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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏のご紹介】 「右派に民衆の胃袋を握らせてはいけない」(前半)

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(p118)
「ナチスみたいな政党が出てきて反緊縮的な雇用創出政策をおこなうと大変なことに」

(p185)
「右派に民衆の胃袋を握らせてはいけない」

==
『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(亜紀書房)から抜粋

はじめに 経済にデモクラシーを! ブレイディみかこ

(p8)
スコットランドのグラスゴー大学教授アンドリュー・カンバースが2017年に発表し
た、まさにデモクラティック・エコノミーの達成度合いを測る指数と言える「経済民主
主義指数」のリストを見ると、日本はOECD加盟の32ヶ国の中で、下から4番目な
のだ。日本の下には債務と緊縮で疲弊しているギリシャがいて、その下にはトランプの
米国がいる(ちなみに最下位はスロバキアだった)。

(p10)
「誰もがきちんと経済について語ることができるようにするということは、善き社会の
必須条件であり、真のデモクラシーの前提条件だ」とヤニス・バルファキスは書いた。

欧州の左派がいまこの前提条件を確立するために動いているのは、経世済民という政治
のベーシックに戻り、豊かだったはずの時代の分け前に預かれなかった人々と共に立つ
ことが、トランプや極右政党台頭の時代に対する左派からのたった一つの有効なアンサ
ーであると確信するからだ。

ならば経済のデモクラシー度が欧州国と比べても非常に低い日本には、こうした左派の
「気づき」がより切実に必要なはずだし、時代に合わせて進化を遂げようとしている海
外の左派の動きを「遠い国の話」と傍観している場合でもないだろう。
・・・
本書が、日本に「真のデモクラシーの前提条件」をつくるための助けとならんことを祈
っている。


第1章 下部構造を忘れた左翼

(p18)
ブレイディみかこ
ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレスの辞書サイトでは、英国英語における「Lef
t(左翼)」の意味をとてもシンプルに定義しているんですよね。「富と力は社会のす
べての部分で分配されるべきだと信じる政治的な集団」というのが「Left」の定義
なんです。まずは富の分配、つまり経済の話なのです。でも、日本の左派は、なんだか
経済の話をすることを「汚いこと」だと思っているような気がします。わたしはお金の
問題はとても大切だし、社会の基礎だと思う。

わたしは自分のことをいわゆる反緊縮派だと思っているのですが、日本である左派を名
乗る方と話していた時、「欧州の反緊縮派と日本の反緊縮派は違う」っておっしゃった
んですよね。それで、「どこが違うんですか?」って訊いたら、「欧州の反緊縮運動の
サイトにいったら、反戦や反核、差別反対といったことも訴えている。カネのことばか
り言ってる反緊縮派はありえないから、日本で緊縮財政に反対している人びとは、本物
の反緊縮派ではない」って。なんか、すごい倒錯というか、そこまでロジックを捻じ曲
げても、どうしてもカネの話というか、経済の問題を訴える人たちがレフトと呼ばれる
のは嫌なのかなって(笑)。というか、経済政策にも理念は反映されるものだという認
識が希薄すぎる気がします。

北田暁大
わたしは日本の問題は、「左翼が下部構造を忘れている」ということなんじゃないかと
思っています。いまの左派の主流は、1960年から70年代に起きた既成左翼批判
(新左翼)を引き継いでいるところがあるから、もともと先行世代のマルクス主義の
「経済決定論」みたいなものに対する警戒心がとても強いんですよね。なので、経済還
元論はダメとか言って、ルイ・アルチュセール(フランスの構造主義・マルクス主義哲
学者)やアントニオ・グラムシ(ヘゲモニー論を唱えたイタリアのマルクス主義思想家
)とかにいっちゃう。そのこともあって、経済的な下部構造の問題よりも、上部構造の
問題ーーたとえば、文化の問題やマイノリティ、ジェンダーなどのアイデンティティの
問題ーーに焦点を当てがちなんですけれど、いつのまにか、「大事なのは経済だけじゃ
ない」というのが変質して、「経済は大事じゃない」ということになってしまったよう
に思えます。


第2章 「古くて新しい」お金と階級の話

(p114)
ブレイディ
やっぱり反緊縮運動というものを考える時に、ヨーロッパはかつてナチスというものが
出てきたというのが切実だと思うんですよね。いまヨーロッパでニューディールという
言葉がしきりに唱えられているのは、ナチスを生み出してしまった大戦の反省がとても
あるからなんですよね。

松尾匡
1929年にはじまった世界恐慌の影響で、当時の先進国中で失業者がたくさん出まし
た。アメリカでは失業率が25%にものぼったと言われていますが、ドイツはそれ以上
に深刻で、一説には40%近くの失業率になっていました。・・・その時にワイマール
政府がとったのが財政緊縮策だった、というのが大きな問題なんです。・・・その時に
ナチスが掲げたのが、・・・大規模な政府支出による国民の雇用創出策でした。・・・
アメリカ合衆国ではニューディール政策がおこなわれました。・・・つまり、両方とも
ある意味で反緊縮的な経済政策なんですよ。

(p118)
ブレイディ
だから、欧州の反緊縮派の人たちも、「ナチスみたいな政党が出てきて反緊縮的な雇用
創出政策をおこなうと大変なことになる。・・・左派的な考え方を持って、自分たちが
ニューディールをおこなうのだ」と主張しているんですよ。右傾化していく欧州の中で
、それを食い止めるのはニューディールなんだって。

北田
そういう危機意識が、日本には徹底的に欠落している感じがします。「経済はデフレで
いいじゃないか」って言いながら、パンをちゃんと食べたいという民衆の切実な願いを
軽視した時に、歴史上何が起こったのかというのは、恐ろしい反面教師がいるわけです
から、絶対に忘れてはならない。

ブレイディ
ヤニス・バルファキスたちがつくったDiEM25というのは、欧州の左派が足並みを
揃えて、欧州に真の意味でのデモクラシーを実現し、1930年代の再来を防ごうとい
う運動なんです。・・・メンバーには、ウィキリークスのジュリアン・アサンジ、哲学
者のスラヴォイ・ジジェクや言語学者のノーム・チョムスキー、映画監督のケン・ロー
チやミュージシャンのブライアン・イーノなんかが名を連ねているんですけど、そこに
はコービン労働党の「影の財務大臣」であるジョン・マクドネルなども加わっています
。それと、「もうNOと言ってるだけじゃダメ」と思ったというナオミ・クラインも参
加してますよね。


補論1 来たるべきレフト3.0に向けて

(p131)
ブレイディ
ブレアは昔「第三の道」を提唱して「ニュー・レイバー」って言いましたけど、コービ
ンがそれを乗り越えて、単なる「オールド・レイバー」に回帰するんじゃなくて、本当
の意味で「新しいレイバー」になっていってくれることを期待してます。

松尾
左派は古い社会主義に還るのではなくて、新しい左派にバージョンアップするべきだと
思います。それで僕は最近レフト3.0という概念を提唱しているんですけど。・・・
これまでの歴史の中で、左派は何度か大きなバージョンアップをしてきていると思っ
ているんですが、僕の言葉で言うと『1945年の精神』で描かれたような「オールド
・レイバー」がレフト1.0。その後に出てきたブレアの「ニュー・レイバー」という
のがレフト2.0。そしてそれを乗り越えようとしているコービンなど欧州の反緊縮
運動がレフト3.0ということになるんですよね。・・・レフト1.0というのは大き
く分けると急進的なものと穏健なものの二つの方向があって、一つは旧来のいわゆるマ
ルクス=レーニン主義。それともう一つは、このマルクス=レーニンを批判的に受け止
めた、かつての「社会民主主義」のことを指しています。マルクス=レーニン主義とい
うのは、産業を全面的に国営化して中央計画経済でやっていきましょうという急進的な
路線で、社会民主主義は資本主義の枠内かもしれないけど、福祉国家を充実させていき
ましょうという穏健な路線です。1945年当時の英国労働党はいろんな産業の国有化
を強く主張していて、いまから見るとけっこう急進的にも見えるんですけど。

(p133)
ブレイディ
英国労働党も労働組合にとても固い地盤を持っている政党です。労働党はもともとH.
G.ウェルズやバートランド・ラッセルなども加盟していたフェビアン協会という団体
の影響力が強かったので、ソ連型の急進的な国家社会主義路線をとらないで、穏健な社
会民主主義路線をとることになったんですけど、・・・でも、1980年代のサッチャ
リズム旋風を受けて、その後のブレアの「第三の道」路線の中で脱労組依存が唱えら
れたので、いまでは昔に比べると組合の力はかなり弱まってしまいました。

(p134)
北田
日本の場合は1970年頃までの日本共産党がレフト1.0の急進派で、同じ頃の日本
社会党がレフト1.0の穏健派ということになりそうですね。

(p135)
松尾
僕がレフト2.0と言うものは、これらのレフト1.0の行き詰まりに対する批判を引
き受ける形で生まれた、レフトの新バージョンのことです。70年代頃から、新左翼運
動の一部から現れはじめ、ソ連崩壊後の90年代に全盛になりました。

ブレディ
「新左翼」って言葉のもとになったのも英国なんですよね。もともと1960年に英国
で発刊された『ニュー・レフト・レビュー』という雑誌の名前に由来していると言われ
ています。

(p154)
松尾
でも、やっぱり単に古い社会主義像に戻ればいいというわけではない。中央集権的な組
織構造とか、マイノリティやジェンダーの問題とか、かつて批判された点を乗り越えた
うえで、より高い次元で「階級」とか「経済」とかいう視点を取り戻さなければならな
いのだと思います。これが僕がレフト3.0と言うことの意味なんですけど。

ブレイディ
2017年の総選挙の時の英国労働党のマニフェストのタイトルは「For the 
many not the few(少数者のためでなく、多数者のために)」だった
んです。もちろん、この多数者というのはデヴィッド・グレーバーが言った「1パーセ
ントと99パーセント」の軸における少数者と多数者なんで、少数のエスタブリッシュ
メントではなく、その他の多数の人びとのための政治を、ということなんですけど。

松尾
日本では少数者って言ったら、だいたいマイノリティのことを指しますし、多数者とい
ったら主流派アイデンティティのマジョリティのことを指しますからね。

(p156)
ブレイディ
昨今の英国だと、少数派、多数派はもう自然に「1パーセントと99パーセント」だと
脳内変換されちゃいます。・・・労働党がそれをわかってやってるとすれば、意識的に
レフト2.0から3.0への転身を示してますよね。

松尾
コービンは昨年の総選挙中の6月5日に、イングランド東北部のティーサイドでの演説
で、「我々は若者であり、年寄りであり、ゲイであり、ヘテロであり、障がい者であり
、健常者であり、そのすべてなのだ」って言ってましたね。そして、そういう人たちが
お互いに「わたしたち」だと認めあうコミュニティこそが、炭鉱夫や製鋼所の労働者の
階級闘争を支えたのだとも語っていました。サンダースも自伝の中で、「人種や性や同
性愛への偏見は、すべての人がまともな給料の仕事を持ってこそなくすことができる」
と言っていますけど、両方ともレフト3.0の立場を非常にはっきりと示した発言だと
思います。

(p157)
ブレイディ
スペインのポデモスも、リーダーのパブロ・イグレシアスは本当にカリスマ的な魅力の
ある人なんですけど、やっぱりどこか中央集権的でトップダウンな感じがあると批判
されています。・・・ポデモスには第三ののグループもいて、すごく少数なんですけれ
どアナキストもいます。彼らはトップ・トゥ・ボトムというというよりも、ボトムアッ
プのやりかたを模索している。

松尾
僕も欧州の反緊縮運動には、たしかにレフト3.0への可能性があると思います。しか
し、これがただのレフト1.0への回帰に終わってしまうのか、中途半端にレフト1.
5に戻るだけなのか、・・・今後の動きを注意して見守らなければならないと思ってい
ます。

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