしょうね？」
「“神奈川県立端鞠高等学校”？聞いた事ないな？」
無事に合流した一同は、持ち寄った情報に首を傾げる。
「俺は神奈川県民だけど、端鞠高校なんて知らないぜ？」
「私は富山県立」
「あ、の・・・」
義隆と有紗が考えていると、綾志がビクビクしながら挙手した。
「は、端鞠高等学校・・・去年まで・・・女子校・・・今年から・・・共学で・・・」
「知ってるのかガキ？」
「僕の・・・学校・・・」
「はっ？」
綾志は声を搾り出し、驚愕の事実を告げる。
「でもでもっ・・・こんな造りじゃないですっ・・・」
「建て替え前の姿、とか？」
「カレンダーとかあればなぁ(汗)」
有紗と夏帆が溜め息をつく。
「“夕陽堕ちて 暗闇の中 我は待つ”。この意味に心当たりは？」
「夕陽・・・ふぇえっ」
「分からないようですね」
義隆に箱を突き付けられ、綾志は泣き出した。
「・・・夕陽ってさぁ、西に沈むよな？」
「当たり前だ」
「常識的には」
ふと、光也が口を開いた。
「月雛？お前の高校、西館とかあるか？」
「西棟・・・旧校舎が・・・」
「そこで一番暗い教室は？」
「地下室・・・」
光也は何か気付いたようだ。
「早く言えガキっ」
「地下室には何がある？」
「あわあわあわっ・・・」
義隆と光也に詰め寄られ、綾志はパニックに陥った。
「月雛君、落ち着いて下さい」
「地下室には、何かあるの？」
「あぅっ・・・」
久留米と有紗が、綾志を宥めた・・・
続く
〜西棟・地下室〜
「く、暗い・・・恐いよぉ・・・」
「おい押すな久留米」
「ああ失礼、視界が悪くて」
旧校舎を訪れた綾志達。
「地下室は避難シェルターなのか？」
「成程。災害時に隠れる訳ですね？」
「電気は点かないんだなぁ？」
薄暗い地下室。
“夕日落ちて 暗闇の中 我は待つ”の暗号を解くべく、捜索を開始する。
「夏帆ちゃん、大丈夫？」
「大丈夫だぉ原野先輩」
「ひゃわっ・・・」
《べちゃっ》
有紗と夏帆が気遣い合っていたら、綾志が備えられた水の段ボールに引っ掛かって転倒。
「何してんだガキ」
「大丈夫ですか？」
「ぴぃい・・・」
綾志は非常食の段ボールを支えに立った。
「“我は待つ”って、一体誰が待ってるんだろうな？」「誰も居ないよね？」
「いきなりバァーッと出て来られても困るぉ」
光也、有紗、夏帆は壁づたいにシェルター内を調べた。
「おいガキ？お前、ここ入った事ないのかよ？何か違和感とか感じねぇのか？」
「あぅ・・・非常シェルター、ですから・・・入った事なんて・・・」
義隆に問われ、綾志はオドオド答えた。
「非常シェルターとして不審な物も見当たりませんね」
「水と非常食の段ボールくらいしかないな」
久留米と光也は、顔を見合わせた。
「・・・くきゃ？今、何か光った？」
「え？何処？」
ふと、夏帆が何かに気付く。
「ほら、そこの・・・ちょっ!?」
「調べるぞガキ」
「ふぇっ・・・」
《グイッ》
夏帆が指差す方へ、義隆と彼に引きずられて綾志が向かう。
「・・・鏡？」
「ですね・・・」
そこにあったのは、アンティーク調の鏡。
大きさは義隆の顔くらいだ。
「不用意に覗き込んで大丈夫ですか？」
「魂を吸われたりして？」
久留米と光也が、ヒョイッと一緒に鏡を覗く。
「まさか“我は待つ”の“我”って？」
「えっ!?この鏡!?」
夏帆と有紗も鏡を覗きに来たようだ。
「お前等なぁ？全員が来たら、俺とガキで先陣切って調べる意味が・・・」
「義隆さんっ」
《ゆらぁあ・・・》
振り向いた義隆。
その時、鏡に映った六人の姿が揺らめき、綾志が思わず悲鳴を上げる!!
『僕は要らない子・・・』
『私がやらなきゃ・・・』
『打てる手は打ってやる!!』
『どうしようどうしようどうしよう・・・』
『俺は“俺”じゃない・・・』
『流石に困りますね』
「「「「「「うわあぁーっ!?」」」」」」
《ぐにゃあぁー・・・》
六人の脳裏に、それぞれ自分自身の声が響き、目の前の景色が大きく歪んだ。
〜・・・〜
「ふひゃあぁあっ!?」
《ガバッ》
次に目覚めた時、綾志は自室の布団から飛び起きていた。
(あぅう・・・ゆ、夢ぇ・・・)
「・・・ひぃいっ!?」
見慣れた部屋。
安堵の溜め息を漏らす綾志。
しかし。
(何で、か、かか刀がっ・・・)
「恐いよぉおっ・・・」
綾志は、何と夢の中の“打刀”を抱えていて、ガタガタ震えながら布団に潜り込んだ。
〜・・・〜
「・・・む」
(ゆ、め・・・？)
こちらは義隆。
古民家の一室で、頭痛と共に目覚めた。
「いや・・・違う・・・」
(夢にしては長く・・・残酷なほど鮮明で・・・あまりにも・・・)
義隆が、ゆっくり体を起こす。
「きっと何か意味がある・・・」
(きっと、また会う・・・夢の中で・・・)
和服姿の義隆は、障子を開けて部屋を出た。
〜・・・〜
「きゃあぁあっ!?」
《バッ》
有紗は、自室のベッドで目を覚ました。
「うーぁー・・・」
(気持ち悪いぃい・・・)
そして、グラグラする頭を押さえた。
「妙にリアルな夢だったなぁ・・・」
(夢、なのかなぁ・・・)
有紗は、ひとまず二度寝モードに入った。
〜・・・〜
「くきゃーっ!!」
《バッ》
夏帆は、奇声を上げて布団から飛び起き、何故かそのまま部屋を出た。
「・・・くきゃ？」
(何の夢を見てたかな？)
そして、部屋の外で首を傾げた。
「神奈川県立端鞠高等学校・・・」
(ググって出たら笑うよね)
夏帆は部屋に戻り、スマホで調べ物を始めた。
〜・・・〜
「んごっ!?」
《ガンッ》
光也は、寝返りを打って目覚ましに頭をぶつけた。
「いっ・・・てぇえ!?」
(遅刻ーっ!?)
目覚まし時計を掴んで時刻を確認し、叫ぶ。
「ヤバイ!!今日は全校集会!!」
(何かホラーな夢を見てた気がするが!!)
光也は、バタバタとトイレに向かうのだった。
〜・・・〜
「ん・・・」
(夢？)
久留米は、パソコンの前で目覚めた。
「あぁ・・・」
(そう、夢)
画面に映る自身を見て、小さく笑う。
「また、お会いしましょう」
(お元気で)
久留米は、パソコンをシャットダウンした。
続く
「く、暗い・・・恐いよぉ・・・」
「おい押すな久留米」
「ああ失礼、視界が悪くて」
旧校舎を訪れた綾志達。
「地下室は避難シェルターなのか？」
「成程。災害時に隠れる訳ですね？」
「電気は点かないんだなぁ？」
薄暗い地下室。
“夕日落ちて 暗闇の中 我は待つ”の暗号を解くべく、捜索を開始する。
「夏帆ちゃん、大丈夫？」
「大丈夫だぉ原野先輩」
「ひゃわっ・・・」
《べちゃっ》
有紗と夏帆が気遣い合っていたら、綾志が備えられた水の段ボールに引っ掛かって転倒。
「何してんだガキ」
「大丈夫ですか？」
「ぴぃい・・・」
綾志は非常食の段ボールを支えに立った。
「“我は待つ”って、一体誰が待ってるんだろうな？」「誰も居ないよね？」
「いきなりバァーッと出て来られても困るぉ」
光也、有紗、夏帆は壁づたいにシェルター内を調べた。
「おいガキ？お前、ここ入った事ないのかよ？何か違和感とか感じねぇのか？」
「あぅ・・・非常シェルター、ですから・・・入った事なんて・・・」
義隆に問われ、綾志はオドオド答えた。
「非常シェルターとして不審な物も見当たりませんね」
「水と非常食の段ボールくらいしかないな」
久留米と光也は、顔を見合わせた。
「・・・くきゃ？今、何か光った？」
「え？何処？」
ふと、夏帆が何かに気付く。
「ほら、そこの・・・ちょっ!?」
「調べるぞガキ」
「ふぇっ・・・」
《グイッ》
夏帆が指差す方へ、義隆と彼に引きずられて綾志が向かう。
「・・・鏡？」
「ですね・・・」
そこにあったのは、アンティーク調の鏡。
大きさは義隆の顔くらいだ。
「不用意に覗き込んで大丈夫ですか？」
「魂を吸われたりして？」
久留米と光也が、ヒョイッと一緒に鏡を覗く。
「まさか“我は待つ”の“我”って？」
「えっ!?この鏡!?」
夏帆と有紗も鏡を覗きに来たようだ。
「お前等なぁ？全員が来たら、俺とガキで先陣切って調べる意味が・・・」
「義隆さんっ」
《ゆらぁあ・・・》
振り向いた義隆。
その時、鏡に映った六人の姿が揺らめき、綾志が思わず悲鳴を上げる!!
『僕は要らない子・・・』
『私がやらなきゃ・・・』
『打てる手は打ってやる!!』
『どうしようどうしようどうしよう・・・』
『俺は“俺”じゃない・・・』
『流石に困りますね』
「「「「「「うわあぁーっ!?」」」」」」
《ぐにゃあぁー・・・》
六人の脳裏に、それぞれ自分自身の声が響き、目の前の景色が大きく歪んだ。
〜・・・〜
「ふひゃあぁあっ!?」
《ガバッ》
次に目覚めた時、綾志は自室の布団から飛び起きていた。
(あぅう・・・ゆ、夢ぇ・・・)
「・・・ひぃいっ!?」
見慣れた部屋。
安堵の溜め息を漏らす綾志。
しかし。
(何で、か、かか刀がっ・・・)
「恐いよぉおっ・・・」
綾志は、何と夢の中の“打刀”を抱えていて、ガタガタ震えながら布団に潜り込んだ。
〜・・・〜
「・・・む」
(ゆ、め・・・？)
こちらは義隆。
古民家の一室で、頭痛と共に目覚めた。
「いや・・・違う・・・」
(夢にしては長く・・・残酷なほど鮮明で・・・あまりにも・・・)
義隆が、ゆっくり体を起こす。
「きっと何か意味がある・・・」
(きっと、また会う・・・夢の中で・・・)
和服姿の義隆は、障子を開けて部屋を出た。
〜・・・〜
「きゃあぁあっ!?」
《バッ》
有紗は、自室のベッドで目を覚ました。
「うーぁー・・・」
(気持ち悪いぃい・・・)
そして、グラグラする頭を押さえた。
「妙にリアルな夢だったなぁ・・・」
(夢、なのかなぁ・・・)
有紗は、ひとまず二度寝モードに入った。
〜・・・〜
「くきゃーっ!!」
《バッ》
夏帆は、奇声を上げて布団から飛び起き、何故かそのまま部屋を出た。
「・・・くきゃ？」
(何の夢を見てたかな？)
そして、部屋の外で首を傾げた。
「神奈川県立端鞠高等学校・・・」
(ググって出たら笑うよね)
夏帆は部屋に戻り、スマホで調べ物を始めた。
〜・・・〜
「んごっ!?」
《ガンッ》
光也は、寝返りを打って目覚ましに頭をぶつけた。
「いっ・・・てぇえ!?」
(遅刻ーっ!?)
目覚まし時計を掴んで時刻を確認し、叫ぶ。
「ヤバイ!!今日は全校集会!!」
(何かホラーな夢を見てた気がするが!!)
光也は、バタバタとトイレに向かうのだった。
〜・・・〜
「ん・・・」
(夢？)
久留米は、パソコンの前で目覚めた。
「あぁ・・・」
(そう、夢)
画面に映る自身を見て、小さく笑う。
「また、お会いしましょう」
(お元気で)
久留米は、パソコンをシャットダウンした。
続く
〜夏帆side〜
「神奈川県立端鞠高等学校・・・あったぉ(笑)」
(ググって出たら笑うよねー、とは思ったけど。まさか本当に出るとは)
例の夢を見た数日後、夏帆は検索して出た地図を頼りに綾志が居るかも知れない高校を訪れていた。
ちなみに放課後、校門前で待ち伏せ作戦である。
「おい、誰だあの娘？」
「中学生かな？可愛いな？」
「誰を待ってるんだろう？」
「声かけてみるか？」
そして、注目されていた。
「・・・あのー」
「おわっ(////)!?」
夏帆が、適当な男子を捕まえる。
「一年生に月雛 綾志君て居ますかぉ？」
「月雛？ああ、あの泣き虫の？」
「(居るんかい!?)そうそう、気弱な感じの」
「この時間は図書室で小説とか読んでるよ？」
夢の中で共に行動した少年は、実在していた。
夏帆は心中で突っ込みを入れる。
「何時くらいに出て来ます？」
「呼べば飛んで来るんじゃないか？」
「あ、じゃあ呼んで下さい。私、麻生 夏帆です」
「(フルネームGET!!)任せて夏帆ちゃん!!」
《ダッ》
夏帆に頼まれた男子は、凄い勢いで図書室のある棟へ走って行った。
〜綾志side〜
「月雛ーっ」
「ぴゃあぁあっ!?」
《ガシーッ》
トイレに行っていた綾志は、図書室に戻る途中で前方から駆けて来た隣のクラスの男子に肩を掴まれ、悲鳴を上げた。
「す、す、すっ・・・」
「？？？」
「スッゲェ可愛い女子が!!お前に逢いに!!正門前に!!」
「ふぁい？？？」
男子の勢いに圧される綾志。
だが、何の話だか分からない。
「とにかく来い!!夏帆ちゃんを待たせるな!!」
「・・・夏帆、ちゃ、ん？」
「麻生 夏帆ちゃん!!」
「ぴぇえっ!?あ、麻生さんっ!?嘘ですっ!?」
「嘘な訳あるか来い!!」
「ぴゃあぁあっ!?」
男子は、綾志を引き摺って正門に急いだ。
〜正門〜
「月雛君っ」
「あ、麻生さっ・・・本当に・・・どう、して・・・」
夏帆と再会した綾志は、溢れ落ちそうなくらいに目を見開いた。
「月雛君の学校名は聞いていたから、ググってみたんだぉ!!」
「ふぇえぇん!!」
「泣かない泣かない(汗)」
「だぁってぇ!!会えると思わなかったですぅ!!」
綾志は安堵と歓喜で泣き出してしまった。
「ほら、校門の前で泣いてたら邪魔になっちゃうぉ？近くにミスドあったし、お茶しながら話すぉ」
「ふぁい(泣)」
夏帆は綾志の背中を擦り、その場を離れた。
そんな二人を、周りの男子は歯軋りしながら見送るのだった。
〜夜〜
『でも、こんな事ってあるんですね』
『夢で会った人に、現実でも会う事？』
放課後、お茶がてらに連絡先を交換した二人。
『それもですが、あの打刀』
『何故か手元にあるんだっけ？』
例の打刀は、何故か綾志にしか可視えなかった。
母や姉は、綾志の部屋に真剣があると言うのに無反応なのだ。
『今度、月雛君の家に行くぉ。私には可視えるのか、見えなくなってるのか、確かめたいし』
『夢の中だと僕以外は触れないけど、可視えてはいましたもんね』
恐ろしい目に遭ったハズだが、夏帆は気丈である。
『ひとまず明日は合唱部の朝練があるから、そろそろ寝るね』
『合唱部なんですか？』
『ん？色々と掛け持ち？』
『パワフルですね(汗)では、また(汗)』
夏帆の体力は無尽蔵なんだろうか？
〜？？？〜
「ぴゃあぁあっ(泣)」
「くきゃー(汗)またかぉ(汗)」
「泣かないで綾志君(汗)」
「数日振りっすね」
「数日振りですね、元気でしたか？」
「ったく・・・」
その夜、彼等は再び夢の中で会う事となった・・・
続く
「神奈川県立端鞠高等学校・・・あったぉ(笑)」
(ググって出たら笑うよねー、とは思ったけど。まさか本当に出るとは)
例の夢を見た数日後、夏帆は検索して出た地図を頼りに綾志が居るかも知れない高校を訪れていた。
ちなみに放課後、校門前で待ち伏せ作戦である。
「おい、誰だあの娘？」
「中学生かな？可愛いな？」
「誰を待ってるんだろう？」
「声かけてみるか？」
そして、注目されていた。
「・・・あのー」
「おわっ(////)!?」
夏帆が、適当な男子を捕まえる。
「一年生に月雛 綾志君て居ますかぉ？」
「月雛？ああ、あの泣き虫の？」
「(居るんかい!?)そうそう、気弱な感じの」
「この時間は図書室で小説とか読んでるよ？」
夢の中で共に行動した少年は、実在していた。
夏帆は心中で突っ込みを入れる。
「何時くらいに出て来ます？」
「呼べば飛んで来るんじゃないか？」
「あ、じゃあ呼んで下さい。私、麻生 夏帆です」
「(フルネームGET!!)任せて夏帆ちゃん!!」
《ダッ》
夏帆に頼まれた男子は、凄い勢いで図書室のある棟へ走って行った。
〜綾志side〜
「月雛ーっ」
「ぴゃあぁあっ!?」
《ガシーッ》
トイレに行っていた綾志は、図書室に戻る途中で前方から駆けて来た隣のクラスの男子に肩を掴まれ、悲鳴を上げた。
「す、す、すっ・・・」
「？？？」
「スッゲェ可愛い女子が!!お前に逢いに!!正門前に!!」
「ふぁい？？？」
男子の勢いに圧される綾志。
だが、何の話だか分からない。
「とにかく来い!!夏帆ちゃんを待たせるな!!」
「・・・夏帆、ちゃ、ん？」
「麻生 夏帆ちゃん!!」
「ぴぇえっ!?あ、麻生さんっ!?嘘ですっ!?」
「嘘な訳あるか来い!!」
「ぴゃあぁあっ!?」
男子は、綾志を引き摺って正門に急いだ。
〜正門〜
「月雛君っ」
「あ、麻生さっ・・・本当に・・・どう、して・・・」
夏帆と再会した綾志は、溢れ落ちそうなくらいに目を見開いた。
「月雛君の学校名は聞いていたから、ググってみたんだぉ!!」
「ふぇえぇん!!」
「泣かない泣かない(汗)」
「だぁってぇ!!会えると思わなかったですぅ!!」
綾志は安堵と歓喜で泣き出してしまった。
「ほら、校門の前で泣いてたら邪魔になっちゃうぉ？近くにミスドあったし、お茶しながら話すぉ」
「ふぁい(泣)」
夏帆は綾志の背中を擦り、その場を離れた。
そんな二人を、周りの男子は歯軋りしながら見送るのだった。
〜夜〜
『でも、こんな事ってあるんですね』
『夢で会った人に、現実でも会う事？』
放課後、お茶がてらに連絡先を交換した二人。
『それもですが、あの打刀』
『何故か手元にあるんだっけ？』
例の打刀は、何故か綾志にしか可視えなかった。
母や姉は、綾志の部屋に真剣があると言うのに無反応なのだ。
『今度、月雛君の家に行くぉ。私には可視えるのか、見えなくなってるのか、確かめたいし』
『夢の中だと僕以外は触れないけど、可視えてはいましたもんね』
恐ろしい目に遭ったハズだが、夏帆は気丈である。
『ひとまず明日は合唱部の朝練があるから、そろそろ寝るね』
『合唱部なんですか？』
『ん？色々と掛け持ち？』
『パワフルですね(汗)では、また(汗)』
夏帆の体力は無尽蔵なんだろうか？
〜？？？〜
「ぴゃあぁあっ(泣)」
「くきゃー(汗)またかぉ(汗)」
「泣かないで綾志君(汗)」
「数日振りっすね」
「数日振りですね、元気でしたか？」
「ったく・・・」
その夜、彼等は再び夢の中で会う事となった・・・
続く
〜？？？〜
「ぴゃあぁあっ(泣)」
「くきゃー(汗)またかぉ(汗)」
「泣かないで綾志君(汗)」
「数日振りっすね」
「数日振りですね、元気でしたか？」
「ったく・・・」
ある晩、あの日のように夢の中で仲間と再会した六人の若者達。
「あ、報告だぉ!!月雛君と現実で会えましたぉ!!LINE交換したぉ!!」
「え、良いなぁ」
夏帆の言葉に、有紗が反応。
「だったら全員、学校名とか住所とか交換して現実で集まっちまおうぜ？」
「・・・無理ですね」
「無理だな」
光也が提案したが、年長者の二人が否定した。
「何でだぉ？別に地方に住んでる訳じゃ無いよね？」
「あ、家が厳しいとか？女の子とは会っちゃ駄目？」
夏帆と有紗が首を傾げる。
「いえ、そうではなくて」
「俺達は“らいん”とやらをやっていないし、恐らく出来ない」
「「「「・・・へっ？」」」」
久留米と義隆の言葉に四人が固まる。
「え？え？え？」
「ら、LINEやってないのかぉ!?珍しいぉ!?スマホや携帯は持っているのかぉ!?」
「LINEは私もやっていないけど、LINE“とやら”？知らないみたいな言い方だね？」
「・・・あ(汗)」
女子が久留米と義隆に詰め寄る。
彼等の“真実”を知っている光也は納得したようだ。
「知らないからな」
「いやいやいや(汗)いつの時代の人間だぁお(汗)」
「明治だが？」
「僕は大正ですね」
「「「「・・・・はい？？？」」」」
本日二度目の硬直化。
「俺は警官学校の生徒だから初対面から洋服だったが、周りは大体和服だ」
「僕は洋服と和服が半々です」
「ちょと待てちょと待てお二人さん!?」
サラッと告げる二人に、光也が慌てている。
数十年前の人間かと思ったが、明治や大正では百年以上昔である。
「えっ!?平成の人じゃないのかぉ!?」
「お前達の時代は“平成”と言うのか。良い名だな？」
目を見開く夏帆。
「話してて違和感なかったよ!?」
「初めて御会いした異空間に、何十年も閉じ込められておりました。時折新しい方が迷い込み、そちらから情報を得て話を合わせるよう心掛けていたのです」
混乱する有紗に、優しく微笑む久留米。
「過去の人間じゃ、確かに合流は無理だな(汗)」
「あ、う・・・ひゃえっ!?」
《カタンッ》
光也が苦笑する後ろで綾志が戸惑っていると、何処からか物音がした。
「・・・いつの間にか、また学校の教室だな」
「先程まで薄暗いだけでしたが」
「今度は何が起きるんだか(汗)」
一同が身構える。
《クイッ》
「え？」
ふと、何者かが夏帆の服の袖を引いた。
夏帆が反射的に振り向く。
「くっきゃあぁあ!?」
「びぇえぇっ・・・」
《カタカタカタッ》
夏帆の袖を引いたのは、彼女の膝上くらいまでの大きさの地蔵。
黒ずんだ蓑を纏い、雰囲気が禍々しい。
「・・・夏帆ちゃん袖を破いて渡して!!」
「くきゃ!?」
「早く!!呪われる!!」
「くっきゃあぁあ!?」
《ビリビリビリッ》
何かに気付いた有紗の叫びに、夏帆が慌てて服の袖を破いて地蔵に押し付けた!!
《むっしゃむっしゃ・・・》
「な、何だぉ？」
「来て!!皆も!!」
地蔵は押し付けられた袖を食べ始め、有紗は一同を誘導してその場を離れた。
〜空き教室〜
「あれは多分、“袖もぎ地蔵”。袖を引かれて振り返った者は、その袖を献上しなければ呪い殺される。妖怪系の本で読んだ事があるの」
「そうだったのかぉ」
「うわぁあぁあん・・・怖いよぉ・・・」
上の階まで逃げた一同。
「前はよく分からん化物だったが、今回は具体的な妖怪なのか？」
「どちらにせよ厄介ですね」
「原野先輩が居て良かった(汗)」
光也は苦笑を漏らした。
「で、これからどうしよう義隆さん」
「ああ。前回は“鏡”を見付ければ現実に還れた。今回も“鏡”を探そう。問題は、出現する妖怪がさっきのヤツだけなのか否かだな」
三年生コンビ(義隆は年齢的に三年生なだけ)は、教室の扉に目をやった。
「また扉が開かないとか無いよな？」
「うーん？閉めないで何か挟んでおけば良かったですね？」
二年生コンビは、適当な机を持って扉に近付く。
「・・・ふぇえぇえっ!?」
「くきゃ？打刀？さっきまで手ぶらだったよね？」
気付けば綾志の手には前回の打刀が握られていた。
《ガタガタッ》
「駄目だ!!やっぱ開かねえ!!」
「おいガキ、その打刀で扉を斬れ」
「ひっ・・・む・・・無理です・・・」
光也が扉を開けようとするがビクともしない。
義隆は扉に体を向けたまま、綾志に視線をやった。
「人間やろうと思えば何でも出来る」
「出来んわΣ(゜Д゜)月雛君は気が弱いんだから辞めてあげて欲しいぉΣ(゜Д゜)」
“ジバクくん”懐かしいな・・・
続く
「ぴゃあぁあっ(泣)」
「くきゃー(汗)またかぉ(汗)」
「泣かないで綾志君(汗)」
「数日振りっすね」
「数日振りですね、元気でしたか？」
「ったく・・・」
ある晩、あの日のように夢の中で仲間と再会した六人の若者達。
「あ、報告だぉ!!月雛君と現実で会えましたぉ!!LINE交換したぉ!!」
「え、良いなぁ」
夏帆の言葉に、有紗が反応。
「だったら全員、学校名とか住所とか交換して現実で集まっちまおうぜ？」
「・・・無理ですね」
「無理だな」
光也が提案したが、年長者の二人が否定した。
「何でだぉ？別に地方に住んでる訳じゃ無いよね？」
「あ、家が厳しいとか？女の子とは会っちゃ駄目？」
夏帆と有紗が首を傾げる。
「いえ、そうではなくて」
「俺達は“らいん”とやらをやっていないし、恐らく出来ない」
「「「「・・・へっ？」」」」
久留米と義隆の言葉に四人が固まる。
「え？え？え？」
「ら、LINEやってないのかぉ!?珍しいぉ!?スマホや携帯は持っているのかぉ!?」
「LINEは私もやっていないけど、LINE“とやら”？知らないみたいな言い方だね？」
「・・・あ(汗)」
女子が久留米と義隆に詰め寄る。
彼等の“真実”を知っている光也は納得したようだ。
「知らないからな」
「いやいやいや(汗)いつの時代の人間だぁお(汗)」
「明治だが？」
「僕は大正ですね」
「「「「・・・・はい？？？」」」」
本日二度目の硬直化。
「俺は警官学校の生徒だから初対面から洋服だったが、周りは大体和服だ」
「僕は洋服と和服が半々です」
「ちょと待てちょと待てお二人さん!?」
サラッと告げる二人に、光也が慌てている。
数十年前の人間かと思ったが、明治や大正では百年以上昔である。
「えっ!?平成の人じゃないのかぉ!?」
「お前達の時代は“平成”と言うのか。良い名だな？」
目を見開く夏帆。
「話してて違和感なかったよ!?」
「初めて御会いした異空間に、何十年も閉じ込められておりました。時折新しい方が迷い込み、そちらから情報を得て話を合わせるよう心掛けていたのです」
混乱する有紗に、優しく微笑む久留米。
「過去の人間じゃ、確かに合流は無理だな(汗)」
「あ、う・・・ひゃえっ!?」
《カタンッ》
光也が苦笑する後ろで綾志が戸惑っていると、何処からか物音がした。
「・・・いつの間にか、また学校の教室だな」
「先程まで薄暗いだけでしたが」
「今度は何が起きるんだか(汗)」
一同が身構える。
《クイッ》
「え？」
ふと、何者かが夏帆の服の袖を引いた。
夏帆が反射的に振り向く。
「くっきゃあぁあ!?」
「びぇえぇっ・・・」
《カタカタカタッ》
夏帆の袖を引いたのは、彼女の膝上くらいまでの大きさの地蔵。
黒ずんだ蓑を纏い、雰囲気が禍々しい。
「・・・夏帆ちゃん袖を破いて渡して!!」
「くきゃ!?」
「早く!!呪われる!!」
「くっきゃあぁあ!?」
《ビリビリビリッ》
何かに気付いた有紗の叫びに、夏帆が慌てて服の袖を破いて地蔵に押し付けた!!
《むっしゃむっしゃ・・・》
「な、何だぉ？」
「来て!!皆も!!」
地蔵は押し付けられた袖を食べ始め、有紗は一同を誘導してその場を離れた。
〜空き教室〜
「あれは多分、“袖もぎ地蔵”。袖を引かれて振り返った者は、その袖を献上しなければ呪い殺される。妖怪系の本で読んだ事があるの」
「そうだったのかぉ」
「うわぁあぁあん・・・怖いよぉ・・・」
上の階まで逃げた一同。
「前はよく分からん化物だったが、今回は具体的な妖怪なのか？」
「どちらにせよ厄介ですね」
「原野先輩が居て良かった(汗)」
光也は苦笑を漏らした。
「で、これからどうしよう義隆さん」
「ああ。前回は“鏡”を見付ければ現実に還れた。今回も“鏡”を探そう。問題は、出現する妖怪がさっきのヤツだけなのか否かだな」
三年生コンビ(義隆は年齢的に三年生なだけ)は、教室の扉に目をやった。
「また扉が開かないとか無いよな？」
「うーん？閉めないで何か挟んでおけば良かったですね？」
二年生コンビは、適当な机を持って扉に近付く。
「・・・ふぇえぇえっ!?」
「くきゃ？打刀？さっきまで手ぶらだったよね？」
気付けば綾志の手には前回の打刀が握られていた。
《ガタガタッ》
「駄目だ!!やっぱ開かねえ!!」
「おいガキ、その打刀で扉を斬れ」
「ひっ・・・む・・・無理です・・・」
光也が扉を開けようとするがビクともしない。
義隆は扉に体を向けたまま、綾志に視線をやった。
「人間やろうと思えば何でも出来る」
「出来んわΣ(゜Д゜)月雛君は気が弱いんだから辞めてあげて欲しいぉΣ(゜Д゜)」
“ジバクくん”懐かしいな・・・
続く
〜空き教室〜
(またも閉じ込められましたか。見た所、何の変鉄もない教室なのですが・・・教卓の上にノートパソコンがある以外は)
「おや？あれは何でしょう？御盆ですか？」
久留米は教室内を見回し、一台の機械に目を止めた。
“大正次代の人間だ"と言っていたのに、何故ノートパソコンを知っているのだろう。
「いやいやいや、御盆にしちゃ厚みがあるだろ？あれはノートパソコンって言って、現代社会における文明の利器だよ」
「何か便利な物なんですね？横文字と言う事は異国から来た道具でしょうか？」
光也の説明に、久留米が首を傾げる。
「異国の機械なんぞに構ってる場合か？この教室から出る方法を探すぞ？」
「前みたく呪文じゃ駄目かぉ？」
「開けゴマ〜・・・駄目みたいね？ちちんぷいぷい〜!!ビビデバブデブ〜♪うーん(汗)」
有紗が扉に向かって手を振るが、何も起きない。
「おいガキ。武器があるのはテメェだけだ。ぶった斬れねえのか？」
「だから・・・無理ですぅう・・・ぐすんっ・・・」
義隆に睨まれ、綾志はメソメソ。
「ったく。役に立たね・・・ん？」
「くきゃ？」
ふと、義隆が何かに気付いた。
「・・・何か聞こえないか？」
「くきゃ・・・あ、本当だぉ」
「？？？」
義隆と夏帆が耳を澄ませば、二人にだけ何かが聞こえて来た。
「これは・・・歌か？」
「歌だぉ。誰か居るのかぉ？」
「何も聞こえないんだが、どんな耳してんだよ(汗)」
顔を見合わせる(義隆は顔を向けただけで視線が合わないが)二人に、光也が突っ込んだ。
「前回の君達のように、新しい誰かが迷い込んだのでしょうか？または僕達のように、前から居たのでしょうか？」
「どちらにせよ、合流しなきゃ!!一人なら危ないよ!!」
《バンッ》
久留米と有紗が、扉を叩く。
「あぅっ・・・でもっ・・・」
「綾志君？」
「も、もし・・・歌うお化けだったら・・・？」
「あっ」
情けない顔で鼻を啜る綾志の言葉に、有紗が手を止めた。
「い、いや!!でも!!人間だったら大変だから!!」
「化物ならテメェが斬りゃ良いんだよ!!」
「ぴゃあぁあっ・・・」
《ズガァンッ》
義隆が、扉に渾身の蹴りを入れる。
だが、やはり扉はびくともしない。
「白石君、私はどうしても教卓の上の機械が気になります」
「え、ノートパソコン？」
「どうしたら動きますか？」
「えー(汗)動く保証は無いっすよ？」
久留米に袖を引かれ、光也は渋々ノートパソコンの電源を入れた。
「・・・起動した(汗)何これ(汗)電気とか一体どうなってんだよ(汗)」
「爆発はしませんよね？」
光也と久留米は、画面が明るくなったノートパソコンに釘付けだ。
(操作すれば怪しまれますね。上手く彼を誘導しなくてはならない)
「凄いですね。まさに文明の利器。何に使う機械なのでしょうか？」
久留米はノートパソコンの画面を指でなぞった。
「・・・ねえ？よく見たら上の狭い窓は開いてるぉ？」
「あ？」
「私、そこから廊下に出て外から扉が開かないか試してみるぉ。歌声の主も調べたいし」
「確かに、お前なら行けるな」
夏帆が指差す先を見て、義隆が頷いた。
「一人でなんて危ないよ!!」
「そこは同感だ。ガキ、同行しろ」
「ふぇっ・・・ぼ、くが・・・？」
「もう友達なんだろ？しつこいようだが武器があるのはテメェだけだ。友達なら、一人で行かせるな」
慌てる有紗を見もせず、義隆は綾志に言った。
「大丈夫だぁお月雛君!!私が守るから!!」
「逆だ逆」
「お、御願い・・・します・・・」
「逆だってんだよガキ共」
手を取り合う二人に、義隆の突っ込みは聞こえているのだろうか？
〜廊下〜
《ガタガタガタンッ》
「駄目だぉ、外からでも開かないぉ」
「ぐすっ・・・ひっく・・・」
窓から廊下に出た二人は、何とか扉を開けようと試みた。
だが隙間すら開かない。
「・・・歌声はまだ聞こえるぉ」
「ぼ、僕には・・・何も・・・」
夏帆が、来た道と反対側に目をやる。
「行くぉ」
「ふぇえぇえっ・・・」
「人間でも化物でも、部屋から脱出するヒントとかあるかも知れないし」
「そんな・・・ゲームの・・・し過ぎ、なんじゃあ・・・」
スタスタ歩く夏帆に、綾志が必死でついて行く。
果たして・・・
(またも閉じ込められましたか。見た所、何の変鉄もない教室なのですが・・・教卓の上にノートパソコンがある以外は)
「おや？あれは何でしょう？御盆ですか？」
久留米は教室内を見回し、一台の機械に目を止めた。
“大正次代の人間だ"と言っていたのに、何故ノートパソコンを知っているのだろう。
「いやいやいや、御盆にしちゃ厚みがあるだろ？あれはノートパソコンって言って、現代社会における文明の利器だよ」
「何か便利な物なんですね？横文字と言う事は異国から来た道具でしょうか？」
光也の説明に、久留米が首を傾げる。
「異国の機械なんぞに構ってる場合か？この教室から出る方法を探すぞ？」
「前みたく呪文じゃ駄目かぉ？」
「開けゴマ〜・・・駄目みたいね？ちちんぷいぷい〜!!ビビデバブデブ〜♪うーん(汗)」
有紗が扉に向かって手を振るが、何も起きない。
「おいガキ。武器があるのはテメェだけだ。ぶった斬れねえのか？」
「だから・・・無理ですぅう・・・ぐすんっ・・・」
義隆に睨まれ、綾志はメソメソ。
「ったく。役に立たね・・・ん？」
「くきゃ？」
ふと、義隆が何かに気付いた。
「・・・何か聞こえないか？」
「くきゃ・・・あ、本当だぉ」
「？？？」
義隆と夏帆が耳を澄ませば、二人にだけ何かが聞こえて来た。
「これは・・・歌か？」
「歌だぉ。誰か居るのかぉ？」
「何も聞こえないんだが、どんな耳してんだよ(汗)」
顔を見合わせる(義隆は顔を向けただけで視線が合わないが)二人に、光也が突っ込んだ。
「前回の君達のように、新しい誰かが迷い込んだのでしょうか？または僕達のように、前から居たのでしょうか？」
「どちらにせよ、合流しなきゃ!!一人なら危ないよ!!」
《バンッ》
久留米と有紗が、扉を叩く。
「あぅっ・・・でもっ・・・」
「綾志君？」
「も、もし・・・歌うお化けだったら・・・？」
「あっ」
情けない顔で鼻を啜る綾志の言葉に、有紗が手を止めた。
「い、いや!!でも!!人間だったら大変だから!!」
「化物ならテメェが斬りゃ良いんだよ!!」
「ぴゃあぁあっ・・・」
《ズガァンッ》
義隆が、扉に渾身の蹴りを入れる。
だが、やはり扉はびくともしない。
「白石君、私はどうしても教卓の上の機械が気になります」
「え、ノートパソコン？」
「どうしたら動きますか？」
「えー(汗)動く保証は無いっすよ？」
久留米に袖を引かれ、光也は渋々ノートパソコンの電源を入れた。
「・・・起動した(汗)何これ(汗)電気とか一体どうなってんだよ(汗)」
「爆発はしませんよね？」
光也と久留米は、画面が明るくなったノートパソコンに釘付けだ。
(操作すれば怪しまれますね。上手く彼を誘導しなくてはならない)
「凄いですね。まさに文明の利器。何に使う機械なのでしょうか？」
久留米はノートパソコンの画面を指でなぞった。
「・・・ねえ？よく見たら上の狭い窓は開いてるぉ？」
「あ？」
「私、そこから廊下に出て外から扉が開かないか試してみるぉ。歌声の主も調べたいし」
「確かに、お前なら行けるな」
夏帆が指差す先を見て、義隆が頷いた。
「一人でなんて危ないよ!!」
「そこは同感だ。ガキ、同行しろ」
「ふぇっ・・・ぼ、くが・・・？」
「もう友達なんだろ？しつこいようだが武器があるのはテメェだけだ。友達なら、一人で行かせるな」
慌てる有紗を見もせず、義隆は綾志に言った。
「大丈夫だぁお月雛君!!私が守るから!!」
「逆だ逆」
「お、御願い・・・します・・・」
「逆だってんだよガキ共」
手を取り合う二人に、義隆の突っ込みは聞こえているのだろうか？
〜廊下〜
《ガタガタガタンッ》
「駄目だぉ、外からでも開かないぉ」
「ぐすっ・・・ひっく・・・」
窓から廊下に出た二人は、何とか扉を開けようと試みた。
だが隙間すら開かない。
「・・・歌声はまだ聞こえるぉ」
「ぼ、僕には・・・何も・・・」
夏帆が、来た道と反対側に目をやる。
「行くぉ」
「ふぇえぇえっ・・・」
「人間でも化物でも、部屋から脱出するヒントとかあるかも知れないし」
「そんな・・・ゲームの・・・し過ぎ、なんじゃあ・・・」
スタスタ歩く夏帆に、綾志が必死でついて行く。
果たして・・・
〜廊下〜
「こっちだぉ」
「怖いよぉ・・・」
何者かの歌に導かれ、校舎を探索する夏帆と綾志。
「それにしても不思議な歌だぉ。何語なんだろう？」
「僕には・・・聞こえません・・・ぐすんっ」
周りを見渡す夏帆に従い、鼻を啜りながら歩く綾志。
ちなみに一応は帯刀(左手で打刀を持って腰の位置で固定)している。
「そこを曲がったら・・・くきゃっ!?」
「ひゃっ!?」
《ポスッ》
夏帆が曲がり角に差し掛かると、反対側から出て来た人物と衝突。
大した勢いではないが。
「あ、の(汗)大丈夫？」
「大丈夫だぉ・・・ん？その声、もしかして貴方が歌ってたの？」
相手は高校生くらいの少年だった。
「ああ、歌ってたのは僕だよ。怖いから、勇気を出して進む為にね？」
「不思議な歌詞だったけど、何語かぉ？」
相手の少年を真っ直ぐ見つめ、夏帆が問う。
「えーと、言語？分からないや。小さい頃の子守唄なんだ」
「そうかぉ」
少年は困ったように笑った。
「それより君達、何処から来たの？もしかして他にも“開かずの教室”がある？」
「“開かずの教室”？？？」
今度は少年が問うて来た。
「鍵が閉まってる訳でもないのに、何をしても扉がビクともしない教室」
「私達、そこに閉じ込められた人達を助けたくて、手懸かりを探しているの」
「くきゃ？もう一人居たのかぉ」
「ふぇえ・・・じゃあ他にも何人か・・・別の教室に・・・？」
少年の後ろから、黒髪の少女が現れた。
「丁度良いぉ。情報交換しない？協力し合えるかも？」
「あ、うん。そうだね」
夏帆の提案に、少年が頷く。
「まずは自己紹介だぁお。麻生 夏帆。高校一年生だぅ」
「つ、月雛 綾志、高校一年生、ですっ・・・」
「孫杉 池弥(まごすぎ いけや)。高校二年生だよ」
「竹風 木葉・・・」
《ミシッ》
黒髪の少女が自己紹介をした、その時。
木造の床が、嫌な音を立てた。
《メキメキメキメキッ》
「きゃっ・・・あぐぅっ!!」
「木葉ちゃん!?」
「木製の手!?」
「うひゃあぁあっ・・・!?」
床を突き破って生えて来た巨大な手が、あっという間に少女を握り潰し、夏帆達に襲い掛かる!!
「月雛君っ」
「うぇえぇんっ・・・」
《シュガガッ》
綾志は泣きながら抜刀し、巨大な手を横に払う!!
「つ、月雛君!?何それ日本刀!?」
「説明は後!!退くぉ!!」
《バッ》
驚く池弥の手を引き、夏帆は来た道を戻った!!
〜教室前〜
「はぁっはぁっ(汗)」
「ビックリしたぉ(汗)」
「うわぁあんっ・・・」
ひとまず義隆達が閉じ込められた教室の前まで逃げて来た三人。
「義隆さん!!有紗ちゃん!!久留米たん!!白石君!!無事かぉ!?」
《バンバンッ》
夏帆は教室の扉を叩いた。
「麻生か？」
「無事だぜ？」
「収穫はありましたか？」
「二人共、怪我してない!?」
扉の向こうから、仲間の声がする。
「私達は無事だぁお!!どうやら今回は、私達以外にも別の教室に召喚された人達が居るみたい!!」
「コッチも六人・・・えと、一人死んじゃったけど。教卓にはノーパソがあったよ。脱出の鍵なのかも？」
ここへ逃げて来る道中、軽く情報交換をした夏帆と池弥。
「おいガキ、生きてるか？」
「ひ、ひとまずは・・・ぐしゅっ・・・」
扉の向こうの義隆に問われ、自身の袖口で涙を拭う綾志。
「ノーパソについては、僕の仲間も調べてくれてる!!そちらで分かった事はある!?」
「電源は付くが、最初の画面から動かない。特にソフトもダウンロードされてないし、ネットにも繋がってないな」
池弥の問いには光也が答えた。
「が・・・画面から・・・髪の長いお姉さんが這い出して来たりして・・・ふぇえぇんっ(泣)」
「自分で言って泣くな!!」
想像したら怖くなったらしく、綾志が床に座り込んだ。
扉越しでも様子が目に浮かぶ義隆が突っ込む。
「つーか、この教室から脱出すんのもだけどさ？この学校から現実へ戻るのも、どうすりゃ良いんだろうな？」
「前回は妙な鏡に姿を映したら還れましたよね？」
「また鏡を探すか・・・」
光也、久留米、義隆は改めて教室内を見渡した。
「・・・ねえ、掃除用具入れの扉って開いてたっけ？」
「は？掃除用具入れ？」
ふと、有紗が義隆の袖を引く。
「・・・閉まってたハズだなぁ？」
「同意します」
「マジかよ(汗)」
「わっわっわっ(汗)」
三人で有紗を下がらせ、最年長たる義隆が掃除用具入れに近付く。
《ガターンッ》
「きゃあっ!?」
「ノーパソが勝手に落ちた!?」
「掃除用具入れから、何か出て来たのでしょうか？」
今度は教卓の真ん中に置かれていたノートパソコンが床に落下!!
有紗を光也に託し、久留米がノートパソコンに近付いた・・・
続く
「こっちだぉ」
「怖いよぉ・・・」
何者かの歌に導かれ、校舎を探索する夏帆と綾志。
「それにしても不思議な歌だぉ。何語なんだろう？」
「僕には・・・聞こえません・・・ぐすんっ」
周りを見渡す夏帆に従い、鼻を啜りながら歩く綾志。
ちなみに一応は帯刀(左手で打刀を持って腰の位置で固定)している。
「そこを曲がったら・・・くきゃっ!?」
「ひゃっ!?」
《ポスッ》
夏帆が曲がり角に差し掛かると、反対側から出て来た人物と衝突。
大した勢いではないが。
「あ、の(汗)大丈夫？」
「大丈夫だぉ・・・ん？その声、もしかして貴方が歌ってたの？」
相手は高校生くらいの少年だった。
「ああ、歌ってたのは僕だよ。怖いから、勇気を出して進む為にね？」
「不思議な歌詞だったけど、何語かぉ？」
相手の少年を真っ直ぐ見つめ、夏帆が問う。
「えーと、言語？分からないや。小さい頃の子守唄なんだ」
「そうかぉ」
少年は困ったように笑った。
「それより君達、何処から来たの？もしかして他にも“開かずの教室”がある？」
「“開かずの教室”？？？」
今度は少年が問うて来た。
「鍵が閉まってる訳でもないのに、何をしても扉がビクともしない教室」
「私達、そこに閉じ込められた人達を助けたくて、手懸かりを探しているの」
「くきゃ？もう一人居たのかぉ」
「ふぇえ・・・じゃあ他にも何人か・・・別の教室に・・・？」
少年の後ろから、黒髪の少女が現れた。
「丁度良いぉ。情報交換しない？協力し合えるかも？」
「あ、うん。そうだね」
夏帆の提案に、少年が頷く。
「まずは自己紹介だぁお。麻生 夏帆。高校一年生だぅ」
「つ、月雛 綾志、高校一年生、ですっ・・・」
「孫杉 池弥(まごすぎ いけや)。高校二年生だよ」
「竹風 木葉・・・」
《ミシッ》
黒髪の少女が自己紹介をした、その時。
木造の床が、嫌な音を立てた。
《メキメキメキメキッ》
「きゃっ・・・あぐぅっ!!」
「木葉ちゃん!?」
「木製の手!?」
「うひゃあぁあっ・・・!?」
床を突き破って生えて来た巨大な手が、あっという間に少女を握り潰し、夏帆達に襲い掛かる!!
「月雛君っ」
「うぇえぇんっ・・・」
《シュガガッ》
綾志は泣きながら抜刀し、巨大な手を横に払う!!
「つ、月雛君!?何それ日本刀!?」
「説明は後!!退くぉ!!」
《バッ》
驚く池弥の手を引き、夏帆は来た道を戻った!!
〜教室前〜
「はぁっはぁっ(汗)」
「ビックリしたぉ(汗)」
「うわぁあんっ・・・」
ひとまず義隆達が閉じ込められた教室の前まで逃げて来た三人。
「義隆さん!!有紗ちゃん!!久留米たん!!白石君!!無事かぉ!?」
《バンバンッ》
夏帆は教室の扉を叩いた。
「麻生か？」
「無事だぜ？」
「収穫はありましたか？」
「二人共、怪我してない!?」
扉の向こうから、仲間の声がする。
「私達は無事だぁお!!どうやら今回は、私達以外にも別の教室に召喚された人達が居るみたい!!」
「コッチも六人・・・えと、一人死んじゃったけど。教卓にはノーパソがあったよ。脱出の鍵なのかも？」
ここへ逃げて来る道中、軽く情報交換をした夏帆と池弥。
「おいガキ、生きてるか？」
「ひ、ひとまずは・・・ぐしゅっ・・・」
扉の向こうの義隆に問われ、自身の袖口で涙を拭う綾志。
「ノーパソについては、僕の仲間も調べてくれてる!!そちらで分かった事はある!?」
「電源は付くが、最初の画面から動かない。特にソフトもダウンロードされてないし、ネットにも繋がってないな」
池弥の問いには光也が答えた。
「が・・・画面から・・・髪の長いお姉さんが這い出して来たりして・・・ふぇえぇんっ(泣)」
「自分で言って泣くな!!」
想像したら怖くなったらしく、綾志が床に座り込んだ。
扉越しでも様子が目に浮かぶ義隆が突っ込む。
「つーか、この教室から脱出すんのもだけどさ？この学校から現実へ戻るのも、どうすりゃ良いんだろうな？」
「前回は妙な鏡に姿を映したら還れましたよね？」
「また鏡を探すか・・・」
光也、久留米、義隆は改めて教室内を見渡した。
「・・・ねえ、掃除用具入れの扉って開いてたっけ？」
「は？掃除用具入れ？」
ふと、有紗が義隆の袖を引く。
「・・・閉まってたハズだなぁ？」
「同意します」
「マジかよ(汗)」
「わっわっわっ(汗)」
三人で有紗を下がらせ、最年長たる義隆が掃除用具入れに近付く。
《ガターンッ》
「きゃあっ!?」
「ノーパソが勝手に落ちた!?」
「掃除用具入れから、何か出て来たのでしょうか？」
今度は教卓の真ん中に置かれていたノートパソコンが床に落下!!
有紗を光也に託し、久留米がノートパソコンに近付いた・・・
続く
《パリパリパリィインッ》
「きゃあぁあっ!!」
「蛍光灯が!!」
更には頭上の蛍光灯が割れ、破片が降り注いだ。
有紗の頭を抱き込み、光也が目を閉じる。
「くっきゃ!?中はどうなってるんだぉ!?」
「皆さんっ・・・」
「僕が居た教室も、閉め出された後で凄い音が!!」
《バンバンッ》
不穏な音を聞き、三人が教室の扉を叩く。
「さ、ささ下がって下さい!!ききき斬ってみます・・・ひゃわぁあぁあっ!?」
「くっきゃあ!?」
「ひぃいぃいっ!?」
《ベタベタベタベタッ》
綾志が涙ながらに抜刀すると、扉全体に真っ赤な手形が出現!!
「綾志君!!夏帆ちゃん!!」
「大丈夫か原野先輩っ・・・」
「もう一人の男子も、無事ですか？」
「つーかガキこらぁ!!最初から斬る気になれ!!」
《ガシャーンッ》
最初に言う事を聞かなかった綾志に怒り、義隆が手近な机を扉に投げつけた。
「ぴゃあぁあっ・・・よ、義隆さ・・・怒っ・・・」
「ねえ!!天井に文字が!!」
「っ・・・“遊びましょう、耐久げぇむ。勝ったら、お友達を返してあげる”!?」
気付けば扉の真上には、真っ赤な文字が記されていた。
「た、たたた“耐久げぇむ”？？？」
「狭い教室の中、何度も不意打ちで“何か”が起きたら流石に誰か怪我をするかも知れないぉ」
「床に矢印が出てるね。ここは誘いに乗ろうか」
足元には真っ赤な矢印が続く。
どうやら行くしか無いようだ。
「・・・ちょっと待て」
「「「!?」」」
《ガンッ》
三人が進もうとすると、教室の中から義隆が扉を蹴った。
「チビじゃない方の野郎」
「え、と、僕？」
どうやら池弥に用があるらしい。
「俺は義隆、高校三年生(仮)。お前は？」
「孫杉 池弥、高校二年生です」
「お前、何で自分がこの空間に閉じ込められたと思う？」
「え？」
義隆は、淡々と問う。
「この世界(正確には前の)に閉じ込められる奴には共通点がある。心の何処かで常に“現実”を否定している奴だ」
「・・・」
「お前の“理由”は？」
「・・・」
義隆は池弥を、と言うより初対面の相手を信用していない。
顔が見えないなら尚更だ。
前回の仲間である綾志と夏帆を、見知らぬ“何者か”と行動させるには些か不安があるらしい。
「どうした？一緒に行動するなら最低限の情報は・・・」
「義隆さん。それは私達も互いに情報の開示をしていません。彼だけに語らせては不公平です」
義隆の追求を、久留米が止めた。
「・・・兄さんが」
「あ？」
だが、池弥は語るようだ。
「兄が居たんです、小さい頃。でも兄は、親族からも両親からも嫌われていた。昔は理由が分からなくて、でも僕は兄が好きで、大人に隠れて遊んで貰っていた」
「へぇ？昔は？」
池弥は懐かしそうに笑った。
「だけど僕が理由を知った翌朝、兄は行方不明になった。僕がたまたま、夜中にトイレに起きなければ。両親の話を耳にしなければ・・・兄さんは・・・」
「自分のせいで、兄貴が失踪、か？」
義隆は溜め息をついた。
「失踪しただけで、兄さんは生きてる!!僕は兄さんに会いたい!!そう・・・思っていたら・・・」
「？？？」
「兄さんが失踪した六年後・・・つまり今年初夢で、兄さんに会ったんです。夢だけど夢じゃない。兄さんは何処かに閉じ込められていた」
「成程」
義隆が、何故か納得している。
いや、これだけ不思議な現象を体験していれば、受け入れられる話か。
「僕は“現実を否定している”んじゃなく、“真実を探している”んです。兄さんを・・・探しているんです・・・」
「その想いに引き摺られて、ここに来たのか」
池弥は、唇を引き結んだ。
「・・・事情は分かった。ガキ共の御守りは任せる」
「は、はい!!行こう、二人共!!」
「ガキじゃないけどねっ」
「はわわわわっ(泣)」
《バッ》
義隆の声に送られ、三人は教室前を去った。
「良いんですか、信用して？」
「兄を想う弟に、悪い奴は居ないさ・・・」
「義隆さん？」
「・・・何でもない」
久留米が首を傾げる。
義隆は、溜め息をついた・・・
続く
「きゃあぁあっ!!」
「蛍光灯が!!」
更には頭上の蛍光灯が割れ、破片が降り注いだ。
有紗の頭を抱き込み、光也が目を閉じる。
「くっきゃ!?中はどうなってるんだぉ!?」
「皆さんっ・・・」
「僕が居た教室も、閉め出された後で凄い音が!!」
《バンバンッ》
不穏な音を聞き、三人が教室の扉を叩く。
「さ、ささ下がって下さい!!ききき斬ってみます・・・ひゃわぁあぁあっ!?」
「くっきゃあ!?」
「ひぃいぃいっ!?」
《ベタベタベタベタッ》
綾志が涙ながらに抜刀すると、扉全体に真っ赤な手形が出現!!
「綾志君!!夏帆ちゃん!!」
「大丈夫か原野先輩っ・・・」
「もう一人の男子も、無事ですか？」
「つーかガキこらぁ!!最初から斬る気になれ!!」
《ガシャーンッ》
最初に言う事を聞かなかった綾志に怒り、義隆が手近な机を扉に投げつけた。
「ぴゃあぁあっ・・・よ、義隆さ・・・怒っ・・・」
「ねえ!!天井に文字が!!」
「っ・・・“遊びましょう、耐久げぇむ。勝ったら、お友達を返してあげる”!?」
気付けば扉の真上には、真っ赤な文字が記されていた。
「た、たたた“耐久げぇむ”？？？」
「狭い教室の中、何度も不意打ちで“何か”が起きたら流石に誰か怪我をするかも知れないぉ」
「床に矢印が出てるね。ここは誘いに乗ろうか」
足元には真っ赤な矢印が続く。
どうやら行くしか無いようだ。
「・・・ちょっと待て」
「「「!?」」」
《ガンッ》
三人が進もうとすると、教室の中から義隆が扉を蹴った。
「チビじゃない方の野郎」
「え、と、僕？」
どうやら池弥に用があるらしい。
「俺は義隆、高校三年生(仮)。お前は？」
「孫杉 池弥、高校二年生です」
「お前、何で自分がこの空間に閉じ込められたと思う？」
「え？」
義隆は、淡々と問う。
「この世界(正確には前の)に閉じ込められる奴には共通点がある。心の何処かで常に“現実”を否定している奴だ」
「・・・」
「お前の“理由”は？」
「・・・」
義隆は池弥を、と言うより初対面の相手を信用していない。
顔が見えないなら尚更だ。
前回の仲間である綾志と夏帆を、見知らぬ“何者か”と行動させるには些か不安があるらしい。
「どうした？一緒に行動するなら最低限の情報は・・・」
「義隆さん。それは私達も互いに情報の開示をしていません。彼だけに語らせては不公平です」
義隆の追求を、久留米が止めた。
「・・・兄さんが」
「あ？」
だが、池弥は語るようだ。
「兄が居たんです、小さい頃。でも兄は、親族からも両親からも嫌われていた。昔は理由が分からなくて、でも僕は兄が好きで、大人に隠れて遊んで貰っていた」
「へぇ？昔は？」
池弥は懐かしそうに笑った。
「だけど僕が理由を知った翌朝、兄は行方不明になった。僕がたまたま、夜中にトイレに起きなければ。両親の話を耳にしなければ・・・兄さんは・・・」
「自分のせいで、兄貴が失踪、か？」
義隆は溜め息をついた。
「失踪しただけで、兄さんは生きてる!!僕は兄さんに会いたい!!そう・・・思っていたら・・・」
「？？？」
「兄さんが失踪した六年後・・・つまり今年初夢で、兄さんに会ったんです。夢だけど夢じゃない。兄さんは何処かに閉じ込められていた」
「成程」
義隆が、何故か納得している。
いや、これだけ不思議な現象を体験していれば、受け入れられる話か。
「僕は“現実を否定している”んじゃなく、“真実を探している”んです。兄さんを・・・探しているんです・・・」
「その想いに引き摺られて、ここに来たのか」
池弥は、唇を引き結んだ。
「・・・事情は分かった。ガキ共の御守りは任せる」
「は、はい!!行こう、二人共!!」
「ガキじゃないけどねっ」
「はわわわわっ(泣)」
《バッ》
義隆の声に送られ、三人は教室前を去った。
「良いんですか、信用して？」
「兄を想う弟に、悪い奴は居ないさ・・・」
「義隆さん？」
「・・・何でもない」
久留米が首を傾げる。
義隆は、溜め息をついた・・・
続く
《タタタタタッ》
「この矢印、何処まで続いてるんだぉ？」
「“耐久げぇむ”の内容も気になるよね」
「ぐすんっ・・・」
矢印に従い、校内を走る三人。
「・・・科学室？」
「に、矢印が続いてるぉ」
「は、入る・・・？閉じ込められない・・・？」
辿り着いたのは、扉の外れかけた教室。
《ピシャンッ》
「ぴゃっ!?」
「扉が勝手に!?」
「ホラーの定番だね(汗)」
三人が入室した瞬間、扉は閉ざされた。
《ガタガタガタッ》
「ひゃあぁあっ!?」
「な、何かゴツイ椅子が独りでに進撃して来るぉ!?」
「あれ、西洋の拷問器具だよ!?電気椅子的なヤツ!!」
「何で科学室にっ・・・か、科学だからかぉ!?」
更に冷たそうな椅子が三人に迫る!!
「・・・月雛君、孫杉先輩、椅子に何か書いてあるぉ」
「えっと・・・“一人座る。電気が流れる。二人電源切るスイッチ探す”・・・!?」
「た、“耐久げぇむ”って拷問に耐えるゲーム!?」
椅子の文字を読み、三人が驚愕した。
《ヴンッ》
「ひぇえっ!?ぷぷぷプロテクターが付いた!?」
「プロジェクターだぉ月雛君」
「誰か映ってる!!」
今度は黒板の前にある画像投影機械が作動。
黒板を隠すように下げられたスクリーンに何かを映した。
「よよよ義隆さん!?皆さん!?」
「な、何かピ○チュウの電撃を喰らったサ○シみたいになってるぉ!?」
「・・・スクリーンの上に字が!!“お友達は先に遊んでます”って!?彼等が君達の仲間!?」
映されたのは、室内に電気を流されのたうち回る義隆達。
音は聞こえないが、恐らく悲鳴を上げている。
「・・・御願いします!!」
「月雛君!?」
「ちょっ!?」
《バッ》
綾志は覚悟を決め、電気椅子に座った。
「うわぁあぁあぁあーっ!!」
(“耐久げぇむ”が幾つあるか分からない!!役立たずの僕が、なるべく頑張らなきゃ!!)
《バリバリバリッ!!》
綾志が座った途端、椅子から拘束具が生えて彼の四肢と首を椅子に固定!!
電気放流が開始された!!
「月雛君!!」
「麻生さん!!急いでスイッチを探そう!!」
《ダッ》
池弥は科学室内を調べ始めた。
「スイッチ!?スイッチが隠れていそうな場所!!」
「僕は上の方や棚の裏を!!」
《ガタガタガタンッ》
夏帆は椅子や机類を調べ、池弥は棚を動かしてたり掃除用具入れの上等を調べる。
「うわぁあぁあぁあっ!!」
「月雛君っ」
《バチバチバチバチッ!!》
綾志が悲鳴を上げる中、スイッチの捜索が続く。
「・・・くきゃ!?机の裏にパズル発見だぉ!?しかも、後1ピースで完成!!」
「最後のパーツは!?」
「ない!!怪しい!!」
「探そう!!」
《バッ》
不審な机を見つけ、二人は小さなパズルのピースを探す。
「無い!!無い!!無い・・・あったぉ!!」
「急いで!!」
《ズザッ》
必死で探してゴミ箱の中から見付けたピースを、机の裏の未完成パズルに嵌め込む。
「かはっ・・・」
「月雛君っ!!」
「綾志君、大丈夫!?」
《ドサッ》
それに応じて綾志の拘束が解け、彼は床に倒れ込んだ。
「月雛君、しっかり!!」
「う・・・ぁ・・・」
《ガターンッ》
夏帆が綾志を抱き起こすと、科学室の扉が勝手に外れ、また真っ赤な矢印が次の目的地へ続いていた。
そしてスクリーンは、真っ暗になっている。
「さ、先を急ごう!!仲間への“耐久げぇむ”は、もう次が始まっているかも知れないし!!」
「くきゃ!!」
「は・・・ひ・・・」
《バッ》
池弥が素早く綾志を背負い、三人は矢印を辿って“次”に向かうのだった・・・
続く
「この矢印、何処まで続いてるんだぉ？」
「“耐久げぇむ”の内容も気になるよね」
「ぐすんっ・・・」
矢印に従い、校内を走る三人。
「・・・科学室？」
「に、矢印が続いてるぉ」
「は、入る・・・？閉じ込められない・・・？」
辿り着いたのは、扉の外れかけた教室。
《ピシャンッ》
「ぴゃっ!?」
「扉が勝手に!?」
「ホラーの定番だね(汗)」
三人が入室した瞬間、扉は閉ざされた。
《ガタガタガタッ》
「ひゃあぁあっ!?」
「な、何かゴツイ椅子が独りでに進撃して来るぉ!?」
「あれ、西洋の拷問器具だよ!?電気椅子的なヤツ!!」
「何で科学室にっ・・・か、科学だからかぉ!?」
更に冷たそうな椅子が三人に迫る!!
「・・・月雛君、孫杉先輩、椅子に何か書いてあるぉ」
「えっと・・・“一人座る。電気が流れる。二人電源切るスイッチ探す”・・・!?」
「た、“耐久げぇむ”って拷問に耐えるゲーム!?」
椅子の文字を読み、三人が驚愕した。
《ヴンッ》
「ひぇえっ!?ぷぷぷプロテクターが付いた!?」
「プロジェクターだぉ月雛君」
「誰か映ってる!!」
今度は黒板の前にある画像投影機械が作動。
黒板を隠すように下げられたスクリーンに何かを映した。
「よよよ義隆さん!?皆さん!?」
「な、何かピ○チュウの電撃を喰らったサ○シみたいになってるぉ!?」
「・・・スクリーンの上に字が!!“お友達は先に遊んでます”って!?彼等が君達の仲間!?」
映されたのは、室内に電気を流されのたうち回る義隆達。
音は聞こえないが、恐らく悲鳴を上げている。
「・・・御願いします!!」
「月雛君!?」
「ちょっ!?」
《バッ》
綾志は覚悟を決め、電気椅子に座った。
「うわぁあぁあぁあーっ!!」
(“耐久げぇむ”が幾つあるか分からない!!役立たずの僕が、なるべく頑張らなきゃ!!)
《バリバリバリッ!!》
綾志が座った途端、椅子から拘束具が生えて彼の四肢と首を椅子に固定!!
電気放流が開始された!!
「月雛君!!」
「麻生さん!!急いでスイッチを探そう!!」
《ダッ》
池弥は科学室内を調べ始めた。
「スイッチ!?スイッチが隠れていそうな場所!!」
「僕は上の方や棚の裏を!!」
《ガタガタガタンッ》
夏帆は椅子や机類を調べ、池弥は棚を動かしてたり掃除用具入れの上等を調べる。
「うわぁあぁあぁあっ!!」
「月雛君っ」
《バチバチバチバチッ!!》
綾志が悲鳴を上げる中、スイッチの捜索が続く。
「・・・くきゃ!?机の裏にパズル発見だぉ!?しかも、後1ピースで完成!!」
「最後のパーツは!?」
「ない!!怪しい!!」
「探そう!!」
《バッ》
不審な机を見つけ、二人は小さなパズルのピースを探す。
「無い!!無い!!無い・・・あったぉ!!」
「急いで!!」
《ズザッ》
必死で探してゴミ箱の中から見付けたピースを、机の裏の未完成パズルに嵌め込む。
「かはっ・・・」
「月雛君っ!!」
「綾志君、大丈夫!?」
《ドサッ》
それに応じて綾志の拘束が解け、彼は床に倒れ込んだ。
「月雛君、しっかり!!」
「う・・・ぁ・・・」
《ガターンッ》
夏帆が綾志を抱き起こすと、科学室の扉が勝手に外れ、また真っ赤な矢印が次の目的地へ続いていた。
そしてスクリーンは、真っ暗になっている。
「さ、先を急ごう!!仲間への“耐久げぇむ”は、もう次が始まっているかも知れないし!!」
「くきゃ!!」
「は・・・ひ・・・」
《バッ》
池弥が素早く綾志を背負い、三人は矢印を辿って“次”に向かうのだった・・・
続く
〜調理室〜
「きゅう・・・」
「次の“耐久げぇむ”はここかな？」
「くきゃ〜」
電気椅子の“耐久げぇむ”をクリアした三人は、新たなステージに招待された。
《バターンッ》
「ぴゃっ・・・」
「また扉が自動で閉まったね」
「くきゃ〜」
まだ動けない綾志を床に下ろし、池弥が周りを警戒する。
《ヴンッ》
「わっ(汗)調理室にテレビ・・・あぁっ!?皆!?」
天井から金具で吊るされたテレビには、池弥の仲間が映る。
「な、何か苦しそう!?」
「孫杉先輩!!食器棚に文字が!!」
夏帆が、真っ赤なメッセージに気付く。
「“続けましょう、耐久げぇむ。奥の部屋で毒ガスをお腹一杯どうぞ？”・・・毒ガス!?」
「またスイッチ探すのかぉ!?」
メッセージを読み、二人が叫ぶ。
「・・・ここは僕が!!」
「孫杉先輩!?」
「大丈夫!!合唱部だから!!」
「え、ちょっ!?」
《バタンッ》
池弥は奥の部屋に飛び込み、鍵をかけた。
《ブシューッ》
「!!」
途端に奥の部屋から音がして、恐らく“耐久げぇむ”は開始された。
「スイッチ・・・くきゃ!?」
「ぴぇえっ・・・」
《カサカサカサカサカサカサッ》
夏帆が急いで探索を開始しようとすると、部屋中にネズミが放たれた!!
「ゆ、床に文字!!・・・“本物のネズミは、どぉれだ？”!?」
「ふぇえっ・・・」
どうやら今度はウォーリーを探せならぬ、ネズミを探す事がクリア条件らしい。
「本物の・・・うひゃあっ」
「月雛君っ!?」
《パァンッ》
試しに綾志が、近くに来た一匹を掴む。
それは偽物だったらしく、爆竹のように破裂した!!
「うぁあぁっ・・・痛いっ・・・痛いよぉおっ・・・」
「月雛君、血が!!」
電気椅子での麻痺が引き、痛覚が戻りつつある綾志。
その手はネズミの破裂により、鮮血に染まっていた。
「ふぐぅっ・・・これじゃ刀が・・・握れない・・・!!」
「ネズミは私が探すから!!ジッとしてて!!」
《カサカサカサカサカサカサッ》
痛みと恐怖で泣く綾志の手にハンカチを巻いてやり、夏帆はネズミ達を睨んだ。
(急がなきゃ!!毒ガスで孫杉先輩や、その仲間が死んじゃう!!月雛君の手当てもしなきゃ!!)
「くきゃあ!!」
《バッ》
夏帆は勘を頼りに、逃げ回る一匹のネズミに指先だけ触れた。
《パァンッ》
「くっきゃ!!違うか!!」
そして破裂する前に離れ、負傷を回避。
しっかり掴んだ綾志と違い、これならリスクは低そうだ。
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる!!なるべく迅速に、怪我しないように、片っ端から触るぉ!!」
「麻生さ・・・うぅ・・・」
《パァンッ》
夏帆が次々に偽物を破裂させて行く。
綾志は破裂音に怯え、度々固く目を閉じた。
(ネズミさん・・・ネズミさん・・・本物は・・・)
「・・・ふぇ？」
《ゴソッ》
ふと、目を閉じている綾志の耳に、妙な音が届く。
「な、何・・・あぁあっ・・・!?」
《ゴソゴソッ》
音の犯人を探して辺りを見回せば、一匹のネズミが流し台の下の収納にある米袋を喰い破り、米を食べていた。
「麻生さんっ・・・本物はそこだよっ・・・!!」
「くきゃっ!?」
《バッ》
綾志が負傷していない方の手で指差し、それに応じて夏帆が調理台を踏み越え駆け付ける!!
「つい動いてるのに気を取られちゃったぉ!!月雛君、超ファインプレイ!!」
「えへへ・・・」
『ヂュウッ!?』
気配を察知して逃げようとしたネズミを、夏帆が素早く鷲掴み!!
「本物を捕まえたぉ!!毒ガスを止め・・・」
「麻生さんっ・・・オーブンに字がっ・・・」
しかし、まだクリアではないらしい。
「“ネズミを中へ。それで扉は開かれる”・・・オーブンにネズミを入れるのかぉ？」
「え・・・それって・・・」
文字を読み、綾志が青冷めた。
「レンジなら内臓破裂、オーブンなら焼死・・・を連想させて、時間をロスさせる作戦かぉ？迷ってたら孫杉先輩とお友達が毒ガスで死んじゃう!!」
「ででででもっ・・・下手したらネズミさん本当にっ・・・」
「やるしかないんだぉ!!月雛君は目と耳を塞いでて!!」
「麻生さっ・・・」
《バッ》
夏帆は、オーブンに近付き、扉を開けて、ネズミを中に放り込んだ・・・
続く
「きゅう・・・」
「次の“耐久げぇむ”はここかな？」
「くきゃ〜」
電気椅子の“耐久げぇむ”をクリアした三人は、新たなステージに招待された。
《バターンッ》
「ぴゃっ・・・」
「また扉が自動で閉まったね」
「くきゃ〜」
まだ動けない綾志を床に下ろし、池弥が周りを警戒する。
《ヴンッ》
「わっ(汗)調理室にテレビ・・・あぁっ!?皆!?」
天井から金具で吊るされたテレビには、池弥の仲間が映る。
「な、何か苦しそう!?」
「孫杉先輩!!食器棚に文字が!!」
夏帆が、真っ赤なメッセージに気付く。
「“続けましょう、耐久げぇむ。奥の部屋で毒ガスをお腹一杯どうぞ？”・・・毒ガス!?」
「またスイッチ探すのかぉ!?」
メッセージを読み、二人が叫ぶ。
「・・・ここは僕が!!」
「孫杉先輩!?」
「大丈夫!!合唱部だから!!」
「え、ちょっ!?」
《バタンッ》
池弥は奥の部屋に飛び込み、鍵をかけた。
《ブシューッ》
「!!」
途端に奥の部屋から音がして、恐らく“耐久げぇむ”は開始された。
「スイッチ・・・くきゃ!?」
「ぴぇえっ・・・」
《カサカサカサカサカサカサッ》
夏帆が急いで探索を開始しようとすると、部屋中にネズミが放たれた!!
「ゆ、床に文字!!・・・“本物のネズミは、どぉれだ？”!?」
「ふぇえっ・・・」
どうやら今度はウォーリーを探せならぬ、ネズミを探す事がクリア条件らしい。
「本物の・・・うひゃあっ」
「月雛君っ!?」
《パァンッ》
試しに綾志が、近くに来た一匹を掴む。
それは偽物だったらしく、爆竹のように破裂した!!
「うぁあぁっ・・・痛いっ・・・痛いよぉおっ・・・」
「月雛君、血が!!」
電気椅子での麻痺が引き、痛覚が戻りつつある綾志。
その手はネズミの破裂により、鮮血に染まっていた。
「ふぐぅっ・・・これじゃ刀が・・・握れない・・・!!」
「ネズミは私が探すから!!ジッとしてて!!」
《カサカサカサカサカサカサッ》
痛みと恐怖で泣く綾志の手にハンカチを巻いてやり、夏帆はネズミ達を睨んだ。
(急がなきゃ!!毒ガスで孫杉先輩や、その仲間が死んじゃう!!月雛君の手当てもしなきゃ!!)
「くきゃあ!!」
《バッ》
夏帆は勘を頼りに、逃げ回る一匹のネズミに指先だけ触れた。
《パァンッ》
「くっきゃ!!違うか!!」
そして破裂する前に離れ、負傷を回避。
しっかり掴んだ綾志と違い、これならリスクは低そうだ。
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる!!なるべく迅速に、怪我しないように、片っ端から触るぉ!!」
「麻生さ・・・うぅ・・・」
《パァンッ》
夏帆が次々に偽物を破裂させて行く。
綾志は破裂音に怯え、度々固く目を閉じた。
(ネズミさん・・・ネズミさん・・・本物は・・・)
「・・・ふぇ？」
《ゴソッ》
ふと、目を閉じている綾志の耳に、妙な音が届く。
「な、何・・・あぁあっ・・・!?」
《ゴソゴソッ》
音の犯人を探して辺りを見回せば、一匹のネズミが流し台の下の収納にある米袋を喰い破り、米を食べていた。
「麻生さんっ・・・本物はそこだよっ・・・!!」
「くきゃっ!?」
《バッ》
綾志が負傷していない方の手で指差し、それに応じて夏帆が調理台を踏み越え駆け付ける!!
「つい動いてるのに気を取られちゃったぉ!!月雛君、超ファインプレイ!!」
「えへへ・・・」
『ヂュウッ!?』
気配を察知して逃げようとしたネズミを、夏帆が素早く鷲掴み!!
「本物を捕まえたぉ!!毒ガスを止め・・・」
「麻生さんっ・・・オーブンに字がっ・・・」
しかし、まだクリアではないらしい。
「“ネズミを中へ。それで扉は開かれる”・・・オーブンにネズミを入れるのかぉ？」
「え・・・それって・・・」
文字を読み、綾志が青冷めた。
「レンジなら内臓破裂、オーブンなら焼死・・・を連想させて、時間をロスさせる作戦かぉ？迷ってたら孫杉先輩とお友達が毒ガスで死んじゃう!!」
「ででででもっ・・・下手したらネズミさん本当にっ・・・」
「やるしかないんだぉ!!月雛君は目と耳を塞いでて!!」
「麻生さっ・・・」
《バッ》
夏帆は、オーブンに近付き、扉を開けて、ネズミを中に放り込んだ・・・
続く
〜調理室〜
《バターンッ》
「っ・・・!!」
「孫杉さんっ・・・」
「孫杉先輩、大丈夫かぉ!?」
奥の部屋の扉が開き、池弥が飛び出して来る。
《ダッ》
「・・・!!」
「ふぇっ!?」
「ま、孫杉先輩!?」
池弥は、そのまま綾志の元へ駆け寄って彼を抱き上げ、夏帆に顎で“ここを出よう!!”と促して調理室から脱出!!
「待っ・・・くきゃあぁあっ!?」
《パァンッ》
夏帆が追い掛けようとした瞬間、オーブンの“中身”が破裂した!!
オーブンの扉は吹っ飛び、焦げた“中身の破片”が夏帆にかかる!!
「夏帆ちゃん!!早く!!毒ガスは止まってない!!奥の部屋の扉が開いたから、調理室にも毒ガスが漏れ出している!!」
「は、はぃっ・・・!!」
《バッ》
夏帆は震える足を叱咤し、何とか調理室から飛び出した。
《バタンッ》
「二人とも、大丈夫!?」
「くすんっ・・・手が痛いです・・・」
「孫杉先輩こそ・・・酸欠とか平気ですかぉ？」
夏帆は“破片”を払いながら聞いた。
「合唱部のエースは酸欠なんかにならないよ♪」
「ふわぁ・・・凄いですね・・・」
「エースて、運動部みたいだぉ。まあ、音楽系と演劇部はある意味体育会系だぁお」
ウインクする池弥に、夏帆は溜め息をついた。
「さあ、紅い矢印も出てる事だし次へ急ごう!!もし仲間が順番に“耐久げぇむ”を受けさせられているなら、次は君達の仲間の番だ!!」
「ぴっ・・・!?」
「そうだぉ!!行くぉ!!」
《ダッ》
三人は、新たな矢印に従って走り出した。
〜体育館〜
「まさか別棟の体育館までステージになっているとは。校舎に閉じ込められているとばかり思ってた」
「でも体育館も学校の敷地内だし、そう考えれば不思議じゃないぉ？」
「・・・」
次の会場は体育館。
ひとまず三人は建物内に入る。
「普通に体育館だね？」
「矢印が二階に続いてるぉ？次は照明いじりでも・・・え？」
「・・・」
《ドサッ》
電気椅子での麻痺も解け、走れるくらいに回復していたハズの綾志が、突然に倒れた!!
「綾志君!?どうしたの!?」
「・・・熱があるぉ。ネズミに爆破された傷口からバイ菌でも入ったかぉ？」
「・・・」
夏帆が綾志の額に手を当てると、驚く程に熱かった。
《ガコンッ》
「あぁっ!?舞台の上に液晶画面が!!」
「やっぱり!!また義隆先輩達だぁお!!」
体育館の舞台上に映された映像は、天井から迫る無数の針山に目を見開いた仲間達の姿!!
「天井から何か伸びて来てる!?皆が串刺しになっちゃう!!」
「とにかく二階へ行くぉ!!」
《バッ》
池弥が綾志を背負い、三人は舞台横の階段から二階へ急いだ。
《ダダダダンッ》
「二階に到着!!矢印は・・・一番奥で終わり!!」
「って言うか孫杉先輩の体力Σ(゜Д゜)」
綾志を背負ったまま階段を一気に駆け上がり、奥まで走る池弥。
先程まで毒ガスの部屋で息を止めていたし、電気椅子の部屋から調理室まで綾志を背負っていたと言うのに息が乱れていない。
「・・・夏帆ちゃん、これ!!」
「“次の耐久げぇむはスラックライン。落ちれば針地獄。串刺しになるのは、だぁれ？”？？？スラックラインて綱渡りみたいなヤツ・・・くきゃあ!?」
《ガコーンッ》
夏帆が眉間にシワを寄せていると、体育館コートの床が抜け、下には針山地獄が広がっていた!!
三人のいる場所から対岸まで、手すりに幅が5�僂曚匹�
ベルト状のラインが伸びており、それを渡る“げぇむ”らしい。
「科学室で“電気”、調理室で“毒ガス”の“耐久げぇむ”と来て、今度は高さと下の針山への“恐怖心”に耐えるのかぉ？」
「スラックラインて、かなり練習が必要なんじゃなかったっけ？テレビで特集が組まれてたよ？」
二人はベルトを凝視する。
「ここは私の番かぉ？」
「だだだ駄目だよ!!確かに身軽そうだけど、落ちたら確実に死んじゃう!!」
手すりに登ろうとした夏帆を、池弥が止める。
「でも今までの“耐久げぇむ”って、“耐える側”と“解除側”に分かれてたよね？月雛君は動けない。何かあったら私じゃ月雛君を運べない。かと言って、月雛君を背負ったままスラックラインなんて出来ないよね孫杉先輩？」
「うぐっ(汗)」
夏帆に言われて、池弥が怯む。
「大丈夫だぁお？別にスタスタ歩けなくても落ちなきゃ良いんだから、孫杉先輩は月雛君を守りながら何かしらの“解除”を頑張って欲しいぉ」
「あっ!?」
《トンッ》
夏帆は軽やかに手刷りを飛び越え、ベルトに乗った。
《ぐらぁ・・・》
「くきゃあっ(汗)」
「夏帆ちゃん!?」
が、思った以上に揺れるしバランスが悪い。
ベルトに立つ事はおろか、座ろうとするのもやっとだ。
気を抜いたら一瞬で落ち、下の針山で串刺しである・・・
続く
《バターンッ》
「っ・・・!!」
「孫杉さんっ・・・」
「孫杉先輩、大丈夫かぉ!?」
奥の部屋の扉が開き、池弥が飛び出して来る。
《ダッ》
「・・・!!」
「ふぇっ!?」
「ま、孫杉先輩!?」
池弥は、そのまま綾志の元へ駆け寄って彼を抱き上げ、夏帆に顎で“ここを出よう!!”と促して調理室から脱出!!
「待っ・・・くきゃあぁあっ!?」
《パァンッ》
夏帆が追い掛けようとした瞬間、オーブンの“中身”が破裂した!!
オーブンの扉は吹っ飛び、焦げた“中身の破片”が夏帆にかかる!!
「夏帆ちゃん!!早く!!毒ガスは止まってない!!奥の部屋の扉が開いたから、調理室にも毒ガスが漏れ出している!!」
「は、はぃっ・・・!!」
《バッ》
夏帆は震える足を叱咤し、何とか調理室から飛び出した。
《バタンッ》
「二人とも、大丈夫!?」
「くすんっ・・・手が痛いです・・・」
「孫杉先輩こそ・・・酸欠とか平気ですかぉ？」
夏帆は“破片”を払いながら聞いた。
「合唱部のエースは酸欠なんかにならないよ♪」
「ふわぁ・・・凄いですね・・・」
「エースて、運動部みたいだぉ。まあ、音楽系と演劇部はある意味体育会系だぁお」
ウインクする池弥に、夏帆は溜め息をついた。
「さあ、紅い矢印も出てる事だし次へ急ごう!!もし仲間が順番に“耐久げぇむ”を受けさせられているなら、次は君達の仲間の番だ!!」
「ぴっ・・・!?」
「そうだぉ!!行くぉ!!」
《ダッ》
三人は、新たな矢印に従って走り出した。
〜体育館〜
「まさか別棟の体育館までステージになっているとは。校舎に閉じ込められているとばかり思ってた」
「でも体育館も学校の敷地内だし、そう考えれば不思議じゃないぉ？」
「・・・」
次の会場は体育館。
ひとまず三人は建物内に入る。
「普通に体育館だね？」
「矢印が二階に続いてるぉ？次は照明いじりでも・・・え？」
「・・・」
《ドサッ》
電気椅子での麻痺も解け、走れるくらいに回復していたハズの綾志が、突然に倒れた!!
「綾志君!?どうしたの!?」
「・・・熱があるぉ。ネズミに爆破された傷口からバイ菌でも入ったかぉ？」
「・・・」
夏帆が綾志の額に手を当てると、驚く程に熱かった。
《ガコンッ》
「あぁっ!?舞台の上に液晶画面が!!」
「やっぱり!!また義隆先輩達だぁお!!」
体育館の舞台上に映された映像は、天井から迫る無数の針山に目を見開いた仲間達の姿!!
「天井から何か伸びて来てる!?皆が串刺しになっちゃう!!」
「とにかく二階へ行くぉ!!」
《バッ》
池弥が綾志を背負い、三人は舞台横の階段から二階へ急いだ。
《ダダダダンッ》
「二階に到着!!矢印は・・・一番奥で終わり!!」
「って言うか孫杉先輩の体力Σ(゜Д゜)」
綾志を背負ったまま階段を一気に駆け上がり、奥まで走る池弥。
先程まで毒ガスの部屋で息を止めていたし、電気椅子の部屋から調理室まで綾志を背負っていたと言うのに息が乱れていない。
「・・・夏帆ちゃん、これ!!」
「“次の耐久げぇむはスラックライン。落ちれば針地獄。串刺しになるのは、だぁれ？”？？？スラックラインて綱渡りみたいなヤツ・・・くきゃあ!?」
《ガコーンッ》
夏帆が眉間にシワを寄せていると、体育館コートの床が抜け、下には針山地獄が広がっていた!!
三人のいる場所から対岸まで、手すりに幅が5�僂曚匹�
ベルト状のラインが伸びており、それを渡る“げぇむ”らしい。
「科学室で“電気”、調理室で“毒ガス”の“耐久げぇむ”と来て、今度は高さと下の針山への“恐怖心”に耐えるのかぉ？」
「スラックラインて、かなり練習が必要なんじゃなかったっけ？テレビで特集が組まれてたよ？」
二人はベルトを凝視する。
「ここは私の番かぉ？」
「だだだ駄目だよ!!確かに身軽そうだけど、落ちたら確実に死んじゃう!!」
手すりに登ろうとした夏帆を、池弥が止める。
「でも今までの“耐久げぇむ”って、“耐える側”と“解除側”に分かれてたよね？月雛君は動けない。何かあったら私じゃ月雛君を運べない。かと言って、月雛君を背負ったままスラックラインなんて出来ないよね孫杉先輩？」
「うぐっ(汗)」
夏帆に言われて、池弥が怯む。
「大丈夫だぁお？別にスタスタ歩けなくても落ちなきゃ良いんだから、孫杉先輩は月雛君を守りながら何かしらの“解除”を頑張って欲しいぉ」
「あっ!?」
《トンッ》
夏帆は軽やかに手刷りを飛び越え、ベルトに乗った。
《ぐらぁ・・・》
「くきゃあっ(汗)」
「夏帆ちゃん!?」
が、思った以上に揺れるしバランスが悪い。
ベルトに立つ事はおろか、座ろうとするのもやっとだ。
気を抜いたら一瞬で落ち、下の針山で串刺しである・・・
続く
〜体育館〜
「夏帆ちゃん、大丈夫!?」
「くきゃあぁあ(汗)ゆ、揺れる(汗)」
《ギシッ・・・》
体育館の二階に設置されたスラックラインに、跨がった体勢のまま動けない夏帆。
「と、とにかく・・・少しずつでも進まないと・・・」
「・・・夏帆ちゃん、上!!」
《ギリリッ》
夏帆が涙目で前進しようとすると、天井に大量の矢が構えられた!!
「“一分につき一本放たれる”!?ちょっと待ってよ!!ゴールする前に死んじゃう!!」
「お、落ち着くぉ・・・きっと、またスイッチか何かで止められるから・・・」
ゴール地点の壁に現れた紅い文字に、池弥が抗議した。
《ヒュンッ》
「スイッチ探してっ・・・」
「わ、分かった!!」
そうこうしている間に一本目の矢が放たれ、夏帆の頬を掠めて下の針山に落ちた。
(とは言った物の、地味に痛いし地味に高いし地味に揺れるし・・・何だぉ、この地味に辛い事だらけの“耐久げぇむ”!!)
「す、進まないと・・・」
《ギシッ》
夏帆は、落ちないよう細心の注意を払って前進を試みる。
「綾志君、頑張って!!ここを出たら保健室に行こう!!“げぇむ”攻略までの時間は少し長引くけど、ちゃんと手当てしないと君が死んじゃう!!」
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
池弥は、発熱で汗をかいて苦しそうな綾志を励ましながら、矢を解除する方法を探した。
〜・・・〜
「あぅっ・・・」
《ドシュッ》
一本、また一本、夏帆の柔肌を矢が掠め、時には刺さって行く。
どれも致命傷ではないが、確実に体力は削られていた。
「無いっ!!無いっ!!無いっ!!嘘でしょ!?何処にも何の仕掛けもない!?見落としがある!?どうしよう!!」
「・・・」
矢を解除する仕掛けを必死で体育館中(針地獄のコート以外)を探す池弥と、二階でグッタリして微動だに出来ない綾志。
(月雛君・・・大丈夫かな・・・振り向いてる余裕・・・ない・・・)
「早く・・・クリア・・・しなきゃ・・・」
《ドシュッ》
新たな矢が、夏帆の肩を貫く。
《ズボッ》
「進まなきゃ・・・」
夏帆は抜ける矢を抜いて、霞む視界の中、対岸を目指す。
「押せそうなボタンは押したし、仕掛けも探したし、動かせそうな物は動かしたし・・・ヒントも何もないなんて!!」
(孫杉先輩・・・)
《ビュッ》
遥か遠くで、池弥が叫んでいる気がする。
夏帆はスラックラインに跨がっているのがやっとになって来た。
(あれ・・・今回って・・・もしかして・・・解除は・・・・無い・・・？)
《ザシュッ》
(今まで・・・あったから・・・思い込んでた・・・だけ・・・？)
《ドスッ》
夏帆から、表情が消えて行く。
「・・・あった!!舞台上の液晶画面の裏なんて狡いよ!!でも押せる!!待ってて夏帆ちゃん!!」
《ガッ》
ようやく何か見付けた池弥は、掃除用具入れから一番長いホウキを持ち出し、教卓に乗り、ホウキの反対側でスイッチらしき物を押した。
「これで・・・え？」
《ガションッ》
しかしハズレのスイッチだったのか、矢は解除されたが代わりに猟銃が現れた!!
《パパパパパパパパパパンッ!!》
「夏帆ちゃあぁあーんっ!!」
「・・・」
猟銃が、夏帆に向けて一斉に発砲する!!
「うるっさいんじゃボケぇえーっ・・・!!」
「・・・えぇーっΣ(゜Д゜)!?」
《ガキキキキキンッ!!》
だが、銃弾は夏帆を仕留められなかった。
夏帆が、いつの間にか持っていた短刀で、全ての銃弾を弾いたのである!!
「“耐久げぇむ”だか何だか知らんが!!前回の“端鞠高校”と言い今回と言い!!理不尽もいい加減にしろだぁおっ!!」
「ちょっ、夏帆ちゃ、落ちる落ちる落ちるぅうっ(汗)」
《シュタタタタタッ》
ブチギレたらしい夏帆は、スラックライン上を駆け抜けた!!
「くっきゃあぁあぁあーっ!!」
「夏帆ちゃあぁあーんっΣ(゜Д゜;)!?」
《タァンッ》
そして見事に対岸に着地!!
「・・・きゅう」
「わーっΣ(((゜Д゜;)))!?」
《パタリッ》
そのまま気絶してしまったのだった。
〜保健室〜
《〜♪》
「うぅ・・・」
「くきゃぷ・・・」
「良かった!!二人とも、目が覚めたんだね!!」
次に目覚めた時、綾志と夏帆は簡素なベッドに寝かされていた。
「ぷへ・・・何か熱っぽさが引いてるような・・・」
「冷えピタあったからね!!」
「て言うか、何か歌が聞こえたような気がするぉ・・・」
「あ、僕が子守唄を歌ってたんだ」
体を起こす二人に、池弥が笑顔で説明する。
何故に子守唄を歌ったのか謎である・・・
続く
「夏帆ちゃん、大丈夫!?」
「くきゃあぁあ(汗)ゆ、揺れる(汗)」
《ギシッ・・・》
体育館の二階に設置されたスラックラインに、跨がった体勢のまま動けない夏帆。
「と、とにかく・・・少しずつでも進まないと・・・」
「・・・夏帆ちゃん、上!!」
《ギリリッ》
夏帆が涙目で前進しようとすると、天井に大量の矢が構えられた!!
「“一分につき一本放たれる”!?ちょっと待ってよ!!ゴールする前に死んじゃう!!」
「お、落ち着くぉ・・・きっと、またスイッチか何かで止められるから・・・」
ゴール地点の壁に現れた紅い文字に、池弥が抗議した。
《ヒュンッ》
「スイッチ探してっ・・・」
「わ、分かった!!」
そうこうしている間に一本目の矢が放たれ、夏帆の頬を掠めて下の針山に落ちた。
(とは言った物の、地味に痛いし地味に高いし地味に揺れるし・・・何だぉ、この地味に辛い事だらけの“耐久げぇむ”!!)
「す、進まないと・・・」
《ギシッ》
夏帆は、落ちないよう細心の注意を払って前進を試みる。
「綾志君、頑張って!!ここを出たら保健室に行こう!!“げぇむ”攻略までの時間は少し長引くけど、ちゃんと手当てしないと君が死んじゃう!!」
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
池弥は、発熱で汗をかいて苦しそうな綾志を励ましながら、矢を解除する方法を探した。
〜・・・〜
「あぅっ・・・」
《ドシュッ》
一本、また一本、夏帆の柔肌を矢が掠め、時には刺さって行く。
どれも致命傷ではないが、確実に体力は削られていた。
「無いっ!!無いっ!!無いっ!!嘘でしょ!?何処にも何の仕掛けもない!?見落としがある!?どうしよう!!」
「・・・」
矢を解除する仕掛けを必死で体育館中(針地獄のコート以外)を探す池弥と、二階でグッタリして微動だに出来ない綾志。
(月雛君・・・大丈夫かな・・・振り向いてる余裕・・・ない・・・)
「早く・・・クリア・・・しなきゃ・・・」
《ドシュッ》
新たな矢が、夏帆の肩を貫く。
《ズボッ》
「進まなきゃ・・・」
夏帆は抜ける矢を抜いて、霞む視界の中、対岸を目指す。
「押せそうなボタンは押したし、仕掛けも探したし、動かせそうな物は動かしたし・・・ヒントも何もないなんて!!」
(孫杉先輩・・・)
《ビュッ》
遥か遠くで、池弥が叫んでいる気がする。
夏帆はスラックラインに跨がっているのがやっとになって来た。
(あれ・・・今回って・・・もしかして・・・解除は・・・・無い・・・？)
《ザシュッ》
(今まで・・・あったから・・・思い込んでた・・・だけ・・・？)
《ドスッ》
夏帆から、表情が消えて行く。
「・・・あった!!舞台上の液晶画面の裏なんて狡いよ!!でも押せる!!待ってて夏帆ちゃん!!」
《ガッ》
ようやく何か見付けた池弥は、掃除用具入れから一番長いホウキを持ち出し、教卓に乗り、ホウキの反対側でスイッチらしき物を押した。
「これで・・・え？」
《ガションッ》
しかしハズレのスイッチだったのか、矢は解除されたが代わりに猟銃が現れた!!
《パパパパパパパパパパンッ!!》
「夏帆ちゃあぁあーんっ!!」
「・・・」
猟銃が、夏帆に向けて一斉に発砲する!!
「うるっさいんじゃボケぇえーっ・・・!!」
「・・・えぇーっΣ(゜Д゜)!?」
《ガキキキキキンッ!!》
だが、銃弾は夏帆を仕留められなかった。
夏帆が、いつの間にか持っていた短刀で、全ての銃弾を弾いたのである!!
「“耐久げぇむ”だか何だか知らんが!!前回の“端鞠高校”と言い今回と言い!!理不尽もいい加減にしろだぁおっ!!」
「ちょっ、夏帆ちゃ、落ちる落ちる落ちるぅうっ(汗)」
《シュタタタタタッ》
ブチギレたらしい夏帆は、スラックライン上を駆け抜けた!!
「くっきゃあぁあぁあーっ!!」
「夏帆ちゃあぁあーんっΣ(゜Д゜;)!?」
《タァンッ》
そして見事に対岸に着地!!
「・・・きゅう」
「わーっΣ(((゜Д゜;)))!?」
《パタリッ》
そのまま気絶してしまったのだった。
〜保健室〜
《〜♪》
「うぅ・・・」
「くきゃぷ・・・」
「良かった!!二人とも、目が覚めたんだね!!」
次に目覚めた時、綾志と夏帆は簡素なベッドに寝かされていた。
「ぷへ・・・何か熱っぽさが引いてるような・・・」
「冷えピタあったからね!!」
「て言うか、何か歌が聞こえたような気がするぉ・・・」
「あ、僕が子守唄を歌ってたんだ」
体を起こす二人に、池弥が笑顔で説明する。
何故に子守唄を歌ったのか謎である・・・
続く
〜保健室〜
「動ける？まだ“げぇむ”は終わってないみたいだから、一度体育館に戻って紅い矢印を辿らないと」
「・・・こ、ここ保健室ですか？あの、孫杉さんが一人で僕達を運んだんですか？」
「そうだよ♪文化的体育会系だからね♪」
「何だぉ、それ・・・合唱部と言えど凄すぎだぁお・・・」
《ガラッ》
ひとまず保健室から出た三人。
「所でさぁ、綾志君の刀とか夏帆ちゃんの短刀とか、それ何なの？」
「え・・・」
「くきゃあ!?」
池弥に指摘されて夏帆の手を見ると、無意識に短刀を握っていた。
「凄かったよね、さっき。その短刀で銃弾を弾いてゴールまで走って」
「あ、麻生さっ・・・」
「月雛君の打刀の時みたく、ピンチになったら出現した、のかな？」
夏帆が、短刀をジッと見る。
「ピンチになったら出現した？君達、漫画のキャラみたいだね!!格好良いなぁ♪」
「ででで、でもっ、謎だらけなんですっ・・・」
「詳しい事は義隆先輩達と合流してから考えるぉ。まずは体育館まで戻らないと」
夏帆は、短刀を懐に仕舞った。
〜職員室〜
「次のステージはここ？」
「くきゃあ。職員室で何の“耐久げぇむ”するんだろう？」
「こ、今度は孫杉さんの仲間が体験する番だよね・・・」
体育館から続く矢印を辿り、到着したのは職員室。
「あ、また扉に紅い字が」
「“これが最後の耐久げぇむ。これで決まるよ生き残り。さあ、始めましょ？”」
「生、き、残り・・・？」
夏帆が音読した分に、綾志が疑問を持つ。
「少なくとも僕の仲間は一人死んでいる。“毒ガス”の時、更に誰か脱落したかも知れない」
「くきゃあ。考えたくないけど、コッチも“電流”と“針地獄”で誰か重傷かも知れない訳だよね？」
「そんなっ・・・びぇえぇっ!?」
《スパァーンッ》
二人が考え込んでいると、職員室の扉が勢い良く開いた!!
「・・・な、何かレーザーポインターだらけ？？？」
「ルパン〇世とかに有りがちな罠だぁお？？？」
「あぅう(汗)光線を遮ったら駄目なヤツなのかな(汗)」
職員室の中は、可視な光の線が張り巡らされていた。
光に触れずに目的地に行け、とでも言うのだろうか？
「ひとまず指示を・・・ちょっ!?窓の外!!」
「ぴぎゃあぁあっ!?」
「“触れたら大火傷。レーザー光線に当たらないように校長先生の机に辿り着け”？」
《べっちゃあぁあ・・・》
池弥が目を見開き、綾志が悲鳴を上げた視線の先には、顔や全身が焼け爛れて誰なのか判別がつかなくなった人々が張り付く窓。
そして、人々の手が届かぬ高さに紅い文字。
夏帆だけ冷静過ぎる。
「これも一人が挑戦して、二人は待機かな？」
「どやろ？でも、それなら高熱があった月雛君は待機だぉ」
「あ、麻生さんだって・・・傷だらけだもんっ・・・」
《ギュッ》
夏帆と綾志は、互いに服の裾を掴んだ。
「じゃ、僕しか居ないよね？」
「「あっ・・・」」
《タッ》
池弥は、そんな二人に微笑みながら職員室へ一歩侵入。
「一歩目は大丈夫。気を引き閉めて、校長先生の机に向かわなきゃだね」
(失敗は出来ない。僕が成功させなきゃ。彼等は“僕とは違う”。無理はさせられない)
深呼吸を一つ。
池弥の雰囲気が、眼つきが、変わった。
(仲間や周りの人達すら守れないようじゃ、兄さんに逢えたって意味はない。それじゃ兄さんを守れない。二度と失わない為に、僕は強くなきゃいけないんだ)
「ふっ・・・」
交差し合う光線の間を、池弥は慎重に進む。
「大丈夫、行ける・・・」
「くきゃあぁあ!?」
「ふぇえっ!?」
《ガシャーン!!》
池弥が少し進んだ所で、後方から悲鳴と何かが割れる音がした!!
「何・・・えっ!?二人とも何で入って来てるの!?」
「廊下の空間が粉々に割れたぉ!!」
「ままま真っ暗闇ですぅうっ(泣)」
池弥が首だけ振り向けば、そこには職員室に一歩踏み込んだ夏帆と綾志。
廊下には虚無が広がっていた。
「ラストは全員参加？」
「みたいだぁお」
「あぁっ!!奥の黒板がスクリーンになってる!!」
そして現れたるは、池弥の仲間を映したスクリーン？
「・・・え？」
《べっちゃあぁあ・・・》
ではなく、先程の・・・窓の外の惨状。
「びぇえぇえっ!?ななな何で!?今までは孫杉さん側か僕達側の仲間が映ったのに!?」
「順番的には孫杉先輩の仲間が映るハズ、だよね？」
「ま、さ、か・・・!?」
スクリーンの映像に、池弥の顔色が青冷めた。
「あ、あ、あああぁぁあぁーっ・・・!!」
「孫杉先輩っ!!」
「孫杉さっ・・・危なっ!?落ち着いてっ!!」
映像に映る焼け爛れた人々の中に、見覚えのある服の破片を引っ掛けた人物が四人。
池弥は、絶叫するしかなかった・・・
続く
「動ける？まだ“げぇむ”は終わってないみたいだから、一度体育館に戻って紅い矢印を辿らないと」
「・・・こ、ここ保健室ですか？あの、孫杉さんが一人で僕達を運んだんですか？」
「そうだよ♪文化的体育会系だからね♪」
「何だぉ、それ・・・合唱部と言えど凄すぎだぁお・・・」
《ガラッ》
ひとまず保健室から出た三人。
「所でさぁ、綾志君の刀とか夏帆ちゃんの短刀とか、それ何なの？」
「え・・・」
「くきゃあ!?」
池弥に指摘されて夏帆の手を見ると、無意識に短刀を握っていた。
「凄かったよね、さっき。その短刀で銃弾を弾いてゴールまで走って」
「あ、麻生さっ・・・」
「月雛君の打刀の時みたく、ピンチになったら出現した、のかな？」
夏帆が、短刀をジッと見る。
「ピンチになったら出現した？君達、漫画のキャラみたいだね!!格好良いなぁ♪」
「ででで、でもっ、謎だらけなんですっ・・・」
「詳しい事は義隆先輩達と合流してから考えるぉ。まずは体育館まで戻らないと」
夏帆は、短刀を懐に仕舞った。
〜職員室〜
「次のステージはここ？」
「くきゃあ。職員室で何の“耐久げぇむ”するんだろう？」
「こ、今度は孫杉さんの仲間が体験する番だよね・・・」
体育館から続く矢印を辿り、到着したのは職員室。
「あ、また扉に紅い字が」
「“これが最後の耐久げぇむ。これで決まるよ生き残り。さあ、始めましょ？”」
「生、き、残り・・・？」
夏帆が音読した分に、綾志が疑問を持つ。
「少なくとも僕の仲間は一人死んでいる。“毒ガス”の時、更に誰か脱落したかも知れない」
「くきゃあ。考えたくないけど、コッチも“電流”と“針地獄”で誰か重傷かも知れない訳だよね？」
「そんなっ・・・びぇえぇっ!?」
《スパァーンッ》
二人が考え込んでいると、職員室の扉が勢い良く開いた!!
「・・・な、何かレーザーポインターだらけ？？？」
「ルパン〇世とかに有りがちな罠だぁお？？？」
「あぅう(汗)光線を遮ったら駄目なヤツなのかな(汗)」
職員室の中は、可視な光の線が張り巡らされていた。
光に触れずに目的地に行け、とでも言うのだろうか？
「ひとまず指示を・・・ちょっ!?窓の外!!」
「ぴぎゃあぁあっ!?」
「“触れたら大火傷。レーザー光線に当たらないように校長先生の机に辿り着け”？」
《べっちゃあぁあ・・・》
池弥が目を見開き、綾志が悲鳴を上げた視線の先には、顔や全身が焼け爛れて誰なのか判別がつかなくなった人々が張り付く窓。
そして、人々の手が届かぬ高さに紅い文字。
夏帆だけ冷静過ぎる。
「これも一人が挑戦して、二人は待機かな？」
「どやろ？でも、それなら高熱があった月雛君は待機だぉ」
「あ、麻生さんだって・・・傷だらけだもんっ・・・」
《ギュッ》
夏帆と綾志は、互いに服の裾を掴んだ。
「じゃ、僕しか居ないよね？」
「「あっ・・・」」
《タッ》
池弥は、そんな二人に微笑みながら職員室へ一歩侵入。
「一歩目は大丈夫。気を引き閉めて、校長先生の机に向かわなきゃだね」
(失敗は出来ない。僕が成功させなきゃ。彼等は“僕とは違う”。無理はさせられない)
深呼吸を一つ。
池弥の雰囲気が、眼つきが、変わった。
(仲間や周りの人達すら守れないようじゃ、兄さんに逢えたって意味はない。それじゃ兄さんを守れない。二度と失わない為に、僕は強くなきゃいけないんだ)
「ふっ・・・」
交差し合う光線の間を、池弥は慎重に進む。
「大丈夫、行ける・・・」
「くきゃあぁあ!?」
「ふぇえっ!?」
《ガシャーン!!》
池弥が少し進んだ所で、後方から悲鳴と何かが割れる音がした!!
「何・・・えっ!?二人とも何で入って来てるの!?」
「廊下の空間が粉々に割れたぉ!!」
「ままま真っ暗闇ですぅうっ(泣)」
池弥が首だけ振り向けば、そこには職員室に一歩踏み込んだ夏帆と綾志。
廊下には虚無が広がっていた。
「ラストは全員参加？」
「みたいだぁお」
「あぁっ!!奥の黒板がスクリーンになってる!!」
そして現れたるは、池弥の仲間を映したスクリーン？
「・・・え？」
《べっちゃあぁあ・・・》
ではなく、先程の・・・窓の外の惨状。
「びぇえぇえっ!?ななな何で!?今までは孫杉さん側か僕達側の仲間が映ったのに!?」
「順番的には孫杉先輩の仲間が映るハズ、だよね？」
「ま、さ、か・・・!?」
スクリーンの映像に、池弥の顔色が青冷めた。
「あ、あ、あああぁぁあぁーっ・・・!!」
「孫杉先輩っ!!」
「孫杉さっ・・・危なっ!?落ち着いてっ!!」
映像に映る焼け爛れた人々の中に、見覚えのある服の破片を引っ掛けた人物が四人。
池弥は、絶叫するしかなかった・・・
続く
〜職員室〜
「嘘・・・嘘だ・・・こんなのっ・・・!!」
「落ち着くぉ孫杉先輩!!確か“これで生き残りが決まる”んでしょ!?つまり、まだ生きてる!!」
「あ、あの、状態、で・・・？」
震え出す池弥と、宥めようとする夏帆。
綾志は今にも吐きそうだ。
「焦らず、でも急いで、クリアを目指すぉ。早くしないと、あんな全身に大火傷してたら死んじゃう」
「あぅ・・・よ、義隆さん達・・・大丈夫かな・・・」
まだスタート地点にいる夏帆と綾志が、進む覚悟を決めた。
「孫杉先輩!!無理しないで!!私、意外と元気だし小柄だから一番クリア出来る可能性が高いと思う!!私がやるから!!」
「あ、あのっ、僕も・・・熱とか、もう無いし・・・頑張れるからっ」
「・・・」
二人の言葉は、池弥に届いているのだろうか？
「・・・ごめん、二人共」
「「えっ」」
《トッ》
急に静かになった池弥が、今度は急に振り返って逆走。
レーザーを軽々と掻い潜り、二人の間を通り過ぎ、スタート地点へ到着した。
「孫杉先輩!?早っ!!てか何で戻ったんだぉ!?」
「だだだ駄目ですっ!!廊下は消滅してて出られないし、出られても手当て出来るレベルの火傷じゃないっ・・・」
「大丈夫」
池弥が、思い切り息を吸い込む。
『♪月の光は道を座す標 闇を照らせ 我を導け♪』
「合唱部だからって、歌ってどうにかなる訳・・・」
「はわわわわっ!?麻生さん、映像が明るく!!」
《パァアァア・・・》
池弥が歌うと、消滅した世界に光が差し込み、黒板のスクリーン画像も鮮明になった。
「これは・・・孫杉先輩の特殊能力なのか、“耐久げぇむ”を仕掛けている何者かが歌に弱いのか、どっちだと思うかぉ？」
「ぜ、前者に一票!!」
「だったら孫杉先輩の心配は後にして、先を急ぐぉ」
「う、うん!!で、出来る事、しよう!!怖いけど(泣)」
二人は校長の机を目指し、慎重に進む事にした。
〜池弥side〜
『♪一度守ると決めたなら 諦めない 裏切らない 我が身をとして探しだそう♪』
《タタタタタタッ》
池弥は、ひたすらに歪んだ原色の空間を走っていた。
上も下も、右も左も、前も後ろも、何もかもが滅茶苦茶な中、何故か彼は迷い無く突き進む。
《ズァアァアッ》
「ここが・・・うわっ!?」
そして、やっと見付けた敵の隠れ場所。
そこには、スクリーンに映された悲惨な姿そのままの仲間と、共に“耐久げぇむ”を戦った二人の大切な仲間が、血塗れで倒れていた。
「皆、しっかり・・・くっ!!」
『邪魔ヲスルナ』
《バァンッ》
駆け寄ろうとした池弥に、突然現れた骸骨が発砲!!
『・・・貴様、同胞ダナ？何故、敵対スル？』
「違う。僕は人間だ。お前達と一緒にするな」
銃口を向けられ、池弥は眼光を鋭くした。
「彼等は返して貰うよ？」
『無理ダナ。“ルール”通リノ方法デナケレバ。ソウ言ウ“法則”デ構築シタ“空間”ナノダカラ』
《パパパンッ》
池弥は、銃弾を回避しつつ骸骨の隙を窺う。
「だったら、せめて傷を癒すしかないね。綾志君と夏帆ちゃんがクリアするまで、持ち堪えられるように」
『何ダト・・・ングッ!?』
《トッ》
池弥は床を蹴って飛び上がり、骸骨の頭を踏み越え、仲間の元へ。
『♪命は煌めく魔法の光 傷を癒せ 痛みを癒せ 母なる海の名の下に♪』
『貴様・・・人魚ノ末裔ッ』
《ゴガッ!!》
池弥が歌って仲間達の傷を癒す。
その隙を突こうと引き金に指を掛けた骸骨は、それより早く池弥が投げたナイフに頭部を貫かれた。
「僕は“人間”だ。遠い祖先が何であろうと、僕は“ヒト”なんだ」
《ザァアァア・・・》
頭部を破壊された骸骨は、灰と化した。
「さて、後は二人を待・・・っ!?」
《ギャルルルルルンッ!!》
池弥が溜め息をつき、歌で癒した者達に視線を向けた、その時!!
有刺鉄線のように棘だらけな骨が、義隆と久留米を天井へ吊り上げた!!
折角、傷が癒えた二人の体から、再び血が滲み出す!!
「くっ!!伏兵かな!?ワイト(骸骨)は弱い代わりに数が多いからね!!」
《タンッ》
池弥は投げたナイフを素早く回収し、身構えた。
『裏切者・・・』
『裏切者ダ・・・』
『人魚・・・ルルイエ・・・裏切者・・・』
「ホラーは好きじゃないんだけど!!」
《バキャアッ!!》
何処からともなく現れる骸骨達を、ナイフ一本で破壊して行く池弥。
(吊るされた二人から血液が失われて行く!!綾志君、夏帆ちゃん、急いで!!)
「うわっ!?」
《ガクンッ》
立ち回る池弥の足を、一体の骸骨が掴んだ。
「離せっ・・・このぉ!!」
《バキャアッ》
足元の一体を蹴り飛ばし、好機とばかりに群がる骸骨達を振り払うも、キリがない。
果たして、生き残れるだろうか・・・
続く
「嘘・・・嘘だ・・・こんなのっ・・・!!」
「落ち着くぉ孫杉先輩!!確か“これで生き残りが決まる”んでしょ!?つまり、まだ生きてる!!」
「あ、あの、状態、で・・・？」
震え出す池弥と、宥めようとする夏帆。
綾志は今にも吐きそうだ。
「焦らず、でも急いで、クリアを目指すぉ。早くしないと、あんな全身に大火傷してたら死んじゃう」
「あぅ・・・よ、義隆さん達・・・大丈夫かな・・・」
まだスタート地点にいる夏帆と綾志が、進む覚悟を決めた。
「孫杉先輩!!無理しないで!!私、意外と元気だし小柄だから一番クリア出来る可能性が高いと思う!!私がやるから!!」
「あ、あのっ、僕も・・・熱とか、もう無いし・・・頑張れるからっ」
「・・・」
二人の言葉は、池弥に届いているのだろうか？
「・・・ごめん、二人共」
「「えっ」」
《トッ》
急に静かになった池弥が、今度は急に振り返って逆走。
レーザーを軽々と掻い潜り、二人の間を通り過ぎ、スタート地点へ到着した。
「孫杉先輩!?早っ!!てか何で戻ったんだぉ!?」
「だだだ駄目ですっ!!廊下は消滅してて出られないし、出られても手当て出来るレベルの火傷じゃないっ・・・」
「大丈夫」
池弥が、思い切り息を吸い込む。
『♪月の光は道を座す標 闇を照らせ 我を導け♪』
「合唱部だからって、歌ってどうにかなる訳・・・」
「はわわわわっ!?麻生さん、映像が明るく!!」
《パァアァア・・・》
池弥が歌うと、消滅した世界に光が差し込み、黒板のスクリーン画像も鮮明になった。
「これは・・・孫杉先輩の特殊能力なのか、“耐久げぇむ”を仕掛けている何者かが歌に弱いのか、どっちだと思うかぉ？」
「ぜ、前者に一票!!」
「だったら孫杉先輩の心配は後にして、先を急ぐぉ」
「う、うん!!で、出来る事、しよう!!怖いけど(泣)」
二人は校長の机を目指し、慎重に進む事にした。
〜池弥side〜
『♪一度守ると決めたなら 諦めない 裏切らない 我が身をとして探しだそう♪』
《タタタタタタッ》
池弥は、ひたすらに歪んだ原色の空間を走っていた。
上も下も、右も左も、前も後ろも、何もかもが滅茶苦茶な中、何故か彼は迷い無く突き進む。
《ズァアァアッ》
「ここが・・・うわっ!?」
そして、やっと見付けた敵の隠れ場所。
そこには、スクリーンに映された悲惨な姿そのままの仲間と、共に“耐久げぇむ”を戦った二人の大切な仲間が、血塗れで倒れていた。
「皆、しっかり・・・くっ!!」
『邪魔ヲスルナ』
《バァンッ》
駆け寄ろうとした池弥に、突然現れた骸骨が発砲!!
『・・・貴様、同胞ダナ？何故、敵対スル？』
「違う。僕は人間だ。お前達と一緒にするな」
銃口を向けられ、池弥は眼光を鋭くした。
「彼等は返して貰うよ？」
『無理ダナ。“ルール”通リノ方法デナケレバ。ソウ言ウ“法則”デ構築シタ“空間”ナノダカラ』
《パパパンッ》
池弥は、銃弾を回避しつつ骸骨の隙を窺う。
「だったら、せめて傷を癒すしかないね。綾志君と夏帆ちゃんがクリアするまで、持ち堪えられるように」
『何ダト・・・ングッ!?』
《トッ》
池弥は床を蹴って飛び上がり、骸骨の頭を踏み越え、仲間の元へ。
『♪命は煌めく魔法の光 傷を癒せ 痛みを癒せ 母なる海の名の下に♪』
『貴様・・・人魚ノ末裔ッ』
《ゴガッ!!》
池弥が歌って仲間達の傷を癒す。
その隙を突こうと引き金に指を掛けた骸骨は、それより早く池弥が投げたナイフに頭部を貫かれた。
「僕は“人間”だ。遠い祖先が何であろうと、僕は“ヒト”なんだ」
《ザァアァア・・・》
頭部を破壊された骸骨は、灰と化した。
「さて、後は二人を待・・・っ!?」
《ギャルルルルルンッ!!》
池弥が溜め息をつき、歌で癒した者達に視線を向けた、その時!!
有刺鉄線のように棘だらけな骨が、義隆と久留米を天井へ吊り上げた!!
折角、傷が癒えた二人の体から、再び血が滲み出す!!
「くっ!!伏兵かな!?ワイト(骸骨)は弱い代わりに数が多いからね!!」
《タンッ》
池弥は投げたナイフを素早く回収し、身構えた。
『裏切者・・・』
『裏切者ダ・・・』
『人魚・・・ルルイエ・・・裏切者・・・』
「ホラーは好きじゃないんだけど!!」
《バキャアッ!!》
何処からともなく現れる骸骨達を、ナイフ一本で破壊して行く池弥。
(吊るされた二人から血液が失われて行く!!綾志君、夏帆ちゃん、急いで!!)
「うわっ!?」
《ガクンッ》
立ち回る池弥の足を、一体の骸骨が掴んだ。
「離せっ・・・このぉ!!」
《バキャアッ》
足元の一体を蹴り飛ばし、好機とばかりに群がる骸骨達を振り払うも、キリがない。
果たして、生き残れるだろうか・・・
続く
〜？？？〜
『ダゴン、ノ、仔・・・裏切者・・・』
「僕は人間だと言っている!!初めから“そっち側”じゃない!!」
《ガキンッ》
骸骨の剣を、池弥がナイフで防ぐ。
『ルルイエ・・・掟違反・・・』
『殺セ・・・』
「しまっ・・・」
《グィンッ》
だが、群がる骸骨達に、遂に引き倒されてしまった。
『生血・・・生肝・・・』
『奪ェ・・・』
『アァアッ・・・』
《ビュッ》
数体の骸骨が池弥を押さえ込み、彼に剣を突き立てようと振り上げた!!
『♪ーーーっ♪』
「孫杉さぁんっ!!」
「生きてるかぉ!?」
《ズゴォオンッ!!》
骸骨達へのカウンターとばかりに池弥が叫んだ瞬間!!
空間を裂いて、綾志と夏帆が乱入して来た!!
《バキャアッ》
「ぴぎゃあぁっ!?」
「人骨!?」
池弥が叫んだ事により起きた衝撃波で、骸骨が吹っ飛ぶ。
それを障害物と認識して打刀と短刀で切り払った二人だが、骨だと知って目を見開いた。
「綾志君、夏帆ちゃん、“げぇむ”クリア出来たんだね!!」
「孫杉さ・・・びぇえっ!?」
「上から血が・・・えっ!?義隆先輩!?久留米先輩!?」
池弥に駆け寄った二人に、天井から生暖かい液体が降って来た。
「そうだ、“げぇむ”はクリアしたぞ!!彼等を離せっ!!」
『勿論・・・ダガ・・・現実へ還レルノ・・・“らすとげぇむ”クリアシタ仲間ダケ・・・』
「「「・・・え？」」」
『刀持チノ・・・チビ共ト仲間ダケ・・・』
骸骨の言葉に、三人が固まる。
『制限時間・・・六十秒・・・早ク出ナイト永久幽閉・・・』
「待て・・・っ」
《グバァアッ》
骸骨共は、空間の穴に吸い込まれた。
「ふぇえっ(泣)ままま孫杉さん達は出られないの!?」
「そんな!!折角・・・」
「お友達を降ろさなきゃ!!制限時間もある!!」
《バッ》
青冷める綾志と夏帆に声を掛け、池弥は寝ているだけの光也と有紗に駆け寄る。
「びぇえぇ!!タイマー・・・後50秒!?」
「起きて!!原野先輩!!白石先輩!!」
「綾志君、泣いてる場合じゃない!!僕が君を飛ばすから、天井から吊るしている骨を打刀で斬って!!」
空間の横にタイマーを見付けた綾志。
夏帆は寝ている二人を起こし、池弥はバレーのレシーブのような体勢で綾志を待つ。
「後40秒だよ!?」
「やりまひゅっ(泣)」
《ダッ》
綾志が、池弥に向かって走った。
「「せぇのっ!!」」
《パァンッ》
走って来た綾志が、勢いをつけて片足を池弥の手に乗せ、池弥が一気に放り上げる!!
「僕の刃は防げない!!」
《ズパンッ!!》
そして何処ぞの忠臣ばりの掛け声で、素早く有刺鉄線状の骨を断つ。
《ドサッ》
「ぴっ(汗)」
「後30秒!!」
綾志は自力で着地、義隆と久留米は池弥がキャッチ!!
「夏帆ちゃん!!無事だったんだね!!」
「麻生、怪我は大丈夫なのか!?」
「説明は後!!早くあの空間の穴に飛び込むぉ!!」
有紗と光也が目覚め、夏帆に背中を押される。
「こっちの二人も!!」
《バッ》
池弥が、義隆と久留米を空間の穴へ放り込んだ!!
「君達も早く行って!!後20秒!!」
「孫杉先輩はっ!?」
「孫杉さんっ!!」
残るは夏帆と綾志のみ。
池弥と四人の仲間は、この空間から出られない。
「ワイトの“法則”を聞いたでしょう!?この“空間”から出る権利は君達にしかない!!“構築”の理からは逃れられない!!」
「ワイト!?法則!?理!?」
「ななな何の話をっ!?」
池弥の言葉に、二人が混乱する。
「後10秒!!」
「孫杉さんっ!!お兄ちゃんに会いたいんじゃなかったの！もしかしたら一人くらいっ!!」
「無理なんだ!!御願い逃げて!!」
「・・・くきゃあぁっ!!」
《ガシッ》
夏帆は、覚悟を決めた。
綾志の首根っこを掴み、一緒に空間から飛び出した。
「・・・ゴメンね。君達は僕を“普通の人間”だと思っているから心苦しいよね？」
《・・・》
静かに閉ざされた穴を見つめ、池弥が呟く。
「僕は“人間”だけど、“普通”ではない。僕だけならココから出られる」
《チャキッ》
池弥はナイフを構え、四人の仲間に視線をやった。
「ゴメンね。君達は“普通の人間”だから、“法則”に縛られた空間から出してあげられない」
《ポタッ》
池弥の目から、涙が溢れた。
「結局、僕は誰も守れない・・・でも、まだ死ぬ訳には行かない・・・」
《ザシュッ!!》
池弥は自らの手首をナイフで切った。
『♪泡沫の人魚姫 腕を引かれる 浮かぶ鮮血の道標 愛しい王子を切れぬ刃は 帰り道を照らしていたそうな♪』
その血がタップリついたナイフを振るう池弥。
“歌”と“血”のチカラで空間が裂け、彼は一人、その隙間に飛び込んだ・・・
続く
『ダゴン、ノ、仔・・・裏切者・・・』
「僕は人間だと言っている!!初めから“そっち側”じゃない!!」
《ガキンッ》
骸骨の剣を、池弥がナイフで防ぐ。
『ルルイエ・・・掟違反・・・』
『殺セ・・・』
「しまっ・・・」
《グィンッ》
だが、群がる骸骨達に、遂に引き倒されてしまった。
『生血・・・生肝・・・』
『奪ェ・・・』
『アァアッ・・・』
《ビュッ》
数体の骸骨が池弥を押さえ込み、彼に剣を突き立てようと振り上げた!!
『♪ーーーっ♪』
「孫杉さぁんっ!!」
「生きてるかぉ!?」
《ズゴォオンッ!!》
骸骨達へのカウンターとばかりに池弥が叫んだ瞬間!!
空間を裂いて、綾志と夏帆が乱入して来た!!
《バキャアッ》
「ぴぎゃあぁっ!?」
「人骨!?」
池弥が叫んだ事により起きた衝撃波で、骸骨が吹っ飛ぶ。
それを障害物と認識して打刀と短刀で切り払った二人だが、骨だと知って目を見開いた。
「綾志君、夏帆ちゃん、“げぇむ”クリア出来たんだね!!」
「孫杉さ・・・びぇえっ!?」
「上から血が・・・えっ!?義隆先輩!?久留米先輩!?」
池弥に駆け寄った二人に、天井から生暖かい液体が降って来た。
「そうだ、“げぇむ”はクリアしたぞ!!彼等を離せっ!!」
『勿論・・・ダガ・・・現実へ還レルノ・・・“らすとげぇむ”クリアシタ仲間ダケ・・・』
「「「・・・え？」」」
『刀持チノ・・・チビ共ト仲間ダケ・・・』
骸骨の言葉に、三人が固まる。
『制限時間・・・六十秒・・・早ク出ナイト永久幽閉・・・』
「待て・・・っ」
《グバァアッ》
骸骨共は、空間の穴に吸い込まれた。
「ふぇえっ(泣)ままま孫杉さん達は出られないの!?」
「そんな!!折角・・・」
「お友達を降ろさなきゃ!!制限時間もある!!」
《バッ》
青冷める綾志と夏帆に声を掛け、池弥は寝ているだけの光也と有紗に駆け寄る。
「びぇえぇ!!タイマー・・・後50秒!?」
「起きて!!原野先輩!!白石先輩!!」
「綾志君、泣いてる場合じゃない!!僕が君を飛ばすから、天井から吊るしている骨を打刀で斬って!!」
空間の横にタイマーを見付けた綾志。
夏帆は寝ている二人を起こし、池弥はバレーのレシーブのような体勢で綾志を待つ。
「後40秒だよ!?」
「やりまひゅっ(泣)」
《ダッ》
綾志が、池弥に向かって走った。
「「せぇのっ!!」」
《パァンッ》
走って来た綾志が、勢いをつけて片足を池弥の手に乗せ、池弥が一気に放り上げる!!
「僕の刃は防げない!!」
《ズパンッ!!》
そして何処ぞの忠臣ばりの掛け声で、素早く有刺鉄線状の骨を断つ。
《ドサッ》
「ぴっ(汗)」
「後30秒!!」
綾志は自力で着地、義隆と久留米は池弥がキャッチ!!
「夏帆ちゃん!!無事だったんだね!!」
「麻生、怪我は大丈夫なのか!?」
「説明は後!!早くあの空間の穴に飛び込むぉ!!」
有紗と光也が目覚め、夏帆に背中を押される。
「こっちの二人も!!」
《バッ》
池弥が、義隆と久留米を空間の穴へ放り込んだ!!
「君達も早く行って!!後20秒!!」
「孫杉先輩はっ!?」
「孫杉さんっ!!」
残るは夏帆と綾志のみ。
池弥と四人の仲間は、この空間から出られない。
「ワイトの“法則”を聞いたでしょう!?この“空間”から出る権利は君達にしかない!!“構築”の理からは逃れられない!!」
「ワイト!?法則!?理!?」
「ななな何の話をっ!?」
池弥の言葉に、二人が混乱する。
「後10秒!!」
「孫杉さんっ!!お兄ちゃんに会いたいんじゃなかったの！もしかしたら一人くらいっ!!」
「無理なんだ!!御願い逃げて!!」
「・・・くきゃあぁっ!!」
《ガシッ》
夏帆は、覚悟を決めた。
綾志の首根っこを掴み、一緒に空間から飛び出した。
「・・・ゴメンね。君達は僕を“普通の人間”だと思っているから心苦しいよね？」
《・・・》
静かに閉ざされた穴を見つめ、池弥が呟く。
「僕は“人間”だけど、“普通”ではない。僕だけならココから出られる」
《チャキッ》
池弥はナイフを構え、四人の仲間に視線をやった。
「ゴメンね。君達は“普通の人間”だから、“法則”に縛られた空間から出してあげられない」
《ポタッ》
池弥の目から、涙が溢れた。
「結局、僕は誰も守れない・・・でも、まだ死ぬ訳には行かない・・・」
《ザシュッ!!》
池弥は自らの手首をナイフで切った。
『♪泡沫の人魚姫 腕を引かれる 浮かぶ鮮血の道標 愛しい王子を切れぬ刃は 帰り道を照らしていたそうな♪』
その血がタップリついたナイフを振るう池弥。
“歌”と“血”のチカラで空間が裂け、彼は一人、その隙間に飛び込んだ・・・
続く
〜現実〜
「くきゃあぁあっ!!」
《ガバッ》
池弥が無事とは知らず、自室で目覚めた夏帆。
「孫杉先輩・・・」
(ああ、もしかして・・・この“悪夢”はまだまだ続くのかな・・・)
そんな彼女の手には、漆黒の鞘に収められた短刀が握られていた。
「・・・そうだ。続くかも知れないなら、“次”までに少しでも情報を集めないと」
(孫杉先輩が言ってた事を思い出すぉ。あの口ぶり、“何か”知ってるみたいだったし)
夏帆は、深呼吸して目を閉じた。
『ワイトの“法則”を聞いたでしょう!?この“空間”から出る権利は君達にしかない!!“構築”の理からは逃れられない!!』
「“ワイト”の法則・・・“構築の理”・・・とりまググるしかないよね!!」
現代っ子たる夏帆は、スマホに手を伸ばした。
文明の利器、万歳!!
(調べたら月雛君にLINEしなきゃだぁお)
「って言うか先に連絡した方が良いかな？孫杉先輩の件で号泣してる気がするぉ」
夏帆は泣き虫な友人の様子を予想し、メール画面を起動するのだった。
〜その頃〜
(“ルルイエ”・・・“掟違反”・・・“人魚”:・・・“ダゴンの仔”・・・)
「あの“孫杉”って呼ばれてた野郎、色々と隠してやがるな」
こちら、実は有刺鉄線状の骨に吊り上げられた時点で目を覚ましていた義隆。
気絶したフリを続けて、痛みに耐えながら池弥と骸骨の会話を聞いていたのだ。
(端鞠学園に閉じ込められてた頃に聞いたな。確か“ルルイエ”と“ダゴン”は“クトゥルフ神話”ってのに関係してる筈だ)
「ちょっくら図書寮に行って、怪談系を調べてみるか」
《ギリッ》
義隆は、血こそ出ていないが無数に刻まれた傷口を押さえ、部屋に備え付けられた姿見鏡を睨んだ。
「・・・自分でやる。テメェにゃ頼らねぇ。引っ込んでろ」
《バサッ》
義隆は浴衣を脱ぎ、姿見鏡に向けて投げつけた。
〜一方〜
「・・・全身が痛いですね」
(ああ・・・パソコンにメールが)
久留米は、静かに布団から体を起こした。
(二回目の“夢”。“大正時代の人間”と言う“設定”は、まだ疑われていなさそうですね)
「少々心苦しいですが、仕方ありません」
《カタカタカタッ》
久留米は、大正の世に存在しないパソコンに向かう。
キーボードを打つような動きで指を滑らせるのは、一枚の薄いタブレット。
パソコン画面はホログラムのように浮き出ている。
(“例の夢”に引き込まれて二回目。やはり現れる人間は同じ。一度目は“打刀”、二度目は“短刀”が召喚された。“例の事件”に関わる夢と判断して、今後も経過を報告させて頂きます)
「・・・ふう。しかし、“目的の夢”に入る実験の成功者になってしまったと言う事は、私も“適正者”なんでしょうか？」
《カタカタカタッ》
久留米はメールの返信をし、溜め息をつくのだった。
〜数日後〜
「月雛君、お待たせだぁお」
「は、はい、あ、いえ、あの、今、ききき来た所でっ」
《パタパタパタッ》
夏帆と綾志は、放課後に会う約束をした。
「とりまミスドでも入る？」
「はいっ」
近くの軽食屋でドーナツを購入し、席に着いた二人。
《ざわざわざわ・・・》
「・・・視線が五月蝿いぉ」
「あぅ(汗)麻生さん可愛いから目立っちゃう(汗)」
「月雛君、サラッと言うよね」
「ひゃわっ(汗)ごごごごめんなひゃいっ(汗)」
着席したは良いが、周り(主に男子)からの注目度が高い。
「まあ良いぉ。いつもの事だし、話を続けるぉ」
「い、いつも、なんだね(汗)」
夏帆はアイスコーヒーのストローをくわえた。
「孫杉先輩が言っていた言葉の中で、引っ掛かる内容を調べてみたの。“ワイト”とは骸骨や亡霊等、位の低い人外の総称みたい。そして、その呼び方をするのは・・・クトゥルフ神話の住民」
「く、クトゥルフ神話？って、一昔前に流行ったホラー系の双六みたいなアレ？」
綾志は首を傾げた。
「それはTRPG。クトゥルフ神話を題材にしたボードゲームだぁお。で、孫杉先輩は、わざわざ骸骨を“ワイト”と呼んでいた。不審な発言もあった」
「な、何か、知っていた？」
「だとしたら、お兄さんを諦めて死を受け入れたとは考え辛くない？もしかして孫杉先輩は死亡回避の方法を知っていたのかも？」
「!!」
夏帆の言葉に、綾志が目を見開く。
「孫杉先輩は生きていて、私達が“クトゥルフの夢”に巻き込まれ続けるならば、いつか再会出来る」
「いつか・・・」
「その時は、問い質すぉ。何を知っていて、何が出来るのか？私達の刀のように、特別な“何か”はあるのか？」
「はいっ!!」
綾志は、姿勢を正して返事をした・・・
続く
「くきゃあぁあっ!!」
《ガバッ》
池弥が無事とは知らず、自室で目覚めた夏帆。
「孫杉先輩・・・」
(ああ、もしかして・・・この“悪夢”はまだまだ続くのかな・・・)
そんな彼女の手には、漆黒の鞘に収められた短刀が握られていた。
「・・・そうだ。続くかも知れないなら、“次”までに少しでも情報を集めないと」
(孫杉先輩が言ってた事を思い出すぉ。あの口ぶり、“何か”知ってるみたいだったし)
夏帆は、深呼吸して目を閉じた。
『ワイトの“法則”を聞いたでしょう!?この“空間”から出る権利は君達にしかない!!“構築”の理からは逃れられない!!』
「“ワイト”の法則・・・“構築の理”・・・とりまググるしかないよね!!」
現代っ子たる夏帆は、スマホに手を伸ばした。
文明の利器、万歳!!
(調べたら月雛君にLINEしなきゃだぁお)
「って言うか先に連絡した方が良いかな？孫杉先輩の件で号泣してる気がするぉ」
夏帆は泣き虫な友人の様子を予想し、メール画面を起動するのだった。
〜その頃〜
(“ルルイエ”・・・“掟違反”・・・“人魚”:・・・“ダゴンの仔”・・・)
「あの“孫杉”って呼ばれてた野郎、色々と隠してやがるな」
こちら、実は有刺鉄線状の骨に吊り上げられた時点で目を覚ましていた義隆。
気絶したフリを続けて、痛みに耐えながら池弥と骸骨の会話を聞いていたのだ。
(端鞠学園に閉じ込められてた頃に聞いたな。確か“ルルイエ”と“ダゴン”は“クトゥルフ神話”ってのに関係してる筈だ)
「ちょっくら図書寮に行って、怪談系を調べてみるか」
《ギリッ》
義隆は、血こそ出ていないが無数に刻まれた傷口を押さえ、部屋に備え付けられた姿見鏡を睨んだ。
「・・・自分でやる。テメェにゃ頼らねぇ。引っ込んでろ」
《バサッ》
義隆は浴衣を脱ぎ、姿見鏡に向けて投げつけた。
〜一方〜
「・・・全身が痛いですね」
(ああ・・・パソコンにメールが)
久留米は、静かに布団から体を起こした。
(二回目の“夢”。“大正時代の人間”と言う“設定”は、まだ疑われていなさそうですね)
「少々心苦しいですが、仕方ありません」
《カタカタカタッ》
久留米は、大正の世に存在しないパソコンに向かう。
キーボードを打つような動きで指を滑らせるのは、一枚の薄いタブレット。
パソコン画面はホログラムのように浮き出ている。
(“例の夢”に引き込まれて二回目。やはり現れる人間は同じ。一度目は“打刀”、二度目は“短刀”が召喚された。“例の事件”に関わる夢と判断して、今後も経過を報告させて頂きます)
「・・・ふう。しかし、“目的の夢”に入る実験の成功者になってしまったと言う事は、私も“適正者”なんでしょうか？」
《カタカタカタッ》
久留米はメールの返信をし、溜め息をつくのだった。
〜数日後〜
「月雛君、お待たせだぁお」
「は、はい、あ、いえ、あの、今、ききき来た所でっ」
《パタパタパタッ》
夏帆と綾志は、放課後に会う約束をした。
「とりまミスドでも入る？」
「はいっ」
近くの軽食屋でドーナツを購入し、席に着いた二人。
《ざわざわざわ・・・》
「・・・視線が五月蝿いぉ」
「あぅ(汗)麻生さん可愛いから目立っちゃう(汗)」
「月雛君、サラッと言うよね」
「ひゃわっ(汗)ごごごごめんなひゃいっ(汗)」
着席したは良いが、周り(主に男子)からの注目度が高い。
「まあ良いぉ。いつもの事だし、話を続けるぉ」
「い、いつも、なんだね(汗)」
夏帆はアイスコーヒーのストローをくわえた。
「孫杉先輩が言っていた言葉の中で、引っ掛かる内容を調べてみたの。“ワイト”とは骸骨や亡霊等、位の低い人外の総称みたい。そして、その呼び方をするのは・・・クトゥルフ神話の住民」
「く、クトゥルフ神話？って、一昔前に流行ったホラー系の双六みたいなアレ？」
綾志は首を傾げた。
「それはTRPG。クトゥルフ神話を題材にしたボードゲームだぁお。で、孫杉先輩は、わざわざ骸骨を“ワイト”と呼んでいた。不審な発言もあった」
「な、何か、知っていた？」
「だとしたら、お兄さんを諦めて死を受け入れたとは考え辛くない？もしかして孫杉先輩は死亡回避の方法を知っていたのかも？」
「!!」
夏帆の言葉に、綾志が目を見開く。
「孫杉先輩は生きていて、私達が“クトゥルフの夢”に巻き込まれ続けるならば、いつか再会出来る」
「いつか・・・」
「その時は、問い質すぉ。何を知っていて、何が出来るのか？私達の刀のように、特別な“何か”はあるのか？」
「はいっ!!」
綾志は、姿勢を正して返事をした・・・
続く
〜明治時代〜
『“調べ物”は済んだのかぃ？』
「・・・何の用だ」
草木も眠る丑三つ時。
警官学生である義隆は、蝋燭の灯りを頼りに図書寮から借りた書物を読んでいた。
『つれないねぇ？今日は気分が良いから、警告してやらぅと思ったのに？』
「テメェが話し掛けて来る時は、ロクな事がない」
その場にいるのは、義隆ただ一人。
『“調べ物”が済んだなら、早ぅ眠ってやると良い。待っているぞ、迷える生贄の子羊達が』
「“三度目”は今夜か」
義隆の頭に、誰かの声が響く。
『お前と“短刀”の小娘が得た情報を合わせても、大した“真理”には近付けぬがなぁ？』
「黙れ、消えろ」
『おぉ怖い。消せないと分かっていても、虚勢は張りたいのかぁ？』
「黙れ“夢影(むかげ)”」
義隆が、一際低く命令する。
『“無影”でも“夢影”でも、別に好きに呼べば良いが・・・稀有な奴よ。“ ”に名前を付けるだなんて』
「俺は“俺”じゃない。お前も“アイツ”じゃない。俺達は・・・“無くした夢の影”だから」
《フッ・・・》
義隆は蝋燭の火を吹き消し、眠りについた。
〜？？？〜
「一ヶ月くらい振りですね」
「え？そうなの？私には二週間振りなんだけど？」
「俺も。何だよ時間軸がズレてんのか？」
その夜、久し振りに“夢の中”で再会した久留米達。
何やら霧の立ち込めた空間にいる。
「・・・成程、つまり一連の(まだ三回目だが)現象は“クトゥルフ神話”とやらの化物が引き起こしている可能性がある、と」
「くきゃあ。そして孫杉先輩なら、何か知っていたかも知れないのだぉ」
「う、歌って、空間を、繋げられる人だったし・・・僕達の刀みたいに特別な何かを持ってるんじゃないか、って麻生さんが・・・」
相変わらず泣いている綾志。
「ああ、あの孫杉って野郎は“人魚の末裔”だそうだ」
「「人魚っΣ(゜Д゜)!?」」
「骸骨との会話から察するにな」
「「えぇーっΣ(゜Д゜)!?」」
義隆の言葉に、夏帆と綾志が叫んでしまった。
「合唱部の人魚かぉ」
「わわわわっ!!に、人魚さんと喋っちゃった!!アリエルの子孫なのかな!?」
アリエル(ディズニーの人魚姫)は人間になったぞ綾志。
「アリエルって誰だよ・・・」
『も〜ぅ良〜いかぁい？』
義隆が突っ込みを入れた所で、辺り一面に声が響いた。
《サァア・・・》
「安定の学校か」
「頑張りましょうね」
霧が晴れ、光也と久留米が気合いを入れ直した。
『もう良いかい？』
「きゃっ!?」
「原野先輩!!」
《バッ》
有紗の背後に蒼白い子供が現れ、夏帆が素早く短刀を抜いて有紗を背に庇う。
『もう良いかい？』
「あっ・・・!?」
「よ、義隆、さん？」
ふと、義隆の顔色が悪い事に気付いた綾志。
『もう良いかい？』
「良い趣味してやがる・・・」
『もう良いかい？』
(・・・何だ、テメェの差し金じゃ無いのかよ夢影)
義隆は、そこに存在しない相手に問う。
『もう良いかい・・・もう良いよ？』
「自己完結おつ」
『僕達を見付けてね。命懸けの隠れん坊。見付けてくれなきゃ、永久に出られない』
「そして悪質か」
光也は溜め息をついた。
『じゃあ、始めるよ・・・』
《サラサラサラ・・・》
蒼白い子供が、消えて行く。
「隠れ事ですか、懐かしい」
「面倒臭いわ」
「でも頑張らないとっ」
「くきゃっぷ」
久留米、光也、有紗、夏帆が、軽く準備運動をした。
「か、隠れん坊は得意です!!」
「隠れる側だろ絶対」
そして珍しく、綾志が意欲的だ。
「みみみ見付けるのも得意です!!だから義隆さんっ!!」
「・・・何だよ」
綾志は義隆の服の裾を掴んだ。
「だ、大丈夫、です、からっ」
「・・・」
「幽霊さん、怖いんですよね、義隆さん、顔色が悪いです、よ？」
「・・・違ぇし」
《スパンッ》
震えながらも励まそうとする綾志の頭を、義隆が叩く。
「・・・似てたんだよ、さっきのガキ」
「だ、誰に？」
「死んだ・・・いや、俺が殺した弟に」
「!?」
義隆が自嘲気味に言うと、綾志は目を見開いた。
「明治の世じゃ、まだ口減らしにガキを殺してる家があってな。俺は弟を守れず、見殺しにした」
「よ、した、か、さ・・・」
義隆は、目を合わせない。
初めて出会った時から、今まで一度も、誰とも、目を合わせてはいない。
「殺すつもりは無かった、なんて言い訳はしない。二人して棄てられた山奥で、崖から落ちる弟に手を伸ばさなかったのは俺だ。弟の命より、目の前の食用茸を選んだ」
「あぅ・・・」
義隆の眼に冷たい色が宿り、綾志は怯える。
「そんな俺だ。いつかテメェ等を裏切るかも知れない。そん時はチビ、迷わず俺に刀を向けろ」
「むむむ無理ですぅわぁあぁあんっ(泣)」
義隆は本気だった・・・
続く
『“調べ物”は済んだのかぃ？』
「・・・何の用だ」
草木も眠る丑三つ時。
警官学生である義隆は、蝋燭の灯りを頼りに図書寮から借りた書物を読んでいた。
『つれないねぇ？今日は気分が良いから、警告してやらぅと思ったのに？』
「テメェが話し掛けて来る時は、ロクな事がない」
その場にいるのは、義隆ただ一人。
『“調べ物”が済んだなら、早ぅ眠ってやると良い。待っているぞ、迷える生贄の子羊達が』
「“三度目”は今夜か」
義隆の頭に、誰かの声が響く。
『お前と“短刀”の小娘が得た情報を合わせても、大した“真理”には近付けぬがなぁ？』
「黙れ、消えろ」
『おぉ怖い。消せないと分かっていても、虚勢は張りたいのかぁ？』
「黙れ“夢影(むかげ)”」
義隆が、一際低く命令する。
『“無影”でも“夢影”でも、別に好きに呼べば良いが・・・稀有な奴よ。“ ”に名前を付けるだなんて』
「俺は“俺”じゃない。お前も“アイツ”じゃない。俺達は・・・“無くした夢の影”だから」
《フッ・・・》
義隆は蝋燭の火を吹き消し、眠りについた。
〜？？？〜
「一ヶ月くらい振りですね」
「え？そうなの？私には二週間振りなんだけど？」
「俺も。何だよ時間軸がズレてんのか？」
その夜、久し振りに“夢の中”で再会した久留米達。
何やら霧の立ち込めた空間にいる。
「・・・成程、つまり一連の(まだ三回目だが)現象は“クトゥルフ神話”とやらの化物が引き起こしている可能性がある、と」
「くきゃあ。そして孫杉先輩なら、何か知っていたかも知れないのだぉ」
「う、歌って、空間を、繋げられる人だったし・・・僕達の刀みたいに特別な何かを持ってるんじゃないか、って麻生さんが・・・」
相変わらず泣いている綾志。
「ああ、あの孫杉って野郎は“人魚の末裔”だそうだ」
「「人魚っΣ(゜Д゜)!?」」
「骸骨との会話から察するにな」
「「えぇーっΣ(゜Д゜)!?」」
義隆の言葉に、夏帆と綾志が叫んでしまった。
「合唱部の人魚かぉ」
「わわわわっ!!に、人魚さんと喋っちゃった!!アリエルの子孫なのかな!?」
アリエル(ディズニーの人魚姫)は人間になったぞ綾志。
「アリエルって誰だよ・・・」
『も〜ぅ良〜いかぁい？』
義隆が突っ込みを入れた所で、辺り一面に声が響いた。
《サァア・・・》
「安定の学校か」
「頑張りましょうね」
霧が晴れ、光也と久留米が気合いを入れ直した。
『もう良いかい？』
「きゃっ!?」
「原野先輩!!」
《バッ》
有紗の背後に蒼白い子供が現れ、夏帆が素早く短刀を抜いて有紗を背に庇う。
『もう良いかい？』
「あっ・・・!?」
「よ、義隆、さん？」
ふと、義隆の顔色が悪い事に気付いた綾志。
『もう良いかい？』
「良い趣味してやがる・・・」
『もう良いかい？』
(・・・何だ、テメェの差し金じゃ無いのかよ夢影)
義隆は、そこに存在しない相手に問う。
『もう良いかい・・・もう良いよ？』
「自己完結おつ」
『僕達を見付けてね。命懸けの隠れん坊。見付けてくれなきゃ、永久に出られない』
「そして悪質か」
光也は溜め息をついた。
『じゃあ、始めるよ・・・』
《サラサラサラ・・・》
蒼白い子供が、消えて行く。
「隠れ事ですか、懐かしい」
「面倒臭いわ」
「でも頑張らないとっ」
「くきゃっぷ」
久留米、光也、有紗、夏帆が、軽く準備運動をした。
「か、隠れん坊は得意です!!」
「隠れる側だろ絶対」
そして珍しく、綾志が意欲的だ。
「みみみ見付けるのも得意です!!だから義隆さんっ!!」
「・・・何だよ」
綾志は義隆の服の裾を掴んだ。
「だ、大丈夫、です、からっ」
「・・・」
「幽霊さん、怖いんですよね、義隆さん、顔色が悪いです、よ？」
「・・・違ぇし」
《スパンッ》
震えながらも励まそうとする綾志の頭を、義隆が叩く。
「・・・似てたんだよ、さっきのガキ」
「だ、誰に？」
「死んだ・・・いや、俺が殺した弟に」
「!?」
義隆が自嘲気味に言うと、綾志は目を見開いた。
「明治の世じゃ、まだ口減らしにガキを殺してる家があってな。俺は弟を守れず、見殺しにした」
「よ、した、か、さ・・・」
義隆は、目を合わせない。
初めて出会った時から、今まで一度も、誰とも、目を合わせてはいない。
「殺すつもりは無かった、なんて言い訳はしない。二人して棄てられた山奥で、崖から落ちる弟に手を伸ばさなかったのは俺だ。弟の命より、目の前の食用茸を選んだ」
「あぅ・・・」
義隆の眼に冷たい色が宿り、綾志は怯える。
「そんな俺だ。いつかテメェ等を裏切るかも知れない。そん時はチビ、迷わず俺に刀を向けろ」
「むむむ無理ですぅわぁあぁあんっ(泣)」
義隆は本気だった・・・
続く
〜？？？〜
「月雛君をイジメんなだぁお」
「いでっ」
「ぴゃっ!?」
《ゲシッ》
殺気立った義隆を止めた(物理)のは、夏帆だった。
「ほら、隠れた子達を探しましょう」
「何人いるんだかなぁ？」
「姉の子供達が隠れそうな所とか、探してみるねっ」
「・・・おう」
久留米、光也、有紗が、それぞれに義隆の肩や背を叩いた。
「なななな何が起きるか分からないから!!は、離れないで下さいね!!ふぇえっ!!露払い(先頭)怖いよぉおっ!!」
「しんがり(末尾)は任せるぉ!!」
《チャキッ》
何だかんだ言って抜刀し、先頭を歩く綾志・・・泣いてはいるが。
夏帆も短刀を抜き、末尾で構える。
「うぅう・・・やっぱり今回も、お化けとか出るよね・・・」
「むしろ、さっき出たろ」
「ふぇえぇえっ(泣)」
「綾志君、泣かない泣かない(汗)」
が、先頭が頼り無い。
光也と有紗がフォローしている。
《バッ》
「ひぎゃあぁあっ!!」
「月雛く・・・わぁ凄い」
いきなり壁から飛び出して来た幽霊、を、綾志が刀の峰で強打!!
久留米はニコニコしている。
「斬れよ」
「ききき斬って良いの!?悪い人(？)じゃなかったら可哀想だし出会い頭にそんな・・・うわぁあぁんっ!!」
《ズバーッ》
義隆の突っ込みに対応している途中で、幽霊が目を血走らせて襲って来たので今度は一刀両断。
「もう嫌ぁ(泣)怖いぃい(泣)」
「早いぉっ(汗)」
《ザンッ》
夏帆は背後から迫り来る幽霊を斬りながら突っ込んだ。
「隠れん坊メインって事は、率先して危険そうな所も探さにゃならんのか？」
「そうですね。物陰に子供が隠れている可能性と、物陰に大物の悪霊が潜んでいる可能性があります」
《ヒョイッ》
飛んで来た幽霊を、まるでドッヂボールの球のように避ける光也と久留米。
三回目ともなれば、ある程度の事態には慣れる。
「それにしても、“隠れん坊”かぁ」
「原野先輩？」
ふと、有紗の呟きを夏帆が拾う。
「いや、こう言う“隠れん坊”ってさぁ？たまに迷い込んだ生身の人間を“仲間”にしようとする幽霊が居るんだよね確か？」
「“仲間”とは何だぅ？」
「“隠れる側”の立場に引きずり堕とす。つまり“魂”を抜いて“死霊”にしちゃう・・・」
「原野先輩!!」
《ギュンッ》
説明の途中、壁から飛び出した手が、有紗の胸部を狙った!!
「女性の胸に手ぇ伸ばしてんじゃねぇだぉ!!」
「ひゃっ」
《ズバッ》
その手は勿論、夏帆に切り落とされる訳だが。
「・・・あの、進行方向に、お部屋が複数(泣)罠かな(汗)でも調べないと話が進まないよね(汗)」
「調べりゃ良いだろ」
《ガチャッ》
先頭の綾志を押し退け、一番近い部屋の扉を開ける義隆。
「よよよ義隆さんっ!?」
「るせぇな・・・何もねぇぞ？ハズレ部屋だな？」
《バタンッ》
パッと見て判断し、すぐ閉める。
「そう言えば原野さん、読書家でしたよね？クトゥルフ神話で“隠れん坊”に関する話は御存知ないのですか？」
「派生が多いからなぁ(汗)でも、こう言うの大体は鬼の仕業だよね」
久留米に問われ、有紗が顎に手を添えて考える。
「義隆先輩、何を考えてるんすか？いきなり妖怪や悪霊が飛び出して来たら死にますよ？」
「阿呆か。学生とは言え俺は軍人の端くれだぞ？避けるわ」
呆れる光也に、義隆が冷たく言い放つ。
義隆は軍人を育てる養成校の生徒です。
例え歴史に実在しなくても、そう言う事にしといて下さい。
「良いからサクサク次の部屋を調べるぞ」
「よ、義隆さ、待っ(泣)」
「素早いですね」
《ガチャッ》
義隆はさっさと隣の部屋のノブに手を掛ける。
《グワッ!!》
「お、当たり・・・」
「ふぇえぇえっ!!」
《ズバッ!!》
扉を開けた瞬間に腕が飛び出して来たのだが、義隆より後ろに居たハズの綾志に斬られた。
機動力は綾志の方が義隆より高いから。
「義隆しゃあぁんっ(泣)」
「あーもーウゼェな」
《ドンッ》
泣き出す綾志を、義隆が室内に突き飛ばした・・・
続く
「月雛君をイジメんなだぁお」
「いでっ」
「ぴゃっ!?」
《ゲシッ》
殺気立った義隆を止めた(物理)のは、夏帆だった。
「ほら、隠れた子達を探しましょう」
「何人いるんだかなぁ？」
「姉の子供達が隠れそうな所とか、探してみるねっ」
「・・・おう」
久留米、光也、有紗が、それぞれに義隆の肩や背を叩いた。
「なななな何が起きるか分からないから!!は、離れないで下さいね!!ふぇえっ!!露払い(先頭)怖いよぉおっ!!」
「しんがり(末尾)は任せるぉ!!」
《チャキッ》
何だかんだ言って抜刀し、先頭を歩く綾志・・・泣いてはいるが。
夏帆も短刀を抜き、末尾で構える。
「うぅう・・・やっぱり今回も、お化けとか出るよね・・・」
「むしろ、さっき出たろ」
「ふぇえぇえっ(泣)」
「綾志君、泣かない泣かない(汗)」
が、先頭が頼り無い。
光也と有紗がフォローしている。
《バッ》
「ひぎゃあぁあっ!!」
「月雛く・・・わぁ凄い」
いきなり壁から飛び出して来た幽霊、を、綾志が刀の峰で強打!!
久留米はニコニコしている。
「斬れよ」
「ききき斬って良いの!?悪い人(？)じゃなかったら可哀想だし出会い頭にそんな・・・うわぁあぁんっ!!」
《ズバーッ》
義隆の突っ込みに対応している途中で、幽霊が目を血走らせて襲って来たので今度は一刀両断。
「もう嫌ぁ(泣)怖いぃい(泣)」
「早いぉっ(汗)」
《ザンッ》
夏帆は背後から迫り来る幽霊を斬りながら突っ込んだ。
「隠れん坊メインって事は、率先して危険そうな所も探さにゃならんのか？」
「そうですね。物陰に子供が隠れている可能性と、物陰に大物の悪霊が潜んでいる可能性があります」
《ヒョイッ》
飛んで来た幽霊を、まるでドッヂボールの球のように避ける光也と久留米。
三回目ともなれば、ある程度の事態には慣れる。
「それにしても、“隠れん坊”かぁ」
「原野先輩？」
ふと、有紗の呟きを夏帆が拾う。
「いや、こう言う“隠れん坊”ってさぁ？たまに迷い込んだ生身の人間を“仲間”にしようとする幽霊が居るんだよね確か？」
「“仲間”とは何だぅ？」
「“隠れる側”の立場に引きずり堕とす。つまり“魂”を抜いて“死霊”にしちゃう・・・」
「原野先輩!!」
《ギュンッ》
説明の途中、壁から飛び出した手が、有紗の胸部を狙った!!
「女性の胸に手ぇ伸ばしてんじゃねぇだぉ!!」
「ひゃっ」
《ズバッ》
その手は勿論、夏帆に切り落とされる訳だが。
「・・・あの、進行方向に、お部屋が複数(泣)罠かな(汗)でも調べないと話が進まないよね(汗)」
「調べりゃ良いだろ」
《ガチャッ》
先頭の綾志を押し退け、一番近い部屋の扉を開ける義隆。
「よよよ義隆さんっ!?」
「るせぇな・・・何もねぇぞ？ハズレ部屋だな？」
《バタンッ》
パッと見て判断し、すぐ閉める。
「そう言えば原野さん、読書家でしたよね？クトゥルフ神話で“隠れん坊”に関する話は御存知ないのですか？」
「派生が多いからなぁ(汗)でも、こう言うの大体は鬼の仕業だよね」
久留米に問われ、有紗が顎に手を添えて考える。
「義隆先輩、何を考えてるんすか？いきなり妖怪や悪霊が飛び出して来たら死にますよ？」
「阿呆か。学生とは言え俺は軍人の端くれだぞ？避けるわ」
呆れる光也に、義隆が冷たく言い放つ。
義隆は軍人を育てる養成校の生徒です。
例え歴史に実在しなくても、そう言う事にしといて下さい。
「良いからサクサク次の部屋を調べるぞ」
「よ、義隆さ、待っ(泣)」
「素早いですね」
《ガチャッ》
義隆はさっさと隣の部屋のノブに手を掛ける。
《グワッ!!》
「お、当たり・・・」
「ふぇえぇえっ!!」
《ズバッ!!》
扉を開けた瞬間に腕が飛び出して来たのだが、義隆より後ろに居たハズの綾志に斬られた。
機動力は綾志の方が義隆より高いから。
「義隆しゃあぁんっ(泣)」
「あーもーウゼェな」
《ドンッ》
泣き出す綾志を、義隆が室内に突き飛ばした・・・
続く
〜？？？〜
《ズデンッ》
「ひゃっ(泣)」
綾志は、そのままの勢いで顔面から転倒。
「う・・・誰っ!?」
《チャキッ》
立ち上がった綾志が、室内に気配を感じて身構えた!!
『誰？は、こちらの台詞だ』
「え、あ、僕はっ」
『不用意に名乗るな、魂を奪われたいのか？』
「ぴっ(泣)」
綾志は片手で自分の口を押さえた。
「ガキじゃねえな？”隠れん坊“の参加者じゃないのか？」
『”隠れん坊“？何だ、”奴等“は“ヒトの仔”を巻き込んだのか？』
義隆の問いに、相手は溜め息をついた。
「“奴等”？私達を引きずり込んだ“何者か”に心当たりが？」
「体に聞くぜ？」
『ん？』
《ヒュッ》
久留米が首を傾げていると、義隆が相手に殴りかかった!!
『何だ、喰って良いのか？』
「良くねぇ」
《ガガッ》
義隆の拳を、左回りに回転しながら右手で払い、そのままの流れで左手が手刀となって首を狙う。
そんな相手の手刀を後退して避けつつ、相手の下顎めがけて足を振り上げる義隆。
だが相手の下顎を蹴り上げる事は出来ず、その足に両手をつかれ、振り上げた勢いを利用され、相手は身軽に義隆の頭上を飛び越えて背後に着地。
「いきなり殴りかかって済みません」
『・・・』
着地した相手の目の前には、久留米。
「けけけ喧嘩は駄目っ(泣)」
「鼻水きったねぇよ」
《ぐぃーっ》
そして綾志が、義隆の服の裾を掴んで相手から引き離そうとしている。
「貴方もクトゥルフ生物ですか？」
『・・・そうだな』
「失礼ですが種族は？」
『シャンタク鳥。まあ要するに鳥の化物だ』
にこやかな久留米に、ちょっと毒気を抜かれている相手。
「シャンタク鳥ってアザトースの部下？私達も連れ去られちゃうの？」
『知識はあれども緊張感の無い小娘だ』
有紗の問いに、相手は呆れた。
『・・・別に連れ去っても良いが、“奴等”と事構えるのは面倒だな』
「“奴等”って？」
光也が挙手で質問した。
『そちらの小娘なら詳しいだろう？僕の天敵共だ』
「・・・“夜鬼”って事？じゃあ“死霊使い”を使役しているのは“ナイトゴーント”？」
「くきゃ？？？」
結局、全員が入室している。
「でもクトゥルフ生物の中では割りと人間に友好的なんじゃあ？」
『主君のノーデンス卿次第だ。あの御方は気まぐれでな。そもそも“ヒトの仔”の“友好的”と、“我々”の“友好的”は同じではない』
有紗の問いに、相手は眉を寄せた。
「な、何だか親切？色々と教えてくれてるよ？」
「真実を語っているとは限らない。簡単に信用するな・・・人間も、人外も」
『短気な小僧だが、多少は賢いようだな？』
相手は義隆に目もくれず言った。
『用が済んだなら僕は行くぞ？こちらも“隠れ事”の最中でな』
「誰と？」
『・・・“夜鬼”と、ちょっとした“賭け”をしている』
「天敵なのに？」
有紗は首を傾げた。
「良ければ手を組みませんか？」
『・・・は？』
突然、久留米が笑顔で大胆な提案をした。
「私達、こんな状況は三度目で慣れましたし。人間だから、“学校”に関して貴方より詳しい。利害は一致するのでは？」
「何を言ってるんだ久留米？」
久留米の言葉に義隆が突っ込む。
『下等な生物と組む気はない』
「利用価値があるなら利用するのが賢者の選択では？」
『・・・自分達の“利用価値”とやらに、大層な自信があるようだね？』
「あはは」
相手と久留米の間に、火花が散る。
『その根拠は、そっちの小さい二匹が持っている稀有な刀か？それとも、短気な小僧の・・・』
「黙れ」
相手の言葉を、義隆が遮る。
「あ、あの、僕達の武器、珍し・・・わひゃっ!?」
「もう良い。ここに標的は居ない。次の部屋に移動だ」
《グイッ》
義隆は綾志の襟首を掴み、彼を連行した。
「残念」
「初対面の神話生物スカウトすんなよ(汗)」
久留米と光也が、それに続く。
「今回あんまり学校っぽくないね？最初以外、教室と言うより部屋だし」
「確かに・・・待って!!」
最後に退室しかけた有紗と夏帆だったが、扉を通過する寸前で急に夏帆が立ち止まった。
「夏帆ちゃん？」
「・・・見付けた」
《スッ》
夏帆は静かに物陰へ近付き、何かに手を差し伸べる仕草をした。
『みつかっちゃった〜♪』
「!!」
《スー・・・》
それに反応し、隠れていた“子供の死霊”が顔を出し、消えた。
「夏帆ちゃんお手柄!!」
「くきゃ」
有紗が夏帆の頭を撫でる。
『よく気付いたな。そのまま全員退室するようなら一人くらい喰おうかと思ったが』
「危なかったぉ(汗)」
様子を見ていた相手の台詞に、夏帆が苦笑。
『良いだろう、手は貸さないが邪魔立てもしない。精々頑張れ“ヒトの仔”』
「くきゃ」
《バサッ》
相手は羽を広げて姿を消した・・・
続く
《ズデンッ》
「ひゃっ(泣)」
綾志は、そのままの勢いで顔面から転倒。
「う・・・誰っ!?」
《チャキッ》
立ち上がった綾志が、室内に気配を感じて身構えた!!
『誰？は、こちらの台詞だ』
「え、あ、僕はっ」
『不用意に名乗るな、魂を奪われたいのか？』
「ぴっ(泣)」
綾志は片手で自分の口を押さえた。
「ガキじゃねえな？”隠れん坊“の参加者じゃないのか？」
『”隠れん坊“？何だ、”奴等“は“ヒトの仔”を巻き込んだのか？』
義隆の問いに、相手は溜め息をついた。
「“奴等”？私達を引きずり込んだ“何者か”に心当たりが？」
「体に聞くぜ？」
『ん？』
《ヒュッ》
久留米が首を傾げていると、義隆が相手に殴りかかった!!
『何だ、喰って良いのか？』
「良くねぇ」
《ガガッ》
義隆の拳を、左回りに回転しながら右手で払い、そのままの流れで左手が手刀となって首を狙う。
そんな相手の手刀を後退して避けつつ、相手の下顎めがけて足を振り上げる義隆。
だが相手の下顎を蹴り上げる事は出来ず、その足に両手をつかれ、振り上げた勢いを利用され、相手は身軽に義隆の頭上を飛び越えて背後に着地。
「いきなり殴りかかって済みません」
『・・・』
着地した相手の目の前には、久留米。
「けけけ喧嘩は駄目っ(泣)」
「鼻水きったねぇよ」
《ぐぃーっ》
そして綾志が、義隆の服の裾を掴んで相手から引き離そうとしている。
「貴方もクトゥルフ生物ですか？」
『・・・そうだな』
「失礼ですが種族は？」
『シャンタク鳥。まあ要するに鳥の化物だ』
にこやかな久留米に、ちょっと毒気を抜かれている相手。
「シャンタク鳥ってアザトースの部下？私達も連れ去られちゃうの？」
『知識はあれども緊張感の無い小娘だ』
有紗の問いに、相手は呆れた。
『・・・別に連れ去っても良いが、“奴等”と事構えるのは面倒だな』
「“奴等”って？」
光也が挙手で質問した。
『そちらの小娘なら詳しいだろう？僕の天敵共だ』
「・・・“夜鬼”って事？じゃあ“死霊使い”を使役しているのは“ナイトゴーント”？」
「くきゃ？？？」
結局、全員が入室している。
「でもクトゥルフ生物の中では割りと人間に友好的なんじゃあ？」
『主君のノーデンス卿次第だ。あの御方は気まぐれでな。そもそも“ヒトの仔”の“友好的”と、“我々”の“友好的”は同じではない』
有紗の問いに、相手は眉を寄せた。
「な、何だか親切？色々と教えてくれてるよ？」
「真実を語っているとは限らない。簡単に信用するな・・・人間も、人外も」
『短気な小僧だが、多少は賢いようだな？』
相手は義隆に目もくれず言った。
『用が済んだなら僕は行くぞ？こちらも“隠れ事”の最中でな』
「誰と？」
『・・・“夜鬼”と、ちょっとした“賭け”をしている』
「天敵なのに？」
有紗は首を傾げた。
「良ければ手を組みませんか？」
『・・・は？』
突然、久留米が笑顔で大胆な提案をした。
「私達、こんな状況は三度目で慣れましたし。人間だから、“学校”に関して貴方より詳しい。利害は一致するのでは？」
「何を言ってるんだ久留米？」
久留米の言葉に義隆が突っ込む。
『下等な生物と組む気はない』
「利用価値があるなら利用するのが賢者の選択では？」
『・・・自分達の“利用価値”とやらに、大層な自信があるようだね？』
「あはは」
相手と久留米の間に、火花が散る。
『その根拠は、そっちの小さい二匹が持っている稀有な刀か？それとも、短気な小僧の・・・』
「黙れ」
相手の言葉を、義隆が遮る。
「あ、あの、僕達の武器、珍し・・・わひゃっ!?」
「もう良い。ここに標的は居ない。次の部屋に移動だ」
《グイッ》
義隆は綾志の襟首を掴み、彼を連行した。
「残念」
「初対面の神話生物スカウトすんなよ(汗)」
久留米と光也が、それに続く。
「今回あんまり学校っぽくないね？最初以外、教室と言うより部屋だし」
「確かに・・・待って!!」
最後に退室しかけた有紗と夏帆だったが、扉を通過する寸前で急に夏帆が立ち止まった。
「夏帆ちゃん？」
「・・・見付けた」
《スッ》
夏帆は静かに物陰へ近付き、何かに手を差し伸べる仕草をした。
『みつかっちゃった〜♪』
「!!」
《スー・・・》
それに反応し、隠れていた“子供の死霊”が顔を出し、消えた。
「夏帆ちゃんお手柄!!」
「くきゃ」
有紗が夏帆の頭を撫でる。
『よく気付いたな。そのまま全員退室するようなら一人くらい喰おうかと思ったが』
「危なかったぉ(汗)」
様子を見ていた相手の台詞に、夏帆が苦笑。
『良いだろう、手は貸さないが邪魔立てもしない。精々頑張れ“ヒトの仔”』
「くきゃ」
《バサッ》
相手は羽を広げて姿を消した・・・
続く
〜？？？〜
「み、見付けたっ(泣)」
『みつかっちゃった〜♪』
夏帆の手柄を皮切りに、死霊達を見付けられるようになった一同。
「意外と注意すれば見付かるもんだにゃ」
「お化け怖い(泣)」
「あ、向こうにも!!見付けた!!」
『みつかっちゃった〜♪』
ただし見付けているのは、夏帆と綾志と有紗だけ。
「くっそ、気配は分かるんだが」
「気配も分からん」
「面目無いです」
義隆、光也、久留米は、なかなか見付けられないようだ。
『どれ、手伝ってやろうか？』
(俺の方が気配に聡いだろ阿呆)
『ふむ、隠すのは得意なのだが』
(引っ込んでろ)
夢影の声が頭に響き、義隆が表情を歪める。
先程の“鳥”は夢影に気付いていたようだが、夢影とは何者なのだろうか？
「よ、義隆さん？具合い悪い？大丈夫？」
「平気だ」
綾志が、義隆の顔を覗き込む。
「後何体くらい見付ければ良いんだ？」
「さて？」
光也と久留米は溜め息をついた。
「あぅ(汗)で、でも今回は“ただの隠れん坊”みたいで良かった(汗)奇襲とかされたら怖くて死んじゃうもん(汗)」
「フラグかぉ？物とか死霊とか飛んで来てる時点で“ただの”ぢゃないぉ？」
「うわぁあぁあんっ(泣)」
「綾志君、泣かない泣かない(汗)」
夏帆の突っ込みに泣き崩れる綾志を、有紗が慰める。
「さっき原野先輩が言ってたけど、“引きずり込もう”とする奴もいる可能性はあるんだよな？」
「気を付けないといけませんね。心を強く持たねば、付け入られてしまいます」
《ガチャンッ》
飛んで来た電球を、軽々と避ける光也。
破片を回避する久留米。
本当に慣れたな。
「心を強く、か・・・」
「よ、義隆さ、ん？」
ふと、義隆が呟く。
「最初の、“端毬高校”で言ったよな？自分が存在する世界から消えてなくなりたい奴が、あの空間に迷い込む・・・って」
「あぅ・・・」
義隆が続けた言葉に、綾志が俯いた。
(僕は要らない子・・・)
「ぼ、僕・・・」
(私がやらなきゃ・・・)
「くきゃ・・・」
(打てる手は打ってやる!!)
「俺は・・・」
(どうしようどうしようどうしよう・・・)
「だって私・・・」
(俺は“俺”じゃない・・・)
「俺は罪人だ・・・」
(流石に困りますね)
「私が守らなくては・・・」
一同が思い出すのは、“それぞれの傷痕”。
「・・・うわぁあぁあっ!?」
「月雛君!?」
《グィンッ!!》
その隙を突いて、骨張った黒い手が綾志の足首を掴み、倉庫のような場所へ引きずり込んだ!!
一番素早い夏帆が手を伸ばすも間に合わず、倉庫が閉じる!!
「綾志君!!」
「くきゃ!!短刀じゃ頑丈な扉は切れないっ・・・」
「退け!!」
《ズガァアンッ》
扉に縋る有紗と夏帆を押し退け、義隆が全力で扉に蹴りを入れる!!
だがビクともしない!!
「義隆先輩!!アンタわざと“落として”月雛を囮にしたな!?」
「連れ去られるのは女子だったやも知れないのに？」
「煩ぇ!!コソコソしてる親玉を誘き出すには一番だろ!!」
《ドゴォオンッ》
光也と久留米も扉に蹴りかかるが、やはり効果はない。
「綾志君!!綾志君っ!!」
「月雛君!!くっそ!!私がもっと早く反応してたら!!」
《バンバンバンッ》
有紗と夏帆が扉を叩いても、当然だが開かない。
『騒々しい』
「え」
《バサッ》
そこへ、翡翠色の怪鳥が現れた。
『また会ったなヒトの仔』
「あっ!?」
「シャンタク鳥!?」
怪鳥が、みるみる内に人型になり、見覚えのある青年が姿を現した。
『邪魔だぞ？』
「な・・・どわぁっ!?」
《ドガガガガガッ!!》
青年は翼を広げ、羽をマシンガンのように放って倉庫の扉を破壊した!!
「義隆先輩!!」
「大丈夫ですか？」
「おう・・・それよりチビを探すぞっ」
青年はさっさと中に入り、光也と久留米を連れて義隆も倉庫内へ。
「シャンタク鳥が来てくれて良かったね(汗)」
「まあ・・・ぇ」
《カラーン・・・》
それに続く有紗と、短刀を構えながら捜索開始した夏帆。
しかし夏帆は、見付けてしまったモノに驚愕して短刀を落とした。
「月・・・雛・・・く・・・」
「え、何処・・・きゃあぁあーっ!?」
「チビ!?」
《ボタタッ・・・》
薄暗い倉庫の一番奥。
その壁の、天井に近い位置に鉄パイプで体を打ち付けられて居たのは、紛れもなく綾志だった。
ズタズタに引き裂かれた内臓と、床に水溜まりを作る鮮血。蒼白い顔。千切れた肉体。
しかし不思議な事に、辛うじて生きている。
「うぁあぁあっ!!」
『暗くて見えんが(鳥だから)酷い血の香りだな。打刀の童は虫の息か？』
(餌にしておいて嘆くとは、相変わらず矛盾しているな・・・)
叫ぶ義隆の“中”で、夢影は口の端を歪めた・・・
続く
「み、見付けたっ(泣)」
『みつかっちゃった〜♪』
夏帆の手柄を皮切りに、死霊達を見付けられるようになった一同。
「意外と注意すれば見付かるもんだにゃ」
「お化け怖い(泣)」
「あ、向こうにも!!見付けた!!」
『みつかっちゃった〜♪』
ただし見付けているのは、夏帆と綾志と有紗だけ。
「くっそ、気配は分かるんだが」
「気配も分からん」
「面目無いです」
義隆、光也、久留米は、なかなか見付けられないようだ。
『どれ、手伝ってやろうか？』
(俺の方が気配に聡いだろ阿呆)
『ふむ、隠すのは得意なのだが』
(引っ込んでろ)
夢影の声が頭に響き、義隆が表情を歪める。
先程の“鳥”は夢影に気付いていたようだが、夢影とは何者なのだろうか？
「よ、義隆さん？具合い悪い？大丈夫？」
「平気だ」
綾志が、義隆の顔を覗き込む。
「後何体くらい見付ければ良いんだ？」
「さて？」
光也と久留米は溜め息をついた。
「あぅ(汗)で、でも今回は“ただの隠れん坊”みたいで良かった(汗)奇襲とかされたら怖くて死んじゃうもん(汗)」
「フラグかぉ？物とか死霊とか飛んで来てる時点で“ただの”ぢゃないぉ？」
「うわぁあぁあんっ(泣)」
「綾志君、泣かない泣かない(汗)」
夏帆の突っ込みに泣き崩れる綾志を、有紗が慰める。
「さっき原野先輩が言ってたけど、“引きずり込もう”とする奴もいる可能性はあるんだよな？」
「気を付けないといけませんね。心を強く持たねば、付け入られてしまいます」
《ガチャンッ》
飛んで来た電球を、軽々と避ける光也。
破片を回避する久留米。
本当に慣れたな。
「心を強く、か・・・」
「よ、義隆さ、ん？」
ふと、義隆が呟く。
「最初の、“端毬高校”で言ったよな？自分が存在する世界から消えてなくなりたい奴が、あの空間に迷い込む・・・って」
「あぅ・・・」
義隆が続けた言葉に、綾志が俯いた。
(僕は要らない子・・・)
「ぼ、僕・・・」
(私がやらなきゃ・・・)
「くきゃ・・・」
(打てる手は打ってやる!!)
「俺は・・・」
(どうしようどうしようどうしよう・・・)
「だって私・・・」
(俺は“俺”じゃない・・・)
「俺は罪人だ・・・」
(流石に困りますね)
「私が守らなくては・・・」
一同が思い出すのは、“それぞれの傷痕”。
「・・・うわぁあぁあっ!?」
「月雛君!?」
《グィンッ!!》
その隙を突いて、骨張った黒い手が綾志の足首を掴み、倉庫のような場所へ引きずり込んだ!!
一番素早い夏帆が手を伸ばすも間に合わず、倉庫が閉じる!!
「綾志君!!」
「くきゃ!!短刀じゃ頑丈な扉は切れないっ・・・」
「退け!!」
《ズガァアンッ》
扉に縋る有紗と夏帆を押し退け、義隆が全力で扉に蹴りを入れる!!
だがビクともしない!!
「義隆先輩!!アンタわざと“落として”月雛を囮にしたな!?」
「連れ去られるのは女子だったやも知れないのに？」
「煩ぇ!!コソコソしてる親玉を誘き出すには一番だろ!!」
《ドゴォオンッ》
光也と久留米も扉に蹴りかかるが、やはり効果はない。
「綾志君!!綾志君っ!!」
「月雛君!!くっそ!!私がもっと早く反応してたら!!」
《バンバンバンッ》
有紗と夏帆が扉を叩いても、当然だが開かない。
『騒々しい』
「え」
《バサッ》
そこへ、翡翠色の怪鳥が現れた。
『また会ったなヒトの仔』
「あっ!?」
「シャンタク鳥!?」
怪鳥が、みるみる内に人型になり、見覚えのある青年が姿を現した。
『邪魔だぞ？』
「な・・・どわぁっ!?」
《ドガガガガガッ!!》
青年は翼を広げ、羽をマシンガンのように放って倉庫の扉を破壊した!!
「義隆先輩!!」
「大丈夫ですか？」
「おう・・・それよりチビを探すぞっ」
青年はさっさと中に入り、光也と久留米を連れて義隆も倉庫内へ。
「シャンタク鳥が来てくれて良かったね(汗)」
「まあ・・・ぇ」
《カラーン・・・》
それに続く有紗と、短刀を構えながら捜索開始した夏帆。
しかし夏帆は、見付けてしまったモノに驚愕して短刀を落とした。
「月・・・雛・・・く・・・」
「え、何処・・・きゃあぁあーっ!?」
「チビ!?」
《ボタタッ・・・》
薄暗い倉庫の一番奥。
その壁の、天井に近い位置に鉄パイプで体を打ち付けられて居たのは、紛れもなく綾志だった。
ズタズタに引き裂かれた内臓と、床に水溜まりを作る鮮血。蒼白い顔。千切れた肉体。
しかし不思議な事に、辛うじて生きている。
「うぁあぁあっ!!」
『暗くて見えんが(鳥だから)酷い血の香りだな。打刀の童は虫の息か？』
(餌にしておいて嘆くとは、相変わらず矛盾しているな・・・)
叫ぶ義隆の“中”で、夢影は口の端を歪めた・・・
続く
〜倉庫〜
『早く助けんと打刀の童が死ぬぞ？』
「くっそ!!脚立か何か探すぞ!!まず降ろさねぇと!!」
「はい!!」
《バッ》
青年は青年で何か探しているらしく、倉庫内を歩き回る。
光也と久留米は、台になる物を求めて動いた。
「ひ・・・あぁ・・・」
「原野せんぱ・・・大丈夫・・・」
有紗と夏帆は、余りの凄惨な光景に動けない。
(どうする？内臓はグチャグチャ、体は所々が標本のように壁に打ち付けられ、出血も尋常でない。生きているのは“打刀”の持ち主だから。しかし、それも長くは保たぬ。あの小僧は死んでしまうなぁ？)
「・・・」
夢影は義隆の脳内に語りかける。
(どれ、助けてやらうか？“あの時の”お前のように)
「・・・」
(弟を見捨てた罪悪感に駆られ、自決しようとした。あの日から、我等は一蓮托生)
「・・・」
(お前の打算的な策のせいで、今にも死にそうな“仲間”の為だぞ？あぁ、しかし童は望まぬやも知れんなぁ？)
「・・・煩ぇよ」
《ドゴォンッ》
義隆が、壁を殴り付ける。
「くっきゃ!?義隆先輩!?」
「どうしたんだよ!?」
「・・・」
夏帆と光也が、義隆を見る。
(童が“手助け”に耐えられると信じて祈るかぇ？それとも見殺しにするかのぅ？)
「俺は・・・」
(人は脆い。ほれほれ、童の命の音が弱まる。砂時計が尽きそうだ。嗚呼、尽きたらば二度と、怖い思いをせず泣かず怯えず済むのだなぁ？)
「俺が・・・」
義隆は、張り付けられた綾志を真っ直ぐ睨む。
普段は誰かに真っ直ぐな視線など向けない男が。
「駄目だ!!台も梯子もねぇよ!!」
「月雛君っ・・・義隆さん？」
「・・・」
《スッ》
焦る光也と久留米。
その時、義隆が動いた。
右手の平を綾志に向けて、腕を目一杯伸ばす。
「お前の命を留める代わり、“お前”は“壊れて”しまうかも知れない」
(還してやらう、その命を。その時“お前”は“自分”を忘れ去る・・・あはははははははっ!!)
《ズァアッ!!》
義隆の全身から右手を経由して流れ出した“何か”が、綾志の左胸から入って全身を満たす!!
「よ、義隆、さん？」
「今、何を・・・くきゃっ!?」
《メキメキメキメキッ》
有紗と夏帆が義隆に視線を向けた瞬間、綾志の体が黒い蜃気楼のようなモノが包み、彼の拘束は一気に外れた!!
「月雛君っ!!」
「義隆さん危ないっ!!」
「・・・」
《バッ》
叫ぶ夏帆。
崩れ始めた壁。
意識を手放して倒れた義隆が、瓦礫の下敷きになる・・・そう思った時には既に、久留米は動いていた。
《ガラガラガラッ》
「義隆さん!?どうしたんですか!?」
「おい!!月雛が居ないぞ!?」
「くきゃ!?」
義隆を抱えて壁から離れた久留米。
光也が気付いた時、綾志の姿は何処にも無かった。
《ガラガラガラッ》
「倉庫が崩壊します!!」
「とにかく脱出だ!!」
「綾志君っ・・・」
「原平先輩、早く!!」
一同は崩れる瓦礫を避け、倉庫から飛び出した。
「・・・え？」
「えぇえっ!?」
倉庫の外は、広大な宇宙の景色になっていた・・・
続く
『早く助けんと打刀の童が死ぬぞ？』
「くっそ!!脚立か何か探すぞ!!まず降ろさねぇと!!」
「はい!!」
《バッ》
青年は青年で何か探しているらしく、倉庫内を歩き回る。
光也と久留米は、台になる物を求めて動いた。
「ひ・・・あぁ・・・」
「原野せんぱ・・・大丈夫・・・」
有紗と夏帆は、余りの凄惨な光景に動けない。
(どうする？内臓はグチャグチャ、体は所々が標本のように壁に打ち付けられ、出血も尋常でない。生きているのは“打刀”の持ち主だから。しかし、それも長くは保たぬ。あの小僧は死んでしまうなぁ？)
「・・・」
夢影は義隆の脳内に語りかける。
(どれ、助けてやらうか？“あの時の”お前のように)
「・・・」
(弟を見捨てた罪悪感に駆られ、自決しようとした。あの日から、我等は一蓮托生)
「・・・」
(お前の打算的な策のせいで、今にも死にそうな“仲間”の為だぞ？あぁ、しかし童は望まぬやも知れんなぁ？)
「・・・煩ぇよ」
《ドゴォンッ》
義隆が、壁を殴り付ける。
「くっきゃ!?義隆先輩!?」
「どうしたんだよ!?」
「・・・」
夏帆と光也が、義隆を見る。
(童が“手助け”に耐えられると信じて祈るかぇ？それとも見殺しにするかのぅ？)
「俺は・・・」
(人は脆い。ほれほれ、童の命の音が弱まる。砂時計が尽きそうだ。嗚呼、尽きたらば二度と、怖い思いをせず泣かず怯えず済むのだなぁ？)
「俺が・・・」
義隆は、張り付けられた綾志を真っ直ぐ睨む。
普段は誰かに真っ直ぐな視線など向けない男が。
「駄目だ!!台も梯子もねぇよ!!」
「月雛君っ・・・義隆さん？」
「・・・」
《スッ》
焦る光也と久留米。
その時、義隆が動いた。
右手の平を綾志に向けて、腕を目一杯伸ばす。
「お前の命を留める代わり、“お前”は“壊れて”しまうかも知れない」
(還してやらう、その命を。その時“お前”は“自分”を忘れ去る・・・あはははははははっ!!)
《ズァアッ!!》
義隆の全身から右手を経由して流れ出した“何か”が、綾志の左胸から入って全身を満たす!!
「よ、義隆、さん？」
「今、何を・・・くきゃっ!?」
《メキメキメキメキッ》
有紗と夏帆が義隆に視線を向けた瞬間、綾志の体が黒い蜃気楼のようなモノが包み、彼の拘束は一気に外れた!!
「月雛君っ!!」
「義隆さん危ないっ!!」
「・・・」
《バッ》
叫ぶ夏帆。
崩れ始めた壁。
意識を手放して倒れた義隆が、瓦礫の下敷きになる・・・そう思った時には既に、久留米は動いていた。
《ガラガラガラッ》
「義隆さん!?どうしたんですか!?」
「おい!!月雛が居ないぞ!?」
「くきゃ!?」
義隆を抱えて壁から離れた久留米。
光也が気付いた時、綾志の姿は何処にも無かった。
《ガラガラガラッ》
「倉庫が崩壊します!!」
「とにかく脱出だ!!」
「綾志君っ・・・」
「原平先輩、早く!!」
一同は崩れる瓦礫を避け、倉庫から飛び出した。
「・・・え？」
「えぇえっ!?」
倉庫の外は、広大な宇宙の景色になっていた・・・
続く
〜倉庫〜
「・・・え？」
「えぇえっ!?」
瓦礫から逃れて飛び出した倉庫の外は、広大な宇宙。
「いっ息がっ・・・あれ？出来る？」
「無重力でもないし、本当の宇宙じゃないのかぉ？幻覚？」
女子が首を傾げた。
(義隆さんから流れ出して月雛君に吸い込まれた“あれ”は、何だったのか？あの黒い蜃気楼のようなモノ・・・月雛君の拘束を一気に外して、彼を消してしまった・・・あれは・・・ )
「まさか、義隆さん・・・」
久留米は、背負っている義隆をチラリと見た。
「一体、何がどうなってんだ？義隆先輩は気絶するし、月雛は消えるし、周りは宇宙だし」
「シャンタク鳥さん居ないし」
光也と夏帆が周りに気を配る。
「それに、“かくれんぼ”はクリアで良いのかな？」
「どうでしょう？でも達成しているなら何かしら反応がありそうですし、そもそも達成したら帰れるハズですよね？」
肌寒そうにする有紗と、困った笑顔の久留米。
その時。
《ピシッ》
「あ？」
「な、何でしょう？」
不吉な音が、四人の鼓膜を揺らす。
《ピシッピキピキパキッ》
「何処かで何か割れてないかぉ？」
「何これラップ音？」
女子が寄り添いながら目で周りを探る。
《バキバキバキバキッ》
「おわぁあぁあっ!?」
「ぐっぎゃあぁあっ!?ななな何かゴキ〇リみたいの出たぁあっ!?」
「やだ大きいっ(泣)」
「逃げましょうっ(汗)」
そして空間を砕いて現れたのは、巨大なゴキブ〇!!
いやんっΣ(゜Д゜)!!
「あーもー!!“かくれんぼ”するだけじゃ無かったのか!?」
「知るかぉ!!黙って走れ!!」
《ダダダダダッ》
先頭は光也、続いて夏帆。
「久留米君、走れる!?」
「は、はいっ!!」
《ダダダダダッ》
その後ろが有紗、最後が義隆を背負った久留米。
そして巨大なゴ〇ブリ。
「久留米、平気か!?」
「は、いっ!!」
《ダダダダダッ》
油ギッシュな〇キブリから逃げるしか出来ない一同。
しかも久留米は義隆を背負っている。
「っ・・・」
「久留米!?」
《ドサッ》
久留米は足がもつれ、転倒した。
「大丈夫か!?」
「大丈・・・うっ!?」
《ビキッ》
光也が義隆を引き取って背負い、久留米が立ち上がろうとした瞬間、久留米の右足首に激痛が走った!!
「しまっ・・・挫いたっ・・・」
「なっ!?」
「危ない!!」
《ガキィインッ》
青冷める久留米と光也。
その脇を擦り抜けて、夏帆が短刀を抜く!!
ゴキブ〇の太い脚と夏帆の短刀が、ぶつかり合った!!
《ギリギリギリッ》
「気持ち悪いなぁ!!」
「夏帆ちゃん!!」
パワー型でない夏帆は、次第に圧されて行く。
何かに気付いた有紗が、悲鳴を上げた!!
「やばっ・・・」
「麻生!!」
「夏帆ちゃん!!」
《ビッ》
ゴキ〇リの反対側の脚が夏帆に襲い掛かり、彼女は間一髪で回避!!
力で押さえ付けられては居たが、その身軽さと素早さで危機を免れた。
「僕は良いから逃げて下さい!!」
「馬鹿な事を言うなよ!!」
「このままじゃ共倒れです!!月雛君も居ない今、戦えるのは麻生さんだけ!!怪我をした僕では足手まといにしかなりません!!」
「久留米!!」
地に伏したままの久留米が、必死に訴える。
「逃げて下さい!!それが最善です!!」
「駄目だよ久留米君!!」
「原野先輩!!」
「危ねえっ!!」
《ビュッ》
その最中、ゴ〇ブリの二撃目が有紗を襲う!!
《ガキィインッ!!》
「ぐあっ!!」
「夏・・・夏帆ちゃあぁんっ!!」
それを庇った夏帆が、短刀ごと吹っ飛ばされて闇に消える。
「麻生・・・原野先輩!!」
「きゃあっ!!」
《ビュッ》
今度こそ、とばかりの三撃目。
やはり狙われる有紗。
しかし。
「原野せ・・・どわっ!?」
「え」
「さぁせるかぁーっ!!」
《ズバァアァッ!!》
それまで気絶していた義隆が、光也の背から無理矢理に降り、いつの間にか手にしていた薙刀で〇キブリを真っ二つにした!!
「義隆先輩!?気が付いたのかよ!?」
「話は後だ!!麻生を追うぞ!!」
「わっ!?」
《バッ》
義隆は薙刀を持ったまま、久留米を肩に担いだ。
米俵か？
「どうやって!?」
「消えた場所に突っ込む!!白石は原野から離れるな!!」
「凄いΣ(゜Д゜)!!」
《ダダダダダッ》
久留米を担いで普通に走る義隆に、有紗は驚いた。
鍛えてますから警官学生。
「どぉりゃあぁあーっ!!」
「えぇーっΣ(゜Д゜)!?」
《ズパァアッ!!》
義隆が夏帆の消えた位置に薙刀を振るうと、空間が裂けた!!
「飛び込めぇえっ!!」
「マジかよっΣ(゜Д゜)!?」
「えぇいっ(汗)」
《バッ》
義隆と担がれた久留米、光也と有紗は、空間の裂け目に飛び込んだ・・・
続く
「・・・え？」
「えぇえっ!?」
瓦礫から逃れて飛び出した倉庫の外は、広大な宇宙。
「いっ息がっ・・・あれ？出来る？」
「無重力でもないし、本当の宇宙じゃないのかぉ？幻覚？」
女子が首を傾げた。
(義隆さんから流れ出して月雛君に吸い込まれた“あれ”は、何だったのか？あの黒い蜃気楼のようなモノ・・・月雛君の拘束を一気に外して、彼を消してしまった・・・あれは・・・ )
「まさか、義隆さん・・・」
久留米は、背負っている義隆をチラリと見た。
「一体、何がどうなってんだ？義隆先輩は気絶するし、月雛は消えるし、周りは宇宙だし」
「シャンタク鳥さん居ないし」
光也と夏帆が周りに気を配る。
「それに、“かくれんぼ”はクリアで良いのかな？」
「どうでしょう？でも達成しているなら何かしら反応がありそうですし、そもそも達成したら帰れるハズですよね？」
肌寒そうにする有紗と、困った笑顔の久留米。
その時。
《ピシッ》
「あ？」
「な、何でしょう？」
不吉な音が、四人の鼓膜を揺らす。
《ピシッピキピキパキッ》
「何処かで何か割れてないかぉ？」
「何これラップ音？」
女子が寄り添いながら目で周りを探る。
《バキバキバキバキッ》
「おわぁあぁあっ!?」
「ぐっぎゃあぁあっ!?ななな何かゴキ〇リみたいの出たぁあっ!?」
「やだ大きいっ(泣)」
「逃げましょうっ(汗)」
そして空間を砕いて現れたのは、巨大なゴキブ〇!!
いやんっΣ(゜Д゜)!!
「あーもー!!“かくれんぼ”するだけじゃ無かったのか!?」
「知るかぉ!!黙って走れ!!」
《ダダダダダッ》
先頭は光也、続いて夏帆。
「久留米君、走れる!?」
「は、はいっ!!」
《ダダダダダッ》
その後ろが有紗、最後が義隆を背負った久留米。
そして巨大なゴ〇ブリ。
「久留米、平気か!?」
「は、いっ!!」
《ダダダダダッ》
油ギッシュな〇キブリから逃げるしか出来ない一同。
しかも久留米は義隆を背負っている。
「っ・・・」
「久留米!?」
《ドサッ》
久留米は足がもつれ、転倒した。
「大丈夫か!?」
「大丈・・・うっ!?」
《ビキッ》
光也が義隆を引き取って背負い、久留米が立ち上がろうとした瞬間、久留米の右足首に激痛が走った!!
「しまっ・・・挫いたっ・・・」
「なっ!?」
「危ない!!」
《ガキィインッ》
青冷める久留米と光也。
その脇を擦り抜けて、夏帆が短刀を抜く!!
ゴキブ〇の太い脚と夏帆の短刀が、ぶつかり合った!!
《ギリギリギリッ》
「気持ち悪いなぁ!!」
「夏帆ちゃん!!」
パワー型でない夏帆は、次第に圧されて行く。
何かに気付いた有紗が、悲鳴を上げた!!
「やばっ・・・」
「麻生!!」
「夏帆ちゃん!!」
《ビッ》
ゴキ〇リの反対側の脚が夏帆に襲い掛かり、彼女は間一髪で回避!!
力で押さえ付けられては居たが、その身軽さと素早さで危機を免れた。
「僕は良いから逃げて下さい!!」
「馬鹿な事を言うなよ!!」
「このままじゃ共倒れです!!月雛君も居ない今、戦えるのは麻生さんだけ!!怪我をした僕では足手まといにしかなりません!!」
「久留米!!」
地に伏したままの久留米が、必死に訴える。
「逃げて下さい!!それが最善です!!」
「駄目だよ久留米君!!」
「原野先輩!!」
「危ねえっ!!」
《ビュッ》
その最中、ゴ〇ブリの二撃目が有紗を襲う!!
《ガキィインッ!!》
「ぐあっ!!」
「夏・・・夏帆ちゃあぁんっ!!」
それを庇った夏帆が、短刀ごと吹っ飛ばされて闇に消える。
「麻生・・・原野先輩!!」
「きゃあっ!!」
《ビュッ》
今度こそ、とばかりの三撃目。
やはり狙われる有紗。
しかし。
「原野せ・・・どわっ!?」
「え」
「さぁせるかぁーっ!!」
《ズバァアァッ!!》
それまで気絶していた義隆が、光也の背から無理矢理に降り、いつの間にか手にしていた薙刀で〇キブリを真っ二つにした!!
「義隆先輩!?気が付いたのかよ!?」
「話は後だ!!麻生を追うぞ!!」
「わっ!?」
《バッ》
義隆は薙刀を持ったまま、久留米を肩に担いだ。
米俵か？
「どうやって!?」
「消えた場所に突っ込む!!白石は原野から離れるな!!」
「凄いΣ(゜Д゜)!!」
《ダダダダダッ》
久留米を担いで普通に走る義隆に、有紗は驚いた。
鍛えてますから警官学生。
「どぉりゃあぁあーっ!!」
「えぇーっΣ(゜Д゜)!?」
《ズパァアッ!!》
義隆が夏帆の消えた位置に薙刀を振るうと、空間が裂けた!!
「飛び込めぇえっ!!」
「マジかよっΣ(゜Д゜)!?」
「えぇいっ(汗)」
《バッ》
義隆と担がれた久留米、光也と有紗は、空間の裂け目に飛び込んだ・・・
続く
〜？？？〜
「飛び込めぇえっ!!」
「マジかよっΣ(゜Д゜)!?」
「えぇいっ(汗)」
《バッ》
義隆と担がれた久留米、光也と有紗は、薙刀で切り裂いた空間の裂け目に飛び込む!!
「きゃあぁあぁあーっ(汗)」
「でぇえっ!?結構深いぜ!?」
「着地はどうしましょう(汗)」
「・・・地面が見えたぞ!!」
《ドサーッ》
落とし穴にでも落ちたように落下して行った四人。
少しして、底に到達。
「ぐっ・・・足が痺れたな」
「無茶しますねぇ(汗)」
「ぐぇー(汗)」
「きゃっ!?ごめん光也君!!」
光也は有紗の下敷きになっている。
「で、ここは・・・」
「夏帆ちゃん!?」
《バッ》
光也が起き上がった時、有紗が何かに気付いて駆け出した!!
「待てよ原野先輩・・・うわっ!?何だアレ!?」
「夏帆ちゃんがっ!!」
「ここは・・・巨大ゴ〇ブリの巣でしょうか？」
「みたいだなぁ!!」
《ダッ》
一同が目の当たりにしたのは、大量の巨大ゴキ〇リに囲まれて古びたベッドに横たわる夏帆の姿。
久留米を下ろした義隆が、単身で突っ込む。
「離れろ害虫共!!」
《ズパァアッ》
薙刀を振り回して次々にゴキ〇リを狩って行くが、どうにも数が多い。
「アイツ等、麻生さんを食べるつもりでしょうか？」
「しっかりしろ麻生!!」
「気絶しちゃってる!!」
久留米は光也に支えられ、何とか立っている。
有紗は気が気でない。
「オラオラオラオラァ!!」
「それ薙刀ぢゃなくて打刀Σ(゜Д゜)」
「いや、学ランの高校生かも知れないぜ？」
「そんな場合ですか(´・ω・`)」
《バッサァアッ》
義隆の奮闘虚しく、ゴキ〇リは増える一方だ。
「・・・えっ？ねえ、あのG、何だか動きが不審だよ？」
「はい？」
「・・・・・・繁殖しようとしてるΣ(￣ロ￣lll)!?」
ふと、有紗達は気付いてしまった。
ゴキ〇リの一体が、ベッドに横たわる夏帆に覆い被さり、繁殖行動をすべく彼女のミニスカートを太い脚で捲り上げている事に!!
「きゃあぁあぁあーっ!?ななな夏帆ちゃんがGの“お嫁さん”にされちゃうぅうっ!!」
「義隆さんっΣ(￣ロ￣lll)!!」
「だぁあっ!!俺達にも武器があればぁあっ!!」
三人は丸腰で、下手に動けない!!
「麻生っ・・・あ!?」
「〜♪」
《ズパァアンッ!!》
義隆が叫んだ刹那、夏帆のベッドに何者かが降って来て、ゴキ〇リを横に両断した!!
「つ、月雛君!?」
「御無事で!!」
「超ファインプレイだぜ!!」
その人物とは、消えたはずの綾志だった。
「・・・夢影」
「♪」
「殺るぞ」
「♪」
《チャキッ》
しかし、義隆だけは知っていた。
“それ”が綾志でない事を。
知っていて、共に戦うのだ。
「数なんざ関係ねぇ!!全滅させろ!!」
「♪」
《ズバァアァアッ》
二人は破竹の勢いでゴキ〇リを狩って行く。
「・・・あれ？月雛君、打刀を使ってな いっ!?」
《ドゴォオォンッ!!》
久留米が呟いたのと同時に、今度は床が吹き飛んで何か飛び出して来た!!
ついでにゴキ〇リも吹っ飛んだ!!
「何・・・シャンタク鳥さん!?」
「と、何か変なローブの奴!?」
《バサッ》
床から現れたのは、シャンタク鳥と謎の人型。
そして？
『遊ぼ、遊ぼ、うふふふふ・・・』
「こ、子供!?この声、最初の!?」
「じゃあ、あれが死霊使いか!?」
死霊使いと思われる、子供。
「おい待てよ!!お前を見付けたら終わりだろ!?」
『見付けてないよ、僕は叩き出されただけ・・・やり直し、何しようか・・・』
「ふざけっ・・・ぎゃあ!?」
『あははははは・・・』
《ズドォオォンッ!!》
抗議する光也を、爆風が襲う。
シャンタク鳥と、死霊使いの主・・・ナイトゴーンが戦闘しているのだ。
「やり直しだなんてっ」
『あはははははは・・・ぷげらっ!?』
《グショアッ!!》
涙目の有紗を嘲笑っていた死霊使いが、一瞬で何者かに胸を貫かれた!!
綾志(？？？)だ!!
『ごぷっ・・・!?』
「捕マエタァアァア・・・」
「つ、き、ひ、な、く・・・」
《バラバラバラバラッ・・・》
そして“世界”は、風に飛ばされたプリントの束のように散らばって消えた。
〜？？？〜
「・・・」
(夢影の野郎・・・)
目覚めた時、義隆はいつもの部屋で寝ていた。
(初っぱなから“出る”とか有り得ねえだろ。チビを叩き起こしてチビに行動させるべきだった)
「・・・いや、俺のせいだな」
義隆は、右手を握り締めて溜め息をついた・・・
続く
「飛び込めぇえっ!!」
「マジかよっΣ(゜Д゜)!?」
「えぇいっ(汗)」
《バッ》
義隆と担がれた久留米、光也と有紗は、薙刀で切り裂いた空間の裂け目に飛び込む!!
「きゃあぁあぁあーっ(汗)」
「でぇえっ!?結構深いぜ!?」
「着地はどうしましょう(汗)」
「・・・地面が見えたぞ!!」
《ドサーッ》
落とし穴にでも落ちたように落下して行った四人。
少しして、底に到達。
「ぐっ・・・足が痺れたな」
「無茶しますねぇ(汗)」
「ぐぇー(汗)」
「きゃっ!?ごめん光也君!!」
光也は有紗の下敷きになっている。
「で、ここは・・・」
「夏帆ちゃん!?」
《バッ》
光也が起き上がった時、有紗が何かに気付いて駆け出した!!
「待てよ原野先輩・・・うわっ!?何だアレ!?」
「夏帆ちゃんがっ!!」
「ここは・・・巨大ゴ〇ブリの巣でしょうか？」
「みたいだなぁ!!」
《ダッ》
一同が目の当たりにしたのは、大量の巨大ゴキ〇リに囲まれて古びたベッドに横たわる夏帆の姿。
久留米を下ろした義隆が、単身で突っ込む。
「離れろ害虫共!!」
《ズパァアッ》
薙刀を振り回して次々にゴキ〇リを狩って行くが、どうにも数が多い。
「アイツ等、麻生さんを食べるつもりでしょうか？」
「しっかりしろ麻生!!」
「気絶しちゃってる!!」
久留米は光也に支えられ、何とか立っている。
有紗は気が気でない。
「オラオラオラオラァ!!」
「それ薙刀ぢゃなくて打刀Σ(゜Д゜)」
「いや、学ランの高校生かも知れないぜ？」
「そんな場合ですか(´・ω・`)」
《バッサァアッ》
義隆の奮闘虚しく、ゴキ〇リは増える一方だ。
「・・・えっ？ねえ、あのG、何だか動きが不審だよ？」
「はい？」
「・・・・・・繁殖しようとしてるΣ(￣ロ￣lll)!?」
ふと、有紗達は気付いてしまった。
ゴキ〇リの一体が、ベッドに横たわる夏帆に覆い被さり、繁殖行動をすべく彼女のミニスカートを太い脚で捲り上げている事に!!
「きゃあぁあぁあーっ!?ななな夏帆ちゃんがGの“お嫁さん”にされちゃうぅうっ!!」
「義隆さんっΣ(￣ロ￣lll)!!」
「だぁあっ!!俺達にも武器があればぁあっ!!」
三人は丸腰で、下手に動けない!!
「麻生っ・・・あ!?」
「〜♪」
《ズパァアンッ!!》
義隆が叫んだ刹那、夏帆のベッドに何者かが降って来て、ゴキ〇リを横に両断した!!
「つ、月雛君!?」
「御無事で!!」
「超ファインプレイだぜ!!」
その人物とは、消えたはずの綾志だった。
「・・・夢影」
「♪」
「殺るぞ」
「♪」
《チャキッ》
しかし、義隆だけは知っていた。
“それ”が綾志でない事を。
知っていて、共に戦うのだ。
「数なんざ関係ねぇ!!全滅させろ!!」
「♪」
《ズバァアァアッ》
二人は破竹の勢いでゴキ〇リを狩って行く。
「・・・あれ？月雛君、打刀を使ってな いっ!?」
《ドゴォオォンッ!!》
久留米が呟いたのと同時に、今度は床が吹き飛んで何か飛び出して来た!!
ついでにゴキ〇リも吹っ飛んだ!!
「何・・・シャンタク鳥さん!?」
「と、何か変なローブの奴!?」
《バサッ》
床から現れたのは、シャンタク鳥と謎の人型。
そして？
『遊ぼ、遊ぼ、うふふふふ・・・』
「こ、子供!?この声、最初の!?」
「じゃあ、あれが死霊使いか!?」
死霊使いと思われる、子供。
「おい待てよ!!お前を見付けたら終わりだろ!?」
『見付けてないよ、僕は叩き出されただけ・・・やり直し、何しようか・・・』
「ふざけっ・・・ぎゃあ!?」
『あははははは・・・』
《ズドォオォンッ!!》
抗議する光也を、爆風が襲う。
シャンタク鳥と、死霊使いの主・・・ナイトゴーンが戦闘しているのだ。
「やり直しだなんてっ」
『あはははははは・・・ぷげらっ!?』
《グショアッ!!》
涙目の有紗を嘲笑っていた死霊使いが、一瞬で何者かに胸を貫かれた!!
綾志(？？？)だ!!
『ごぷっ・・・!?』
「捕マエタァアァア・・・」
「つ、き、ひ、な、く・・・」
《バラバラバラバラッ・・・》
そして“世界”は、風に飛ばされたプリントの束のように散らばって消えた。
〜？？？〜
「・・・」
(夢影の野郎・・・)
目覚めた時、義隆はいつもの部屋で寝ていた。
(初っぱなから“出る”とか有り得ねえだろ。チビを叩き起こしてチビに行動させるべきだった)
「・・・いや、俺のせいだな」
義隆は、右手を握り締めて溜め息をついた・・・
続く
〜綾志の部屋〜
「・・・うわぁあぁあーっ!?」
《バッ》
冷たい笑顔の自分が、小さな子供の心臓を抉り出す。
そんな悪夢にうなされた綾志が、悲鳴と共に飛び起きる。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
(な、に・・・今の・・・)
心臓の生暖かさが、妙にリアルに残っている。
「違う・・・あれは・・・あんなの僕じゃない・・・」
『そう、お前ではない』
「ひっ!?」
『ふふふふふ・・・』
誰もいない部屋の中、脳裏に響く声。
「だ、れ・・・やだ・・・怖いよぉお・・・」
『ははははは』
「うわぁあぁあんっ」
『これから宜しく頼むぞ、童や？』
声はひたすらに冷たく、綾志の心を逆撫でるのだった。
〜有紗の部屋〜
「月雛君、様子がおかしかったなぁ」
(それに、夏帆ちゃんは大丈夫だったかな？)
自室で目覚めた有紗は、ベッドから降りて部屋を出た。
「義隆さんが気絶しちゃった理由も分からないし」
(次に会えたら聞けるのかな？)
台所に向かい、水を飲む。
「・・・そう言えば、一回ごとに誰かしら“武器”を手に入れてない？」
(と言う事は、最低でも後三回は同じ現象が起きる？どうしよう、刃物なんて包丁や文房具くらいしか扱えないのに・・・)
有紗は、自分の手をジッと見つめるのだった。
〜久留米の部屋〜
「足がっ・・・」
(凡ミスをしてしまいました)
ゴキ●リから逃げている時に、足を挫いた久留米。
“夢の中”の出来事だが、“現実”にもバッチリ影響している。
「治癒用湿布を・・・ふぅ」
(報告書を作成しなくては)
《シュンッ》
しかし、足の痛みは緑色の湿布を貼った瞬間に消えた。
(月雛君の打刀、麻生さんの短刀に続き、義隆さんが薙刀を入手。順調に“揃って”来ている)
「孫杉 池弥さんの件も気になりますね。今一度、調べ直しておきましょう」
《カタカタカタカタッ》
薄いタブレットのキーボードを叩く久留米。
彼は何故、“大正時代の人間”だと偽っているのだろうか？
〜？？？〜
「ぐすっ ひっく ふぇえぇっ」
「だ、大丈夫？月雛君、目の下にクマが(汗)」
さて、久々に、やはり“教室”で再会した有紗達。
「この“夢”にも慣れちまったなぁ？」
「そうですね」
光也は眠そうだ。
「義隆さん。色々と説明して欲しいぉ。情報開示を要求するぉ？ここまで来たら一蓮托生だぁお？」
「・・・ふん」
夏帆に詰め寄られ、目を反らす義隆。
元から誰とも目を合わせない奴だが。
「何より重要なのは、綾志君の不眠の原因だぉ!!あの時、餌にした綾志君を助ける為に何をしたの!?綾志君の中に“居る”のは誰なの!?」
「おいおい麻生(汗)何だってんだ落ち着けよ(汗)」
興奮気味の夏帆の肩に、光也が手を置く。
「義隆さん。仲間として信用するにしても、利用するにしても、ある程度の情報共有は必要です」
「久留米」
久留米は困ったように笑いながら、義隆の側へ。
《スラッ!!》
「あ、やっぱり夏帆ちゃん達だ」
「「「あっ!!」」」
そこへ、“教室”の窓から誰かが現れた。
扉ではなく窓から。
「孫杉先輩!?」
「お化けぇえーっ(泣)」
「あわわわ(汗)お、落ち着いて綾志君(汗)僕はお化けじゃないよ(汗)」
驚きの事態に、夏帆と綾志が目を見開く。
「・・・って綾志君、義隆さんの“貰っちゃった”んだ(汗)大丈夫なの(汗)クマが凄いよ(汗)」
「“貰っちゃった”？？？」
「何か知ってるの？？？」
夏帆と有紗は、首を傾げた。
「話していないの？」
「これから説明する。で、お前は死んだハズなのに俺達が動揺していない件について、何も思わないのか？」
「遅かれ早かれバレるかな、なんて」
「楽天家め」
義隆は呆れている。
「じゃあ“何か”が起きる前に状況を整理しておこうよ。一人ずつ改めて自己紹介と必要事項を発表だね」
「仕切るな」
池弥に主導権を握られ、義隆は少しムッとした・・・
続く
「・・・うわぁあぁあーっ!?」
《バッ》
冷たい笑顔の自分が、小さな子供の心臓を抉り出す。
そんな悪夢にうなされた綾志が、悲鳴と共に飛び起きる。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
(な、に・・・今の・・・)
心臓の生暖かさが、妙にリアルに残っている。
「違う・・・あれは・・・あんなの僕じゃない・・・」
『そう、お前ではない』
「ひっ!?」
『ふふふふふ・・・』
誰もいない部屋の中、脳裏に響く声。
「だ、れ・・・やだ・・・怖いよぉお・・・」
『ははははは』
「うわぁあぁあんっ」
『これから宜しく頼むぞ、童や？』
声はひたすらに冷たく、綾志の心を逆撫でるのだった。
〜有紗の部屋〜
「月雛君、様子がおかしかったなぁ」
(それに、夏帆ちゃんは大丈夫だったかな？)
自室で目覚めた有紗は、ベッドから降りて部屋を出た。
「義隆さんが気絶しちゃった理由も分からないし」
(次に会えたら聞けるのかな？)
台所に向かい、水を飲む。
「・・・そう言えば、一回ごとに誰かしら“武器”を手に入れてない？」
(と言う事は、最低でも後三回は同じ現象が起きる？どうしよう、刃物なんて包丁や文房具くらいしか扱えないのに・・・)
有紗は、自分の手をジッと見つめるのだった。
〜久留米の部屋〜
「足がっ・・・」
(凡ミスをしてしまいました)
ゴキ●リから逃げている時に、足を挫いた久留米。
“夢の中”の出来事だが、“現実”にもバッチリ影響している。
「治癒用湿布を・・・ふぅ」
(報告書を作成しなくては)
《シュンッ》
しかし、足の痛みは緑色の湿布を貼った瞬間に消えた。
(月雛君の打刀、麻生さんの短刀に続き、義隆さんが薙刀を入手。順調に“揃って”来ている)
「孫杉 池弥さんの件も気になりますね。今一度、調べ直しておきましょう」
《カタカタカタカタッ》
薄いタブレットのキーボードを叩く久留米。
彼は何故、“大正時代の人間”だと偽っているのだろうか？
〜？？？〜
「ぐすっ ひっく ふぇえぇっ」
「だ、大丈夫？月雛君、目の下にクマが(汗)」
さて、久々に、やはり“教室”で再会した有紗達。
「この“夢”にも慣れちまったなぁ？」
「そうですね」
光也は眠そうだ。
「義隆さん。色々と説明して欲しいぉ。情報開示を要求するぉ？ここまで来たら一蓮托生だぁお？」
「・・・ふん」
夏帆に詰め寄られ、目を反らす義隆。
元から誰とも目を合わせない奴だが。
「何より重要なのは、綾志君の不眠の原因だぉ!!あの時、餌にした綾志君を助ける為に何をしたの!?綾志君の中に“居る”のは誰なの!?」
「おいおい麻生(汗)何だってんだ落ち着けよ(汗)」
興奮気味の夏帆の肩に、光也が手を置く。
「義隆さん。仲間として信用するにしても、利用するにしても、ある程度の情報共有は必要です」
「久留米」
久留米は困ったように笑いながら、義隆の側へ。
《スラッ!!》
「あ、やっぱり夏帆ちゃん達だ」
「「「あっ!!」」」
そこへ、“教室”の窓から誰かが現れた。
扉ではなく窓から。
「孫杉先輩!?」
「お化けぇえーっ(泣)」
「あわわわ(汗)お、落ち着いて綾志君(汗)僕はお化けじゃないよ(汗)」
驚きの事態に、夏帆と綾志が目を見開く。
「・・・って綾志君、義隆さんの“貰っちゃった”んだ(汗)大丈夫なの(汗)クマが凄いよ(汗)」
「“貰っちゃった”？？？」
「何か知ってるの？？？」
夏帆と有紗は、首を傾げた。
「話していないの？」
「これから説明する。で、お前は死んだハズなのに俺達が動揺していない件について、何も思わないのか？」
「遅かれ早かれバレるかな、なんて」
「楽天家め」
義隆は呆れている。
「じゃあ“何か”が起きる前に状況を整理しておこうよ。一人ずつ改めて自己紹介と必要事項を発表だね」
「仕切るな」
池弥に主導権を握られ、義隆は少しムッとした・・・
続く
〜教室？？？〜
「えーと、孫杉 池弥です。高校二年生で人魚の末裔です。行方不明の兄を探してクトゥルフ神話生物達と揉めてます」
「サラッと言う事か・・・」
「揉めてんのかよ(汗)」
義隆と光也は、取り敢えず突っ込んだ。
「俺は義隆。警官学校三年生。弟を見殺しにした際に“夢魔”ってのに取り憑かれ、死ぬに死ねず悪夢のような日々を過ごしていた」
「じゃ、じゃあ・・・今の僕に取り憑いているのは・・・」
「“夢魔”？」
怯える綾志を、有紗が撫でた。
「つ、月雛 綾志、ですっ・・・高校一年生で、あの、“夢魔”に取り憑かれてる、らしくて・・・眠るの怖いよぉおっ・・・ 」
「泣かない泣かない(汗)」
「ガキが」
有紗が保護者と化している。
そして義隆、酷い。
「原野 有紗、高校二年生です。もし“武器”を得るような事になっても、使いこなせる自信がないです(汗)」
「気合いだぉ!!」
「いやいやいや(汗)」
光也は突っ込み担当。
「麻生 夏帆、高校一年生だぉ。小柄で素早さには自信があるぉ!!偵察とかは任せろなんだぉ!!」
「頼もしいね」
「はい」
池弥と久留米は微笑ましげだ。
「白石 光也、高校二年生。得意教科は数学と体育。まあ考え事とかは任せてくれても良いぜ？」
「頭脳労働かぉ」
「た、助かり、ますっ・・・」
綾志がチワワみたいに震えている。
「最後ですね。久留米と申します。高校三年生で、歌ったり読書したりするのが好きです。“武器”は・・・頑張れば使えると思います」
「頑張ろうぜ〜」
「ファイトだねっ」
光也と有紗が、拳を突き上げる。
「所で孫杉。何で窓から現れたんだ？」
「それは・・・っ」
《ドォンッ!!》
義隆の問いに池弥が答えようとした瞬間、“教室”の壁に何かが体当たりしたような音が響いた!!
「びぇえぇえーんっ(泣)」
「綾志君、落ち着い・・・きゃっ!?」
《ドォンッ!!》
泣き喚く綾志を、有紗が抱き締めた。
「追い付かれちゃった、シアエガの仔に」
「シアエガ!?洞窟と暗黒を司るクトゥルフ生物!?え、追われてたの!?」
《ドォンッ!!》
池弥の呟きに、有紗が目を見開く!!
「変なモン引き連れて来るなっ」
「一人じゃ対応出来ないんです(汗)月雛君か義隆さん、手伝って!!」
「ぴぇあっ!?」
《ガシャアァアンッ!!》
遂に池弥が入って来た窓が割られ、そこからドス黒い触手が数本、侵入する!!
「僕が歌い終わるまで、触手を近付けないで!!」
「後で覚えてろ・・・やるぞチビ!!」
「はっはひぃいっ(泣)」
《ジャキンッ》
義隆に怒鳴られ、綾志が打刀を抜く。
「だったら私もっ・・・」
「辞めとけ麻生。お前は短刀なんだから、懐に入れない相手じゃ不利だろう？」
「私達の役目は、無傷で居る事です」
飛び出そうとした夏帆を、光也と久留米が止める。
『♪夜よ 夜よ 古の夜よ その暗黒の音色 悠久の闇 奏でているのか♪』
「日本語の歌で通じるのか？異国の化物だぞ？」
「う、歌は魂、ですからっ!!きっと、だだだ大丈夫っ!!」
《ザシュンッ!!》
池弥が歌う間、義隆の薙刀と綾志の打刀が触手に応戦!!
「・・・そう言えば、池弥君もシアエガも何で扉から入って来ないんだろう？」
「くっきゃ？」
《スッ》
有紗は、ふとした疑問を胸に横スライド式の扉へ近付く。
夏帆が、それに続いた。
《ガラガラガラッ》
「え、扉の向こうは森なんだ(汗)しかも豪雨が(汗)」
「向こうに変な樹があるぉ？錆びた鉄みたいに赤茶色の」
有紗が扉を開けると、そこは豪雨が降りしきる暗い森の中。
「シアエガの仔、寝たよ!!早く外へ出なきゃ!!」
「子守唄だったのか」
「びぇえぇえーんっ(泣)」
《バッ》
そんな森に向かい、池弥達が飛び出す。
「倒さないんだな？」
「倒せないのでは？原野さんの説明では、何やら強そうでしたし」
《タッ》
光也と久留米も、続く。
「あの腐った大木の近くは降ってないんだ？」
「そうみたいだぁお」
《バタンッ》
最後に有紗と夏帆が“教室”を出ると、扉は自動的に閉まって消えた。
〜大木の前〜
「嫌な感じの森だったけど、何事もなく抜けられたね」
「ああ。このチビが一々ビビって面倒だったがな？」
「ぐすんっ(泣)」
無事に森を抜けた池弥達は、腐った大木の側まで来た。
「にしてもデカイなぁ？枯れてんだか腐ってんだか謎だが、この状態でこの大きさなら健康だったらどんだけだよ？」
「立派ですねぇ？神社にも無いですよ、これだけのモノは」
光也と久留米は大木を見上げた。
「・・・反対側に誰か居る」
「くっきゃくっきゃ!!」
《タッ》
有紗は何者かの気配を察知し、夏帆と共に大木の反対側へ・・・
続く
「えーと、孫杉 池弥です。高校二年生で人魚の末裔です。行方不明の兄を探してクトゥルフ神話生物達と揉めてます」
「サラッと言う事か・・・」
「揉めてんのかよ(汗)」
義隆と光也は、取り敢えず突っ込んだ。
「俺は義隆。警官学校三年生。弟を見殺しにした際に“夢魔”ってのに取り憑かれ、死ぬに死ねず悪夢のような日々を過ごしていた」
「じゃ、じゃあ・・・今の僕に取り憑いているのは・・・」
「“夢魔”？」
怯える綾志を、有紗が撫でた。
「つ、月雛 綾志、ですっ・・・高校一年生で、あの、“夢魔”に取り憑かれてる、らしくて・・・眠るの怖いよぉおっ・・・ 」
「泣かない泣かない(汗)」
「ガキが」
有紗が保護者と化している。
そして義隆、酷い。
「原野 有紗、高校二年生です。もし“武器”を得るような事になっても、使いこなせる自信がないです(汗)」
「気合いだぉ!!」
「いやいやいや(汗)」
光也は突っ込み担当。
「麻生 夏帆、高校一年生だぉ。小柄で素早さには自信があるぉ!!偵察とかは任せろなんだぉ!!」
「頼もしいね」
「はい」
池弥と久留米は微笑ましげだ。
「白石 光也、高校二年生。得意教科は数学と体育。まあ考え事とかは任せてくれても良いぜ？」
「頭脳労働かぉ」
「た、助かり、ますっ・・・」
綾志がチワワみたいに震えている。
「最後ですね。久留米と申します。高校三年生で、歌ったり読書したりするのが好きです。“武器”は・・・頑張れば使えると思います」
「頑張ろうぜ〜」
「ファイトだねっ」
光也と有紗が、拳を突き上げる。
「所で孫杉。何で窓から現れたんだ？」
「それは・・・っ」
《ドォンッ!!》
義隆の問いに池弥が答えようとした瞬間、“教室”の壁に何かが体当たりしたような音が響いた!!
「びぇえぇえーんっ(泣)」
「綾志君、落ち着い・・・きゃっ!?」
《ドォンッ!!》
泣き喚く綾志を、有紗が抱き締めた。
「追い付かれちゃった、シアエガの仔に」
「シアエガ!?洞窟と暗黒を司るクトゥルフ生物!?え、追われてたの!?」
《ドォンッ!!》
池弥の呟きに、有紗が目を見開く!!
「変なモン引き連れて来るなっ」
「一人じゃ対応出来ないんです(汗)月雛君か義隆さん、手伝って!!」
「ぴぇあっ!?」
《ガシャアァアンッ!!》
遂に池弥が入って来た窓が割られ、そこからドス黒い触手が数本、侵入する!!
「僕が歌い終わるまで、触手を近付けないで!!」
「後で覚えてろ・・・やるぞチビ!!」
「はっはひぃいっ(泣)」
《ジャキンッ》
義隆に怒鳴られ、綾志が打刀を抜く。
「だったら私もっ・・・」
「辞めとけ麻生。お前は短刀なんだから、懐に入れない相手じゃ不利だろう？」
「私達の役目は、無傷で居る事です」
飛び出そうとした夏帆を、光也と久留米が止める。
『♪夜よ 夜よ 古の夜よ その暗黒の音色 悠久の闇 奏でているのか♪』
「日本語の歌で通じるのか？異国の化物だぞ？」
「う、歌は魂、ですからっ!!きっと、だだだ大丈夫っ!!」
《ザシュンッ!!》
池弥が歌う間、義隆の薙刀と綾志の打刀が触手に応戦!!
「・・・そう言えば、池弥君もシアエガも何で扉から入って来ないんだろう？」
「くっきゃ？」
《スッ》
有紗は、ふとした疑問を胸に横スライド式の扉へ近付く。
夏帆が、それに続いた。
《ガラガラガラッ》
「え、扉の向こうは森なんだ(汗)しかも豪雨が(汗)」
「向こうに変な樹があるぉ？錆びた鉄みたいに赤茶色の」
有紗が扉を開けると、そこは豪雨が降りしきる暗い森の中。
「シアエガの仔、寝たよ!!早く外へ出なきゃ!!」
「子守唄だったのか」
「びぇえぇえーんっ(泣)」
《バッ》
そんな森に向かい、池弥達が飛び出す。
「倒さないんだな？」
「倒せないのでは？原野さんの説明では、何やら強そうでしたし」
《タッ》
光也と久留米も、続く。
「あの腐った大木の近くは降ってないんだ？」
「そうみたいだぁお」
《バタンッ》
最後に有紗と夏帆が“教室”を出ると、扉は自動的に閉まって消えた。
〜大木の前〜
「嫌な感じの森だったけど、何事もなく抜けられたね」
「ああ。このチビが一々ビビって面倒だったがな？」
「ぐすんっ(泣)」
無事に森を抜けた池弥達は、腐った大木の側まで来た。
「にしてもデカイなぁ？枯れてんだか腐ってんだか謎だが、この状態でこの大きさなら健康だったらどんだけだよ？」
「立派ですねぇ？神社にも無いですよ、これだけのモノは」
光也と久留米は大木を見上げた。
「・・・反対側に誰か居る」
「くっきゃくっきゃ!!」
《タッ》
有紗は何者かの気配を察知し、夏帆と共に大木の反対側へ・・・
続く
〜大木の前〜
「誰・・・きゃあぁっ!?」
「有紗ちゃん!!」
《ズズーンッ》
有紗が相手を確認しようとした瞬間、そこら辺の木が彼女に向かって飛んで来た!!
間一髪、夏帆が手を引いて横に回避!!
「なっ・・・」
「今ここに居るって事は!!」
「くきゃあぁっ!?」
「敵だな!!」
《ガキィインッ!!》
そこに追撃して来たのは、打刀を携えた同年代の少年。
夏帆が素早く短刀で防御する。
「ストップ(汗)郎ちゃんストップ(汗)」
「何で止めるんだ睦!?」
《グィーッ》
しかし近くに居た仲間らしき少女が、すぐ少年を宥めてくれた。
「殿下ぁ。怪しかったら即座に敵認識、ってのは辞めようぜ？」
「そそそそうだよ野蛮だよ(´・ω・`)!!」
「あぁん？テメェ等ミンチにすっぞ？」
「辞めて郎ちゃん(汗)」
更に後方に、もう二人少年が居た。
「ゴメンね、大丈夫だった？」
「だ、大丈夫だぁお(汗)腕が痺れたけど(汗)」
「もー!!郎ちゃん!!相手は私達くらいの学生じゃない!!敵な訳ないでしょ!!」
「僕達みたく雇われた“魔法学生”かも知れないだろ!!」
少女と少年が火花を散らす。
「・・・あの、“魔法学生”って何ですか？」
「「「「はっ？？？」」」」
その火種は、有紗の一言で消えた。
と言うか、相手の四人の視線が有紗に集まった。
「知らないの(((´・ω・`)))？？？」
「“あっち側”からの迷子か？」
「なら“魔法学生”は知ってるハズだろ!?」
「じゃあ・・・完全に無関係の迷子？？？」
「わわわっΣ(゜Д゜)」
四人に詰め寄られ、有紗が後ずさる。
《バッ》
「何の話か分からないけど、とにかく敵じゃないぉ!!」
「夏帆ちゃん・・・」
そんな有紗を、再び夏帆が庇う。
「郎ちゃんっ(汗)全く無関係の迷子に攻撃しちゃ駄目じゃないかっ(汗)」
「武器持ってんだぞ!?無関係なんて信用出来るか!!」
あ、また揉めた。
「取り敢えず、だ」
「光也君」
「何だテメェ!!」
埒が明かないので、光也が有紗と少年の間に入る。
「俺達は“化物”に閉じ込められてた空間から脱出して、気付いたらココに居ただけだぜ？言い掛かりは辞めてくれ。邪魔なら立ち去るから」
(“魔法学生”とか言ってるくらいだ。“化物”の存在も信じるよな？)
光也は少年に降参のポーズを示す。
「“化物”って、どんな？」
「おい若!!僕が話してんだぞ!?」
「殿下。お前のは“話してる”って言わないから」
「何だと!?」
喧嘩っ早い少年だ。
「睦霧、殿下を頼む」
「郎琶君、お菓子あげるよ(´・ω・`)」
「五月蝿ぇよハゲ!!」
「こら郎ちゃん、女の子でしょ。乱暴な言葉遣い駄目っ」
・・・少年じゃなくて少女だったらしい。
〜・・・〜
「ふーん？じゃあアンタ等は、この大木・・・“クリスタルの樹”が枯れた原因を調査しているのか？」
「そっちは“シアエガの仔”って化物に誘拐されて、逃げて来たらココに迷い込んだ？」
光也と少年の一人、若洲(わかす)は互いの現状を確認し合った。
「シアエガって言えば、洞窟と暗黒を司るクトゥルフ生物だよな？引き籠りだから人拐いはしないハズだぜ？」
「いや？俺達は何か特殊らしくてな？誘拐自体は初めてじゃない。誘拐される理由を知る為にも、色々と調べたいのが本音だ」
若洲の言葉に、光也が腕組みしながら答える。
「・・・テリマヨ先輩、こいつ等の事を占えるか？」
「何そのコッテリした渾名(´・ω・`)」
《スッ》
ほぼ会話に参加していなかった少年が、懐からタロットカードを取り出した・・・その時!!
『おい主、来るぞ』
「え・・・みぎゃあっ!?」
《シャアァアッ》
クリスタルの樹の上から、でんでん太鼓を持った金髪の小学生が降りて来て、占い少年を小脇に抱えて樹から離れた!!
それを追尾するのは、樹から伸びた成人の腕のような枝!!
「ぶぇえぇえんっ(泣)お化けの樹だぁ(泣)」
「泣いてねぇで応戦しろ!!」
《ザシュッ!!》
枝は、その場に居た全員に襲い掛かり、綾志と義隆が武器を振るう!!
『樹が大地から穢れを吸い上げ始めたな。どうする主？焼き払うか？』
「自然は大切にっ(´・ω・`)あ、紹介するね光也君達(´・ω・`)この子は私の使役で“雷獣”だよ(´・ω・`)」
「“クリスタルの樹”が自然物なのかは謎だし紹介してる場合じゃねぇよコチュジャン先輩!!」
《ダンッ》
占い少年と若洲は、枝から逃れる。
「うぜぇっ!!」
「郎ちゃん落ち着いて？“国の象徴”なんだから、あんまり損害出しちゃ駄目よ？」
《ボキボキバキッ!!》
郎琶は睦霧を庇いながら“念力魔法”で枝を折った。
一体何が起きたのだろうか・・・
続く
「誰・・・きゃあぁっ!?」
「有紗ちゃん!!」
《ズズーンッ》
有紗が相手を確認しようとした瞬間、そこら辺の木が彼女に向かって飛んで来た!!
間一髪、夏帆が手を引いて横に回避!!
「なっ・・・」
「今ここに居るって事は!!」
「くきゃあぁっ!?」
「敵だな!!」
《ガキィインッ!!》
そこに追撃して来たのは、打刀を携えた同年代の少年。
夏帆が素早く短刀で防御する。
「ストップ(汗)郎ちゃんストップ(汗)」
「何で止めるんだ睦!?」
《グィーッ》
しかし近くに居た仲間らしき少女が、すぐ少年を宥めてくれた。
「殿下ぁ。怪しかったら即座に敵認識、ってのは辞めようぜ？」
「そそそそうだよ野蛮だよ(´・ω・`)!!」
「あぁん？テメェ等ミンチにすっぞ？」
「辞めて郎ちゃん(汗)」
更に後方に、もう二人少年が居た。
「ゴメンね、大丈夫だった？」
「だ、大丈夫だぁお(汗)腕が痺れたけど(汗)」
「もー!!郎ちゃん!!相手は私達くらいの学生じゃない!!敵な訳ないでしょ!!」
「僕達みたく雇われた“魔法学生”かも知れないだろ!!」
少女と少年が火花を散らす。
「・・・あの、“魔法学生”って何ですか？」
「「「「はっ？？？」」」」
その火種は、有紗の一言で消えた。
と言うか、相手の四人の視線が有紗に集まった。
「知らないの(((´・ω・`)))？？？」
「“あっち側”からの迷子か？」
「なら“魔法学生”は知ってるハズだろ!?」
「じゃあ・・・完全に無関係の迷子？？？」
「わわわっΣ(゜Д゜)」
四人に詰め寄られ、有紗が後ずさる。
《バッ》
「何の話か分からないけど、とにかく敵じゃないぉ!!」
「夏帆ちゃん・・・」
そんな有紗を、再び夏帆が庇う。
「郎ちゃんっ(汗)全く無関係の迷子に攻撃しちゃ駄目じゃないかっ(汗)」
「武器持ってんだぞ!?無関係なんて信用出来るか!!」
あ、また揉めた。
「取り敢えず、だ」
「光也君」
「何だテメェ!!」
埒が明かないので、光也が有紗と少年の間に入る。
「俺達は“化物”に閉じ込められてた空間から脱出して、気付いたらココに居ただけだぜ？言い掛かりは辞めてくれ。邪魔なら立ち去るから」
(“魔法学生”とか言ってるくらいだ。“化物”の存在も信じるよな？)
光也は少年に降参のポーズを示す。
「“化物”って、どんな？」
「おい若!!僕が話してんだぞ!?」
「殿下。お前のは“話してる”って言わないから」
「何だと!?」
喧嘩っ早い少年だ。
「睦霧、殿下を頼む」
「郎琶君、お菓子あげるよ(´・ω・`)」
「五月蝿ぇよハゲ!!」
「こら郎ちゃん、女の子でしょ。乱暴な言葉遣い駄目っ」
・・・少年じゃなくて少女だったらしい。
〜・・・〜
「ふーん？じゃあアンタ等は、この大木・・・“クリスタルの樹”が枯れた原因を調査しているのか？」
「そっちは“シアエガの仔”って化物に誘拐されて、逃げて来たらココに迷い込んだ？」
光也と少年の一人、若洲(わかす)は互いの現状を確認し合った。
「シアエガって言えば、洞窟と暗黒を司るクトゥルフ生物だよな？引き籠りだから人拐いはしないハズだぜ？」
「いや？俺達は何か特殊らしくてな？誘拐自体は初めてじゃない。誘拐される理由を知る為にも、色々と調べたいのが本音だ」
若洲の言葉に、光也が腕組みしながら答える。
「・・・テリマヨ先輩、こいつ等の事を占えるか？」
「何そのコッテリした渾名(´・ω・`)」
《スッ》
ほぼ会話に参加していなかった少年が、懐からタロットカードを取り出した・・・その時!!
『おい主、来るぞ』
「え・・・みぎゃあっ!?」
《シャアァアッ》
クリスタルの樹の上から、でんでん太鼓を持った金髪の小学生が降りて来て、占い少年を小脇に抱えて樹から離れた!!
それを追尾するのは、樹から伸びた成人の腕のような枝!!
「ぶぇえぇえんっ(泣)お化けの樹だぁ(泣)」
「泣いてねぇで応戦しろ!!」
《ザシュッ!!》
枝は、その場に居た全員に襲い掛かり、綾志と義隆が武器を振るう!!
『樹が大地から穢れを吸い上げ始めたな。どうする主？焼き払うか？』
「自然は大切にっ(´・ω・`)あ、紹介するね光也君達(´・ω・`)この子は私の使役で“雷獣”だよ(´・ω・`)」
「“クリスタルの樹”が自然物なのかは謎だし紹介してる場合じゃねぇよコチュジャン先輩!!」
《ダンッ》
占い少年と若洲は、枝から逃れる。
「うぜぇっ!!」
「郎ちゃん落ち着いて？“国の象徴”なんだから、あんまり損害出しちゃ駄目よ？」
《ボキボキバキッ!!》
郎琶は睦霧を庇いながら“念力魔法”で枝を折った。
一体何が起きたのだろうか・・・
続く
〜クリスタルの樹〜
「俺達も武器が欲しいよなぁ」
「そうですね」
「と、取り敢えず眠らせる？」
《ズシャアッ》
光也、久留米、池弥は、襲い掛かる枝を意外と余裕で回避している。
まあ池弥は“人間”ではないから意外でもないだろうか？
「・・・あそこだっ!!」
「夏帆ちゃん!?」
《バッ》
そんな中、夏帆が何かに気付いて樹の幹へ突っ込む!!
有紗は思わず後を追った!!
「くっきゃあぁあっ!!」
《ザシュンッ!!》
多少の傷など意に介さず、紙一重で枝を回避しながら幹まで辿り着いた夏帆は、ある一点に短刀を突き刺した!!
《ズワッ》
「やった・・・」
「夏帆ちゃん危ないっ!!」
短刀が刺さった場所から黒い霧が飛び出し、その周りだけが赤茶色から透明な水晶色に変わる。
しかし枝の攻撃は止まず、夏帆を背後から襲う!!
「とりま、素性は追々として共闘に一票」
「くきゃっ」
《ガキィインッ》
その枝は、いつの間にか駆け付けた睦霧の鉤爪によって防がれた。
「ざっけんな睦!!疑わしきはブッ壊せだろ!!」
「きゃあぁっ!?」
《バキバキメキャッ!!》
夏帆を追った有紗への枝は、郎琶が怒りに任せて破壊!!
乱暴な奴だ。
「睦霧ちゃんに一票(´・ω・`)無闇に争うのは良くないよ(´・ω・`)」
「俺も睦霧に一票。悪意は感じない。後、そっちの垂れ目がビビり過ぎ」
《ピシャアァンッ!!》
“雷獣”に残りの枝を排除させた少年と、綾志に目をやる若洲。
「私も賛成だぁお(汗)味方は欲しい(汗)」
「うん、味方は欲しいよね」
「んで、早く帰りたい」
「私も一票投じます」
夏帆、有紗、光也、久留米は挙手した。
「でも、共闘して僕達の方に巻き込んじゃったら悪いよ？」
「確かにな。俺達の方は“クリスタルの樹”が関係あるかも知れないが、若洲達には多分“クトゥルフ神話”なんぞ関係無いだろう」
「郎琶君が怖いですぅ(泣)」
池弥と義隆はともかく、綾志の理由が情けない。
「それに孫杉先輩の・・・っ」
「チビ？」
《ゆらぁ・・・》
突然、綾志の視界が揺れた。
『話が進まんなぁ？』
「テメッ・・・」
『どぉれ？少し手伝ってやらうかぇ？』
「待ちやがれ夢影っ」
《トッ》
かと思えば、綾志の口から彼の物とは思えぬ冷たい声が発され、その体は迷いなく“クリスタルの樹”に近付く。
《ギュワンッ》
「チビっ・・・」
「綾志君っ」
“綾志”は、そのまま“クリスタルの樹”から飛び出した触手に捕らわれ、“樹の中”に取り込まれた。
そう、助けようと手を伸ばした義隆と有紗を巻き込んで。
〜？？？〜
「・・・チビ!!原野!!起きろ!!」
「ぅ・・・ぴっくしょん!!」
「・・・」
気付いた時、義隆達は黒い部屋に居た。
「よ、義隆さ・・・ぴゃえぇっ!?」
「チビだな？構えろ、お前は原野を守れ」
《ズシャアァアッ!!》
そして現在、義隆は襲い来る“何か”と戦っていた。
「ささ寒い・・・ひゃうっ!?」
《ザンッ!!》
肌寒さに震えつつ、綾志も“何か”に応戦。
「なななな何ですかっ(泣)この全身白タイツさん達っ(泣)」
「知らん。いきなり寝込みを襲って来た。殺気が無くて反応が遅れたが、寒さで目覚めて何とか防げた」
《ガキィンッ》
“何か”は次から次へと現れる。
「とにかく逃げましょう(泣)出口、あっちみたいだしっ(泣)」
「なら行け。開けて来い。ただし急げよ？原野から離れて扉に行くならな？」
「ぴぇっ!?」
「原野は気絶してる。扉までは距離がある。俺は戦ってる。馬鹿でも分かるだろ？」
《ズシャアァッ!!》
義隆は敵を薙ぎ払いながら言った。
「っ・・・短距離走なら得意ですぅ(泣)」
《ダッ》
綾志は打刀を携え、扉に向かう。
「マジで何だ、この全身白タイツ共？狩れば消えるが、血も悲鳴も一切なしとか。殺気も気配もないし、人形みたいだな」
《ザザザザンッ!!》
義隆は薙刀を振り回し、敵を凪ぎ払う。
「ふぇえぇっ(泣)開かないぃっ(泣)」
《ガッガッガッ・・・》
綾志は扉に辿り着いたが、何と押しても引いても上下左右に動かそうとしても、扉が開かない!!
「早くっ・・・しないと・・・原野先輩がっ・・・!!」
《チャキッ》
綾志は、震えながら打刀を構えた。
「斬るっ・・・!!」
《ズシャアァッ!!》
そして打刀で扉を斬り裂いた!!
ただし泣きべそかきながら!!
「お前、ヘタレで泣き虫なクソガキのくせに実力あるよな」
《バッ》
扉が解体されたので、義隆が有紗を肩に担いで走って来た!!
「追っ手を斬り伏せろ!!」
「ひゃいぃーっ(泣)」
《ザシュンッ!!》
義隆が扉の外へ飛び出し、追い縋る全身白タイツは綾志に斬られた。
綾志は、そのまま義隆を追う・・・
続く
「俺達も武器が欲しいよなぁ」
「そうですね」
「と、取り敢えず眠らせる？」
《ズシャアッ》
光也、久留米、池弥は、襲い掛かる枝を意外と余裕で回避している。
まあ池弥は“人間”ではないから意外でもないだろうか？
「・・・あそこだっ!!」
「夏帆ちゃん!?」
《バッ》
そんな中、夏帆が何かに気付いて樹の幹へ突っ込む!!
有紗は思わず後を追った!!
「くっきゃあぁあっ!!」
《ザシュンッ!!》
多少の傷など意に介さず、紙一重で枝を回避しながら幹まで辿り着いた夏帆は、ある一点に短刀を突き刺した!!
《ズワッ》
「やった・・・」
「夏帆ちゃん危ないっ!!」
短刀が刺さった場所から黒い霧が飛び出し、その周りだけが赤茶色から透明な水晶色に変わる。
しかし枝の攻撃は止まず、夏帆を背後から襲う!!
「とりま、素性は追々として共闘に一票」
「くきゃっ」
《ガキィインッ》
その枝は、いつの間にか駆け付けた睦霧の鉤爪によって防がれた。
「ざっけんな睦!!疑わしきはブッ壊せだろ!!」
「きゃあぁっ!?」
《バキバキメキャッ!!》
夏帆を追った有紗への枝は、郎琶が怒りに任せて破壊!!
乱暴な奴だ。
「睦霧ちゃんに一票(´・ω・`)無闇に争うのは良くないよ(´・ω・`)」
「俺も睦霧に一票。悪意は感じない。後、そっちの垂れ目がビビり過ぎ」
《ピシャアァンッ!!》
“雷獣”に残りの枝を排除させた少年と、綾志に目をやる若洲。
「私も賛成だぁお(汗)味方は欲しい(汗)」
「うん、味方は欲しいよね」
「んで、早く帰りたい」
「私も一票投じます」
夏帆、有紗、光也、久留米は挙手した。
「でも、共闘して僕達の方に巻き込んじゃったら悪いよ？」
「確かにな。俺達の方は“クリスタルの樹”が関係あるかも知れないが、若洲達には多分“クトゥルフ神話”なんぞ関係無いだろう」
「郎琶君が怖いですぅ(泣)」
池弥と義隆はともかく、綾志の理由が情けない。
「それに孫杉先輩の・・・っ」
「チビ？」
《ゆらぁ・・・》
突然、綾志の視界が揺れた。
『話が進まんなぁ？』
「テメッ・・・」
『どぉれ？少し手伝ってやらうかぇ？』
「待ちやがれ夢影っ」
《トッ》
かと思えば、綾志の口から彼の物とは思えぬ冷たい声が発され、その体は迷いなく“クリスタルの樹”に近付く。
《ギュワンッ》
「チビっ・・・」
「綾志君っ」
“綾志”は、そのまま“クリスタルの樹”から飛び出した触手に捕らわれ、“樹の中”に取り込まれた。
そう、助けようと手を伸ばした義隆と有紗を巻き込んで。
〜？？？〜
「・・・チビ!!原野!!起きろ!!」
「ぅ・・・ぴっくしょん!!」
「・・・」
気付いた時、義隆達は黒い部屋に居た。
「よ、義隆さ・・・ぴゃえぇっ!?」
「チビだな？構えろ、お前は原野を守れ」
《ズシャアァアッ!!》
そして現在、義隆は襲い来る“何か”と戦っていた。
「ささ寒い・・・ひゃうっ!?」
《ザンッ!!》
肌寒さに震えつつ、綾志も“何か”に応戦。
「なななな何ですかっ(泣)この全身白タイツさん達っ(泣)」
「知らん。いきなり寝込みを襲って来た。殺気が無くて反応が遅れたが、寒さで目覚めて何とか防げた」
《ガキィンッ》
“何か”は次から次へと現れる。
「とにかく逃げましょう(泣)出口、あっちみたいだしっ(泣)」
「なら行け。開けて来い。ただし急げよ？原野から離れて扉に行くならな？」
「ぴぇっ!?」
「原野は気絶してる。扉までは距離がある。俺は戦ってる。馬鹿でも分かるだろ？」
《ズシャアァッ!!》
義隆は敵を薙ぎ払いながら言った。
「っ・・・短距離走なら得意ですぅ(泣)」
《ダッ》
綾志は打刀を携え、扉に向かう。
「マジで何だ、この全身白タイツ共？狩れば消えるが、血も悲鳴も一切なしとか。殺気も気配もないし、人形みたいだな」
《ザザザザンッ!!》
義隆は薙刀を振り回し、敵を凪ぎ払う。
「ふぇえぇっ(泣)開かないぃっ(泣)」
《ガッガッガッ・・・》
綾志は扉に辿り着いたが、何と押しても引いても上下左右に動かそうとしても、扉が開かない!!
「早くっ・・・しないと・・・原野先輩がっ・・・!!」
《チャキッ》
綾志は、震えながら打刀を構えた。
「斬るっ・・・!!」
《ズシャアァッ!!》
そして打刀で扉を斬り裂いた!!
ただし泣きべそかきながら!!
「お前、ヘタレで泣き虫なクソガキのくせに実力あるよな」
《バッ》
扉が解体されたので、義隆が有紗を肩に担いで走って来た!!
「追っ手を斬り伏せろ!!」
「ひゃいぃーっ(泣)」
《ザシュンッ!!》
義隆が扉の外へ飛び出し、追い縋る全身白タイツは綾志に斬られた。
綾志は、そのまま義隆を追う・・・
続く
〜？？？〜
「うぉらぁあっ」
「ぶぇえぇんっ(泣)」
《ザザーッ》
黒い部屋から飛び出した義隆と綾志。
「実力あるくせに一々泣くな肛門に銃口ぶち込んで発砲すんぞオラ」
「よ、義隆さ、言葉が・・・誰か居ますぅうっ(泣)」
《チャキッ》
義隆が呆れていると、綾志が何者かの気配を察知。
有紗を肩に担いでいる義隆より前に出て、打刀を構える。
「さっきの“白タイツ”共の主人か？」
「わわわ分かりませんけどっ(泣)」
《トッ》
二人の視線の先に現れたのは。
「えーと、確かこの辺に・・・わぁあぁあっ!?」
「びぇえぇえっ!?」
「うるせっ」
ボーイッシュな身なりの、少女だった。
『弥生様、どうされました？』
「アズ!!ななな何か刃物を持った人間が居るんだけど!?明らかに“付喪神”ぢゃないよ!?」
更に後ろから中性的な雰囲気の男性が現れ、少女が慌てて振り返る。
『・・・ふむ、確かに人間ですね？それも、かなり稀有な』
「はわわわわっ!?つつつ“付喪神”って!?何の話ですか!?」
「誰だテメェ等？」
アズ、と呼ばれた男性は、綾志達を見て微笑んだ。
『誰何の問いは自らが名乗ってから。それが日本人の礼儀なのでは？』
「僕は藤沢 弥生。君達は？」
『・・・弥生様？』
「僕の名はアズが言っちゃってるんだから、良いだろう？」
少女、弥生は肩を竦める。
「つ ひぎゃっ!?」
《ドガッ!!》
「コイツは月雛、俺は義隆、寝てるのが原野だ」
フルネームを名乗ろうとした綾志の尻を蹴り、義隆が紹介を述べた。
「ぶぇえぇんっ!!痛いよぉお!!」
『おやおや可哀想に？坊っちゃまが泣いてしまわれた。私はアズラエル。どうぞ宜しく』
尻を押さえる綾志に苦笑を漏らし、アズラエルは頭を下げた。
「僕達、この屋敷に蔓延る“付喪神”を退治しているんだ。君達は何故ココに・・・」
「アズラエル・・・って・・・」
「原野？」
弥生が問うていると、目を覚ました有紗が声を上げた。
「まさか・・・“死の天使アズリエル”・・・貴方は“死神”・・・？」
「は？？？」
『ふむ、そう呼ばれる場合もありますね？』
有紗は義隆の肩から下ろされた。
『ですが私は“見習い天使”。弥生様の魂を回収しない限り、“死神”にはなれません』
「回収されて堪るか(汗)」
にこやかなアズラエルに、弥生が突っ込む。
『私は弥生様の魂を奪う代わり、“付喪神”の鎮圧にお付き合い頂いているのです』
「僕はアズを“死神”にさせない代わり、アズの特別任務に貢献しているんだ」
『「だから、そこを退いて(頂けますか)くれるかな？」』
《ガガッ!!》
二名は言い様に綾志達の脇を通り抜け、その後ろの冷蔵庫を弥生が力一杯に閉じた。
「なっ・・・」
「見付けた、この部屋の“付喪神”は君だね？」
『その魂、貰い受けましょう』
《ズバァッ!!》
弥生が触れた次の瞬間、冷蔵庫から白い着物の男性が吐き出され、それをアズラエルが召喚した大鎌で斬った。
「ぷふぅ(汗)他の部屋も探さなくっちゃ(汗)」
『そうですね』
弥生は疲れているが、アズラエルは笑顔だ。
〜その頃〜
『〜♪』
《ズズーン・・・》
綾志達を連れ去られた後、“クリスタルの樹”は池弥の“歌”で眠りに就いていた。
「良かった。樹は動物じゃないけど生きてるから、時間はかかるけど“歌”が効くんだ」
「くっきゃ!!急いで三人を助けなきゃだぁお!!」
安堵する池弥と、焦る夏帆。
「気持ちは分かるが、どうやって助ける？」
「三人が“クリスタルの樹”を通じて“向こう側”に行ったなら、私達も“向こう側”に行く方法を探さないと」
光也と久留米は“クリスタルの樹”を見上げて考える。
「そ、それなら(´・ω・`)私の“木蓮”が何とか出来るかも(´・ω・`)」
「“木蓮”？？？」
蔵騎の言葉に、光也が首を傾げる。
「“木”属性の使役だよ(´・ω・`)」
『我とは相性が悪いな』
《フッ》
蔵騎が札を構えると、“雷獣”が姿を消した。
《ギュルッ》
『・・・』
「“木蓮”、“クリスタルの樹”と意識を繋げて(´・ω・`)」
札が放たれ、現れたのは美しい着物を着て木蓮の髪飾りをした、女装の青年。
彼は“クリスタルの樹”に触れ、瞳を閉じた・・・
続く
「うぉらぁあっ」
「ぶぇえぇんっ(泣)」
《ザザーッ》
黒い部屋から飛び出した義隆と綾志。
「実力あるくせに一々泣くな肛門に銃口ぶち込んで発砲すんぞオラ」
「よ、義隆さ、言葉が・・・誰か居ますぅうっ(泣)」
《チャキッ》
義隆が呆れていると、綾志が何者かの気配を察知。
有紗を肩に担いでいる義隆より前に出て、打刀を構える。
「さっきの“白タイツ”共の主人か？」
「わわわ分かりませんけどっ(泣)」
《トッ》
二人の視線の先に現れたのは。
「えーと、確かこの辺に・・・わぁあぁあっ!?」
「びぇえぇえっ!?」
「うるせっ」
ボーイッシュな身なりの、少女だった。
『弥生様、どうされました？』
「アズ!!ななな何か刃物を持った人間が居るんだけど!?明らかに“付喪神”ぢゃないよ!?」
更に後ろから中性的な雰囲気の男性が現れ、少女が慌てて振り返る。
『・・・ふむ、確かに人間ですね？それも、かなり稀有な』
「はわわわわっ!?つつつ“付喪神”って!?何の話ですか!?」
「誰だテメェ等？」
アズ、と呼ばれた男性は、綾志達を見て微笑んだ。
『誰何の問いは自らが名乗ってから。それが日本人の礼儀なのでは？』
「僕は藤沢 弥生。君達は？」
『・・・弥生様？』
「僕の名はアズが言っちゃってるんだから、良いだろう？」
少女、弥生は肩を竦める。
「つ ひぎゃっ!?」
《ドガッ!!》
「コイツは月雛、俺は義隆、寝てるのが原野だ」
フルネームを名乗ろうとした綾志の尻を蹴り、義隆が紹介を述べた。
「ぶぇえぇんっ!!痛いよぉお!!」
『おやおや可哀想に？坊っちゃまが泣いてしまわれた。私はアズラエル。どうぞ宜しく』
尻を押さえる綾志に苦笑を漏らし、アズラエルは頭を下げた。
「僕達、この屋敷に蔓延る“付喪神”を退治しているんだ。君達は何故ココに・・・」
「アズラエル・・・って・・・」
「原野？」
弥生が問うていると、目を覚ました有紗が声を上げた。
「まさか・・・“死の天使アズリエル”・・・貴方は“死神”・・・？」
「は？？？」
『ふむ、そう呼ばれる場合もありますね？』
有紗は義隆の肩から下ろされた。
『ですが私は“見習い天使”。弥生様の魂を回収しない限り、“死神”にはなれません』
「回収されて堪るか(汗)」
にこやかなアズラエルに、弥生が突っ込む。
『私は弥生様の魂を奪う代わり、“付喪神”の鎮圧にお付き合い頂いているのです』
「僕はアズを“死神”にさせない代わり、アズの特別任務に貢献しているんだ」
『「だから、そこを退いて(頂けますか)くれるかな？」』
《ガガッ!!》
二名は言い様に綾志達の脇を通り抜け、その後ろの冷蔵庫を弥生が力一杯に閉じた。
「なっ・・・」
「見付けた、この部屋の“付喪神”は君だね？」
『その魂、貰い受けましょう』
《ズバァッ!!》
弥生が触れた次の瞬間、冷蔵庫から白い着物の男性が吐き出され、それをアズラエルが召喚した大鎌で斬った。
「ぷふぅ(汗)他の部屋も探さなくっちゃ(汗)」
『そうですね』
弥生は疲れているが、アズラエルは笑顔だ。
〜その頃〜
『〜♪』
《ズズーン・・・》
綾志達を連れ去られた後、“クリスタルの樹”は池弥の“歌”で眠りに就いていた。
「良かった。樹は動物じゃないけど生きてるから、時間はかかるけど“歌”が効くんだ」
「くっきゃ!!急いで三人を助けなきゃだぁお!!」
安堵する池弥と、焦る夏帆。
「気持ちは分かるが、どうやって助ける？」
「三人が“クリスタルの樹”を通じて“向こう側”に行ったなら、私達も“向こう側”に行く方法を探さないと」
光也と久留米は“クリスタルの樹”を見上げて考える。
「そ、それなら(´・ω・`)私の“木蓮”が何とか出来るかも(´・ω・`)」
「“木蓮”？？？」
蔵騎の言葉に、光也が首を傾げる。
「“木”属性の使役だよ(´・ω・`)」
『我とは相性が悪いな』
《フッ》
蔵騎が札を構えると、“雷獣”が姿を消した。
《ギュルッ》
『・・・』
「“木蓮”、“クリスタルの樹”と意識を繋げて(´・ω・`)」
札が放たれ、現れたのは美しい着物を着て木蓮の髪飾りをした、女装の青年。
彼は“クリスタルの樹”に触れ、瞳を閉じた・・・
続く
〜クリスタルの樹side〜
『・・・』
《トクン・・・トクン・・・》
蔵騎の“木蓮”が、“クリスタルの樹”との同調を試みる。
《トクン・・・トクン・・・・・・ドクンッ!!》
『っーーー!!』
「“木蓮”っ!?」
しばしの沈黙の後、“木蓮”の身体に衝撃が走り、蔵騎が叫んだ!!
「どうした蔵騎先輩!?」
「いっ・・・意識は繋がったけど・・・キツイっ・・・!!」
《ボタボタボタッ》
異変を感じて若洲が声を掛けた時には、蔵騎の額が裂けて血が溢れ出していた!!
「おい蔵ぁ!!一旦意識を離させろ!!お前の脳ミソが飛び出しちまう!!」
「蔵騎っ!!」
《キュアァアッ》
郎琶が“木蓮”を止めに入り、睦霧は蔵騎の額を“治癒”し始めた。
「に・・・二度も繋げたくない痛さだよっ・・・行って・・・早くっ・・・!!」
《ズァアァアッ》
蔵騎が苦し気に言うと、“クリスタルの樹”の根元に“空洞”が出現!!
「蔵騎さんっ・・・行こう皆!!」
「はいっ」
「有難うだぁお!!」
「恩に着るぜっ」
《バッ》
それを受け、池弥達は“空洞”に駆け込んだ!!
目指すは、先に取り込まれた三人のいる場所。
〜？？？〜
「ぐすっ(泣)お化け恐い(泣)」
「“付喪神”だよ綾・・・月雛君？」
「似たようなモンだろ」
こちら、謎の屋敷を探索する綾志達。
「別にフルネーム割れたって何もないのに」
『警戒されていますね』
先頭は弥生とアズラエル。
この二名と行動している為、綾志と有紗は名前を伏せている。
「おい藤沢。“付喪神”は後何体居るんだ？」
「ん？僕が感知したのは三体かな？隠蔽が得意な奴さえ居なければ、ね？」
義隆に問われ、弥生が笑顔で答える。
『大丈夫ですよ、三体だけです。“付喪神”が気配を消した所で、私には隠せませんから』
「“死の天使”は魂を見逃さないって事ですね」
「いいいイキナリ飛び出して来たりしませんよねっ(泣)」
アズラエルの後ろに有紗、その背に綾志が隠れつつ、先へ進む。
「“付喪神”は“本体”のある空間から出られないから、奇襲はされないハズだよ？」
「つーかチビよぉ、しんがりなんだから、シャキッとしやがれ」
「だだだだって恐いですぅう(泣)」
綾志は、ひたすら震えている。
『まあ、例外もありますが』
「え？？？」
『動ける“付喪神”も居るのですよ。“本体”を持ち運べれば良いのですから』
「・・・台車が付いていたり、そこまで大きくなければ、か？」
《カタンッ》
アズラエルの言葉を受け、義隆が何かを理解した。
それを肯定するように、後ろから物音がする。
「うわぁあぁんっ(泣)頭が傘のお化けぇえっ(泣)」
「ここに居るんだから、そうだろうな。一見すると傘を被った変質者だが」
「まあ網傘(昔の被る傘)じゃなく布の傘だから、変質者かもね？普通はレインコート着るよね、あの場合？」
《ジャキンッ》
現れたモノに反応し、綾志と義隆が武器を構える。
「僕が“具現化”しなくても、人前に姿を現せている？アレって“中級付喪神”？」
『そうですね』
弥生はアズラエルの背に隠れ、ズボンに付けた日本刀型のキーホルダーを握る。
「“具現化”？？？」
「あー、僕は“付喪神”に実体を与えられるんだよ。さっきの“冷蔵庫”みたいに」
『来ますよ』
《グワッ》
有紗の問いに、弥生がなるべく簡潔に答えた。
《ガキィインッ》
「びぇえぇえっ(泣)」
「相手はたかが傘の化物だろ!!日本刀ぶん回してる奴が泣くな!!」
人型の“付喪神”が両腕から傘の骨組みを生やして襲って来たので、綾志が打刀で防御!!
『先程の要領で、私が“付喪神”を斬ります。隙が出来るよう捌いて下さい』
「無茶ですぅうっ(泣)」
《ガッ ガッ ガキィインッ》
アズラエルは大鎌を構え、機を窺っている。
「わぁあぁんっ(泣)」
『御覚悟っ』
《シパァアーンッ》
綾志が泣きながら“付喪神”の体勢を僅かに崩させ、アズラエルが狩る!!
意外と上手く行ったようだ。
「月雛君、お疲れ様」
「後二体か？」
「そのはずだけど」
有紗が綾志を労い、義隆と弥生は、さっさと歩き出した。
〜その頃〜
「月雛〜？原野先輩〜？義隆先輩〜？」
「何処に行ったんでしょう？」
「そもそも、ここ何処だぁお？」
「うーん、病院？かなぁ？」
蔵騎の協力により、“クリスタルの樹”の中に入った光也達。
辿り着いたのは、柵の付いたベッドが並ぶ部屋。
「学校ではないのですね」
「みたいだね？」
久留米と池弥が顔を見合わせる。
「ひとまず室内を探索して、三人の手掛かりが無いか調べるぉ」
「そうだな。義隆先輩とか、上手く手掛かりを残してくれてそうだし」
「そ・・・久留米君!!」
その時・・・
続く
『・・・』
《トクン・・・トクン・・・》
蔵騎の“木蓮”が、“クリスタルの樹”との同調を試みる。
《トクン・・・トクン・・・・・・ドクンッ!!》
『っーーー!!』
「“木蓮”っ!?」
しばしの沈黙の後、“木蓮”の身体に衝撃が走り、蔵騎が叫んだ!!
「どうした蔵騎先輩!?」
「いっ・・・意識は繋がったけど・・・キツイっ・・・!!」
《ボタボタボタッ》
異変を感じて若洲が声を掛けた時には、蔵騎の額が裂けて血が溢れ出していた!!
「おい蔵ぁ!!一旦意識を離させろ!!お前の脳ミソが飛び出しちまう!!」
「蔵騎っ!!」
《キュアァアッ》
郎琶が“木蓮”を止めに入り、睦霧は蔵騎の額を“治癒”し始めた。
「に・・・二度も繋げたくない痛さだよっ・・・行って・・・早くっ・・・!!」
《ズァアァアッ》
蔵騎が苦し気に言うと、“クリスタルの樹”の根元に“空洞”が出現!!
「蔵騎さんっ・・・行こう皆!!」
「はいっ」
「有難うだぁお!!」
「恩に着るぜっ」
《バッ》
それを受け、池弥達は“空洞”に駆け込んだ!!
目指すは、先に取り込まれた三人のいる場所。
〜？？？〜
「ぐすっ(泣)お化け恐い(泣)」
「“付喪神”だよ綾・・・月雛君？」
「似たようなモンだろ」
こちら、謎の屋敷を探索する綾志達。
「別にフルネーム割れたって何もないのに」
『警戒されていますね』
先頭は弥生とアズラエル。
この二名と行動している為、綾志と有紗は名前を伏せている。
「おい藤沢。“付喪神”は後何体居るんだ？」
「ん？僕が感知したのは三体かな？隠蔽が得意な奴さえ居なければ、ね？」
義隆に問われ、弥生が笑顔で答える。
『大丈夫ですよ、三体だけです。“付喪神”が気配を消した所で、私には隠せませんから』
「“死の天使”は魂を見逃さないって事ですね」
「いいいイキナリ飛び出して来たりしませんよねっ(泣)」
アズラエルの後ろに有紗、その背に綾志が隠れつつ、先へ進む。
「“付喪神”は“本体”のある空間から出られないから、奇襲はされないハズだよ？」
「つーかチビよぉ、しんがりなんだから、シャキッとしやがれ」
「だだだだって恐いですぅう(泣)」
綾志は、ひたすら震えている。
『まあ、例外もありますが』
「え？？？」
『動ける“付喪神”も居るのですよ。“本体”を持ち運べれば良いのですから』
「・・・台車が付いていたり、そこまで大きくなければ、か？」
《カタンッ》
アズラエルの言葉を受け、義隆が何かを理解した。
それを肯定するように、後ろから物音がする。
「うわぁあぁんっ(泣)頭が傘のお化けぇえっ(泣)」
「ここに居るんだから、そうだろうな。一見すると傘を被った変質者だが」
「まあ網傘(昔の被る傘)じゃなく布の傘だから、変質者かもね？普通はレインコート着るよね、あの場合？」
《ジャキンッ》
現れたモノに反応し、綾志と義隆が武器を構える。
「僕が“具現化”しなくても、人前に姿を現せている？アレって“中級付喪神”？」
『そうですね』
弥生はアズラエルの背に隠れ、ズボンに付けた日本刀型のキーホルダーを握る。
「“具現化”？？？」
「あー、僕は“付喪神”に実体を与えられるんだよ。さっきの“冷蔵庫”みたいに」
『来ますよ』
《グワッ》
有紗の問いに、弥生がなるべく簡潔に答えた。
《ガキィインッ》
「びぇえぇえっ(泣)」
「相手はたかが傘の化物だろ!!日本刀ぶん回してる奴が泣くな!!」
人型の“付喪神”が両腕から傘の骨組みを生やして襲って来たので、綾志が打刀で防御!!
『先程の要領で、私が“付喪神”を斬ります。隙が出来るよう捌いて下さい』
「無茶ですぅうっ(泣)」
《ガッ ガッ ガキィインッ》
アズラエルは大鎌を構え、機を窺っている。
「わぁあぁんっ(泣)」
『御覚悟っ』
《シパァアーンッ》
綾志が泣きながら“付喪神”の体勢を僅かに崩させ、アズラエルが狩る!!
意外と上手く行ったようだ。
「月雛君、お疲れ様」
「後二体か？」
「そのはずだけど」
有紗が綾志を労い、義隆と弥生は、さっさと歩き出した。
〜その頃〜
「月雛〜？原野先輩〜？義隆先輩〜？」
「何処に行ったんでしょう？」
「そもそも、ここ何処だぁお？」
「うーん、病院？かなぁ？」
蔵騎の協力により、“クリスタルの樹”の中に入った光也達。
辿り着いたのは、柵の付いたベッドが並ぶ部屋。
「学校ではないのですね」
「みたいだね？」
久留米と池弥が顔を見合わせる。
「ひとまず室内を探索して、三人の手掛かりが無いか調べるぉ」
「そうだな。義隆先輩とか、上手く手掛かりを残してくれてそうだし」
「そ・・・久留米君!!」
その時・・・
続く
〜病室side〜
「ひとまず室内を探索して、三人の手掛かりが無いか調べるぉ」
「そうだな。義隆先輩とか、上手く手掛かりを残してくれてそうだし」
「そ・・・久留米君!!」
「っ!?」
《ベキャッ!!》
夏帆と光也が左右に別れて室内探索を開始し、池弥も動こうとした瞬間・・・久留米の側にあったベッドの下から血染めの手が飛び出して来た!!
まあ久留米に踏まれた訳だが。
「い、今、何か凄い音がしなかったかぉ(汗)」
「したなぁ(汗)“ベキャッ!!”とか(汗)」
音に気付いて夏帆と光也が振り向く。
「思わず踏んで破壊してしまいましたが(苦笑)」
「正解だよ!!皆、構えて!!」
《チャキッ》
池弥は鋭い声で注意を促し、ナイフを構えた!!
《オゾゾゾゾゾンッ》
「くっきゃあぁあ!?」
「血まみれのゾンビ!?」
「速いですよ!?」
ベッドの下や天井を突き破り、明らかに友好的でないモノ達が一同を襲う!!
「人型の化物なら!!懐に入ればこっちのモノだぁお!!」
《ズバーッ!!》
夏帆は持ち前の機動力と小柄な体を駆使し、短刀で次々と敵を討伐して行く。
「これじゃ手掛かりを探しようがないねっ」
《グショアッ!!》
池弥は池弥で、魔力を込めたナイフを振るって敵を切り殺す。
「あらよっと!!」
「危ない危ない」
《ゴキンッ!!》
武器のない光也と久留米も負けてはいない。
敵の頭部を打撃や蹴りで破壊している。
「どうするぉ池弥先輩!?部屋から出るか、ゾンビ駆逐して室内を調べるか!?」
「手掛かりがあっても、きっと滅茶苦茶になって判別出来ないよ!!脱出しよう!!」
《ズシャアッ!!》
池弥は血飛沫を撒き散らしながら叫んだ。
「部屋を脱出してもゾンビだらけ、なんてフラグかな!?」
「立ち止まらずに開けましょうっ」
《ドゴッ!!》
光也と久留米は敵を蹴り倒し、出入口の扉へ向かう。
「「せーのっ!!」」
《ドカシャアンッ!!》
そして二人で息を合わせ、ダブルキックで扉を蹴破り脱出!!
「夏帆ちゃん!!」
「くっきゃ!!」
《ズパズパァッ!!》
池弥と夏帆も、ゾンビを薙ぎ倒して部屋の外へ!!
「そぉれっ!!」
「「「えっΣ(￣ロ￣lll)!?」」」
《ガッシャアァンッ!!》
そのまま光也と久留米が蹴破った扉を持ち上げ、大体元通りになるよう蹴りで無理矢理に嵌め込んだ池弥。
意外と脳筋か!?
「長くは保たない!!行こう!!」
「「「あ、はい(汗)」」
《タッ》
池弥を先頭に、一同はその場を離れた。
〜義隆side〜
「付喪神は、後二体・・・だったよな？」
「そそそそうだけどっ(汗)」
「わぁあぁんっ!!」
《ダダダダダダッ》
付喪神を探す義隆達は、腹から触手の生えた巨大な鮫に追い回されていた。
「アズ!!アレは何!?」
『クトゥルフの“全ての鮫の父”にあたるモノ、ですね。“カルカロドン”の類いかと』
《ダダダダダダッ》
小烏丸(刀剣乱舞)みたいな紹介だ。
《ドゴォオンッ!!》
「くっそ!!応戦しようにも、デカイくせに速い!!チビ!!隙を作れ!!」
「びぇえぇえっ!?ぼぼぼぼ僕がですか!?」
振り回される触手を回避しながら、義隆が叫ぶ。
「素早さは俺よりテメェが上だ!!」
「わぁあぁんっ!!」
「月雛君っ(汗)」
《バッ》
泣く割りには働く綾志、今回も敵へ突っ込んで行く。
「何でクトゥルフ神話の生物が襲って来るの？敵は付喪神のハズだよね？」
『ふむ？恐らく、彼等の敵なのでしょう。ねえ、原野さん？』
立ち止まって振り返り、鮫を睨む弥生。
アズラエルは爽やかに微笑み、有紗を見た。
ちなみにアズラエル、女子二人を然り気無く背に庇っています。
紳士な死神だ。
「確かに、クトゥルフ神話の生物なら私達の敵です。私達を閉じ込めていた空間だけじゃなく、ここまで追って来るなんて・・・」
「大丈夫なの(汗)」
『奴等は何処にでも現れますからね』
アズラエルは肩を竦めた。
「ふぇえぇんっ!!」
「ぬおりゃあぁあっ!!」
《ズッパァアァアッ!!》
そうこうしている内に、綾志と義隆が巨大な鮫を討伐。
「全員無事だな？さっさと残りの付喪神を探しに行くぞ？」
「ぐすんっ(泣)」
「月雛君、お疲れ様」
薙刀を肩に掛ける義隆。
さて、付喪神は何処だろうか？
「と言うかさぁ？君達は何でクトゥルフとやらに追われてるの？」
「それが、分からないんです」
「分からない？？？」
「ある日、突然・・・引きずり込まれるようになって・・・」
弥生の問いに、有紗が答える。
「アズ、何でだと思う？」
『月雛様の“中に居る”モノのせいでは？』
「ぴっ((((；゜Д゜)))!?」
アズラエルは綾志の胸部を指でつついた・・・
続く
「ひとまず室内を探索して、三人の手掛かりが無いか調べるぉ」
「そうだな。義隆先輩とか、上手く手掛かりを残してくれてそうだし」
「そ・・・久留米君!!」
「っ!?」
《ベキャッ!!》
夏帆と光也が左右に別れて室内探索を開始し、池弥も動こうとした瞬間・・・久留米の側にあったベッドの下から血染めの手が飛び出して来た!!
まあ久留米に踏まれた訳だが。
「い、今、何か凄い音がしなかったかぉ(汗)」
「したなぁ(汗)“ベキャッ!!”とか(汗)」
音に気付いて夏帆と光也が振り向く。
「思わず踏んで破壊してしまいましたが(苦笑)」
「正解だよ!!皆、構えて!!」
《チャキッ》
池弥は鋭い声で注意を促し、ナイフを構えた!!
《オゾゾゾゾゾンッ》
「くっきゃあぁあ!?」
「血まみれのゾンビ!?」
「速いですよ!?」
ベッドの下や天井を突き破り、明らかに友好的でないモノ達が一同を襲う!!
「人型の化物なら!!懐に入ればこっちのモノだぁお!!」
《ズバーッ!!》
夏帆は持ち前の機動力と小柄な体を駆使し、短刀で次々と敵を討伐して行く。
「これじゃ手掛かりを探しようがないねっ」
《グショアッ!!》
池弥は池弥で、魔力を込めたナイフを振るって敵を切り殺す。
「あらよっと!!」
「危ない危ない」
《ゴキンッ!!》
武器のない光也と久留米も負けてはいない。
敵の頭部を打撃や蹴りで破壊している。
「どうするぉ池弥先輩!?部屋から出るか、ゾンビ駆逐して室内を調べるか!?」
「手掛かりがあっても、きっと滅茶苦茶になって判別出来ないよ!!脱出しよう!!」
《ズシャアッ!!》
池弥は血飛沫を撒き散らしながら叫んだ。
「部屋を脱出してもゾンビだらけ、なんてフラグかな!?」
「立ち止まらずに開けましょうっ」
《ドゴッ!!》
光也と久留米は敵を蹴り倒し、出入口の扉へ向かう。
「「せーのっ!!」」
《ドカシャアンッ!!》
そして二人で息を合わせ、ダブルキックで扉を蹴破り脱出!!
「夏帆ちゃん!!」
「くっきゃ!!」
《ズパズパァッ!!》
池弥と夏帆も、ゾンビを薙ぎ倒して部屋の外へ!!
「そぉれっ!!」
「「「えっΣ(￣ロ￣lll)!?」」」
《ガッシャアァンッ!!》
そのまま光也と久留米が蹴破った扉を持ち上げ、大体元通りになるよう蹴りで無理矢理に嵌め込んだ池弥。
意外と脳筋か!?
「長くは保たない!!行こう!!」
「「「あ、はい(汗)」」
《タッ》
池弥を先頭に、一同はその場を離れた。
〜義隆side〜
「付喪神は、後二体・・・だったよな？」
「そそそそうだけどっ(汗)」
「わぁあぁんっ!!」
《ダダダダダダッ》
付喪神を探す義隆達は、腹から触手の生えた巨大な鮫に追い回されていた。
「アズ!!アレは何!?」
『クトゥルフの“全ての鮫の父”にあたるモノ、ですね。“カルカロドン”の類いかと』
《ダダダダダダッ》
小烏丸(刀剣乱舞)みたいな紹介だ。
《ドゴォオンッ!!》
「くっそ!!応戦しようにも、デカイくせに速い!!チビ!!隙を作れ!!」
「びぇえぇえっ!?ぼぼぼぼ僕がですか!?」
振り回される触手を回避しながら、義隆が叫ぶ。
「素早さは俺よりテメェが上だ!!」
「わぁあぁんっ!!」
「月雛君っ(汗)」
《バッ》
泣く割りには働く綾志、今回も敵へ突っ込んで行く。
「何でクトゥルフ神話の生物が襲って来るの？敵は付喪神のハズだよね？」
『ふむ？恐らく、彼等の敵なのでしょう。ねえ、原野さん？』
立ち止まって振り返り、鮫を睨む弥生。
アズラエルは爽やかに微笑み、有紗を見た。
ちなみにアズラエル、女子二人を然り気無く背に庇っています。
紳士な死神だ。
「確かに、クトゥルフ神話の生物なら私達の敵です。私達を閉じ込めていた空間だけじゃなく、ここまで追って来るなんて・・・」
「大丈夫なの(汗)」
『奴等は何処にでも現れますからね』
アズラエルは肩を竦めた。
「ふぇえぇんっ!!」
「ぬおりゃあぁあっ!!」
《ズッパァアァアッ!!》
そうこうしている内に、綾志と義隆が巨大な鮫を討伐。
「全員無事だな？さっさと残りの付喪神を探しに行くぞ？」
「ぐすんっ(泣)」
「月雛君、お疲れ様」
薙刀を肩に掛ける義隆。
さて、付喪神は何処だろうか？
「と言うかさぁ？君達は何でクトゥルフとやらに追われてるの？」
「それが、分からないんです」
「分からない？？？」
「ある日、突然・・・引きずり込まれるようになって・・・」
弥生の問いに、有紗が答える。
「アズ、何でだと思う？」
『月雛様の“中に居る”モノのせいでは？』
「ぴっ((((；゜Д゜)))!?」
アズラエルは綾志の胸部を指でつついた・・・
続く
〜・・・〜
「“それ”は元々、俺の“中に居た”存在だ。だがクトゥルフの連中に引きずり込まれるようになった事とは、無関係を主張している」
「よ、義隆、さん((((；・ω・))))」
義隆が、アズラエルの手を払った。
『では、その“武器”は？』
「引きずり込まれてから手に入れた物だ」
アズラエルが、義隆の薙刀を指す。
『その“武器”に導かれて転送された世界で、その“武器”または使い手に成り得る貴方達がクトゥルフに狙われている・・・とか？』
「・・・確かに、一世界ごとに一つの“武器”を手に入れている。何らかの理由で入手の阻止を目論んでいるなら、辻褄が合わなくもない」
義隆は眉間にシワを寄せた。
「仮にそうだとすると・・・っ」
《クンッ》
その時、義隆の服の裾が、綾志の居る方へ引っ張られた。
「何だ・・・っ!?」
「えぇっ!?」
振り向いた義隆。
だが、そこには誰も居ない。
弥生が目を見開いた。
「チビ!?原野!?」
「い、居ない!?何処に!?」
『クトゥルフ勢は本気のようですね』
《チャキッ》
三名は素早く身構え、辺りを警戒する。
「・・・そこだっ!!」
《ギュンッ》
何者かの気配を感じ取った義隆が、そちらに薙刀を振るう。
《トッ》
『相変わらず不躾な小僧だ・・・』
「シャンタク鳥!?」
相手はシャンタク鳥で、薙刀は軽々と止められてしまったが。
『また飛ばされたか』
「そう言うアンタは何してるんだ？」
義隆が、薙刀を収める。
『所用だ・・・死神。任務か？』
『ええ』
『使役連れで？この地に？』
「僕は相棒だ」
シャンタク鳥は、アズラエルを一瞥する。
『何にせよ、愚かな事だ』
『任務ですから。それに、“付喪神”を狩るだけですよ？残りは二体。無茶な任務ではありません・・・それだけなら、ね？』
アズラエルは、口角を吊り上げる。
『貴方がいらっしゃると言う事は、不穏な事態が発生しているようです・・・ねっ？』
『ふん』
「「どわっ!?」」
《ザザザザザサァアッ!!》
静かに火花を散らしていた人外二名が、急に天と地とに分かれて攻撃を放つ!!
それを受けて、天地が蜘蛛の子を散らすような動きで裂けた・・・
「“それ”は元々、俺の“中に居た”存在だ。だがクトゥルフの連中に引きずり込まれるようになった事とは、無関係を主張している」
「よ、義隆、さん((((；・ω・))))」
義隆が、アズラエルの手を払った。
『では、その“武器”は？』
「引きずり込まれてから手に入れた物だ」
アズラエルが、義隆の薙刀を指す。
『その“武器”に導かれて転送された世界で、その“武器”または使い手に成り得る貴方達がクトゥルフに狙われている・・・とか？』
「・・・確かに、一世界ごとに一つの“武器”を手に入れている。何らかの理由で入手の阻止を目論んでいるなら、辻褄が合わなくもない」
義隆は眉間にシワを寄せた。
「仮にそうだとすると・・・っ」
《クンッ》
その時、義隆の服の裾が、綾志の居る方へ引っ張られた。
「何だ・・・っ!?」
「えぇっ!?」
振り向いた義隆。
だが、そこには誰も居ない。
弥生が目を見開いた。
「チビ!?原野!?」
「い、居ない!?何処に!?」
『クトゥルフ勢は本気のようですね』
《チャキッ》
三名は素早く身構え、辺りを警戒する。
「・・・そこだっ!!」
《ギュンッ》
何者かの気配を感じ取った義隆が、そちらに薙刀を振るう。
《トッ》
『相変わらず不躾な小僧だ・・・』
「シャンタク鳥!?」
相手はシャンタク鳥で、薙刀は軽々と止められてしまったが。
『また飛ばされたか』
「そう言うアンタは何してるんだ？」
義隆が、薙刀を収める。
『所用だ・・・死神。任務か？』
『ええ』
『使役連れで？この地に？』
「僕は相棒だ」
シャンタク鳥は、アズラエルを一瞥する。
『何にせよ、愚かな事だ』
『任務ですから。それに、“付喪神”を狩るだけですよ？残りは二体。無茶な任務ではありません・・・それだけなら、ね？』
アズラエルは、口角を吊り上げる。
『貴方がいらっしゃると言う事は、不穏な事態が発生しているようです・・・ねっ？』
『ふん』
「「どわっ!?」」
《ザザザザザサァアッ!!》
静かに火花を散らしていた人外二名が、急に天と地とに分かれて攻撃を放つ!!
それを受けて、天地が蜘蛛の子を散らすような動きで裂けた・・・
〜？？？〜
「びぇえぇんっ!!」
「綾志君、落ち着いて？」
こちら、実は謎の黒い手によって拐われていた綾志と有紗。
綾志、安定の号泣。
「ふぐぅ(泣)そ、そそそうですね(泣)ぼぼぼ僕が頑張らなきゃ(泣)原野先輩は僕が守りまひゅっ(泣)」
「うん、有難う。まずは鼻をかもうね？」
顔がグチャグチャな綾志に、有紗がティッシュを渡す。
「・・・と、所で原野先輩(泣)僕達を襲って来るクトゥルフ、一貫性が無さ過ぎませんか？鮫だったり虫だったり鬼だったり(泣)怖いのは同じだけど(泣)」
「確かにそうだね。毎回手に入る武器には、“日本の刀剣”って共通点があるけれど」
二人は取り敢えず歩き出した。
「襲って来るのは、全クトゥルフ種族、なんでしょうか？」
「んー、でも前に会ったシャンタク鳥の系譜は襲って来なさそう？かなぁ？」
有紗は、自分達に対する興味が一切無さそうな青年(怪鳥)を思い出した。
「・・・“夢影”さんに、何か聞けたりしないでしょうか？」
「義隆さんから綾志君に移った“夢魔”？辞めた方が良いよ、きっと“代償”が・・・」
《ズルッ・・・》
しばらく歩いていると、嫌な気配を察知。
「原野先輩、さささ下がって・・・あぁ駄目だ(泣)四方から来てるぅうっ(泣)」
「走ろう綾志君!!」
《バッ》
気配を探ると、あっちこっちからゾンビが這い寄って来ている!!
綾志と有紗は、ひとまず逃げた。
「ぴゃあぁあっ(泣)」
『綾志君、落ち着いてっ』
《ズバッ!!》
行く手を阻むゾンビは、綾志が斬り捨てながら駆ける。
「どどど何処まで逃げれば・・・火炎放射!?」
「きゃあっ!?」
《ゴォオォオッ!!》
泣きながら逃げ道を探していた綾志。
その時、前方のゾンビが口から炎を放った!!
「ぞぞぞゾンビ型火炎放射ですかぁあっ!?」
「綾志君、危ない!!」
《ザパァアンッ!!》
ギリギリで火炎放射を回避した二人だが、その為に少し距離が空いてしまった。
それを突くように、綾志を横から濁流が拐う!!
「ガボガホガボッ!?」
「綾志く・・・きゃあっ!?」
《ヒュッ》
溺れながら遠くへ運ばれる綾志。
追い掛けようとした有紗に、ゾンビが殴りかかる。
(肉片が飛び散ってる!!気持ち悪・・・)
「あっ!?」
《ガッ》
一撃目は何とか回避したが、足がもつれて転倒!!
《ゾザザザザッ》
「ひぃいっ・・・!?」
そこへゾンビ達が這い寄り、有紗は掠れた悲鳴を上げる。
有紗は恐怖と嫌悪感で動けない!!
( どうしようどうしようどうしよう・・・)
「・・・あ」
一匹のゾンビが、有紗の喉を目掛けて、喰らい付こうとした・・・その時!!
《ズシャアァアッ!!》
「っ・・・!!」
(か、感触がっ・・・!!)
彼女の手に“脇差”が召喚され、放つ刃でゾンビの首を落とした!!
《ガシッ!!》
「ひっ・・・ぅあぁあぁあっ!?」
しかし反撃は続かなかった。
他のゾンビに腕を掴まれ、押さえ込まれ、足を噛まれてしまったのだ!!
(まずい!!ゾンビに噛まれたら!!私もゾンビになる!?今、近くに居るはずなのは綾志君だけ・・・あの子は仲間を攻撃出来ない!!)
「私が・・・仲間を殺すくらいならっ・・・!!」
《ズキンッ・・・》
噛まれた傷口が、有紗の心が、酷く痛む。
しかし彼女は、決断した。
(皆・・・ごめんなさい・・・)
《グッ・・・》
目を固く閉じ、舌を噛み切るべく、口を開ける。
「有紗ちゃんっ!!」
「動かないで!!」
「え」
《ズパパパァンッ!!》
そこへ現れたのは、クリスタルの樹の向こう側に居た池弥と夏帆。
有紗が舌を噛む前に、ナイフと“短刀”でゾンビを駆逐した。
《タタタタタッ》
「原野先輩!!」
「御無事ですか？」
少し遅れて、光也と久留米も駆け付ける。
「原野先輩、噛まれてるぉ!?」
「大丈夫!?すぐ治すからね!?」
「な、治るの？池弥君って凄いんだね(汗)」
《ビッ》
池弥は自身の手首をナイフで切り、有紗の傷口に血を垂らした。
「♪〜水面は煌めく 命の証 時を戻せ 傷を癒せ 穢れを洗い流す 母なる海の加護〜♪」
「さ、流石は“人魚の末裔”・・・」
《シュウゥウ・・・》
有紗の傷は、瞬く間に消えてしまった・・・
続く
「びぇえぇんっ!!」
「綾志君、落ち着いて？」
こちら、実は謎の黒い手によって拐われていた綾志と有紗。
綾志、安定の号泣。
「ふぐぅ(泣)そ、そそそうですね(泣)ぼぼぼ僕が頑張らなきゃ(泣)原野先輩は僕が守りまひゅっ(泣)」
「うん、有難う。まずは鼻をかもうね？」
顔がグチャグチャな綾志に、有紗がティッシュを渡す。
「・・・と、所で原野先輩(泣)僕達を襲って来るクトゥルフ、一貫性が無さ過ぎませんか？鮫だったり虫だったり鬼だったり(泣)怖いのは同じだけど(泣)」
「確かにそうだね。毎回手に入る武器には、“日本の刀剣”って共通点があるけれど」
二人は取り敢えず歩き出した。
「襲って来るのは、全クトゥルフ種族、なんでしょうか？」
「んー、でも前に会ったシャンタク鳥の系譜は襲って来なさそう？かなぁ？」
有紗は、自分達に対する興味が一切無さそうな青年(怪鳥)を思い出した。
「・・・“夢影”さんに、何か聞けたりしないでしょうか？」
「義隆さんから綾志君に移った“夢魔”？辞めた方が良いよ、きっと“代償”が・・・」
《ズルッ・・・》
しばらく歩いていると、嫌な気配を察知。
「原野先輩、さささ下がって・・・あぁ駄目だ(泣)四方から来てるぅうっ(泣)」
「走ろう綾志君!!」
《バッ》
気配を探ると、あっちこっちからゾンビが這い寄って来ている!!
綾志と有紗は、ひとまず逃げた。
「ぴゃあぁあっ(泣)」
『綾志君、落ち着いてっ』
《ズバッ!!》
行く手を阻むゾンビは、綾志が斬り捨てながら駆ける。
「どどど何処まで逃げれば・・・火炎放射!?」
「きゃあっ!?」
《ゴォオォオッ!!》
泣きながら逃げ道を探していた綾志。
その時、前方のゾンビが口から炎を放った!!
「ぞぞぞゾンビ型火炎放射ですかぁあっ!?」
「綾志君、危ない!!」
《ザパァアンッ!!》
ギリギリで火炎放射を回避した二人だが、その為に少し距離が空いてしまった。
それを突くように、綾志を横から濁流が拐う!!
「ガボガホガボッ!?」
「綾志く・・・きゃあっ!?」
《ヒュッ》
溺れながら遠くへ運ばれる綾志。
追い掛けようとした有紗に、ゾンビが殴りかかる。
(肉片が飛び散ってる!!気持ち悪・・・)
「あっ!?」
《ガッ》
一撃目は何とか回避したが、足がもつれて転倒!!
《ゾザザザザッ》
「ひぃいっ・・・!?」
そこへゾンビ達が這い寄り、有紗は掠れた悲鳴を上げる。
有紗は恐怖と嫌悪感で動けない!!
( どうしようどうしようどうしよう・・・)
「・・・あ」
一匹のゾンビが、有紗の喉を目掛けて、喰らい付こうとした・・・その時!!
《ズシャアァアッ!!》
「っ・・・!!」
(か、感触がっ・・・!!)
彼女の手に“脇差”が召喚され、放つ刃でゾンビの首を落とした!!
《ガシッ!!》
「ひっ・・・ぅあぁあぁあっ!?」
しかし反撃は続かなかった。
他のゾンビに腕を掴まれ、押さえ込まれ、足を噛まれてしまったのだ!!
(まずい!!ゾンビに噛まれたら!!私もゾンビになる!?今、近くに居るはずなのは綾志君だけ・・・あの子は仲間を攻撃出来ない!!)
「私が・・・仲間を殺すくらいならっ・・・!!」
《ズキンッ・・・》
噛まれた傷口が、有紗の心が、酷く痛む。
しかし彼女は、決断した。
(皆・・・ごめんなさい・・・)
《グッ・・・》
目を固く閉じ、舌を噛み切るべく、口を開ける。
「有紗ちゃんっ!!」
「動かないで!!」
「え」
《ズパパパァンッ!!》
そこへ現れたのは、クリスタルの樹の向こう側に居た池弥と夏帆。
有紗が舌を噛む前に、ナイフと“短刀”でゾンビを駆逐した。
《タタタタタッ》
「原野先輩!!」
「御無事ですか？」
少し遅れて、光也と久留米も駆け付ける。
「原野先輩、噛まれてるぉ!?」
「大丈夫!?すぐ治すからね!?」
「な、治るの？池弥君って凄いんだね(汗)」
《ビッ》
池弥は自身の手首をナイフで切り、有紗の傷口に血を垂らした。
「♪〜水面は煌めく 命の証 時を戻せ 傷を癒せ 穢れを洗い流す 母なる海の加護〜♪」
「さ、流石は“人魚の末裔”・・・」
《シュウゥウ・・・》
有紗の傷は、瞬く間に消えてしまった・・・
続く
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