共通の信仰、共通の律法、共通の文化が、やがて社会的統一の感情を生み、総ての回教徒をして互に同胞たるの感を抱かしめ、精神的並に物質的に自余の世界と対立する「回教国 Dar al Islam」の観念を長養して来た。 さればザンジバールの回教徒は、言語の不便があるだけで、マレーに於ても又はジャワに於ても、宛(あたか)も故郷に在ると同様の気易さを感じ、好むままに往来し、結婚し、定着することが出来る。 全き「回教国」が彼等の国土である。なるほど彼等は、その生国に対して愛着を感ずるであろう。 而も一般に愛国心と呼ばるる祖国に対する忠誠の情は、彼等の場合に於てはその生国に対してよりも、寧ろ全体としての回教圏及びその宗教的文化に対して献げられる、、、