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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏のご紹介】 (欧州季評)ブロークン・ヨーロッパ 希望を持つ勇気はあるか ブレイディみかこ

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朝日新聞 2019年3月9日

 英国で「ブロークン・ブリテン」という言葉が使われ始めたのは10年以上前だった
。10代のシングルマザー、幼児虐待、ドラッグやアルコールの問題、暴力的なギャン
グ・カルチャーなど社会的荒廃を意味する言葉としてそれは登場した。2010年の総
選挙で保守党は「ブロークン・ブリテンを修復する」と言って戦い、政権交代を起こし
た。

 やがて「ブロークン・ブリテン」は政治的荒廃をも意味する言葉になった。議員のス
キャンダルや政治腐敗、不正選挙、緊縮財政による警察やNHS(英国民保健サービス
)の機能不全など、底が抜けたとしか言いようのない政治状況が「ブロークン」と形容
されるようになった。

 そして最近、耳にする言葉が「ブロークン・ヨーロッパ」だ。この言葉で特集を組ん
だニュー・ステイツマン誌に寄稿したケンブリッジ大学のブレンダン・シムズ教授は、
現代の欧州連合(EU)の状況を、約500年前に欧州で宗教改革の嵐が吹き荒れた時
代になぞらえている。

     *

 1500年ごろ、西はアイルランドから東はポーランド、リトアニアまで、また、北
はノルウェーから南はイタリアまで、欧州はローマ・カトリック教会の「法とイデオロ
ギー」に支配されていた。しかし、当時、ローマ・カトリック教会は聖職者の腐敗と世
俗化で重大な危機に瀕(ひん)していると見なされていた。そのためドイツ、スイス、
イギリス、フランスなど各地で宗教改革が起こり、教会の分裂が進んでいく。

 EUもまた、「法とイデオロギー」で欧州統一を目指した。が、まず南北の亀裂が現
れた。南部でユーロ圏のバブルがはじけると、ギリシャ、スペイン、ポルトガルが債務
危機に陥って「EUの南北問題」が発生し、緊縮財政によってさらに分断は深刻化して
いった。

 加えて、東西にも亀裂が走った。ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア
といった国々の人々は、中央・西ヨーロッパで主流のリベラルなイデオロギーに違和感
を覚えた。これらの国がシリアからの難民の受け入れで見せた対応はそれを浮き彫りに
した。

 そして英国が国民投票でブレグジットを決め、メイ首相がEUと共に「ブレグジット
の成功」を成し遂げたいと言ったとき、ユンケル欧州委員長は、成功は「あり得ない」
と一蹴した。500年前にローマ・カトリック教会がカトリックの教義から離脱すれば
救われることはないと宗教改革派たちに言ったのに似ている。ブレグジットはEUが掲
げるイデオロギーに対する罪だった。

 だからEUは英国を罰さねばならない。とことん欧州内で周縁化し、EUに戻るしか
もうオプションはないと英国の大半の人々が思うところまで追い込めば、愚かなことを
した子は頭をうなだれて戻ってくるだろう。これは「しつけ」の論理だ。

     *

 しかし、もっとポジティブなやり方がある、と提案するのがギリシャ元財務相の経済
学者で、EUの改革を求める運動団体DiEM25を率いるヤニス・バルファキスだ。
彼はEUにも抜本的改革の必要があり、まず欧州の経済的環境を改善するべきだと主張
する。

 金融危機から10年経ってもその影が長く尾を引いているのは、山積する負債と膨ら
んでいく貯蓄が共在する欧州の経済状況が原因だと彼は説く。貯蓄増加でマイナス金利
になったドイツのような国がある一方で慢性的不況に苦しむ国もあり、緊縮財政で国民
の多くは疲弊していくのに銀行と大企業は肥え太る。

 彼は欧州に必要なのはグリーン・ニューディールだと言う。欧州全土に有毒な空気を
まき散らした緊縮財政を終わらせ、地球温暖化対策や自然エネルギーに大胆な投資を行
い、雇用を創出し、経済成長を促して再び欧州に希望の光をもたらせる。財源は欧州投
資銀行が欧州中央銀行との連携で債券を発行することで賄う。自らそれを行うため、バ
ルファキスは今年、EU議会選挙に出馬する。「今年はいよいよひどい年になる」と識
者たちが暗い顔で警告するときに、「欧州の春」を実現するなどと言っているのは彼だ
けだ。

 欧州に希望とデモクラシーが戻ってくれば、英国も国民投票をやり直し、EUに戻っ
てくるとバルファキスは言う。確かにこのシナリオは「しつけ」より遥(はる)かに明
るい。しかし、だからこそこれは現実味のないポピュリズムと呼ばれる。いつしか欧州
では「明るいビジョン」と「ポピュリズム」は同義語になってしまったようだ。彼はそ
の暗いマインドを払拭(ふっしょく)しようとしている。欧州の外でも、米国のバーニ
ー・サンダースと連携し、世界に反緊縮運動を広げていくと発表した。

 『絶望する勇気』という本をスラヴォイ・ジジェクは書いたが、机上でそんなに勇気
を振り絞らなくても、ブロークン・ヨーロッパの地べたはもうその前が思い出せないほ
どずっと絶望しているし荒(すさ)んでいる。いま希望することのほうが、どれだけ胆
力がいることか。

 経済を崩壊させるのは「終わりの予感」だとバルファキスは言う。

 マインドの大転換がいま求められている。

     ◇

 1965年生まれ。保育士・ライター。96年から英国在住。共著に「そろそろ左派
は〈経済〉を語ろう」、著書に「子どもたちの階級闘争」など。

コメント(1)

なるほど・・・日本も、「そろそろ左派を語ろう」の時代に入ったような気がしますが・・・

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