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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの色平哲郎氏のご紹介】(書評)『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』 ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大〈著〉

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【色平哲郎氏のご紹介】(書評)『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』 ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大〈著〉
朝日新聞 2018年6月23日

日本の左派は、経済の話を「汚いこと」と思っていないか。欧州の「反緊縮」運動を紹介してきたブレイディみかこの、こうした問いかけから本書は始まる。

左派も一様とはいえないが、「経済」への忌避感がのぞくことは確かにある。環境破壊の記憶か、バブル崩壊後の清貧志向か。

だが、庶民の暮らしを豊かにするという左派の原点に立ち戻れば「お金」の話は避けて通れない、と著者らは訴える。それも、もっと分配せよというだけでは不十分。需要不足による不景気の解消のためには、金融緩和や財政出動が必要だ、とたたみかける。

それは古い左派への回帰なのか。それとも新しい展望なのか――。鼎談(ていだん)をまとめた本なので明快さの半面やや荒っぽさもあり、疑問が残る読者もいるだろう。

そうだとしても、「いまこそ下部構造を思い出す時」という問題提起は重い。左派を自認する人々の間で、議論がわき起こることを期待したい。

石川尚文(本社論説委員)

    *

『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』 
ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大〈著〉 亜紀書房 1836円

===
(p118)
「ナチスみたいな政党が出てきて反緊縮的な雇用創出政策をおこなうと大変なことに」
(p185)
「右派に民衆の胃袋を握らせてはいけない」
==
『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(亜紀書房)から抜粋

はじめに 経済にデモクラシーを! ブレイディみかこ
(p8)
スコットランドのグラスゴー大学教授アンドリュー・カンバースが2017年に発表した、まさにデモクラティック・エコノミーの達成度合いを測る指数と言える「経済民主
主義指数」のリストを見ると、日本はOECD加盟の32ヶ国の中で、下から4番目なのだ。日本の下には債務と緊縮で疲弊しているギリシャがいて、その下にはトランプの
米国がいる(ちなみに最下位はスロバキアだった)。

(p10)
「誰もがきちんと経済について語ることができるようにするということは、善き社会の必須条件であり、真のデモクラシーの前提条件だ」とヤニス・バルファキスは書いた。欧州の左派がいまこの前提条件を確立するために動いているのは、経世済民という政治のベーシックに戻り、豊かだったはずの時代の分け前に預かれなかった人々と共に立つことが、トランプや極右政党台頭の時代に対する左派からのたった一つの有効なアンサーであると確信するからだ。

ならば経済のデモクラシー度が欧州国と比べても非常に低い日本には、こうした左派の「気づき」がより切実に必要なはずだし、時代に合わせて進化を遂げようとしている海
外の左派の動きを「遠い国の話」と傍観している場合でもないだろう。・・・本書が、日本に「真のデモクラシーの前提条件」をつくるための助けとならんことを祈っている。


第1章 下部構造を忘れた左翼
(p18)
ブレイディみかこ
ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレスの辞書サイトでは、英国英語における「Left(左翼)」の意味をとてもシンプルに定義しているんですよね。「富と力は社会のす
べての部分で分配されるべきだと信じる政治的な集団」というのが「Left」の定義なんです。まずは富の分配、つまり経済の話なのです。でも、日本の左派は、なんだか
経済の話をすることを「汚いこと」だと思っているような気がします。わたしはお金の問題はとても大切だし、社会の基礎だと思う。

わたしは自分のことをいわゆる反緊縮派だと思っているのですが、日本である左派を名乗る方と話していた時、「欧州の反緊縮派と日本の反緊縮派は違う」っておっしゃった
んですよね。それで、「どこが違うんですか?」って訊いたら、「欧州の反緊縮運動のサイトにいったら、反戦や反核、差別反対といったことも訴えている。カネのことばか
り言ってる反緊縮派はありえないから、日本で緊縮財政に反対している人びとは、本物の反緊縮派ではない」って。なんか、すごい倒錯というか、そこまでロジックを捻じ曲
げても、どうしてもカネの話というか、経済の問題を訴える人たちがレフトと呼ばれるのは嫌なのかなって(笑)。というか、経済政策にも理念は反映されるものだという認
識が希薄すぎる気がします。

北田暁大
わたしは日本の問題は、「左翼が下部構造を忘れている」ということなんじゃないかと思っています。いまの左派の主流は、1960年から70年代に起きた既成左翼批判(新左翼)を引き継いでいるところがあるから、もともと先行世代のマルクス主義の「経済決定論」みたいなものに対する警戒心がとても強いんですよね。なので、経済還元論はダメとか言って、ルイ・アルチュセール(フランスの構造主義・マルクス主義哲学者)やアントニオ・グラムシ(ヘゲモニー論を唱えたイタリアのマルクス主義思想家)とかにいっちゃう。そのこともあって、経済的な下部構造の問題よりも、上部構造の問題ーーたとえば、文化の問題やマイノリティ、ジェンダーなどのアイデンティティの問題ーーに焦点を当てがちなんですけれど、いつのまにか、「大事なのは経済だけじゃない」とうのが変質して、「経済は大事じゃない」ということになってしまったように思えます。

第2章 「古くて新しい」お金と階級の話
(p114)
ブレイディ
やっぱり反緊縮運動というものを考える時に、ヨーロッパはかつてナチスというものが出てきたというのが切実だと思うんですよね。いまヨーロッパでニューディールという言葉がしきりに唱えられているのは、ナチスを生み出してしまった大戦の反省がとてもあるからなんですよね。

松尾匡
1929年にはじまった世界恐慌の影響で、当時の先進国中で失業者がたくさん出ました。アメリカでは失業率が25%にものぼったと言われていますが、ドイツはそれ以上
に深刻で、一説には40%近くの失業率になっていました。・・・その時にワイマール政府がとったのが財政緊縮策だった、というのが大きな問題なんです。・・・その時に
ナチスが掲げたのが、・・・大規模な政府支出による国民の雇用創出策でした。・・・アメリカ合衆国ではニューディール政策がおこなわれました。・・・つまり、両方とも
ある意味で反緊縮的な経済政策なんですよ。

(p118)
ブレイディ
だから、欧州の反緊縮派の人たちも、「ナチスみたいな政党が出てきて反緊縮的な雇用創出政策をおこなうと大変なことになる。・・・左派的な考え方を持って、自分たちが
ニューディールをおこなうのだ」と主張しているんですよ。右傾化していく欧州の中で、それを食い止めるのはニューディールなんだって。

北田
そういう危機意識が、日本には徹底的に欠落している感じがします。「経済はデフレでいいじゃないか」って言いながら、パンをちゃんと食べたいという民衆の切実な願いを
軽視した時に、歴史上何が起こったのかというのは、恐ろしい反面教師がいるわけですから、絶対に忘れてはならない。

ブレイディ
ヤニス・バルファキスたちがつくったDiEM25というのは、欧州の左派が足並みを揃えて、欧州に真の意味でのデモクラシーを実現し、1930年代の再来を防ごうとい
う運動なんです。・・・メンバーには、ウィキリークスのジュリアン・アサンジ、哲学者のスラヴォイ・ジジェクや言語学者のノーム・チョムスキー、映画監督のケン・ロー
チやミュージシャンのブライアン・イーノなんかが名を連ねているんですけど、そこにはコービン労働党の「影の財務大臣」であるジョン・マクドネルなども加わっています
。それと、「もうNOと言ってるだけじゃダメ」と思ったというナオミ・クラインも参加してますよね。


補論1 来たるべきレフト3.0に向けて
(p131)
ブレイディ
ブレアは昔「第三の道」を提唱して「ニュー・レイバー」って言いましたけど、コービンがそれを乗り越えて、単なる「オールド・レイバー」に回帰するんじゃなくて、本当
の意味で「新しいレイバー」になっていってくれることを期待してます。

松尾
左派は古い社会主義に還るのではなくて、新しい左派にバージョンアップするべきだと思います。それで僕は最近レフト3.0という概念を提唱しているんですけど。・・・
これまでの歴史の中で、左派は何度か大きなバージョンアップをしてきていると思っているんですが、僕の言葉で言うと『1945年の精神』で描かれたような「オールド
・レイバー」がレフト1.0。その後に出てきたブレアの「ニュー・レイバー」というのがレフト2.0。そしてそれを乗り越えようとしているコービンなど欧州の反緊縮
運動がレフト3.0ということになるんですよね。・・・レフト1.0というのは大きく分けると急進的なものと穏健なものの二つの方向があって、一つは旧来のいわゆるマ
ルクス=レーニン主義。それともう一つは、このマルクス=レーニンを批判的に受け止めた、かつての「社会民主主義」のことを指しています。マルクス=レーニン主義とい
うのは、産業を全面的に国営化して中央計画経済でやっていきましょうという急進的な路線で、社会民主主義は資本主義の枠内かもしれないけど、福祉国家を充実させていき
ましょうという穏健な路線です。1945年当時の英国労働党はいろんな産業の国有化を強く主張していて、いまから見るとけっこう急進的にも見えるんですけど。

(p133)
ブレイディ
英国労働党も労働組合にとても固い地盤を持っている政党です。労働党はもともとH.G.ウェルズやバートランド・ラッセルなども加盟していたフェビアン協会という団体
の影響力が強かったので、ソ連型の急進的な国家社会主義路線をとらないで、穏健な社会民主主義路線をとることになったんですけど、・・・でも、1980年代のサッチャ
リズム旋風を受けて、その後のブレアの「第三の道」路線の中で脱労組依存が唱えられたので、いまでは昔に比べると組合の力はかなり弱まってしまいました。

(p134)
北田
日本の場合は1970年頃までの日本共産党がレフト1.0の急進派で、同じ頃の日本社会党がレフト1.0の穏健派ということになりそうですね。

(p135)
松尾
僕がレフト2.0と言うものは、これらのレフト1.0の行き詰まりに対する批判を引き受ける形で生まれた、レフトの新バージョンのことです。70年代頃から、新左翼運
動の一部から現れはじめ、ソ連崩壊後の90年代に全盛になりました。

ブレディ
「新左翼」って言葉のもとになったのも英国なんですよね。もともと1960年に英国で発刊された『ニュー・レフト・レビュー』という雑誌の名前に由来していると言われ
ています。

(p154)
松尾
でも、やっぱり単に古い社会主義像に戻ればいいというわけではない。中央集権的な組織構造とか、マイノリティやジェンダーの問題とか、かつて批判された点を乗り越えた
うえで、より高い次元で「階級」とか「経済」とかいう視点を取り戻さなければならないのだと思います。これが僕がレフト3.0と言うことの意味なんですけど。

ブレイディ
2017年の総選挙の時の英国労働党のマニフェストのタイトルは「For the many not the few(少数者のためでなく、多数者のために)」だった
んです。もちろん、この多数者というのはデヴィッド・グレーバーが言った「1パーセントと99パーセント」の軸における少数者と多数者なんで、少数のエスタブリッシュ
メントではなく、その他の多数の人びとのための政治を、ということなんですけど。

松尾
日本では少数者って言ったら、だいたいマイノリティのことを指しますし、多数者といったら主流派アイデンティティのマジョリティのことを指しますからね。

(p156)
ブレイディ
昨今の英国だと、少数派、多数派はもう自然に「1パーセントと99パーセント」だと脳内変換されちゃいます。・・・労働党がそれをわかってやってるとすれば、意識的に
レフト2.0から3.0への転身を示してますよね。

松尾
コービンは昨年の総選挙中の6月5日に、イングランド東北部のティーサイドでの演説で、「我々は若者であり、年寄りであり、ゲイであり、ヘテロであり、障がい者であり
、健常者であり、そのすべてなのだ」って言ってましたね。そして、そういう人たちがお互いに「わたしたち」だと認めあうコミュニティこそが、炭鉱夫や製鋼所の労働者の
階級闘争を支えたのだとも語っていました。サンダースも自伝の中で、「人種や性や同性愛への偏見は、すべての人がまともな給料の仕事を持ってこそなくすことができる」
と言っていますけど、両方ともレフト3.0の立場を非常にはっきりと示した発言だと思います。

(p157)
ブレイディ
スペインのポデモスも、リーダーのパブロ・イグレシアスは本当にカリスマ的な魅力のある人なんですけど、やっぱりどこか中央集権的でトップダウンな感じがあると批判
されています。・・・ポデモスには第三ののグループもいて、すごく少数なんですけれどアナキストもいます。彼らはトップ・トゥ・ボトムというというよりも、ボトムアッ
プのやりかたを模索している。

松尾
僕も欧州の反緊縮運動には、たしかにレフト3.0への可能性があると思います。しかし、これがただのレフト1.0への回帰に終わってしまうのか、中途半端にレフト1.
5に戻るだけなのか、・・・今後の動きを注意して見守らなければならないと思っています。


第3章 左と右からの反緊縮の波
(p185)
松尾
安倍政権が自分の右派的なイデオロギーを実現するために経済政策に注力してきたのだから、左派のほうだって政治や文化の面で「リベラル」な社会を守るためにこそ、経済
政策に力をいれなければならないはずなんです。

ブレイディ
「右派に民衆の胃袋を握らせてはいけない」というのが、ヨーロピアン・ニューディールを訴える反緊縮運動の共通の認識ですからね。

北田
たしかに「第二の矢」はきわめて不十分かつ非効率的な財政出動政策なんですよね。まさにアクセルとブレーキを同時に踏んでいる。しかし、・・・「第一の矢」の金融緩和
のほうだけでも、やはり安倍政権下ではそれなりの効果がもたらされている。実際、大学の新卒採用率などは大幅に改善していますからね。・・・いまや新卒者市場は売り手
市場になってきている。

松尾
冷静に数値を見てみれば、民主党政権時に比べて、安倍政権下で改善している一定の経済指標が見られることは事実だと思います。・・・生活意識調査からも裏付けられてい
ます。実際、就業者数は・・・安倍政権が始まってから年々伸び続けています。2017年の就業者数6530万人は、20年前、1997年の6557万人に迫る、
年次データとしては史上二番目の水準となっています。・・・雇用の増加は非正規雇用ばかりだという批判もありますし、非正規社員が増加しているのもたしかで、それは批
判すべきことだと思いますが、その傾向はすでに民主党政権時代にも進んでいたことでもあるんですよね。・・・正社員の数も2014年の後半から徐々に増えはじめ、現在
ではすでにリーマン前の水準に達しています。・・・僕は「アベノミクス」を礼賛するつもりは毛頭ありません。しかし、その政策が不十分ながらも一定の成果を上げているのも事実で、むしろ、それらをまったく認めないような「アベノミクス批判」を不用意におこなうと、人生の危機の不安からやっと抜け出した庶民の気持ちが離れてしまうのではないかという危惧があるんです。・・・運動をつくる側がそれを信じてしまうと、正しい作戦が立てられなく
なってしまうと思います。


補論2 新自由主義からケインズ、そしてマルクスへ
(p285) 日本経済の行き先
松尾
ただ、最後にちょっと悲観的な話になるんですけど、・・・僕は日本がデフレ不況で低迷している時にこそ、緩和マネー(日銀が量的緩和でつくったお金のこと)を使っ
て福祉インフラの構築に充てる(「投資」する)べきだとずっと言ってきたんですけど、現状では緩和マネーは福祉とか教育とか住宅政策にはぜんぜん充てられていない
ままで進んできているという状態です。

北田
「アベノミクス」の「第一の矢」だけでも、大学新卒者の採用率が劇的に改善してきていますし、実質賃金も持ち直しはじめている。

松尾
もしかしたら今年(2018年)中に完全雇用の水準に到達するという可能性もあります。・・・僕はオリンピック後に大きな問題が出てくるんじゃないかなと思います。

ブレイディ
オリンピック後にどうなるんですか?

松尾
おそらく次の消費税の引き上げで一回景気は後退に向かうと思います。ひょっとしたら今年中にも不動産バブルが崩壊して景気に多少の影響はあるかもしれませんが、オリン
ピックで多かれ少なかれ景気は復活するでしょう。・・・その時点で完全雇用が達成されていたら、もう追加の緩和マネーを出すことはできませんから、・・・日銀は今度は
金融引き締めに入らなくてはいけません。

日本全体の平均をとったGDPで見ると、一見オリンピック特需で景気がいいように思えるけれど、景気がいいのは首都圏の一部だけで、地方では製造業が壊滅的な状態にな
るという可能性があります。

松尾
EUの場合と似た理由なんですよ。・・・インフレ圧力の違いが首都圏と地方で違った形で出てくる。

ブレイディ
ドイツは景気がいいけれど、南ヨーロッパは悲惨だっていうのと同じ状況が日本国内で起こってくる。

(p290)
松尾
経済政策というのは、その時々の状況に合わせて機能するものなんですよね。・・・リフレ政策が通用するのも有効期限があるんです。そして、その期限はもう長くないと
思います。僕は、安倍さんが総裁選挙に出た時から一貫して、・・・安倍さんが好況で完全雇用を実現して、選挙に圧勝して戦後憲法体制に終止符を打つという、ナチス再現の悪夢を警告し続けていまに至っています。・・・まだ完全雇用までギャップがある間に、野党が安倍さんを上回る、もっと民衆に役立つリフレ政策を公約し、選挙に勝って政権をとる
ことを主張してきました。ところが、それがぜんぜん聞き入れられないうちに、安倍さんの国政選挙五回圧勝を許して、さんざん国の右傾化と私物化が進められたあげく、対抗策の有効期限切れが近づいてきています。


あとがきにかえて 日本に左派の反緊縮運動を! 松尾匡
(p297) 今度こそ耳を貸してもらえるか
・・・
(p299) 実現した反緊縮政策は首尾上々
以下、IMF公表のデータを使って三例紹介しましょう。
カナダで2015年に緊縮派の保守党政権を倒して政権についた中道左派の自由党は、三年間で250億カナダドルの財政赤字を容認し、計600億カナダドルのインフラ投
資を公約して選挙を闘っていました。実際この二年間で700億ドルほど歳出を増やし、2015年に0.94%だった実質成長率は2017年に3.04%へ増加。雇用は
このかん44万人増えて、2015年に6.9%だった失業率は、2017年末時点で5%にまで下がっています。・・・財政・金融双方の積極政策が功を奏していると言え
ます。

2015年にはポルトガルでも保守系の緊縮派から社会党政権に交代し、共産党など左翼三派の閣外協力を得て緊縮政策から転換しました。その結果、景気が拡大して201
5年に12.4%あった失業率は劇的に低下して、2017年には9.7%にまで下がっています。するとかえって財政赤字は減り、公的債務のGDP比も下がっています。
この「奇跡」は「ポルトガル新時代 反緊縮のたたかい」と題して、『赤旗』で2018年1月14日から連載記事になっています。

2014年のスウェーデン総選挙では、それまで緊縮政策をとってきた保守中道政権が敗北し、社民党・環境党連立に左翼党が閣外協力する少数与党政権が成立しました。そ
のもとで財政拡大と、金融引き締めから金融緩和への転換がなされ、それまで低迷していた景気が拡大。20万人余の雇用増で、失業率は2014年の7.9%から2017
年の6.6%に低下する一方、財政収支は税収増によりかえって黒字化しています。
(2018年2月28日)

(p313) 追記
本稿脱稿後、森友学園問題が公文書改ざん問題という深刻極まりない事態にまで発展し、この追記を執筆している時点では、安倍政権が崩壊する可能性についても語られるに
至っています。・・・現在、自民党内でポスト安倍の最有力候補と目される石破茂さんも岸田文雄さんも河野太郎さんも財政均衡志向が強く、もし政権についたならば、20
19年の消費増税が予定通り行われるばかりか、財政支出削減も進められ、金融政策についても緩和の手仕舞いに向けて圧力がかけられると見込まれます。この場合、景気後
退は当然不可避ですが、それがオリンピックによっても相殺され得ない不況になる危険性も大きいです。

このことが大衆心理に与えるインパクトは非常に大きいだろうと思われます。・・・より右側から政府を攻撃する反緊縮の極右勢力の台頭です。

この時に、もしも左派やリベラル派が、緊縮財政政策や金融引き締め政策に対して「アベノミクスの後始末だから仕方ない」という態度をとり、自ら財政拡大や金融緩和(つ
まり左派からのニューディール政策)を唱えて対抗することをしなかったならどうなるか。再不況の恐怖にかられる大衆の支持は、確実に極右側に流れてしまうでしょう。そ
の結果は、安倍政権の方がまだかわいい政権の誕生ということにもなりかねません。

その逆に、左派やリベラル派の方から力強い反緊縮政策を訴えていけば、万が一安倍政権がずるずると存続してしまったとしても、あるいは政権崩壊後に自民党内の緊縮勢力
が財政均衡路線を推し進めようとしても、それに対抗して大衆の支持を得ることができるでしょう。したがって、安倍政権の存続・崩壊の如何にかかわらず、いまこそ左派か
らの反緊縮運動が不可欠である、というのが、変わることのない本書のメッセージなのです。
(2018年3月27日)

コメント(2)

すーちゃんさん

「イイネ」に厚くお礼申し上げます。
現役時代、組合の執行部の役員をしていましたが、当時の委員長が、「労使の第3次関係」という労使の
あたらしい、第3次関係、という理論を打ちたて、実行しました。

1.第1次関係、労働者の隷属的な関係
2.第2次関係、労使の対等な対立関係(労働条件をめぐる闘争)
3.第3次関係、労使の協調関係(組合も、経営を研究、口出しする)

当然、わが組合は、労使協議会が、経営協議会みたいなり、経済政策、経営政策に議論が及びました。
それが、労使関係の健全な発展であり、労働者の生活水準向上につながりました。

今の、上部団体の連合は、行き過ぎて、経営者にべったりとなり、もはや組合(労働者)の代表とはいえなくなりました。原点に戻るべきです、そして、対等に、経済論議をすべきです。

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