孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】 ３A（安倍、麻生、甘利）＋S（菅）の長い支配体制が終焉へ。

【孫崎享のつぶやき】
３A（安倍、麻生、甘利）＋S（菅）の長い支配体制が終焉へ。そもそもは２００８年サミットでアフガン支援要請を断った福田首相を倒す勢力として結束。岸田氏は総裁選で安倍、麻生に依存。だが要の甘利幹事長が選挙で敗北。岸田氏、外相指名等、独自政治展開の余裕発生。
2021-11-11 07:046


１：民主党の政権時代を除いて、２００８年頃より自民党においてはながく３A（安倍、麻生、甘利）＋S（菅）が権力を握る構図が続いた。

２：強固な３A＋S構図が出来たのは福田康夫政権にまでさかのぼる。
福田康夫首相（２００７年９月から２００８年９月）時、「米ブッシュ大統領、洞爺湖サミット時にアフガンへ陸上自衛隊陸自の派遣要求」「ブッシュ氏は首脳会談で福田氏に“アフガンに中身のある支援をする必要がある”と強い調子で要求。“陸自のＣＨ４７大型輸送機か軍民一体の地域復興チームを担当するか”と具体的に求めた。しかし福田氏は“陸自の大規模派遣は不可能”と返答した」。

　サミット後の７月１５日と１６日、東アジア担当国防次官補が訪日し、関係者に日本が行うべきアフガニスタン支援構想を提示。
米側は「福田首相はＣＨ４７大型輸送機の派遣等を拒否したが、米国は依然これを重視している。よって米国は次の案を提示

（１）C-130（輸送機）およびCH−４７（ヘリコプター）の派遣
（２）地域復興チームへ自衛隊員等の派遣
（３）４０床からなる医療ネットワーク（複数）の設置、
（４）アフガン選挙資金へ２億ドルの拠出
（５）アフガン軍、司法機関強化へ２００億ドルの貢献、

加えて日本の指導者および国民がアフガニスタン支援の重要性にコミットすること。
　この圧力の中、　福田首相は「国民生活のために新しい布陣で政策実現を期してもらいたい」と述べて辞任。

福田首相が米国の要求を受け入れなかったのは、アフガニスタン問題だけではありません。
福田首相は、金融問題で、米国の要請を却下しています。2008年米国で金融危機が発生。米政府系住宅金融機関２社が経営危機。この内、ファニーメイは多大な損失。

2010年7月16日、ニューヨーク証券取引所の上場が廃止。2008年ファニーメイが経営危機を迎えた時、日本に融資の依頼。当時の伊吹財務相が慎重論を主張したようです。
９月１日の福田康夫内閣の退陣表明で、政府が機能不全に陥ったため、実現しなかったといわれている。
こうした時に、日本国内、自民党はどうしたか。３A（安倍、麻生、甘利）＋S（菅）が福田下しに動いた。

３：つまり３A（安倍、麻生、甘利）＋S（菅）は対米隷属集団である、「米国が重要」というキャンペーンの下、日本国民も支持した。経済も同様。甘利氏が積極的に推進したTPPも日本政府がグローバル企業に主権を放棄する協定。

４：本来的に自衛隊がアフガニスタンに協力をすること、TPPに参加売ることは国益を害しる行動である。ここから３A（安倍、麻生、甘利）＋S（菅）体制は必然的に言論を抑える性格を帯びる。自分達と見解を異にする政治家、官僚、マスコミを排する集団となった。

５：そして岸田内閣成立においては、人気の高い河野太郎氏に対し、岸田氏は勝利するために３A（安倍、麻生、甘利）の派閥の力を借りざるを得なかった。その結果として実権は３A（安倍、麻生、甘利）が握る体制となった。その象徴は党の把握である。麻生氏が副総裁になり、人事・金を握る甘利氏が幹事長になる。

６：ここで大異変が起こる。衆議院選挙で絶対当選確実と見られた甘利氏が「カネと政治」の激しい攻撃をうえ、落選した。３A（安倍、麻生、甘利）の支配体制の要は幹事長である。岸田氏は幹事長ポストに茂木氏を配した。茂木氏は旧竹下派会長代行である。派閥的には旧竹下派は３A（安倍、麻生、甘利）との対抗罰である。

７：こうして、岸田氏は思わぬ形で、３A（安倍、麻生、甘利）の支配体制から離れた。
　日経の報道を見てみよう。

「岸田首相は10日発足した第2次内閣で外相に林芳正氏を起用。安倍元首相と自民党の麻生副総裁の「2A」の慎重論を押し切り、林氏をあえて選んだ。底流には衆院選を経た政権内の人間関係の変化がある。「林さんにお願いすることに決めました」。5日夕、首相は安倍、麻生両氏らに電話で林氏の外相起用を伝えた。盟友関係にある安倍氏と麻生氏は電話をかけあって賛成できないとの認識を共有した。それでも首相は翻意しなかった。

８：脱３A（安倍、麻生、甘利）＋S（菅）が何をもたらすかは不明だ。だがどす黒い支配体制から脱したことは確かだ。