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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】 戦略➃今日の基本、相互確証破壊戦略。

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➊相互確証破壊戦略とは双方共「相手国が先に攻撃してきても、依然お互いの国を完全破壊できる能力を持つ、それを互いに確認しあう」ことで、先制攻撃を阻止する構想。自分も必ず壊滅される状況を作ることによって、相互の先制攻撃を避ける革命的考え方。

❷2021-01-02 08:301
 核兵器の出現は戦略を一転させた。キッシンジャーの『核兵器と外交政策』の説明が核心をついている。
「熱核兵器の保有が増大することによって、戦争があまりにも危険なものと言わないまでも、少なくとも割の合わないものにさせる一種の行き詰まり状態を作り出している。それはもはや、戦争が考えられる政策追求の手段ではないという見識である。」
❸ 核戦略の核心は相互確証破壊戦略である。図で見てみよう。
 ソ連 →           米国(完全に破壊される)
 先ずソ連は米国を攻撃すれば、米国は完全に破壊される。
 米国 →           ソ連(完全に破壊される)
 米国がソ連を攻撃すれば、ソ連は完全に破壊される。

❹ この状態の中、米国・ソ連とも最初に攻撃したら、相手を打ち負かせる。量・質の点でどちらが比較優位にあるかは問題ではない。最初に攻撃した方が勝ちだ。大変に危険な状況である。ある日、ソ連が「米国を攻撃しよう」と思ったら、米国は完全に壊滅する。これをどう防ぐか。これが米国戦略家の最大の課題だった。

❺ 米国は戦略ミサイル搭載の原子力潜水艦を海深く潜らせている。ソ連が米国本土を攻撃してもこの原子力潜水艦は生き残る。これがソ連に壊滅的な攻撃を行う。従って、ソ連は先に核攻撃を行うことで米国を壊滅的に破壊できるが、同時に自国も報復攻撃をうけて、壊滅的な破壊をうける。

❻ この中、ソ連はどういう時に先に攻撃をするか。それは米国がソ連に先に核攻撃すると思った時である。相手が先に核攻撃をすると思ったら自分から先に核攻撃する。しかし、もし、米国が先制攻撃をしても、ソ連も同様に大量の核兵器を生き残らせることが出来て、依然として米国を完全破壊できる能力があるなら、米国は自国を完全に壊滅することにつながる政策はとらないだろうと確信できる。したがって先に核攻撃をする必要がない。相互確証破壊戦略とは、双方とも、「相手国が先に攻撃してきても、依然としてお互いの国を完全破壊できる能力を持つ」ことで、先制攻撃を阻止する構想である。順を追って、考えてみたい。

❼ 第一ステップ:米国ないしソ連     (先制攻撃)相手国(完全破壊)
 この段階ではまだ報復の核兵器(例えば原子力潜水艦に搭載)が温存されている。 
 第二ステップ:相手国      (報復攻撃)米国ないしソ連(完全破壊)
 これを確保することにより、先制攻撃の誘惑を断つ。
➑ 「相互に」「確実に」「相手国を破壊できること」を保障しあうことにより、互いに先制攻撃を避ける戦略である。このことは、相手に常に自国を完全に崩壊させる能力を認めることである。これは人類の長い戦略の歴史の中で初めての構想である。

❾ 勿論、「相手に自国を完全に破壊できることで安全を築く」という考えは簡単に支持されるものでない。逆に「悪の帝国・ソ連に我が国を何時でも壊滅できる能力を保証するなんて、許されない」という考えは単純明快、極めて自然な発想である。「ソ連は核攻撃をしてきても、この核兵器を全部撃ち落とせばいいではないか」、これも自然な発想である。この考え方がミサイル防衛構想である。ソ連が撃ってくるミサイルを全部撃沈すれば良い。そうすれば「自分が完全に壊滅する状況を作って安全を確保するよりはるかによい」という考えが出る。

❿ レーガン大統領は1,983年3月「我々はソ連のミサイルの脅威に、防御的な手段で対抗するプログラムを開始する。アメリカの安全が、ソ連の攻撃に対する報復によって保たれるのではなく、戦略弾道ミサイルを、米国国土に達する前に迎撃し、破壊できると知った時に初めて、自由な国民は安楽に暮らせるのではないか?」とする戦略防衛構想(SDI)俗称、「スター・ウォーズ」構想をぶち上げた。

⓫ レーガン大統領の構想は一般受けする。誰もがこの構想が実現することを望む。しかし、技術的、財政的に不可能である。少し考えてみれば不可能だとすぐ解る。大陸間弾道弾は秒速2−3KMのスピードである。打ち落とすためには相手が飛行中命中しなければならない。ミサイルの全長を20メートル程度として、100分の1秒の精度で一定地点に達しなければ命中しない。それも3次元の精度である。その撃墜は技術的に夢物語である。さらに攻撃する側はミサイルから複数の弾道を発射すればよい。囮の弾道を持てばよい。ミサイル数を増やせば良い。ミサイル防衛システムは攻撃ミサイルよりはるかに費用がかさむ。敵のミサイル数に見合う防衛システムの構築は財政的にもたない。マクナマラ国防長官はミサイル防御システムの可能性を検討させたが、結局実現は無理と判断した。ペリー元国防長官等、多くの安全保障関係者はミサイル防御システムを支持していない。米ソ対立の中で、「相手に自分の国を完全に破壊できるという保障を与える」ことで戦争を避けるという全く新しい戦略が中心となった。かつ、この戦略は冷戦終了後も依然、米国・ロシア間で継続している。

⓬ ちなみに防衛大綱をみればミサイル防衛は我が国防衛の柱になっているが、米国以上に不可能だ。ミサイルは数分で飛んでくる。例えば北朝鮮は三〇〇程度ミサイルを実戦配備していると言われる。この発射すらほとんど掌握出来ない。弾道の軌道計算は先ず出来ない。そんなものをどうして打ち落とせるか。第二次大戦マジノ・ラインを築いてドイツの攻撃を防げると思ったフランス以上に、不可能を可能としている。不可能を基礎に防衛大綱を作るべきでない。

⓭ 相互確証破壊戦略は核兵器が出現してすぐに採用されたわけではない。米国がソ連に対して核兵器の分野で圧倒的優位にたっていた時には別の戦略が採用された。この過程を見ることは、米国が中国の核兵器にどう対応していくかを示している。

コメント(1)

米ソ中ともに、むだな核兵器拡大競争をやめて、核兵器廃絶の努力をしようではないか?
大国の義務だと思うのだが・・・

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